有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100W440 (EDINETへの外部リンク)
キオクシアホールディングス株式会社 事業等のリスク (2025年3月期)
当社グループの事業領域であるメモリ事業においては、高度で先進的な技術が事業遂行上必要である上に、グローバルな激しい競争があります。当社グループでは、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③ 企業統治に関するその他の事項 ロ.リスク管理体制の整備の状況」に記載のとおり、代表取締役社長をリスク・コンプライアンス責任者とし、また、リスク・コンプライアンス委員会や個別の委員会での審議等を通じて、ビジネスリスク、財務・会計リスク、情報セキュリティリスク等の経済活動を遂行する上で生じるリスクについて、リスクの特性に応じた詳細な分析と管理を実施しております。かかるリスク・コンプライアンスマネジメントを通じて、当社の経営者が認識している当社グループの事業等のリスクのうち主要なものは以下のとおりですが、これらは当社グループの全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見できないリスクも存在します。このようなリスクが現実化した場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。
(1)事業環境及び経済情勢に係るリスク
①フラッシュメモリ市場の循環的・短期的変動
フラッシュメモリ市場は、一般に、急速な技術革新と生産性の向上、顧客からの需要の変動と継続的な価格下落圧力、競合他社との市場シェア獲得競争等により、需給の循環的変動傾向が顕著であり、周期的に市況の改善と悪化が繰り返されています。2022年後半から2023年にかけて経験したように、当社グループ及び競合他社による生産量の拡大や顧客の過剰在庫等により需給バランスに不均衡が生じる場合、フラッシュメモリ製品の販売価格が急速かつ大幅に下落する可能性があります。当社グループは、当該リスクへの対応として、月に1度、業績や市況等の事業の状況を確認する機会を設け、市場の最新動向や顧客の製品動向、リテールの価格状況、顧客の在庫、競合他社の状況を確認して、調査会社等の情報をもとに経済情勢や最新の需給状況を把握し、当社グループの販売状況や生産、開発及び財務状況を確認し、適切に経営判断に反映するよう努めております。しかしながら、そうした経済情勢や需給状況の把握の予測は極めて困難であり、またその経営判断への反映も適時・適切に行える保証はありません。従って、需給バランスが崩れ、顧客の需要又は販売価格が継続的に低迷する場合、当社グループの売上の減少や、工場稼働率の低下に伴う売上総利益率の悪化により当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
フラッシュメモリ市場においては、クラウドサービス、5G、IoTの拡大やAIを搭載したスマートフォンやPC、データセンターを含むAI関連の機器やサービスの普及など、デジタル社会の進展によりメモリ需要が中長期的に拡大することが調査会社等により予測されていますが、かかる予測は直近の低迷期を事前に予測しておらず今後も正確ではない可能性があります。また、フラッシュメモリ市場においては、当社グループの価格決定力は限られていることから、中長期的には、記憶容量ベースの販売価格は過去と同様のペースで下落することが予想されます。当社グループはコスト削減等により、収益性の向上に努めておりますが、今後経済情勢又はフラッシュメモリの需給状況により、当社グループの想定を上回る販売価格の下落又はフラッシュメモリ需要の減少が発生した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
②需要変動
当社グループの製品に対する需要は、経済情勢、個人消費、技術革新、規制環境のほか、当社グループの製品が使用される最終製品の消費者市場や顧客の動向などの要因により左右され、とりわけ現時点における当社グループの主要な顧客であり、今後も注力するデータセンター向けSSDや、引き続き当社グループの売上の相当程度を占めるスマートフォン市場の動向の影響を強く受ける傾向にあります。さらに、在庫管理を含むサプライチェーンが複雑化する傾向にあり、またデータセンター向けSSDは極めて限られた数の大口顧客が市場シェアの大半を占めていることから、市場の動向や顧客の需要の予測には困難が伴います。実際に、新型コロナウイルス感染症の拡大後の大口顧客による在庫調整や競合他社の生産量の変動の影響により需給バランスが悪化したことを受け、当社グループは2022年10月から2024年3月にかけて生産調整を実施し、今後も市場の需給バランスが悪化した場合には同様の対応をする可能性があります。当社グループは、当該リスクへの対応として、上記「①フラッシュメモリ市場の循環的・短期的変動」記載のとおり、経済情勢及び最新の需給状況の把握とその経営への反映に努めておりますが、かかる需要を事前に正確に予測することは困難であり、当社グループが、かかる需要の変化を予測できず、又はかかる変化に適時・適切に対応できない場合には当社グループの製品が顧客あるいは最終製品市場の消費者の要求水準に見合う製品を供給できず、顧客からの受注を失う、想定した販売規模や収益性を下回る、あるいは供給過剰による販売価格の下落等が生じるなど、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、データセンター等のストレージ、スマートフォン、サーバー等、当社グループの製品の顧客における新製品の売れ行きや大容量化の進展遅れ等様々な要因により、需要が急減し又は当社グループの想定する時期若しくは規模での需要拡大が生じない可能性があります。また、それにより価格の下落、生産量の過剰が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③AI関連市場の成長
近年、AI技術の進展にともない、AIを搭載したスマートフォンやPC、データセンターを含むAI関連の機器やサービスが急速に普及しつつあります。これらのAI関連の機器やサービスには大容量のメモリ系半導体を必要とすることから、AI関連の需要は今後フラッシュメモリの需要を中長期的に牽引することになると期待されていますが、AI関連市場が予想されたとおりに成長する保証はないうえ、DRAMを含む他のメモリ半導体やHDDが存在する状況においてAI関連市場の成長がフラッシュメモリの需要につながるとは限りません。当社グループは、このような新しい需要の獲得に対応するため、市場の調査、分析やお客様との対話を積極的に行い、AI関連のニーズの把握に努め、研究開発を推進しております。しかしながら、AI関連のニーズに適合するための先端的なフラッシュメモリ技術の研究開発や、競争力のある価格での量産化の実現については、これらを他社に先駆けて実行できない場合や、他のメモリ半導体が需要を獲得し、当社グループがAI関連需要を取り込むことができなかった場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④競合他社との競争、買収や合弁会社設立等による業界再編
