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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100YGXR (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 株式会社レナサイエンス 研究開発活動 (2026年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等


当社は、医薬品・医療機器・AIを活用したプログラム医療機器など、多様なモダリティ(治療様式)にわたる複数パイプラインの研究開発を進めており、当事業年度における主要パイプライン開発の進捗及びこれまでの開発実績は以下のとおりです。
なお、当事業年度における研究開発費は201,663千円であり、当事業年度末日の当社研究開発従事者人員は5名(臨時雇用者を含む)です。

a.RS5614(PAI-1阻害薬)
(a) 慢性骨髄性白血病(CML)治療
血液がんである慢性骨髄性白血病(CML)は、骨髄内の「骨髄ニッチ」と呼ばれる部位に存在する血液細胞の元になる細胞(造血幹細胞)の遺伝子に変異が生じ、がん化した疾患です。CMLに対する標準治療は、イマチニブなどの分子標的治療薬であるチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)です。TKIの開発によりCML患者の生存率は大きく改善しました。TKIはCML細胞には作用しますが、CML細胞の元になる細胞(CML幹細胞)には作用しないことから、TKIを休薬するとCML細胞は再び増殖し、がんが再発します。CMLを治療するためには長期にわたる高額なTKI治療の継続が必要です。
最近、深い分子遺伝学的奏効(deep molecular response、DMR:がんの原因遺伝子が検出されない状態)が一定期間継続しているCML患者では、TKIを中止しても再発が生じない状態(無治療寛解維持)となることが明らかになりました。しかし、3年間程度の治療期間で無治療寛解維持を達成できる患者の割合は5~10%にしか過ぎません。無治療寛解維持を達成するためには、少なくとも2年以上のDMRの維持が必要とされています。
当社PAI-1阻害薬RS5614はCML幹細胞に作用して、骨髄ニッチから遊離させます(Blood 2017)。遊離したCML幹細胞はTKIにより死滅するため、骨髄ニッチのCML幹細胞は消滅して、CMLを根治できる可能性が示唆されました。実際に、CMLモデルマウスにRS5614とTKIを併用することで、TKI単独投与に比べて骨髄に残るCML幹細胞数が著明に減少し、生存率を大きく向上させることが可能です(Blood 2017)。

後期第Ⅱ相試験
CML患者を対象にTKIとRS5614を併用し、RS5614投与開始後48週の有効性と安全性を確認するための後期第Ⅱ相試験(非盲検)を、東北大学、秋田大学、東海大学の大学・医療機関で実施しました。その結果、33例中DMRを達成した症例は11例(33.3%)であり(TKI治療期間が3年以上5年以下の患者では50.0%)、過去の試験結果に基づくヒストリカルコントロールの8%と比較して4倍程度上昇しました。重篤な有害事象も認められず、TKIとRS5614併用の有効性及び安全性が確認されました(Cancer Medicine 2023)。

第Ⅲ相試験
後期第Ⅱ相試験の成績に基づいて、東北大学、東海大学、秋田大学など12の大学・医療機関と共同で、CML患者を対象にTKIとRS5614の併用効果を検証するプラセボ対照二重盲検の第Ⅲ相試験を実施中です(2022年8月3日適時開示)。本試験は日本医療研究開発機構(AMED)「革新的がん医療実用化研究事業(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の助成を受けています(2022年3月22日適時開示)。TKI治療期間が3年以上6年未満のCML患者60例を対象とし、TKIとRS5614の併用によるDMR達成率の有意な上昇と2年間の無治療寛解維持を検証します。2024年12月に実施されたAMED「革新的がん医療実用化研究事業」の最終年度評価の結果、第Ⅲ相試験の目標症例数の登録が予定通り2023年12月に完了し、順調に実施されているとの理由から、助成期間が延長されました(2024年12月3日適時開示)。2026年3月期さらに2027年3月期にも助成を受けることが決定しました(2025年5月7日、2026年2月12日適時開示)。

(b) 悪性黒色腫(メラノーマ)治療薬
悪性黒色腫は表皮にある色素を作る細胞(メラノサイト)のがんで、悪性度が高いがんです。欧米と比較すると日本の患者数は約4,000人と希少ながんです。日本の患者は、海外とは異なる遺伝子変異を有していることから、標準治療である免疫チェックポイント分子阻害薬の抗PD-1抗体(ニボルマブ、商品名オプジーボ)による治療が効きにくいことが報告されています(Ann Oncol. 2020)。抗CTLA4抗体(イピリムマブ、商品名:ヤーボイ)とニボルマブとの併用による奏効率は33.3%と、ニボルマブ単剤の20%と比べて高いですが、併用患者の約70%で重度の免疫関連副作用が発症することが問題となっています。さらに、2種類の高額な抗体医薬を使用しなければなりません。そのため、副作用が無く、奏効率を向上でき、抗体医薬より安価な、内服で使用できる簡便な併用薬の開発が望まれています。

第Ⅱ相試験
民間非営利組織(NPO)「Japan Skin Cancer Network(JSCaN)」に属する東北大学、筑波大学、都立駒込病院、近畿大学、名古屋市立大学、熊本大学の6大学と共同で、悪性黒色腫に対するRS5614とニボルマブとの併用の有効性と安全性を確認するための第Ⅱ相試験(非盲検)を実施しました。本試験は、AMED「橋渡し研究プログラムシーズC(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の助成を受けて実施した多施設共同、非盲検試験です。RS5614をニボルマブと8週間併用することにより、29例の患者のうち7例において奏効(24.1%)が確認され、ニボルマブとイピリムマブの併用の奏効(海外21%、国内13.5%)を凌駕する結果が得られました(2024年2月22日適時開示)。さらに、ニボルマブとRS5614の併用により62%という高い病勢制御率も得られました。一方、ニボルマブとイピリムマブ併用で生じる重篤な免疫関連副作用は認めませんでした(2024年2月22日適時開示)。本試験の結果は科学誌『British Journal of Dermatology』に掲載されました(2024年6月7日適時開示)。
第Ⅱ相試験の結果から、厚生労働省より悪性黒色腫に対する希少疾病用医薬品指定を受けました(2024年9月2日適時開示)。希少疾病用医薬品指定を受けたことにより、悪性黒色腫治療薬としてのRS5614の薬価算定における市場性加算が加わり、さらに承認後の再審査期間が延長されて本治療薬事業の独占期間が長くなります。

