有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100W181 (EDINETへの外部リンク)
インフロニア・ホールディングス株式会社 研究開発活動 (2025年3月期)
当連結会計年度は、建築事業、土木事業、舗装事業、機械事業及びインフラ運営事業を中心に研究開発を行い、その総額は5,705百万円です。
(建築事業、土木事業及びインフラ運営事業)
連結子会社である前田建設工業(株)においては、「総合インフラサービス企業」に変革するため、生産性や品質の向上に加え、多様化する社会課題に対し、ビジネスを通じて解決することで社会的価値と事業価値の向上を同時に実現する研究開発を推進しています。
当期の具体的な取り組み方針として、現場作業の生産性向上に向けた自動化・省力化・DX分野、脱請負のさらなる加速を目的とした維持更新・マネジメント分野、また中長期にわたり取り組むべき社会課題として考えられるカーボンニュートラル分野などに重点を置きました。
また、技術開発の推進にあたっては、当期も定期的に審査会を開催し、進捗状況の共有と新たに発生した課題への即時対応を進めるとともに、開発技術の活用展開に注力し既存技術による価値向上に努めました。これにより、昨今の事業環境の急激な変化に即応すべく、取組課題の絞り込み、経営資源の選択と集中を図っています。
当連結会計年度における研究開発費は3,579百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。
①LCA評価支援システム「CO2-Scope」~BIMデータ活用により迅速な建築物LCA評価及び比較検討を可能に~
2050年カーボンニュートラル実現に向け、BIMとLCAツールの連携を自動化し、建築物のライフサイクルを通じた環境負荷を短時間で評価できるLCA評価支援システム「CO2-Scope」を開発しました。同システムにより、従来1か月程度を要していたデータ作成と算出プロセスを最短1日で完了させることが可能となり、建物の新築・解体時等に発生するEC(エンボディドカーボン)の早期見える化や効率的な削減提案、設計変更時の迅速な環境評価を実現します。前田建設工業(株)は本システムを活用することで、建築物の環境性能向上に取り組んでいます。
②権利許諾済の画像生成AIによる著作権者の新収益源創出を試行~来場者へ「秘密結社 鷹の爪」吉田くん風のAI生成似顔絵を配布~
(株)タジクと共同で、(株)光邦の技術支援と(株)ディー・エル・イーの協力のもと、画像生成AIにおける著作権利用対価を教師データ提供者へ支払う試行を開始しました。同試行では、(株)ディー・エル・イーのコンテンツ「秘密結社 鷹の爪」の画像を教師データとして活用し、生成された似顔絵の配布枚数に応じた対価を支払う仕組みを導入しています。これにより、著作権者への正しい利益還元や画像生成AIの権利許諾の新たなモデルを提案します。将来的には建設分野への展開も視野に入れ、エコシステム構築を目指します。
③高速道路リニューアル時の工期短縮と疲労耐久性向上を実現する新床版継手技術「ESCON TPジョイント」を開発
飛島建設(株)、佐藤工業(株)及び(株)エスイーと共同で、高速道路床版取替工事の工期短縮と耐久性向上を実現する新技術「ESCON TPジョイント」を開発しました。本工法は機械式鉄筋定着工法と超高強度合成繊維補強コンクリートの組合せにより継手構造を簡略化することで作業効率を向上させるとともに、高い疲労耐久性を発揮します。これにより工期短縮、コスト削減、品質向上を実現し、インフラの長寿命化と効率化に貢献します。
④3Dプリンティングを用いた建設部材構築技術「WAV3D」の開発・国内初適用
3Dプリンティング技術を用いた、運搬・組み立てが容易な積層ブロックの組み合わせによる建設部材の構築技術「WAV3D」を開発しました。本技術は、複雑な自由形状が造形可能といった3Dプリンティングの特徴を活かすことで、現場での活用しやすさやデザイン性を両立しています。波形状やシアーキを持つ積層ブロックは安定性と耐久性を高めるとともに、リユースが可能でサステナブルな建設を実現します。また、自然に調和するデザインや照明・植栽の設置も可能で、多様な利用シーンに対応します。前田建設工業(株)ICI総合センター(茨城県取手市)内で実用化され、今後は耐久性や色調変化のデータ収集を通じ、活用領域の拡大を目指します。本技術を通じ、建築物や土木構造物のデザイン・構造の自由度を向上させるとともに、インフラ分野の担い手不足や作業の安全性向上など、社会課題の解決に取り組んでいきます。