当社グループは海外を中心としたグローバルな大企業である競合他社との厳しい競争下にあり、また、フラッシュメモリは主要な競合他社が限定されていることから、主要な競合他社の技術や設備への投資、販売量、戦略等による影響を強く受ける傾向があります。競合他社の中には、フラッシュメモリに加えてDRAMやHDDを提供するなど、当社グループにない技術を保有し、当社グループよりも大きな資金力を有している企業もあり、当社グループよりも競争力において優位に立つ可能性があります。また、中国においては、政府の支援による半導体の国産化に向けた動きの加速も見受けられる一方、米中貿易摩擦の影響により今後中国における海外企業の参入や事業活動に制約が生じる可能性もあります。また、中国のほか、米国、EU及び韓国等においても、政府が半導体事業に対して多額の補助金を提供しており、かかる補助金の交付を受けた製造業者が生産効率を度外視した性能やキャパシティの向上を図る可能性もあり、グローバルな競争はさらに加速しています。今後、当社グループが、市場シェアの維持、拡大を図るためには、主要製品の市場の動向や顧客のニーズを適時・適切に把握し、競合他社に対して、特に販売価格、性能、生産効率の優位性を維持することが不可欠です。当社グループは、当該リスクへの対応として、競争力のある製品を市場に供給するため、競合他社の動向を常に確認し、また、研究開発、生産効率の改善、高集積化による利益率の向上を図る取り組みを続けておりますが、それらの実現が他社に遅れ、販売価格の前提となる生産効率、性能、生産量が競合他社に劣る場合、利益率の圧迫や、顧客からの製品の受注を失い、又は当社グループのシェアを維持することができないことにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、メモリ・半導体市場は、市況の変化も大きく、当社グループを含めグローバルに事業を展開する事業者が多数います。このような事業環境下で、SK hynix Inc.は、Intel Corporationのフラッシュメモリ事業を買収し、また、Western Digitalグループのフラッシュメモリ事業は、Sandiskグループとして分離するなど、メモリ・半導体市場においては、今後も事業の買収、事業提携等が行われる可能性があります。これらの買収等に当社グループが含まれる場合も含まれない場合も、当社グループの競争環境が大きく変化する結果、当社グループの競争力が悪影響を受ける可能性があります。
さらに、キオクシア株式会社及び製造合弁会社3社は、わが国政府から、四日市工場におけるフラッシュメモリの生産に関し、最大で約929億円(未交付分は2025年3月31日時点で約68億円)の補助金が交付される予定となっております。また、キオクシア株式会社、キオクシア岩手株式会社及び製造合弁会社3社は、わが国政府から、四日市工場及び北上工場におけるフラッシュメモリの生産に関し、最大で1,500億円(未交付分は2025年3月31日時点で約1,198億円)の補助金が交付される予定となっております。これら補助金を含め、かつ、Sandiskグループの取得分を除くと、当社グループは、2024年3月期に186億円、2025年3月期に437億円の資産の取得に対する補助金の交付を受けておりますが、当社グループが今後も同様の条件のもとで補助金の交付を受けることができる保証、また、補助金の交付によって当社グループが外国政府より不利な取扱いを受けないという保証はなく、今後の条件によっては当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、また、当社グループの資金調達を含む事業活動に制約が生じる可能性があります。
⑤マクロ経済の変動
当社グループはグローバルに事業を展開しており、当社グループの経営成績も、世界、主要国の経済動向の影響を受けます。当社グループは、マクロ経済環境の影響に対応するための情報収集に努め、変化に対する必要な対策を講じる体制を整備しており、例えば、サプライチェーンの強化等の対策を実施しておりますが、米中貿易摩擦とこれに伴う中国企業への規制の強化、米国における経済政策の変更や関税政策の変更、中国その他の新興国の成長の減速等による国内外における経済活動や消費の停滞とこれに伴う市場環境の悪化、ウクライナ情勢や中東情勢、台湾をめぐる潜在的な対立を始めとする地政学リスクの上昇、原材料及びエネルギー価格等の高騰、金融市場の急激な変動等様々な要因により、製品需要、販売価格、生産活動に影響が生じた場合には、当社グループの売上の減少や、工場稼働率の低下に伴う売上総利益率の悪化に繋がる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥規制環境の変動
当社グループは、全世界において事業を展開しているため、各国で規制を受けるところ、半導体については各国において経済安全保障上の重要性が認識され、規制が大幅にかつ急激に変更される可能性があります。当社は、かかるリスクへの対応として、報道や各国当局の公表資料、法律事務所等のアドバイザーからの情報、JETRO、JEITA、CISTEC、米SIA等の業界団体活動を通じて得る情報等により、主要各国の規制動向の情報を早期に入手することに努め、必要に応じて社内周知を行うことにより、法規制遵守の徹底、事業影響への最小化を図っています。しかしながら、これらの対応策が有効に機能する保証はなく、国内外の各地域の政治、社会情勢や政策の変化、投資規制、収益の本国への送金規制、輸出入規制、外国為替規制、税金、贈収賄規制、競争法関連規制等を含む各種規制の動向が各地の需要、当社グループの事業体制に悪影響を与える可能性があり、これにより当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。特に米中貿易摩擦に伴う関税、税金その他の輸出入関連規制や運用見直しにより、中国に所在する当社グループの主要顧客への販売が制限される又はかかる規制により当該顧客の生産量が減少する場合には、かかる主要顧客からの当社グループの売上収益が大幅に減少する可能性があり、また、当社グループが規制の対象となり米国に所在する当社グループの主要顧客との取引が制約される可能性や、米国に所在する当社グループの主要顧客が中国市場へのアクセスを失い生産量が減少し、当該顧客に対する当社グループの売上収益が減少する可能性、当社グループの原材料や生産設備の調達先が規制対象となり、必要な原材料等の調達等に影響を及ぼす可能性があるなど当社グループの事業展開及び経営成績に重大な影響を及ぼすおそれがあります。また、米中貿易摩擦がさらに激化した場合や中国に対する規制の強化等がなされた場合には、米中各政府により、相手国企業に対する更なる規制強化、経済制裁、法令の制定又は改正等がなされる可能性もあり、その内容と当社及び競合他社の対応状況等によっては、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2)経営方針・経営判断に係るリスク
①経営戦略・長期財務モデルに関するリスク
当社グループは、当社グループの掲げるミッション及びビジョンを実現するため、当社グループの経営環境を踏まえた経営方針・経営戦略を実施していくとともに、将来に亘って「メモリ技術」で新しい時代を切り拓き、世界を変えていくことを目指すべく、2024年11月22日に長期財務モデルを策定しております。しかしながら、当該モデルで設定された数値は、将来の市場動向((i)フラッシュメモリ市場が、調査会社等によって予測されているとおり(上記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境及び経営方針」参照)に成長し、当社グループの出荷量(記憶容量ベース)につき、2021年当時の当社グループの市場シェアの水準まで回復した後は、当該市場成長に見合う成長率が維持されること、(ii)2025年3月期以降のフラッシュメモリの平均売買価格の推移が中長期的に見て2020年から2022年において見られた市場価格の傾向と概ね同様となること、(iii)ギガバイト当たりの生産効率が当社グループの過去の実績と同様に進捗すること、及び(iv)ドル円為替は直近4年間における平均値の水準が継続すること並びに新型コロナウイルスの世界的蔓延や工場の稼働停止のような予見困難な異常事象が発生しないことを含みます。)に関する一定の前提に基づき設定されたものです。当社は長期財務モデルの構築に努めてまいりますが、これらの前提が実際の経営環境と異なることとなった場合や、本「3 事業等のリスク」記載の他のリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績は当該モデルと同様には推移しない可能性があるとともに、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
②フラッシュメモリ市場の予測と設備投資