第Ⅲ相試験
現在、根治切除不能悪性黒色腫患者124例を対象に、ニボルマブとRS5614との併用の有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験を、ランダム化プラセボ対照二重盲検試験として、東北大学病院など国内18施設で実施しています(2025年2月18日適時開示)。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の2025年度希少疾病用医薬品等試験研究助成事業に、第Ⅲ相試験を対象とした申請が採択され(2025年7月16日適時開示)、2025年4月~2028年3月の間の3事業年度において、悪性黒色腫の関連研究費として支出した経費の2分の1を上限とし、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の当該事業予算の範囲内で事業年度毎に助成を受けられます。本第Ⅲ相試験では、124名の患者を予定していますが、2026年5月末時点で98名登録と順調に進んでいます。
台湾における薬事承認を視野に台北医学大学とブリッジングスタディを実施するための契約を締結しました(2025年12月15日適時開示)。現在、台北医学大学が主体となって、台湾の規制当局であるTaiwan Food and Drug Administration (TFDA) と臨床試験に向けた協議を進めています。

(c) 血管肉腫治療薬
血管肉腫は国内約300人程度の極めて希少ながんであり、5年生存率は9%と非常に低く、悪性度の高いがんです。血管肉腫の標準治療の第1選択薬はパクリタキセルですが、血管肉腫患者の全生存期間は649日と短く、長期寛解を得ることは困難です。PAI-1は主として血管内皮から産生されるため、血管内皮細胞の腫瘍である血管肉腫には、PAI-1が多く発現しております。血管肉腫の患者検体を用いた解析で、PAI-1が多く発現している患者の予後は悪いことが明らかとなっています。パクリタキセルはがん細胞を死滅(アポトーシス)させますが、PAI-1を多く発現しているがん細胞はアポトーシスに耐性であることから、PAI-1の発現量が多い血管肉腫では、パクリタキセルが効きにくいと考えられます。

第Ⅱ相試験
PAI-1阻害薬RS5614を併用することにより、パクリタキセルの治療効果を増強できる可能性に基づき、東北大学など7医療機関と「皮膚血管肉腫に対するパクリタキセルとRS5614併用の安全性・有効性を検討する第Ⅱ相試験(非盲検)」を開始し(2023年10月26日適時開示)、16例の症例登録を完了し(2025年6月20日適時開示)、全登録患者の投与を予定どおり完了しました(2025年12月12日適時開示)。
試験結果は、治療開始28週時点における画像判定(中央判定)による奏効率は完全奏効12.5%でした。さらに、無増悪生存期間(PFS)及び生存期間(OS)は、それぞれ4.0ヶ月及び20.8ヶ月で、国内前向き臨床試験であるパゾパニブ(JCOG1605)の結果(2.8ヶ月、12.1ヶ月)を凌駕する結果が得られました。また、15例中13例(86.7%)で病勢の安定が確認され、高い病勢制御率が示されました(2026年2月10日適時開示、その後奏効率の数字を修正)。一方、副作用の発現は少なく、因果関係が否定できないGrade3以上の有害事象は16例中5例(31.25%:肝機能障害及び白血球減少)と、重篤な有害事象は認められませんでした。JCOG1605におけるGrade3以上の有害事象の70%と比較しても、良好な忍容性が示されています。現在、本試験の評価及びデータ解析を進めており、最終的な治験総括報告書は2026年6月頃を予定しています。


(d) 非小細胞肺がん治療薬
肺がんは日本のがん死亡原因の第一位であり、非小細胞肺がんは全体の85%を占めます。その中で根治的手術が適応とならない局所進行非小細胞肺がん患者は年間1万人にも至ります。非小細胞肺がんモデルマウスを用いた非臨床試験により、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブとRS5614の併用投与はニボルマブ単剤投与よりも高い治療効果が得られることを確認しました。さらに、PAI-1ががん血管の新生をもたらし、肺がん細胞の増殖能を亢進していること、ニボルマブに耐性となった肺がん細胞がPAI-1を多く発現していることなどを見出しました。

前期第Ⅱ相試験
切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者(3次治療以降の患者)を対象に、広島大学、島根大学、岡山大学、鳥取大学、四国がんセンター、広島市民病院などの医療機関と協力して、ニボルマブとRS5614との併用投与の有効性及び安全性を確認するための前期第Ⅱ相試験を開始し(2023年9月26日適時開示)、症例登録を終了しました(2025年7月3日適時開示)。治験調整医師(治験代表医師)及び治験責任医師(実施医師)から、有効性(奏効)が確認できている患者でRS5614の内服継続を希望する声があったことから、試験期間を3ヶ月延長し(2025年11月26日適時開示)、試験を終了しました(2026年3月5日適時開示)。結果(速報)は、全症例(3次治療以降)での評価は、主要評価項目である奏効率(ORR)は8.3%、副次評価項目である6ヶ月無増悪生存割合(PFS)22.5%でした。そのうち3次治療として本試験治療を受けた11例で評価すると、奏効率18.2%、6ヶ月無増悪生存割合27.5%と高い有効性を示す結果が得られており、既報(Clin Cancer Res. 2022 28: OF1-OF7. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-22-0602)のニボルマブ単剤療法と比較して約10%の抗腫瘍効果の上乗せを示す結果でした。安全性についても、試験治療が関連した重篤な有害事象(Grade 3以上)は13.8%であり(既報のニボルマブ単剤療法では20.3%)、重篤な副作用は認められませんでした。最終的な治験総括報告書は2026年8月頃を予定しています。

後期第Ⅱ相試験
局所進行非小細胞肺がん患者に対しては、根治を目的として化学放射線療法が標準治療として行われ、化学放射線療法後に病勢進行や重篤な放射線肺障害を含む合併症が認められない症例では、免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブによる地固め療法が施行されます。前期第Ⅱ相試験において、RS5614の免疫チェックポイント阻害薬の効果増強が期待されること、また、早期の治療でより高い有効性が得られていることから、後期第Ⅱ相試験として「局所進行非小細胞肺がんを対象に、初回標準治療である化学放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブによる地固め療法に対するPAI-1阻害薬(RS5614)併用療法の有効性と安全性を検討する医師主導治験」を、広島大学病院など12医療機関と2026年4月に開始しました(2025年11月26日、2026年4月24日適時開示)。根治手術が適応とならない局所進行非小細胞肺がん患者27例を対象に、化学放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブによる地固め療法に対するRS5614併用の有効性(主要評価項目:1年無増悪生存割合)と安全性を検討することを目的とし、2029年3月まで実施予定です。
本試験はAMEDの2026年度「臨床研究・治験推進研究事業」に採択されましたので、当初想定していた本試験費用の支出が少なくなり、2027年3月期から2029年3月期までの収益性が改善する見込みです(2026年3月9日適時開示)。当社は、国立大学法人広島大学と非小細胞肺がんに対する非臨床試験及び臨床試験に向けての共同研究契約を締結し、さらに包括的研究協力に関する協定書を締結して(2023年4月24日適時開示)、オープンイノベーション拠点(Hiroshima University x Renascience Open Innovation Labo:HiREx)を設けています。これら肺がんの試験はHiRExを主体に実施しています。