⑤木材の柱と梁を強力に接合する工法が(一財)日本建築センターの特別工法評定を取得
帝人(株)と共同で、鉄筋コンクリート造のプレストレス技術を木造ラーメン構造に応用した新工法を開発し、(一財)日本建築センターから特別工法評定を取得しました。本工法により柱梁接合部に接合金物を配置し、プレストレス技術で柱・梁を一体化することで、従来の接合技術よりも接合部の耐力が向上します。これにより、従来難しいとされていた木造での大空間確保を可能にしました。本技術を用いることで、従来の木造ラーメン構造と比較して木材断面積を35%削減し、鉄骨造と同等の靭性能を実現しました。ICI総合センターでの実験で構造性能を確認し、大規模建築への適性も証明しました。今後、木材利用拡大や鉄骨造への部分的適用を進めてまいります。
⑥全設計施工物件でホールライフカーボン排出量算出を開始
カーボンニュートラル達成を目指して、2025年4月から設計施工の全物件でホールライフカーボン排出量の算出を開始します。部材ごとのCO2排出量を算出し、削減効果を明確化するため、自社開発の「CO2-Scope」やクラウドツール「OCL」を活用します。さらに、建築物運用時のCO2削減には「ZEB-Scope」を用い最適なZEB設計を推進します。環境性能を含む総合的な最適設計を通じて設計品質向上に取り組みます。
⑦「地域に着目した市民参画型インフラサービスの具体像」をテーマに「ICI DAYS 2024」を開催
ICI総合センター内に設置しているICI未来共創センターは、2024年11月6日に「ICI DAYS 2024」を開催しました。今回のテーマは「地域に着目した市民参画型インフラサービスの具体像」と題して、同センターの描く未来のインフラビジョンを示すとともに、第一部「地域社会の持続と分散型サービスの可能性」と第二部「市民参画型インフラサービス実現への第一歩」に分けて、社内外の方からの先行事例発表とパネルディスカッションを行いました。また基調講演として、東京大学の岡田猛教授から「地域内の触発と創造的思考」と題してご講演をいただきました。当センターでは、共創パートナーとの連携を通じて、革新的なテクノロジーやサービスの開発を継続的に進め、これらの取り組みを通じて、持続可能な社会の構築と次世代インフラの実現に寄与してまいります。
(舗装事業)
連結子会社である前田道路(株)においては、「新たな収益基盤と未来への投資を確立すること」を研究開発部門の使命と捉え、競争力の促進を図るため、「カーボンニュートラル(CN)に貢献する技術」と「ICTやデジタル技術を活用した建設現場の生産性向上」を重点テーマにあげるとともに、「既存技術の深化による付加価値の向上」にも注力しながら研究開発に取り組んでいます。
当連結会計年度における研究開発費は1,750百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。
①「カーボンニュートラル(CN)に貢献する技術」に関する研究開発
Ⅰ.舗装用材料へのCO2固定化技術の開発
アスファルトプラントの排ガス中のCO2を舗装用材料に固定化するシステムとして、「コンクリート再生路盤材へのCO2鉱物固定技術」の開発を進めてきました。基礎実験は完了し、得られた成果については、2025年4月~10月に開催される大阪・関西万博(未来社会ショーケース「グリーン万博」、RITE未来の森)において展示を行います。今後はプラント実装に向けた取り組みを進めていきます。
また、アサヒ飲料(株)と共同で、自動販売機で回収したCO2を活用する技術の開発も行っています。この技術では、「CO2を食べる自販機」内に設置された特殊材がCO2を吸収し、化学反応により合成炭酸カルシウムが形成されます。これをアスファルト合材に混合することで舗装内にCO2を固定化することができます。一連の室内実験により実現可能性が確認されたことを踏まえ、アサヒ飲料(株)の施設敷地内や茨城県土浦市道において試験舗装を行い、供用性の確認を行っています。