当社グループは、メモリ市場の周期的市況における平均値として、売上収益の20%以内を目安として、需要動向、生産プロセス技術の開発状況及びその投資効率などを総合的に勘案しつつ、四日市工場及び北上工場における生産設備等への投資並びに研究開発等に係る設備投資を行う予定です。しかしながら、生産開始時点で、需要予測に対して市場が大きく変動した場合、生産設備過剰若しくは不足により、利益率の悪化、過剰在庫の発生、販売量又は販売価格の下落、固定資産の減損、あるいは販売機会の喪失やシェアの低下に繋がる可能性があります。当社は、設備投資の決定の際に、最新の需要予測や経営環境を確認し、リスクを評価しておりますが、フラッシュメモリ市場における需要の正確な予測は困難であり、また、製造設備、インフラの発注納期が長いため、これらの評価や予測が正確であるとの保証はなく、当社の予測が実際の経営環境と異なる場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループはかかる多額の設備投資に加え、研究開発投資も継続的に行っており、固定費の割合が高い状況にあります。当社は、市場の変動に応じて設備投資計画を変更することは可能ですが、固定費の削減には限界があります。そのため、比較的軽微な売上収益の低下であっても営業利益やキャッシュ・フローに与える影響は相対的に大きくなり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③投資の計画と効果の乖離
当社グループは、設備投資の決定の際に、納期、必要な人材や設備・資材の確保状況を継続して確認しております。また、技術開発については、競合他社の状況を注意深く把握し、当社製品の競争優位性の検証を継続しております。しかしながら、当社グループが行う四日市工場、北上工場の新棟立ち上げ等の設備投資、次世代フラッシュメモリ等技術開発投資等については、設備納期、量産立ち上げ、歩留まりの改善、開発の進捗、必要な人材や設備・資材の確保等にかかる遅延、また当初予定された歩留まり、製造工期、製品特性が実現されないこと等により、投資開始時点の計画と生産開始時期に乖離が生じる可能性(なお、2022年後半から2023年にかけてのメモリ市場における急激な需給の悪化を受け、予定していた設備投資を一部延期いたしました。)や、当初想定した生産能力、歩留まり、生産効率が得られず、又はこれらが得られたとしてもこれに見合う需要が得られない等により、想定された投資効果が生じない可能性があります。資金回収時期の遅延、新製品の開発・販売において競合他社に劣後することによる競争優位性の低下やシェアの低下により、当社グループが想定した利益を確保できず、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④戦略的提携、合弁、買収、出資等の成否
メモリを始めとする半導体業界では、提携、合弁、買収、出資等による再編が行われており、当社グループにおいても技術の獲得や、事業領域の拡大、競争力の強化や収益力向上を行うため、提携、合弁、買収、出資等を実施することがあり、例えば、Sandiskグループとの間で製造合弁契約を締結し、合弁事業を行っています。2020年7月には、台湾・LITE-ONテクノロジー社の子会社であるSolid State Storage Technology Corporationとその関係会社の全株式を取得しました。また、2022年6月には、株式会社東芝の関係会社である東芝デジタルソリューションズ㈱より中部東芝エンジニアリング株式会社の全株式を取得しました。提携、合弁、買収、出資等においては、対象先の経営状況、事業内容、財務内容、法令遵守や契約関係等について詳細な事前調査を行い、リスクを吟味した上で決定しておりますが、提携、合弁、買収、出資等を行った対象事業の経営成績が悪化した場合には、当社の連結利益の悪化、保有株式やのれんの減損が起きる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また提携、合弁、買収、出資等が当社グループ、若しくはその一部事業についてなされたものの、想定どおりに統合が進まず、また、当社グループが期待するシナジー、スケールメリット等の効果を得られなかった場合には、経営方針の大幅な変更、事業規模の縮小、スケールメリットの喪失等による収益悪化が起きる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、提携、合弁、買収、出資等の形態や内容等によっては、相手方である第三者の行為を当社グループが有効にコントロールすることができず、また、特定の第三者との提携、合弁等を実施した結果、他の者との提携、協業又は取引等が制約される等、当社グループの経営上の選択肢又は事業運営が制約される可能性があります。
⑤Sandiskグループとの合弁事業
当社グループは、Sandiskグループとの間で製造合弁契約を締結し、製造合弁会社3社を設立しています。かかる合弁事業を通じることで、当社が単独で投資を行う場合に比して大規模な投資が可能となり、設備投資額や生産効率面でのスケールメリットを享受することが可能となります。合弁契約の概要は、製造合弁会社3社が当社グループ及びSandiskグループからの資金借り入れ又は製造合弁会社3社によるリース契約により生産設備を調達し、当社グループの四日市工場及び北上工場に設置、当社グループは製造合弁会社3社から無償貸与された生産設備にて生産を行い製造合弁会社3社に加工済みのウエハーを販売し、更に製造合弁会社3社から当社グループ及びSandiskグループに50%ずつの割合で販売するというものです。当社グループは、合弁契約に従って、Sandiskグループによる契約違反など合弁契約上の解約事由が発生した場合、製造合弁会社3社の保有する生産設備の残存簿価を反映したSandiskグループの持分を買い取る可能性があり、この場合多額の資金が必要となることにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当該製造合弁会社3社が保有する生産設備のリース契約に関して、現在キオクシア株式会社とSandisk Corporationが個別に50%の債務保証をしていますが、Sandisk Corporationの経営成績又は財政状況の悪化により、同社が自身の債務保証を履行できない場合、キオクシア株式会社がSandisk Corporation分の保証債務を承継し又は当該保証債務不履行により合弁契約が解約され、製造合弁会社3社の保有する生産設備の残存簿価を反映したSandiskグループの持分を買い取る可能性があります。これにより当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。更に、当社は、Sandiskグループとの間で、生産、投資、研究開発、オペレーション、ファイナンス等について多くのコミュニケーションを行っておりますが、合弁契約上、合弁会社の運営に関しては、Sandiskグループと対等な権利義務を有しており、かつ、Sandiskグループは当社グループと競合関係にあるため、両社の経営及び戦略的方向性に乖離が生じた場合には、意思決定に想定以上の時間を要するなど、合弁会社の運営に支障が生じる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、キオクシア株式会社がSandiskグループの持分を買い取った場合、当該製造合弁会社3社が当社の連結子会社として扱われる可能性があり、その場合、製造合弁会社3社の経営成績が当社の連結財務諸表に反映されることにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、Sandiskグループとの間の製造合弁契約の有効期間は、四日市工場について2029年まで、北上工場について2034年までとされており、当該有効期間の経過後も合弁事業を継続するかどうか、継続する場合、どのような契約条件となるかは現時点では未定です。継続しない場合には、製造合弁会社は解散、清算されることとなり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、上記「第1 企業の概況 2.沿革」のとおりSandiskグループは2025年2月にWestern Digitalグループから分社して米Nasdaqに上場しました。当社は現時点で、SandiskグループのWestern Digitalグループからの分社が当社又は製造合弁会社に重大な影響を及ぼすとは見込んでいませんが、当社が合弁事業を通じて享受してきたメリットを、今後も享受し続けられるという保証はありません。その他、製造合弁契約上一定の制約はあるものの、Sandiskグループが第三者との間で、当社に競争上の悪影響を与えるような戦略的提携関係を構築しないという保証はありません。