(e) 膵臓がん治療薬
膵がんは悪性腫瘍における疾患別死亡数の第3位ですが、早期発見が極めて困難な悪性疾患であり、診断時に切除可能な膵がんは15-20%に過ぎず、46.3%が遠隔転移陽性と診断される予後不良のがんです。膵がんで長期生存を得るには根治的切除が必須ですが、たとえ根治的切除が達成されても切除後の再発が極めて多い悪性腫瘍であり、その予後は18.8-31.3%と未だに不良です。遠隔転移を有する膵がんや切除後再発膵がんに対する標準治療は化学療法ですが、有効な治療法が少なく、FOLFIRINOX療法(奏効率、31.6%;全生存期間、11.1ヶ月)やゲムシタビン及びナブパクリタキセル療法(GnP療法:奏効率、29%;全生存期間、8.5ヶ月)にても5年生存率は全体で10%程度であり(遠隔臓器やリンパ節に転移した段階であるステージ4では1~3%)、既存の標準治療を増強する治療薬が求められています。
PAI-1は、膵臓がんの予後不良因子の1つです。PAI-1阻害薬RS5614は、がん組織において、上皮間葉転換の抑制、Tリンパ球の活性化、腫瘍浸潤マクロファージ(TAM)の減少、腫瘍内のTリンパ球数の増加、がん細胞上の免疫チェックポイント分子発現の低下、がん細胞の免疫チェックポイント分子阻害薬への耐性解除、腫瘍免疫微小環境の改善、腫瘍免疫の活性化などの作用を有しています(2025年11月11日当社ニュース掲載)。また、PAI-1阻害薬の薬理作用である抗血栓作用や抗線維化作用、さらにはがん関連線維芽細胞(CAF)の減少は、膵がんの腫瘍環境を考える上でも有用な薬理作用を有しています。

第Ⅱ相試験
「遠隔転移を有する切除不能膵がん又は再発膵がんに対するゲムシタビン及びナブパクリタキセル療法とRS5614併用の安全性・有効性を検討する第Ⅱ相試験(非盲検)」が東北大学病院など3医療機関で開始されました(2026年5月12日適時開示)。遠隔転移を有する切除不能膵がん又は再発膵がん患者50名を対象に、主要評価項目を奏効率として実施します。

(f) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う肺傷害治療薬
RS5614は抗血栓・抗繊維化・抗炎症作用を有し、COVID-19肺傷害に対する治療薬として、2020年秋に前期第Ⅱ相試験(非盲検)を実施しました。RS5614を投与された入院患者26名全員が副作用もなく退院し(Scientific Reports 2024)安全性が確認されました。続いてAMED助成を受け2021年3月、国内20医療機関と後期第Ⅱ相試験(プラセボ対照二重盲検、75例)を実施しました(2023年4月17日適時開示)。主要評価項目「酸素化悪化指標スケールの総和」では、群間に統計学的な有意差は認めませんでしたが、プラセボ群に対する悪化の抑制が見られ、特に中等症Ⅰ患者での有効性が示唆されました。副作用発現率はRS5614群とプラセボ群で同程度であり、安全性も確認できました。
RS5614は抗ウイルス薬とは作用機序が全く異なり、内服が可能な医薬品です。現在、COVID-19は落ち着いていますが、将来の新たなウイルスの発生に際して速やかに臨床試験が実施できるよう準備をしています。前期及び後期第Ⅱ相医師主導治験の結果は、2024年1月に科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。

(g) 全身性強皮症に伴う間質性肺疾患治療薬
全身性強皮症(systemic sclerosis)は、皮膚と内臓諸臓器の血管障害と線維化を特徴とする全身性の自己免疫疾患で難病に指定されています(指定難病51)。全身性強皮症は免疫異常、血管障害、線維化を主な病態として、臓器線維化による臨床症状として、レイノー症状、皮膚硬化、間質性肺疾患(Interstitial lung disease、ILD)、強皮症腎クリーゼ、心病変、肺動脈性肺高血圧症など、さまざまな多臓器障害を生じます。他の自己免疫疾患に比してステロイドや免疫抑制薬の効果は限定的です。特に間質性肺疾患は全身性強皮症の死因の35%を占めており、また間質性肺疾患が直接の死因とならない場合でも、高度な呼吸機能低下により生活の質(QOL)や日常の生活動作(ADL)の著しい低下を招きます。間質性肺疾患に対しては、ステロイドや免疫抑制薬が第一選択薬ですが、その治療効果は充分ではありません。近年、抗線維化薬であるニンテダニブが承認されましたが、進行を抑制する作用はあるものの、間質性肺疾患を改善する作用は無く、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対する新規治療薬の開発が強く望まれています。

第Ⅱ相試験
AMEDの2023年度「難治性疾患実用化研究事業(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」に採択され(2023年3月15日適時開示)、東北大学など12医療機関と「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対するPAI-1阻害薬RS5614の第Ⅱ相試験(プラセボ対照二重盲検試験)」を開始し(2023年10月19日適時開示)、全登録患者の投与(1年間)を予定通り完了しています(2025年11月25日適時開示)。結果(速報)、主要評価項目である48週時点の%FVCの変化量については、RS5614群においてプラセボ群に対する有意な上乗せ効果は認められませんでした。一方、皮膚硬化の指標であるmRSSについては、48週時点単独では明確な群間差を認めませんでしたが、治療経過全体を踏まえた追加解析において改善傾向が示唆されました(2026年4月10日適時開示)。

(h) 抗加齢・長寿研究
1. 老化細胞を除去するセノリティクス内服薬
従来の医薬品開発は、「単一疾患」「単一標的」「明確な臨床評価指標(エンドポイント)」を前提としています。一方、「老化」は加齢に伴う生理的変化の延長でもあり、連続的かつ個体差の大きい現象でもあるため、現在の医療保険の制度上は「疾患」とはみなされていません。「老化」を医療保険上の単独の適応症として定義し、一般的な疾患のように明確な診断基準や評価指標で医薬品として開発することは困難です。ですから、事業化にあたっては薬事規制、臨床試験デザイン、保険償還制度、ビジネス・モデルといった様々な課題が存在しています。しかし、近年、これまでの古典的な老化治療(食事療法、運動療法、睡眠療法、サプリメントなど)とは異なる新たな老化に対する治療アプローチやモダリティ(幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング(老化細胞若返り)、セノリティクス(老化細胞除去))が提案されており、臨床試験も展開されつつあります。「老化」への治療法開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業としても捉えられているため、高額な資金も投資されている分野です。
老化の病態は単一ではなく、エピジェネティック情報、代謝、炎症、幹細胞機能、免疫などが相互に影響し合い、生体全体の恒常性が崩れた状態です。除去されずに蓄積した「老化細胞」は、炎症性サイトカインやケモカイン(老化関連分泌形質:SASP)を持続的に放出し、周囲の健全な細胞や組織に慢性炎症を引き起こします。これが動脈硬化、線維化、神経変性、代謝異常といったあらゆる老化関連疾患の共通基盤を形成しています。したがって、老化介入には「どの病態を改善するか」ではなく、「生体機能への多面的な介入により、崩れた全体のバランスをどう改善するか」という考え方が重要です。当社のPAI-1阻害薬(RS5614)は、複数経路にまたがり統合的に介入することで、崩れた生体全体の機能を改善できる医薬品候補です。老化環境の改善、老化細胞の除去及び生物学的年齢の若返りを通じて、種々の加齢疾患を予防・治療できる可能性を有しており、セノリティクス医薬品としては適したプロファイルとモダリティを備えています。