Ⅱ.アンモニアを燃料として使用した合材製造の実証実験
脱炭素化に向けた次世代燃料として水素が注目されていますが、輸送や価格の面で実用化には課題が多く存在します。そこで、これらの課題の解決が期待される「アンモニア」に着目し、アンモニア変換水素ガスを燃料としたアスファルト合材製造の実証実験を行いました。技術研究所内の実験プラントにおいて燃焼実験、排ガス測定、混合物性状の確認試験等を行った結果、従来の化石燃料と比較して遜色なく合材製造が可能であることを確認し、業界に先駆けてアンモニアを燃料として活用できる準備を整えることができました。
②「ICTやデジタル技術を活用した建設現場の生産性向上」に関する研究開発
生産性向上については、各種デジタル技術を活用して、建設現場の省力化・省人化に貢献できるよう開発を継続しています。舗装の施工現場や合材の製造現場における重機関連作業はもちろんのこと、舗装工事に付随した出来形管理や品質管理の業務にも着目しています。個々の省力化・省人化技術を確立することで、舗装工事全体の生産性を向上させることを目標としています。
③「既存技術の深化による付加価値の向上」に関する研究開発
当期は、「マイルドパッチ」の改良を行いました。マイルドパッチは、「水分硬化型の全天候型高耐久常温アスファルト混合物」に分類される製品であり、前田道路(株)が業界に先駆けて開拓した技術です。現在、同業他社の製品が多く市場に出回る状況にあることから、これらと差別化を図り、ユーザーの満足度をさらに向上させるため改良を行った結果、低温時(冬期施工時)の作業性改善と保存期間の延長を実現することができました。
(機械事業)
連結子会社である(株)前田製作所においては、カーボンニュートラルによる持続可能な社会の実現に向けた電動仕様クレーンの開発、海外マーケットの更なる拡大のための米国向け製品の開発を推進しています。また、要素技術開発として今後の労働力不足に対応するべく自動化・遠隔制御技術等の開発を推進しています。
当連結会計年度における研究開発費は375百万円であり、主な研究開発結果は次のとおりです。
①かにクレーンMC305C-5・MC405C-5の開発
かにクレーンMC305C・MC405C 2機種のモデルチェンジを行い、2025年4月に日本・欧州・米国で発売予定です。2機種ともに狭所でのクレーン能力を最大限に発揮するためのマルチアウトリガーモードを標準装備し、また、欧州・米国向けについても日本同様ラジコンを標準装備しています。なお、MC305C-5についてはカーボンニュートラルに向けた取り組みとしてリチウムバッテリー仕様もラインナップしています。
②クローラクレーンCC985S-3・CC1485S-3の開発
クローラクレーンの主力製品CC985S・CC1485Sのモデルチェンジを行い、日本、欧州で発売しました。このモデルチェンジでは運転席にオートエアコンを装備する等作業者の居住性向上、天窓の大型化による吊り荷の視認性向上を図っています。
③林業用フォワーダFC560S用ラジコンの開発
林業用フォワーダFC560S用のラジコン装置を開発・発売しました。このラジコン装置を使用することで、木材の積み込みを行う重機の運転席からフォワーダの遠隔操作が可能となり、現場作業の効率化を実現することができます。
④建設機械用足回り洗浄機の開発
建設機械用足回り洗浄機を開発・発売しました。冬場の作業等、厳しい環境下も多い建設機械の洗車作業を機械化・自動化することで、整備現場の効率化・省人化に繋がる製品となっています。
⑤自動化技術の開発
建設ニーズや大型機械に対応した自動運搬システムの研究・開発を進めており、実証試験による検証を行っています。今後は施工現場の省人化実現のため、前田建設工業(株)と共同で取り組んでいる自動運搬台車等、様々な装置や建設現場への実装に向けた活動を推進してまいります。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E36723] S100W181)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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