⑥技術革新
フラッシュメモリは高度な技術を要し、複雑な生産工程を経て生産されておりますが、世代交代や大容量化、特性改善等の技術革新が非常に早い製品です。また将来的にはフラッシュメモリに代わる新技術が生まれる可能性もあります。このため、最新の技術を利用した製品を迅速に提供するためには、長期的かつ継続的な多額の研究開発投資が必要となります。これに対応するため、当社は、最新の技術動向を確認し研究開発・投資計画へ反映することとしており、また、研究開発の実行にあたり、自社戦略との整合性や、市場要求を満たしているかの確認を行っております。具体的には、BiCS FLASH™の高積層化、CBA技術の開発、4ビット/セル(QLC)への移行、その他の新規技術開発に取り組んでおりますが、かかる取り組みが奏功する保証はなく、世代交代や、技術革新、生産効率の向上等において競合他社や新規参入者、フラッシュメモリの代替品に遅れを取り、製品特性や、ギガバイト当たりの生産効率における競争力が低下した場合や、新製品について顧客が要求する技術性能を実現できない場合、また、開発には成功したものの顧客の最終製品の需要が伸びなかった場合等には、当社グループの技術上の優位性ひいては競争力の低下、顧客の喪失やシェアの低下、又は投資に見合う収益を得られないことにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)当社グループのオペレーションに伴うリスク
①特定の販売先への依存
当社グループはフラッシュメモリ専業メーカーであり、その売上高の多くは大手スマートフォンメーカーやSSDを必要とするハイパースケーラーを含む大規模なIT企業のような限定された顧客や業界に依存しています。当社グループは、市場の成長に合わせた販売の推進、販売ポートフォリオの最適化に努めておりますが、これらの主要顧客や業界の販売動向、経営環境、米中貿易摩擦の激化や台湾を巡る地政学リスクの顕在化、米国における関税政策や当社グループへの需要量、複数社購買における主要購買先の見直し等の主要顧客の取引に係る方針や取引条件等が変化したこと、又は特定の顧客のニーズに基づき製品開発を進めたものの当該顧客の最終製品の需要が低迷すること等により、これらの主要顧客が当社グループの製品の採用を中止し、又はその発注数量が減少し若しくはその他の取引条件が当社グループに不利に変更された場合には、売上規模の減少、過剰在庫、顧客への転売に伴う価格の見直し等、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、2025年3月期において、Appleグループ、Sandiskグループ及びDellグループへの販売高が、当社の連結売上収益の10%以上を占めており、これらの販売先との関係性は米中貿易摩擦や米国における関税政策をはじめとする国際情勢に起因するものを含め、特に当社グループの事業、経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
②資材等調達・エネルギー
当社グループの事業活動を継続し、競争力を維持・強化する上では、部品、材料、製造設備等が適時、適切に納入されるなどサプライチェーンの最適化が必要ですが、部品、材料、製造設備等の一部については、その特殊性から調達先が限定されているものや調達先の切替えが困難なものがあります。例えば、2020年から2023年にかけて世界的な半導体の不足が生じ、当社グループを含む製造業者の製造活動に大きな支障を生じました。このように、調達先による部品、材料等の供給不足、供給遅延、環境規制の強化、地政学リスクの顕在化、地域紛争、又は、事故、自然災害や新型コロナウイルス感染症をはじめとする感染症の流行による供給の中断等が生じた場合には、必要な部品、材料等が不足することにより当社グループの製品の製造に支障又は遅延が生じる可能性又は他の調達先から購入するための費用が増加する可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。かかるリスクを可能な限り低減するため、当社グループではシリコンウエハーといった当社グループの製品製造に不可欠な一部資材等について、調達先との間で長期購買契約を締結していますが、契約価格よりも市場価格が下回って推移するなどした場合には、必ずしも長期購買契約が当社グループにとって優位な作用をもたらさない、あるいは不利に作用する可能性があります。
また、当社グループの生産活動をはじめとする事業活動には、電力が安定して供給されることが必要ですが、停電の発生や電力の供給不足により当社グループの工場をはじめとする施設の稼働が停止又は制限された場合や、国内の原子力発電所の稼働停止に伴う電力供給不足と為替変動を受けた燃料費上昇により、電気料金の更なる値上げ等があった場合、又は再生可能エネルギーの調達価格が第6次エネルギー基本計画どおりに低減しない場合には、当社グループの競争力や生産・販売活動に悪影響を与える可能性があります。さらに、当社は技術支援などグループ外からサービスの提供を受け事業運営を行っておりますが、就労人口の減少による人件費の高騰、円安の進行、地政学リスクの顕在化等によりこれらのサービスを合理的な条件で受けられなくなる可能性があります。
また、2022年3月期においては、3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」の特定の生産工程における不純物を含む部材を起因とする四日市工場と北上工場での操業影響による332億円の損失も発生しましたが、調達した部品、材料等に欠陥が存在し、仕様が満たされていない場合は、当該部品、材料等を使用した当社グループの製品の信頼性及び評価にも悪影響を及ぼす可能性があり、損害賠償等の請求を受ける可能性もあります。これにより当社グループの製品やブランドに対する評価や社会的信用が低下すること又は賠償金の支払い等が生じること等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、近時は、原材料費及び人件費の上昇に加え、国内の大手企業による工場建設の同時進行により、建設資材の獲得競争が激化しており、また、必要な専門知識を持つ建設請負業者の確保も困難を極めており、工期の遅延や建設コストの増大、ひいては当社グループの製品の品質低下につながるおそれがあります。
当社グループは、当該リスクへの対応として、地政学リスクを考慮したサプライチェーンの構築や調達先の複線化やサプライチェーン情報の把握、在庫保有によるサプライヤインシデントリスクの低減等により、安定調達とコスト削減を推進しております。しかしながら、これらの施策が常に有効であるとの保証はなく、地政学リスクの顕在化による物・人材・情報の国際的な移動に支障を生じサプライチェーンが毀損する場合や、原材料及びエネルギー価格等の高騰や建築材料・建築請負業者のリソース等の不足等により企業活動に支障が生じ、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③外部への生産委託
当社グループでは製品製造に関する工程の一部、特に当社グループのメモリ製品及びSSD製品の組立工程については、その殆どを外部協力会社へ生産委託しております。外部協力会社へは当社グループの仕様に基づく生産を要請するとともに、品質管理について様々な工夫を講じております。