これまでの国内外の研究機関との共同研究により、加齢関連疾患の予防や健康寿命延伸の可能性を示す以下の知見を明らかにしてきました。

ⅰ 細胞の老化(Senescence)
細胞の分裂停止(老化)にはp53、p21などの細胞周期調節因子が関与しており、老化した細胞ではPAI-1の発現が極めて高いことが分かっています。PAI-1阻害薬はこれら調節因子やDNA損傷応答などの老化バイオマーカーを改善し、心筋細胞や血管内皮細胞の老化を阻害します。早老症患者の細胞を用いた研究でも、細胞老化を改善することが報告されています。

ⅱ 組織や個体の老化(Aging)
早老症モデル(klothoマウス)やウェルナー症候群の患者など、老化した組織や個体でもPAI-1の高発現が確認されています。老化モデルマウスにPAI-1阻害薬を投与すると、老化の主症状が改善し、正常マウスと同じ寿命を維持できることが明らかになっています。

ⅲ 加齢に関連する疾患
がん、動脈硬化、糖尿病、慢性腎臓病、認知症といった加齢に伴う疾患の病的組織ではPAI-1の発現が極めて高く、PAI-1阻害薬の投与による病態改善が確認されています。特に、現代の生活習慣病によって加速される「血管の老化」を防止・回復させる作用も示唆されています。

ⅳ 長寿家系の疫学的調査
米国ノースウエスタン大学との共同調査で、PAI-1遺伝子を持たない人々は持っている人に比べて10年長生きすることが見出されました。同様の遺伝子異常を持つマウスも寿命が20%長いことが示されています。

2. 恒常性再構築のヒトにおける実証:XPRIZE Healthspanセミファイナル臨床試験
PAI-1阻害薬RS5614の抗加齢・長寿作用に基づき、「老化細胞を除去し、老化関連疾患を抑制する新規医薬品(セノリティクス内服薬)」を提案し、東北大学、東海大学、広島大学の研究機関及び医療機関との共同で、世界的な長寿コンペティションであるXPRIZE Healthspan(https://www.xprize.org/prizes/healthspan)に応募しました。世界から600以上のエントリー、200以上の書類申請があり、治療アプローチとして、低分子医薬品、バイオ医薬品(エクソソーム、免疫調節剤、抗体医薬)、遺伝子治療、幹細胞治療、医療機器(デジタルヘルスデバイス、電気医療機器、磁気医療機器)、サプリメント、機能性食品、食事制限、運動療法、さらにそれらの組み合わせが提案されました。
当社は、米国ニューヨークで開催されたXPRIZE Healthspanの受賞セレモニーでTOP40(セミファイナリスト)に入賞し、賞金25万米ドルを受け取りました(2025年5月13日適時開示)。セミファイナリストは、セミファイナル臨床試験を実施し、2026年4月に報告書を提出します。2026年8月にTOP10(ファイナリスト)が選出され(賞金100万米ドル)、最終コンペティションのための4年のファイナル臨床研究が実施され、ファイナル臨床研究を実施したTOP10のチームの中からグランプリが選ばれます(最大8,100万米ドル)。
XPRIZE Healthspanの公募要項によれば、セミファイナリスト(TOP40)は、最終的な4年間のファイナル臨床試験の実現可能性を支持するための短期間(4週~8週)、小規模(5~20人)の臨床試験をセミファイナル臨床試験として実施しなければいけません。そこで、加齢に伴い発症する疾患(高血圧症、2型糖尿病、慢性腎臓病、高脂血症)を有し、症状が安定している50歳以上75歳以下の20例を対象に、RS5614を16週間投与する非盲検試験をセミファイナル臨床試験として実施しました(2025年8月18日適時開示)。これまでRS5614は多くのがん患者には投与されてきましたが、比較的健康な高齢者を対象に投与されたことはないため、安全性の確認が必要になります。投与期間が極めて短期間であり、各種臓器の抗加齢作用を評価することは難しいと考えられたため、老化、免疫、代謝、骨・筋肉、認知・神経生理、抗酸化、造血幹細胞など、各種臓器の老化に関わるエピゲノム(遺伝子修飾)、遺伝子、タンパク、細胞などのバイオマーカーの変動を解析しました。実施医療機関は東北大学、さらに検査などの協力機関として広島大学、東海大学が参加しました。RS5614を4ヶ月間投与した前後の検査が実施できた19名の患者(平均年齢60.4±5.6歳、男性13名、女性6名)を有効性評価の対象とし、RS5614投与を受けた20名の患者を安全性評価の対象としました。その結果、以下のデータが得られました。

ⅰ 安全性の確認
比較的健康な基礎疾患を持つ高齢者への4ヶ月間の経口投与において、RS5614との因果関係が否定できない有害事象は「軽度肝機能異常」の1例のみであり、出血イベントを含むその他の重篤な副作用は一切確認されず、きわめて高い安全性が実証されました。

ⅱ エピゲノム・遺伝子レベルの若返り(老化マーカー)
・生物学的年齢(エピジェネティック・クロック)の若年齢化:DNAメチル化解析により推定した生物学的年齢が、4ヶ月の投与で実年齢(平均60.4歳)に対してHorvath法で平均3.4歳(p<0.001)、PC-Horvath法で平均1.9歳(p<0.001)有意に若返りました。
・老化関連マイクロRNA(SA-miRNA)の減少:組織老化を促進する6種のSA-miRNA(miR-22-3p、miR-18a-5p、miR-28-5p等)がいずれも極めて有意に(p<0.001)低下し、老化を誘導する遺伝子発現制御の軽減が示されました。

ⅲ 免疫機能の再構築・自然免疫の動態改善
機能低下を補うために異常増加していた老化NK細胞が有意に減少し、一方で監視役である樹状細胞が有意に増加しました。これにより、老化細胞や異物を認識・排除する免疫監視能力が向上しました。

ⅳ 幹細胞機能の回復(造血幹細胞)
・幹細胞の量と質の改善:加齢に伴い減少する造血幹・前駆細胞数が有意に増加し、特に加齢によるリンパ球産生低下の一因とされる多能性リンパ系前駆細胞(MLP)が有意に増加しました。
・トランスクリプトームの若齢化:RNA-seq解析により、オートファジーやDNA修復、抗酸化防御に関連する遺伝子群(SQSTM1、UNG等)が有意に増加し、逆に加齢を促進する遺伝子群(MDM2等)が有意に減少するなど、遺伝子発現が全般的に若年幹細胞の特性へと回復していることが示唆されました。

ⅴ タンパク・代謝レベルでの全身(多臓器)の機能向上
7,596種の血漿タンパク質を対象とした網羅的解析(SomaScan)により、以下の全身的な機能改善が確認されました。
・抗炎症及びマクロファージ機能:全身性炎症マーカー(SAA-1等)の低下やIL-1βシグナルの減弱に加え、死細胞の除去(貪食)に関与する受容体(TREM2等)が有意に増加しました。
・骨・筋肉の再生シグナル:IGFシグナル系(IGFBP-5等)、Wntシグナル系、BMPシグナル系(BMP-2等)といった骨・筋肉組織の修復・再生・形成シグナルが広範に活性化しました。
・認知・神経生理機能:神経損傷や認知機能低下のリスク因子であるアミロイドβA4や血清アミロイドPコンポーネント(SAP)が減少し、興奮性シナプスの維持に不可欠なNPTX2等の保護因子が有意に増加しました。
・その他の機能改善:線溶系の活性化(u-PA、t-PA上昇)、脂質代謝の改善(可溶性Leptin receptorの増加)、小胞体ストレス応答の制御などが確認されました。

ⅵ 酸化ストレス及び老化マーカーの低下
酸化ストレスマーカー(8-OHdG)の減少傾向に加え、タンパク質の糖化により生成され老化を早める原因物質となる終末糖化産物(AGEs)の一種であるCML(カルボキシメチルリジン)が有意に低下しました。



3. 今後の展望
RS5614を4ヶ月投与することにより、エピゲノム(遺伝子修飾)あるいは遺伝子レベルでの改善が認められました。特筆すべきは、生物学的年齢の2~3歳の若齢化です。タンパクレベルでも、免疫機能、骨・筋肉機能、代謝機能、並びに認知機能の改善など、抗加齢作用に関わる複数のタンパクの改善が認められました。細胞レベルでも、免疫細胞、造血幹細胞の機能回復や若齢化が認められ、さらに全身での酸化ストレスの軽減も確認されました。比較的健康な高齢者に対してもRS5614は安全に経口で投与できることが確認されたのみならず、4ヶ月間の短期間の投与にも関わらず、免疫、代謝、骨・筋肉、認知・神経生理、抗酸化、造血幹細胞など、広く各種臓器に対して抗加齢作用が確認されました(2026年5月14日適時開示)。これらの分子、細胞レベルでの変化が、各種臓器の抗加齢作用に繋がり、最終的に健康寿命の延伸につながるかどうか、大変興味深いところです。
今回のセミファイナル試験結果及びファイナル試験の計画を取りまとめ、2026年4月にXPRIZE Healthspan評価委員会へ提出しました。2026年8月にファイナリスト(TOP10)に採択されれば、日・米・サウジアラビア・台湾の大規模な国際共同臨床試験(100~150名規模のプラセボ対照盲検試験)を実施する予定です。
本プロジェクトに関して、ノースウエスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)(2025年11月10日適時開示)、台北医学大学(2025年12月15日適時開示)、サウジアラビアのキング・アブドラ国際医療研究センター(King Abdullah International Medical Research Center:KAIMRC)(2026年2月9日適時開示)との間で、臨床試験を共同で実施するための基本合意書を締結しています。
長寿関連事業(医療用医薬品、OTC医薬品、さらには動物医薬品)は、超高齢化を背景に経済や生活に与える効果も極めて大きな成長分野です。PAI-1阻害薬RS5441の脱毛症治療薬としての実例もあり、当社のPAI-1阻害薬の抗加齢・長寿研究をさらに展開する予定です。なお、当社のがん及び抗加齢・長寿領域に関連する取材記事が、科学誌『Nature(Digital edition)』、『Nature Biotechnology』、『Nature Reviews Drug Discovery』に掲載されました(2025年12月1日、2026年2月26日開示)。
当社技術(セノリティクス内服薬)に競合する技術として、幹細胞治療、細胞内成分治療(エクソソーム)、遺伝子治療(エピジェネティック・リプログラミング)などが挙げられます。特に、エピジェネティック・リプログラミングは、米国Life Biosciences社、米国Altos Labsなど20~30億ドルの資金調達を実施して開発を進めているバイオテック企業が注力している分野です。「老化」への治療法の開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業となり得るため、多額の資金が集まっています。2026年1月、米国FDAはLife Biosciencesが開発する「ER-100」の臨床試験開始を許可しました。ER-100は、遺伝子治療によりOSK(OCT4、SOX2、KLF4の3つの転写因子)を導入し、細胞を部分的に初期化(時間を巻き戻す)する方法です(OSKは「山中4因子」から腫瘍化リスクの高いc-Mycを除いたものです)。治験は視神経症という具体的な疾患が対象ですが、「老化」を視野に入れた研究です。一方、当社のアプローチは細胞の時間を巻き戻す(エピジェネティック・リプログラミング)ための遺伝子治療ではなく、蓄積した老化細胞を除去(セノリティクス)するための内服薬です。セノリティクスのアプローチをとるバイオテック企業も複数あり、細胞治療(CAR-T)、遺伝子治療、既存の低分子医薬品の適応外使用(ドラッグリパーパシング)など複数モダリティが提案されていますが、当社は新規低分子医薬品(内服薬)であるRS5614を開発しています。
当社のPAI-1阻害薬(RS5614)は、老化環境を改善し、老化細胞を除去し、生物学的年齢を若返らせ、種々の加齢疾患を予防・治療できる可能性を有し、セノリティクス医薬品としては適したプロファイルとモダリティを有します。本剤は生物製剤や核酸系医薬品ではなく、低コストで大量合成可能な低分子化合物(分子量:424.81、錠剤)です。大量の工業的生産が可能で、安定した品質の医薬品を生産可能で、グローバルな供給が可能です。RS5614は経口投与が可能で、他の生物製剤とは異なり、自宅で投与できます。細胞製剤、エクソソーム、遺伝子治療などのバイオ医薬品とは異なり、地理的又は物流上の制約を受けることなく容易に輸送できます。細胞製剤やエクソソームとは異なり、ドナーも必要としません。最も重要な安全性に関しても、細胞製剤、エクソソーム、遺伝子治療などのバイオ医薬品に比べて副作用が少ないことはメリットであり、20名の高齢者を対象としてXPRIZE Healthspanのセミファイナル試験でも、高い安全性が確認されています。世界的な高齢化は、先進国と新興国の両方において深刻な社会問題となっています。長寿医療は、富裕層だけでなく、多くの人々にとって必要な医療でなくてはならず、内服薬であるRS5614は、幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング遺伝子治療、他のモダリティによるセノリティクス医薬品に対しても優位性は高いと考えます。