しかしながら、第三者である外部委託先の生産工程や品質管理を当社グループが完全に把握し、コントロールすることは不可能であり、外部協力会社での当社グループからの生産委託工程に不測の事態が生じた場合や何らかの事態により生産に遅滞が生じた場合には当社グループの製品の顧客への期限内での納品に支障をきたす可能性があります。また、既存の外部委託先が、何らかの事態により当社グループからの生産委託を履行できなくなった場合には、適時に他の適切な外部委託先を確保できる保証もありません。例えば、2022年には、中国のゼロコロナ政策による上海の都市封鎖(ロックダウン)を受けて、当社グループのメモリ製品の組立工程を委託している上海の後工程の工場及び物流倉庫が一時的に閉鎖される事態が生じました。また、生産委託工程に起因する製品の欠陥等が発生した場合には、当社グループと当社グループの顧客との間の関係性や当社グループ又はその製品に対するレピュテーションが悪化し、又は、顧客から損害賠償を請求されるなど、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは外部生産委託先への依存度や、地政学リスクを踏まえた委託先の選定を行っておりますが、これらの対応が奏功するとの保証はなく、特定の外部協力会社への依存が進むと、委託先の切替えが困難になり、価格上昇等により当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④経営者への依存
当社は、取締役、監査役の統制のもとに執行役員主体による経営活動を行っておりますが、代表取締役である早坂伸夫氏及び取締役であるステイシー・スミス氏など特定の経営者への権限や経営判断の集中が起きる可能性が無いわけではありません。その場合には当該経営者の判断が事業に大きな影響を及ぼし、コーポレート・ガバナンスが適切に機能しないおそれがあること、また当該経営者の不在や退任等により、当社グループの事業活動が停滞し、又は後継者への円滑な承継が進まないことにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が今後も優秀な経営者を確保するため、2025年6月27日開催の定時株主総会において、役員報酬の増額及び株式報酬の導入に係る議案を上程します(後記4 コーポレート・ガバナンスの状況等(4)役員の報酬等をご参照ください。)が、当社の経営者への報酬及び発行済み株式総数が増加し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤人的資源の確保
当社グループの事業の成否は、開発、生産、販売、経営管理等のすべてのプロセス、分野における優秀な人材の確保に大きく依存しています。特に事業のグローバル展開及び先端的な開発・研究の推進には、優秀な人材の確保が必要不可欠です。人材の確保に向けて、当社グループの認知度・ブランド価値を高める活動を進めるとともに、ダイバーシティ経営を推進することで、優秀な人材の獲得に努めております。しかし、各プロセス、分野における有能な人材は限られており、特に技術職の人材に対する需要が世界的に高まっている中、円安が進行する傾向がみられるなど、人材確保における競争が一層激しくなっています。このため、当社グループが、必要な人材を必要なタイミングで獲得できず、在籍している従業員の流出を防止できない場合、新たな人材の獲得や維持のために給与やリテンションプランに従来以上のコストが必要となる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥大規模災害等による生産の遅延、障害等
当社グループのフラッシュメモリの生産拠点は日本国内に集中しています。当社グループは、リスク・コンプライアンス委員会の中で、危機管理体制の整備や事業継続計画(BCP)の策定等を確認し、自然災害等の有事の際に事業への影響を小さくするよう努めていますが、当社グループの生産拠点やその他当社グループのサプライチェーンにおいて、地震、津波、台風、洪水、火災、噴火その他の大規模災害、ストライキ、テロ、新型コロナウイルス感染症を含む重大な感染症の流行、停電、事故、システムトラブル、インフラの不全等が発生した場合、自社工場の稼働低下や停止、サプライチェーンからの供給の停滞、また需要の低下等により生産、販売に多大な悪影響を受ける可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、2022年に、中国のゼロコロナ政策による上海の都市封鎖(ロックダウン)を受けて、当社グループのメモリ製品の組立工程を委託している上海の後工程の工場及び物流倉庫が一時的に閉鎖される事態が生じました。当社グループは、かかる新型コロナウイルス感染症の広がりによる影響を受けて、在宅勤務の積極的な採用や、サプライチェーンにおいても複数社購買を推進する等、対策を行っておりますが、今後新たな感染症が発生し、社内、サプライチェーンや販売先拠点、若しくはその拠点のある国、地域での感染症の発症、それに伴う操業、移動に制限が発生した場合には、自社工場の稼働低下や停止、サプライチェーンからの供給の停滞、また受注の減少等により生産、販売に多大な悪影響を受ける可能性があります。また、コロナ禍において在宅勤務やオンライン学習、ビデオストリーミングサービス等が普及し、サーバー需要やゲーム需要が増加した一方、新型コロナウイルス感染症が拡大する時期にスマートフォン等の需要が低迷したように、新たな感染症がメモリ製品の需要に重大な影響を与える可能性があります。これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの生産拠点である四日市工場については、地震や洪水の危険性が高い地域に位置しており、また、北上工場については、東日本大震災で大きな被害を受けた地域に位置しています。当社グループの生産、販売拠点において地震、洪水、台風等の大規模災害や停電等が発生した場合には、生産設備の破損や操業の停止、原材料部品の調達停止、物流販売機能の麻痺等により、生産販売活動が阻害され、資産価値や生産販売能力に重大な悪影響を与える可能性があり、これにより当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
災害のみならず、当社グループ製造拠点での、製造装置の故障、部材の不具合、生産システムの不具合等により生産販売活動が阻害され、生産販売能力に重大な悪影響を与える可能性があります。2019年6月には、キオクシア株式会社四日市工場での停電による製造停止により、2020年3月期においては345億円の損失(保険収入11億円を考慮すると停電影響としては△334億円)を計上しました。こうした事象が生じた場合には、これにより当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ITシステムの障害等
当社グループは、生産、販売、管理等多岐の業務にITシステムを使用しています。これらのシステムの不具合や外部からのコンピュータウイルスによる攻撃、不正アクセス等により、当社グループのITシステムに重大な障害が発生する可能性があります。当社は、当該リスクへの対応として、ネットワーク及びセキュリティ障害の監視を行い、外部からの攻撃や不正アクセスを検知し、障害の未然防止に努め、大規模なシステム変更やメンテナンスについては、リスク確認会等を開催し、障害のリスクを低減し、また、障害を想定したBCP訓練を定期的に実施しています。しかしながら、かかる対応が常に有効に機能するとの保証はなく、ITシステムに重大な障害が発生した場合には、障害対策に多額の費用と労力を要するほか、復旧期間における工場の生産、受発注、出荷の停止等により、当社グループの事業活動に重大な悪影響を与える可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧個人情報やその他の機密情報の漏えい
当社グループは、当社グループ及び取引先・調達先等の技術、研究開発、製造、販売及び営業活動等により入手した個人情報やその他機密情報を様々な形態で保持及び管理しています。当社グループにおいては、当該リスクへの対応として、情報セキュリティマネジメントに関する社内規程を定め、情報セキュリティ委員会を運営しており、システム対策と従業員への教育や訓練などを通じ、継続的な改善活動に取り組んでいます。また、個人情報保護法への対応として、拠点・関係会社を含めた情報セキュリティ体制を整備しており、迅速に対応できる連絡・通報体制を構築しています。さらに、保護対象となる情報について、社内IDによるアクセス管理やアクセス権の棚卸を定期的に実施することにより、管理を厳格化しております。しかしながら、これらの対策が常に有効である保証はなく、予期せぬ事態により当社グループが保持又は管理する情報が漏えいし、第三者がこれを不正に取得又は使用するような事態が生じた場合、営業秘密の流出による競争力の低下や顧客の信用や社会的信用の低下を招くほか、個人情報の流出やシステム改修等の対応に係るコストの発生や当社グループに対して損害賠償を求める訴訟が提起されるなどにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)財務リスク
①多額の借入金及び社債型優先株式
当社グループは、金融機関を貸付人とする融資契約(シンジケートローン)を締結し、多額の借入を行っております。短期借入金と長期借入金の合計は2024年3月期において1,111,312百万円、2025年3月期において777,706百万円となっており、かかる有利子負債に係る金利が上昇した場合には、金利負担が増加する可能性があります。また、当社グループは、2020年3月期において甲種優先株式及び乙種優先株式(以下これらの優先株式を総称して「社債型優先株式」という。)の発行による資金調達を実施しており、それら社債型優先株式は期限満了をもって償還を行う設計としているため、当社が連結決算において採用するIFRSでは負債として扱われます。社債型優先株式の残高は2024年3月期において322,741百万円、2025年3月期において321,261百万円となっております。連結総資産に対する借入金残高及び社債型優先株式残高の合計額は2024年3月期において50.1%、2025年3月期において37.6%を占めております。当社グループは、かかる融資契約及び社債型優先株式の引受契約/投資契約に基づき財務制限条項等一定の条件の遵守が課されており、融資契約については、当社グループ資産の担保提供を課されております。当社グループが融資契約や引受契約/投資契約における財務制限条項等の条件への抵触等により期限前弁済事由や償還(金銭を対価とする取得)事由に該当する状況となった場合には、貸付人又は引受人からの請求により直ちに返済ないし償還のための資金確保が必要となりますが、適時に、また当社にとって望ましい条件で、借換え等による資金確保ができる保証はなく、また、融資契約に基づき返済ができない場合には、担保権を実行される可能性があります。なお、財務制限条項等の内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 14.借入金及びその他の金融負債」をご参照ください。当社グループは競争力の強化や収益力向上を通じた財務体質の強化に努めますが、これらの事由により当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、社債型優先株式の株主は、剰余金の配当及び残余財産の分配に際し、普通株主に先立って、あらかじめ定められた方法で算出される一定額の優先配当金又は残余財産分配金の支払いを受けることができるとされているため、当社の普通株主は、優先株主に対する上記の優先配当金又は残余財産分配金の支払いがなされない場合には、剰余金の配当又は残余財産の分配を受けることができません。当該優先配当金については、一定期間の経過により、配当年率が上昇するとされています。また、当社は、その選択により、普通株主への配当又は上記の優先配当に先立ち、又は、これらを行った後に、社債型優先株式の株主に対して特別配当を行うことができるとされており、これにより当社グループのキャッシュ・フローや配当能力に影響が生じ得る可能性があります。なお、社債型優先株式に係る剰余金の配当及び残余財産の分配に係る規定の詳細については、「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況」をご参照ください。
また、キオクシア株式会社四日市工場の土地については、セール・アンド・リースバック取引を行っており、年間2,667百万円の賃料を負担しています。なお、セール・アンド・リースバック取引の詳細については、後記「5 重要な契約等」をご参照ください。
②のれんの減損
当連結会計年度末におけるのれんは395,256百万円であり、連結資産合計の13.5%を占めています。当社グループにおける重要なのれんは、2018年6月に旧東芝メモリ株式会社の全株式を取得した際に認識したのれんであります。当社が連結決算において採用するIFRSでは、のれんについては償却を行わず、事業年度毎又は減損の兆候が確認される場合において減損テストを実施します。そして、当社グループの事業の収益やキャッシュ・フロー創出力が低下したと認められる場合に減損損失を計上することが必要となり、これにより当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社が連結決算において採用するIFRSでは、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準と異なり、前述のとおりのれんの償却を行いません。そのため、のれんの減損損失の計上が必要となる場合、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づく減損損失の計上額に比して、損失計上額が多額となる可能性があります。
③繰延税金資産
当社グループは、現行の会計基準に基づき、税務上の繰越欠損金等及び将来減算一時差異に対して将来の課税所得を合理的に見積り回収可能性の検討をした上で繰延税金資産(当連結会計年度末における純額は319,160百万円)を計上しております。当社及び当社グループ各社の経営成績や経営環境の著しい変化により、繰延税金資産の全部又は一部に回収可能性がないと判断した場合や、税率変更を含む税制改正又は会計基準の改正等が行われた場合には、当該繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)金融市場リスク
①為替変動
当社グループの事業活動は、世界各地域において様々な通貨により行われているため、当社グループの事業、経営成績及び財政状態は、為替相場の変動による影響を受けます。特に、当社グループの売上収益は基本的に外貨建てとなり、他方で前工程の製造拠点は日本国内にあるため、営業費用の相当部分は円建てとなり得ることから、円高が進行した場合には当社グループの事業、経営成績及び財政状態への悪影響を及ぼします。
当社グループは、定期的にヘッジ取引を行うことで、為替相場の変動の影響を極小化する対応に努めていますが、為替ヘッジの期間は実需の規模を見通すことができる数ヵ月としているため、その効果は限定されます。また、急激な為替変動により、外貨建ての債権債務の計上時期と決済時期の為替レートの差異から生じる為替換算差損が発生する可能性があります。
また、当社グループの在外子会社の保有する外貨建ての資産、負債等を連結財務諸表の表示通貨である円に換算することによって発生する外貨換算調整額は、その他の包括利益として資本に含めて報告されます。このため、当社グループの親会社の所有者に帰属する持分は為替相場の変動により悪影響を受ける可能性があり、これにより当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②資金調達環境の変化
当社グループは、金融機関からの借入れや社債型優先株式の発行等による資金調達、資本市場での株式発行による資本性資金の調達を行っており、資金調達の可否及び条件は、金融・証券市場の環境、金利等の動向、資金需給の状況、貸し手又は出資者側の融資・投資方針の変更等の影響を強く受けるため、これらの環境の変化が、当社グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、金融機関からの借入れについては、財政状態の悪化による当社の信用力の低下、金融市場の混乱、金融機関に対する自己資本規制強化等に伴い、金融機関が貸出しを圧縮するなど当社グループに対する融資方針を変更した場合には、以後新たに同様の条件により借換え又は新規の借入れを行えるとの保証はなく、当社グループが適時に必要とする金額の借入れを行うことができず、又は資金調達コストが増加する場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
フラッシュメモリは、量産効果が大きく、新製品の開発競争も激しいため、価格、品質等の競争力を維持、強化するためには、多額の設備投資と研究開発投資が必要ですが、当社グループが前述の理由により適時に必要とする資金を調達できない場合には、必要な時期に必要な設備投資や研究開発を実施できない可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)法的リスク