(i) RS5441(PAI-1阻害薬)男性型脱毛症及び加齢性脱毛症外用薬
毛髪は毛が伸びる成長期、毛が抜けやすくなる退行期、毛が抜ける休止期と複数の相からなる周期を持って成長しています。男性型脱毛症(AGA)は,毛周期を繰り返す過程で成長期が短くなり,休止期にとどまる毛包(毛根を包み成長させる組織)が多くなる疾患で、日本人男性の頻度は50代以降で40%以上です。米国ノースウエスタン大学との共同研究により、PAI-1を過剰発現するマウスは脱毛が激しく、一方このマウスにPAI-1阻害薬RS5441を経口投与すると著明な発毛が認められることが分かりました。RS5441の投与により総毛包数が93.5%増加し、退行期の毛包数は64%減少しました。
2016年10月に皮膚科疾患用途におけるRS5441の独占的権利をエイリオン社に許諾し、同社で男性型脱毛症及び加齢性脱毛症外用薬(ET-02)として開発されています。男性型脱毛症患者の頭皮組織移植片60検体を用いた非臨床試験で、ET-02による治療4ヶ月目の発毛率は標準治療薬ミノキシジルによる発毛率の4倍高いという結果が得られました。男性型脱毛症(加齢性脱毛症)治療に対する安全性と有効性を評価する第Ⅰ相臨床試験が開始され(2024年7月3日適時開示)、ET-02(RS5441)は安全で、良好な忍容性を示し、プラセボ群と比較して非軟毛(又は正常)の毛数が6倍に増加することが報告されました(2025年1月9日適時開示)。同社において、引き続き米国における第Ⅱ相臨床試験に向けた準備・検討が進められており、将来的にET-02が商業化された場合にはエイリオン社からロイヤリティを受領する予定です。なお、特許期間満了(2029年3月31日)後も一定期間((a) ET-02の製品が当社許諾特許の有効な請求範囲でカバーされる最終日、(b) ET-02の製品に関する規制又はデータ独占権の満了日、及び(c) ET-02の製品の最初の販売から10年後、のいずれか遅い日まで)ロイヤリティが受領できる契約となっております。

(j) 動物医薬品
RS5614の抗加齢・長寿に対する作用や薬理特性はヒト医療のみならず、イヌやネコを主とするコンパニオンアニマルなど動物医療分野でも有用であることが期待できることから、イヌやネコを対象とした動物用医薬品分野での研究を開始しました。具体的には、イヌやネコへの有効性を確認するために、安全性試験(非臨床試験)や臨床試験を実施予定です。まずは、イヌ及びネコにおける安全性確認試験を実施しました(2025年11月19日適時開示)。イヌ及びネコに28日間RS5614を想定薬効用量の10倍量経口投与しましたが、ネコで食事量の減少を認める他は、一般症状の観察、血液学的検査及び血液生化学的検査など特に問題となる有害事象を認めませんでした(2026年2月4日適時開示)。今後、イヌ(関節炎、メラノーマなどの皮膚がん)やネコ(慢性腎臓病)への病気に対する有効性を検討する予定です。

b.RS8001(ピリドキサミン)更年期障害治療薬
更年期障害は、内分泌学的変動に加えて心理・社会的ストレスが加わることにより発症するホットフラッシュ・発汗などの血管運動神経症状、易疲労感・関節痛などの身体症状、うつ・不安・不眠などの精神症状を呈します。東京科学大学・女性健康医学講座では、これら症状がビタミンB6の摂取量と逆相関することを見出しました。2021年12月に更年期障害に対するRS8001(ピリドキサミン)の臨床研究に関して東京科学大学と共同研究契約を締結しました(2021年12月15日適時開示)。2023年3月にAMED「女性の健康の包括的支援実用化研究事業(代表機関:東京科学大学、当社は協力機関)」に採択され、臨床研究が開始されました。本臨床研究では、プラセボ効果をできる限り排除する目的でプラセボリードイン方式を採用した二重盲検法(各群25名)で実施しています。

c.RS9001(ディスポーザブル極細内視鏡)
腹膜透析は在宅での透析を可能とし、医療経済的にもメリットのある治療法です。しかし、腹膜が経年劣化し重篤な合併症を引き起こす事があるので、5年程度で腹膜透析治療が中止される症例が多いです。腹膜の状態を確認するためには、開腹手術若しくは腹腔鏡による侵襲的な観察しか無く、患者にも負担を強いています。腹膜透析患者は透析液を注入するチューブを常に腹膜に挿入した状態にあるため、この細いチューブを通して挿入し非侵襲的に腹腔内を観察する極細内視鏡の開発を着想し、東北大学、順天堂大学、東京慈恵会医科大学らと共同開発しました。多くの医師の意見を基に、医療現場のスペックに適した外径約1mm程度のディスポーザブルファイバースコープです。本医療機器は、従来の消化器系の内視鏡とは異なるコンセプトで開発されたもので、胃瘻チューブ、尿道バルーン、気管チューブ、注射針からの挿入が可能で、様々な臨床的有用性も期待できます
この極細内視鏡は、腹腔内を可視化するためのファイバースコープ部分と操作性を容易にするためのガイドカテーテル部分から構成されています。ファイバースコープはPMDAに承認申請され(2022年9月14日適時開示)、厚生労働省から薬事承認されました(2022年12月26日適時開示)。本製品の詳細は、以下のとおりです。
・ 承認番号:30400BZX00294000
・ 一般的名称:軟性腹腔鏡
・ 販売名:経カテーテル腹腔鏡 PD VIEW
・ 類別コード:器25
株式会社ハイレックスコーポレーション及びその子会社である株式会社ハイレックスメディカルと付属品であるガイドカテーテル作成を含めた医療機器開発に関する共同研究契約を締結し(2022年9月1日適時開示)、その後株式会社ハイレックスメディカルとライセンス契約を締結し(2024年5月20日適時開示)、開発を進めています。ガイドカテーテルの開発及び製造の目処もつき、多施設共同臨床試験でも有害事象は認められず、安定期腹膜透析患者の臨床評価を補完する有意義な非侵襲的検査法であることが確認されました(2024年6月24日、2026年3月4日適時開示)。ガイドカテーテルとファイバースコープを合わせて2026年内に薬事申請する予定です。

d.人工知能(AI)を活用したプログラム医療機器の開発
当社は、1)医療ニーズの把握と医療現場での開発を重視する視点、2)多くの医師や診療科とのネットワーク、3)医薬品や医療機器の医師主導治験で蓄積された経験やノウハウを基に、医師と医療機関、AI技術を有するITベンダー、出口の製薬・ヘルステック企業間を結ぶハブとなり、医療分野でのAI研究から事業までを繋げるエコシステムの創出にも取り組んでいます。薬機法に則った臨床試験(医師主導治験)が実施できるために、実地臨床に役立てられる本格的なAI医療ソリューション(診断、治療)の開発も可能です。現在、呼吸機能検査診断、維持血液透析医療支援、糖尿病治療支援、嚥下機能低下診断などの領域でAIを活用したプログラム医療機器(SaMD)を開発しています。当社のAIを活用したプログラム医療機器の開発に関しては、科学誌『Nature』の取材記事も参照ください(2024年3月18日開示)。
台北医学大学は6つの病院を擁し、ベッド数は3,000床に至り、それら豊富な医療データを活用してSaMDの研究開発が実施可能です。サウジアラビア最大の研究・医療機関である「キング・アブドラ国際医療研究センター(KAIMRC)」との間でも、プログラム医療機器の開発や事業化に向けた連携を進めていくための基本合意書を締結しました(2025年10月6日適時開示)。