①重要な訴訟事件等の発生に係るもの
当社グループは全世界において事業活動を展開しており、訴訟やその他の法的手続に関与し、当局による調査を受ける可能性があります。地域ごとに裁判制度の違いがあり、またこれらの手続は本来見通しがつきにくいものであり、当社グループの想定を超えた金額の支払いや販売差し止め等業務や取引の制限や停止が命じられる可能性も皆無ではありません。このため、訴訟やその他の法的手続、当局による調査の結果、当社グループに不利益な決定がなされた場合、その決定の内容によっては当社グループの事業、経営成績、財政状態、社会的評価・信用に影響を及ぼす可能性があります。また、様々な事情により、訴額の大きな訴訟等が提起された場合には、仮に損害賠償等の金銭の支払いが命じられる可能性が低いとしても、社会的な注目を集める結果、当社グループの社会的評価が低下する可能性があります。当社は、当該リスクへの対応として、外部との取引において当社グループと相手方の責任範囲を明確化する契約の締結に努めるとともに、個別事案については外部の専門性の高い弁護士のアドバイスを取得して対応する方針ですが、これらの施策が常に有効に機能するとの保証はなく、訴訟事件等の内容と結果によっては、当社グループの事業展開、経営成績、社会的評価、及び信用に影響を及ぼす可能性があります。
②知的財産権保護
当社グループは、当社グループの技術やノウハウを保護するため、関連する各部門が連携し、知的財産権の確保に努めています。しかしながら、地域によっては知的財産権に対する十分な保護が得られない可能性があり、これらの地域での第三者による当社の知的財産権を侵害する製品の販売等により当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、当社グループの製品の製造や研究開発の一部を第三者に委託し、また、当社グループの知的財産権を第三者に使用させておりますが、かかる第三者により当社グループの技術やノウハウを不適切に利用される可能性も皆無ではありません。
当社グループは、第三者からの使用許諾を受けて第三者の知的財産権を使用していることがありますが、今後、必要な使用許諾を第三者から受け入れられない可能性や、不利な条件での使用許諾しか受けられなくなる可能性があり、これらの事態が生じた場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、メモリ業界においては、主要な製造業者それぞれが多数の重要な特許を保有しており、それらを相互にクロスライセンスすることが一般的に行われています。他社が当社グループに比して有効かつ多数の特許を保有するに至った場合やクロスライセンスに関する経営方針を変更する場合には、当社グループの製品の製造や販売に制約が生じ、又はライセンス料の支払いが高額となる可能性があります。
また、当社グループが知的財産権に関する訴訟等を提起される、又は自らの知的財産権を保全するために訴訟等を提起する可能性があります。このような訴訟等には、時間、費用その他の経営資源が費やされ、また、訴訟等の結果によっては、当社グループが重要な技術を利用できなくなる可能性や損害賠償責任を負う可能性があり、これにより当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③品質問題
当社グループは、製品の特性に応じて最適な品質を確保できるよう、国際標準規格である品質マネジメントシステムISO9001及びIATF16949、環境マネジメントシステムISO14001を取得しております。重大な品質問題を防ぐため、設計・開発段階から製造工程における品質管理、製品出荷品質保証プロセスの実行、継続的な品質改善の推進、不具合発生時の是正及び予防処置等を行っております。しかしながら、今後当社グループや、当社グループの委託先、調達先に起因するものを含む品質問題が発生する可能性は皆無ではありません。また、重大な品質問題が発生し、顧客への納入の大幅な遅延や再作業が必要となった場合、多額の費用負担や損害賠償責任が生じる可能性があり、またSSD、USBメモリ、SDメモリカード等については一般ユーザーに対する製造物責任も生じる可能性があり、その場合の対応費用や損害賠償の額は甚大となり、また当社グループ又は当社グループの製品に対する社会的信頼が著しく低下する可能性があります。これにより当社グループの事業展開、経営成績、社会的評価、及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
④環境関係
当社グループは、大気汚染、水質汚濁、有害物質、廃棄物処理、製品リサイクル、地球温暖化防止、エネルギー等に関し、世界各国において様々な環境関連法令の適用を受けており、又は今後新たに適用を受ける可能性があります(PFAS規制など)。当社グループは、法令等のチェック体制を構築し、関係する法令等の動向を注視する等、法的規制の遵守に努めるとともに、事業活動における環境への影響をモニタリングし、リスクの低減に努めておりますが、かかる環境関連法令の下、当社グループは、過失の有無にかかわらず、製造等の拠点における土地の浄化責任を負うことがあるなど、過去分を含む事業活動に関し、環境に関する法的、社会的責任を負う可能性があります。また将来環境に関する規制や社会的な要求がより厳しくなり、有害物質の除去や温室効果ガス排出削減等の責任が更に追加される可能性があり、これにより当社グループの事業活動に制約が生じ、又はかかる規制に対応するためのコストが増加する可能性があるほか、かかる環境関連の規制又は社会的要請に適切に対応しないことにより当社グループに対する社会的評価・信用が低下するなど、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤コンプライアンス
当社グループは、事業を展開する各国の法令、規則の適用を受けます。かかる法令等のコンプライアンス体制の整備、業務の適正化の為に必要な内部統制システムの導入を図っておりますが、内部統制システムに内在する限界、法規制、法解釈の変更等により法規制等の遵守が困難になる可能性があります。当社グループは、当該リスクを軽減するため、リスク・コンプライアンス委員会を設置しております。また、コンプライアンス教育の実施により法令遵守の周知徹底を行うとともに、内部監査によるモニタリングを実施しておりますが、これらの取組みにもかかわらず、コンプライアンス違反が発生し、業務停止等の行政処分を受けた場合には、業務への障害、罰則や課徴金の適用、法令違反に係る損害賠償請求、当社グループに対する社会的評価・信用の低下等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7)株主等の関係に関するリスク
①ベインキャピタルグループとの関係
当社はグローバルなプライベート・エクイティファームであるベインキャピタルグループが投資助言を行うファンドから、BCPE Pangea Cayman, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1A, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1B, L.P.及びBCPE Pangea Cayman2, Ltd.を通じて出資を受けており、これらのファンドは当連結会計年度末時点では当社発行済普通株式の51.11%を間接的に保有する株主となっております。また、当社の取締役である杉本勇次、末包昌司、当社の監査役である中浜俊介の3名がベインキャピタルグループから派遣されております。
ベインキャピタルグループが投資助言を行うファンドは、当社の上場時において所有する当社株式の一部を売却しており、またBain Capital Private Equity, L.P.とのマネジメント契約は当社の上場時に終了いたしましたが、現時点においても相当数の当社株式を保有しているため、当社について他の一般株主と異なる利害関係を有しており、一般株主が期待する議決権の行使その他の行為を行わない可能性があります。
②東芝グループとの関係
a 株式会社東芝との資本関係