(a) RSAI01(呼吸機能検査診断プログラム医療機器)
世界保健機関(WHO)では、がん・糖尿病・循環器疾患に加えて呼吸器疾患を重要な疾患として考えています。代表的な呼吸器疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息などです。呼吸器機能を診断する検査の普及が不十分なために、COPDなど呼吸器疾患の有病率、罹患率、死亡率などは明らかではありません。呼吸器疾患や呼吸器機能の検査の中でスパイロメトリーが最も重要ですが、患者の協力(努力呼吸)が必要である点に加えて、正しく検査が行えたかどうかを判定し、かつ出力された結果(フローボリューム曲線)を解釈することが非専門医には難しいことも課題です。非専門医でも簡便に結果解釈できるシステムの開発は、呼吸器疾患を診断し、早期治療を行う上で重要な医療課題と考えられます。フローボリューム曲線を解釈するプログラム医療機器を、京都大学、チェスト株式会社、NECソリューションイノベータ株式会社(NES)と共同で開発しています。2023年3月に開発段階の研究を終了し、チェスト株式会社で事業化への開発が進められています。チェスト株式会社から事業化段階への移行に関するマイルストーン(2023年6月14日適時開示)。及び対象地域拡大(国際展開)に係るオプション権行使に伴う一時金も受領しています(2025年2月12日適時開示)。

(b) RSAI02(維持血液透析医療支援プログラム医療機器)
慢性腎不全患者は、廃絶した腎臓の代わりに除水と老廃物の除去を行うために週3回、生涯にわたって血液透析を受けます。除水不足は心不全、高血圧等心肺機能に障害を与える一方、過度な除水は透析中の低血圧を生じ、気分不良、意識消失といった有害事象をもたらします。不適切な除水量の設定により除水不足や過除水が生じ有害事象が発生すると医療従事者は患者対応に追われ、大きな負担となります。透析病院では数十名の患者を対象に、1名の医師、数名の看護師や臨床工学技士を中心に管理が行われていますが、人的資源は充分ではなく、透析中に発生する急激な低血圧などの合併症の発生は、少ない人的資源を消費し、患者の生命予後にも悪影響を及ぼします。安全安心な血液透析を実現するために、適切な目標総除水量を予測するプログラム医療機器を、聖路加国際大学、東北大学、ニプロ株式会社、日本電気株式会社(NEC)、NESと共同で開発しています。このプログラム医療機器はNEC北米研究所と共同で開発した人工知能(AI)であるDual-Channel Combiner Network(DCCN)をコア技術として活用しています。AMED「医療機器開発推進研究事業(代表機関:東北大学、当社は協力機関)」に採択され(2023年2月27日適時開示)、2023年4月にPMDA開発前相談を実施し、2024年1月にはPMDAプロトコール相談を完了しました。薬事承認申請のための臨床性能試験を実施し(2024年10月21日適時開示)、目標症例数である150症例の登録を達成し(2025年4月9日適時開示)、最終的な解析結果は正解率90.0%と当初設定していた主要評価項目の目標正解率80%を10%上回り、専門医に対するプログラム医療機器の非劣性(同等)が実証されました(2025年10月20日適時開示)。また、AMEDより本事業の実用化を加速するための研究費(調整費)143,000千円の追加配賦を受けました(2025年9月10日適時開示)。これにより、本来当社の費用負担にて実施する予定であった実用化に向けたシステム開発費用が削減されました。本プログラム医療機器の実用化に向けて、東レ・メディカル株式会社(2023年12月8日適時開示)、ニプロ株式会社(2024年3月14日適時開示)と共同開発契約を締結しました。さらに、薬事承認申請や事業化に向けた取組みを加速するため、ニプロ株式会社との間で共同開発契約の変更に関する覚書を締結しました(2025年10月30日適時開示)。2022年10月に基本となる知的財産権を出願し、2023年5月に国際出願、2024年1月には新たな知財を追加出願しました。

(c) RSAI03(糖尿病治療支援プログラム医療機器)
糖尿病の血糖値を厳格にコントロールし、糖尿病合併症を予防するためにはインスリン注射治療が必要です。しかし、インスリンの安全な用量域は狭く、過剰投与で低血糖を生じるために、患者ごとに最適な種類と投与量を選定する必要があります。一方、糖尿病専門医は医師全体の2%もおらず、地理的にも偏在しているため、現状では糖尿病患者の主治医が糖尿病専門医であるとは限らず、むしろ非専門医に受診することが多いです。非専門医にも専門医レベルのインスリン治療を実行できるよう支援するプログラム医療機器を東北大学及びNECと共同で開発しています。このプログラム医療機器は、NECが開発したAIであるSkill Acquisition Learning、SAiL(スキル獲得学習)を東北大学で医療用にカスタマイズしたDM-SAiLをコア技術として活用しています。東北大学病院に入院する約1,000名(約1,080,000臨床パラメータ)の患者データに基づく学習が終了し、専門医の処方するインスリンの投与量から2単位程度の誤差で予測するプログラム医療機器が開発できています。AMED「医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)(当社が代表機関)」に採択され(2022年4月20日適時開示)、2024年2月にPMDAプロトコール相談を実施し、臨床性能試験のプロトコールが確定しました。薬事承認のための臨床性能試験を実施し(2024年8月19日適時開示)、目標症例数である130症例のデータを取得しました。解析の結果、最終的な正解率は85.46%と、主要評価項目の目標正解率80%を上回る結果であり、専門医に対するプログラム医療機器の非劣性(同等)が実証され、総括報告書をまとめました(2025年3月6日適時開示)。2022年6月に基本となる知的財産権を出願し、2023年4月には国際出願を行いました。また、東北大学とユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のマッチングファンドに採択され、国際共同研究を推進しています(2026年3月3日適時開示)。