株式会社東芝は、当連結会計年度末時点で、当社の発行済普通株式の30.50%を保有しております。株式会社東芝は、当社の上場時において所有する当社株式の一部を売却しておりますが、現時点においても相当数の当社株式を保有していること、また知的財産のクロスライセンスなど当社の一般株主と異なる利害関係を有していることから、株式会社東芝が保有する普通株式に係る議決権については、一般株主の利害と異なる議決権の行使が行われる可能性があります。
b 東芝グループとの取引関係・契約関係
当社は、後記「5 重要な契約等」に記載のとおり、株式会社東芝との間で、メモリ事業に必要な特許権及び技術情報に係るクロスライセンス契約を締結しております。今後、当該クロスライセンス契約が終了した場合や契約の条件が当社に不利益に変更される場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
更に当社グループと東芝グループとの取引は、取引の合理性と取引条件の妥当性を確認した上で行っており、対等な立場で行われているものではありますが、当社と特定の関係を有する者との取引であるため、東芝グループとの取引の条件その他に何らかの影響が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③SK hynix Inc.との関係
当社グループの競合他社であるSK hynix Inc.は、当社の普通株式77,400,000株(当連結会計年度末時点の発行済普通株式数の14.35%に相当します。)を保有するBCPE Pangea Cayman2, Ltd.に対して、同エンティティのほぼ全ての議決権に係る株式に転換可能な社債を保有しております。他方、SK hynix Inc.は、当社との間で、当社の合意がない限り、2028年まで同社が当社の総議決権数の15%超を保有することはできない旨合意しております。SK hynix Inc.は当連結会計年度末までの間にかかる社債の株式への転換を行っていませんが、SK hynix Inc.は、すでに各国の独占禁止法並びに外国為替及び外国貿易法に基づく必要な手続を開始している可能性があり、その完了をもって、いつでも当該社債を同エンティティの株式に転換することが可能であり、そのような転換を早期に行うことも合理的に予測されます。SK hynix Inc.は、かかる転換により、当該エンティティを通じて当社の株主総会における議決権行使が可能となります(なお、SK hynix Inc.と当社又は当社の他の主要株主との間に当該合意の他に特段の契約はなく、当該エンティティが保有する当社普通株式に係る権利の行使以外に、同社が当社の経営に影響を及ぼすことはないものと認識しております。)が、SK hynix Inc.は当社グループと競合関係にあるため、その議決権行使は当社の一般株主の利害とは異なる可能性があります。
④関連当事者取引
当社グループは、当社のグループ会社間の取引のほか、株式会社東芝及びその子会社との間で製品の加工委託やITシステムの保守サービス等に係る取引があります。当社グループは、関連当事者取引の必要性、妥当性を確認した上で、公正な取引条件によって取引を行う体制を構築しており、このような関連当事者取引等についても対等な立場で行われておりますが、当社グループと特定の関係を有する者との取引であるため、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤当社株主による当社株式の処分に係るもの
べインキャピタルグループが投資助言を行うファンドが保有するエンティティ(BCPE Pangea Cayman, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1A, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1B, L.P.及びBCPE Pangea Cayman2, Ltd.)、株式会社東芝及びHOYA株式会社は、当連結会計年度末時点で、当社の総株主の議決権数のそれぞれ51.11%、30.50%及び3.00%に相当する当社普通株式をそれぞれ保有しております。当社及びこれらの株主は、当社株式の上場に際して、ジョイント・グローバル・コーディネーターに対し、2024年12月9日から2025年6月15日までの期間は原則として当社株式の処分等を行わない旨のロックアップレターを提出しておりましたが、現在は当該期間を経過しており、これらの株主が当社株式の処分等を行うことについては何らの制約はありません。これらの株主による当社普通株式の売却が行われ、又はかかる売却により当社普通株式の需給状況が悪化するとの観測が市場で広まった場合には、当社普通株式の市場での取引や市場価格に影響を及ぼす可能性があります。
また、今後ストック・オプションや譲渡制限付き株式を多数発行する場合には、これらの行使や売却により、株式価値に、希薄化等の影響を及ぼす可能性があります。
⑥大規模な公募又は売出しを伴う新規上場に係る特例の適用及び当社普通株式の流動性
当社は、2024年12月18日に東京証券取引所プライム市場へ株式上場いたしました。新規上場時における流通株式比率につき、取引所は新規上場時における株式の公募又は売出しの規模が1,000億円以上の見込みである場合に、「流通株式比率に係る基準に適合するための計画書」を提出することで、上場時に求められる流通株式比率は10%以上の見込みで足りるとされます。当社は新規上場に際して、この「大規模な公募又は売出しを伴う新規上場に係る特例」の適用を受けております。なお、当社普通株式の流通株式比率は当連結会計年度末時点において29.81%となっております。当社は、上場後最初に到来する事業年度の末日の翌日から起算して5年を経過する日までの間に東証が定める上場維持基準である流通株式比率35%以上を当社株式の上場維持のため実現するよう企業価値の増大に向けた成長施策の実践を進めていく方針であり、かつ、引き続き各大株主への追加的な当社株式の売却等の検討と実行を要請してまいりますが、何らかの事情により当該基準を達成することができない場合には、上記特例の適用期間終了後に上場廃止となる、又はプライム市場から他の市場に移行し、当社普通株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社普通株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
(8)気候変動リスク
気候変動に伴う移行・物理的リスク
気候変動に対して、当社グループは、2040年度までに使用電力の100%を再生可能エネルギーに転換、さらに、2050年度までにグローバルな事業活動に伴う温室効果ガスの直接・間接排出(スコープ1、2)をネットゼロにするという目標を設定し、当社グループ工場での太陽光発電等再生可能エネルギーの導入、製造における省エネルギー化、工場での温室効果ガスの排出量削減などを進めています。しかしながら、脱炭素社会に向けた各国・地域での炭素税等の導入や、再生可能エネルギー証書及び再生可能エネルギーの導入、更に生産拡大とともに増加する温暖化係数の高いPFC等ガスを除害する装置の導入によるコスト増加等で、当社グループのサステナビリティへの取り組みにかかる支出が増加する可能性があります。また、気候変動に伴う物理的リスクとして、外部気温上昇によるクリーンルームの温度調整のための空調コストの増加や、洪水や大規模豪雨などの自然災害の増加、長期的な気候パターンの変化等が、当社グループ及びサプライチェーンに影響を及ぼし、工場の操業低下、停止等事業活動が制限される可能性があります。こうした状況に対応するため、電力使用量や温室効果ガス排出量を抑制するため、全社横断的なワーキンググループを設置し、空調や装置冷却エネルギーの削減、製造プロセスの効率化、PFCガスの使用量削減に取り組んでいます。また、洪水・土砂災害ハザードマップでリスクのある建物に関しては、洪水時の被害を低減するための対策を実施しています。しかしながら、これらの取組みが成果をあげられない可能性があり、かかる場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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