(d) RSAI04(嚥下機能低下診断プログラム医療機器)
加齢に伴い口腔機能が低下しますが、その状態(オーラルフレイル)を放置すると摂食障害や構音(発話)障害等多くの身体的、社会的障害、さらには全身性の筋肉虚弱(フレイル)につながるため、早期の診断と適切な処置が重要です。高齢社会において口腔機能低下のひとつである摂食嚥下障害は増加し、高齢者の主な死因とされる肺炎の約7割が誤嚥によるとの報告もあります。誤嚥性肺炎の予防には嚥下機能低下の早期発見とリハビリテーション等の治療介入が重要ですが、現在では、嚥下内視鏡検査、嚥下透視検査方法等患者負担の大きい嚥下評価法しかありません。嚥下と会話で使用する器官は舌や口腔・咽頭等共通部分が多く、会話から嚥下機能を評価できる可能性に着目し、嚥下機能障害を会話時の音声データから評価可能なプログラム医療機器を東北大学、NECと共同で開発しております。既に、健常者と嚥下機能低下患者の音声を区別できるプログラム医療機器を開発し、2023年3月に基本となる知的財産権を出願しました。さらに、2023年12月にはPMDA開発前相談を実施しました。

上記の実用化に向けたプログラム医療機器の開発研究に加えて、下記の複数の探索的な研究開発を進めています。

(e) 探索研究(乳がん病理診断プログラム医療機器)
乳がんは日本人女性のがんの中で最も患者数が多く、生涯に乳がんを患う日本人女性は11人に1人と言われています。しこりや画像診断等で乳がんが疑われた場合、最終診断は病理診断ですが、診断には経験を積んだ病理医が必要です。当社は東北大学大学院医学系研究科病理検査学教室と共同で、病理画像から乳がんの病変部を検出するAIを開発しています。探索研究段階では、検出モデルを3クラス(良性、非浸潤がん、浸潤がん)又は2クラス(良性、悪性)で分類し、それぞれ88.3%と90.5%での診断精度を達成しました(科学誌『Journal of Pathology Informatics』に掲載)。
さらに、この技術を応用し、乳がんの術中迅速病理診断の支援のためのAI開発に取り組んでいます。術中迅速診断は、乳がんの外科手術の範囲などを決定するための病理診断として極めて重要ですが、限られた時間や人材(病理医)で対応しなければならず、乳がんの病理診断に対して高い専門性を有する病理医が必要とされます。標本受領から10~20分以内に診断を下さねばならず、加えて凍結切片の品質は相対的に低下する傾向があります。これらの課題を解決するために、術中迅速診断の支援のためのAIを開発しました。2025年12月に本AIについての論文が掲載されました(科学誌「The Tohoku Journal of Experimental Medicine」)。

(f) 探索研究(心臓植込み型電気デバイス患者における不整脈・心不全発症予測プログラム医療機器)
心不全患者には植込み型除細動器(ICD)、両心室ペースメーカ(CRT-P)など心臓植込み型電気デバイスが広く使用されます。これら心臓植込み型電気デバイスを活用することで、自宅にいながら、刻々と変化する生体情報の経時的な遠隔モニタリングが可能となります。当社は、東北大学と共同で、心臓植込み型電気デバイス患者の遠隔モニタリング情報を活用し、心不全及び致死性不整脈の発症を事前に予測するAIを東北大学大学院医学系研究科循環器内科学教室と共同で開発しています。

(g) 探索研究(人工心臓患者における血栓発生予測プログラム医療機器)
植込み型補助人工心臓は末期心不全患者の生命維持には欠かせない治療ですが、血栓など合併症が課題です。当社は、株式会社ハイレックスメディカル及び東北大学と共同で補助人工心臓の血栓発生を予測するAIの開発に取り組んでいます。

e.診断薬:血中フェニルアラニン測定キット
フェニルケトン尿症は、適切な治療を行わないと知能発達遅延等の重篤な症状が出現します。1977年に生後マス・スクリーニング検査が実施され、ほぼ全ての患児が早期に発見されるようになりました。フェニルケトン尿症の治療には、フェニルアラニンを制限するための食事療法を正しく行う必要があり、定期的な医療機関での検査が必要ですが、数ヶ月に1度の採血では、きめ細やかな食事管理ができません。自宅で簡便かつ正確に血中フェニルアラニン濃度を測定するシステムを、東北大学大学院医学系研究科小児科学教室と共同で開発しています。糖尿病患者での自己血糖管理のように、家庭でいつでも自己測定が可能になれば、フェニルケトン尿症を有する患者のきめ細やかな食事管理が実現できます。2021年5月には診断薬に関する特許を東北大学と共同で出願し、同年6月にはPMDA相談を行いました。2023年5月に本研究内容が科学誌『Molecular Genetics and Metabolism Reports』に掲載されました。


[用語解説]※「第一部 企業の概況 3.事業の内容」内の用語についても掲示しております。
用語解説
PAI-1Plasminogen activator inhibitor1の略。分子量約42,700のタンパク質であり、主に血管内皮細胞と肝細胞から合成分泌されますが、脂肪細胞等ほかの細胞からの分泌合成も確認されています。組織型プラスミノーゲンアクティベーターやウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクティベーターと1:1で結合して阻害することによって血栓の溶解を調節する作用を持ちます。
カルボニルストレス統合失調症の発症者には、AGEs(Advanced Glycation End Productsの略)が生成されやすい遺伝子変異を持つ人がおり、AGEsが蓄積する状態を「カルボニルストレス」と呼びます。AGEsは、終末糖化産物、後期糖化生成物等と訳され、タンパク質の糖化反応(メイラード反応)に依って組成される生成物の総称であり、身体の様々な老化に関与する物質(生体化学反応による生成物)と言えます。現在判明しているだけでも、AGEsには数十種類の化合物があり、それぞれ(多種多様な化学的性質を有する。)が蓄積する状態を「カルボニルストレス」と呼びます。
ピリドキサミンビタミンB6の化合物のひとつです。
医師主導治験2003年に薬事法が改正され、製薬企業等と同様に医師自ら治験を企画・立案し、治験計画届を提出して治験を実施できるようになりました。この治験の準備から管理を医師自ら行うことを医師主導治験と言います。医師主導治験を実施するためには、治験薬の提供、概要書作成のための情報提供、治験薬に関する安全性情報の相互交換、資金提供など様々な企業の協力が重要です。
PoCProof of Concept(概念実証)。ある分子が創薬の標的であると考えて、その標的に作用する物質が疾患の治療薬になり得るという仮説(コンセプト)を設定した場合、その物質が患者に対して実際に治療効果を示すことを、適切な指標を用いて直接的(場合によっては間接的)に実証すること。
造血幹細胞血球系細胞に分化可能な幹細胞
AMED国立研究開発法人日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development)は内閣府所管の国立研究開発法人
医療分野の研究開発の基礎から実用化までの一貫した推進体制の構築、成果の円滑な実用化に向けた体制の充実、研究開発の環境整備を総合的に行うことを目的として2015年に設立
モダリティ治療技術 / 医薬品の種類(低分子医薬、抗体医薬、核酸医薬等の種別)
セノリティック医薬品がん化を促進する事なく老化関連疾患を抑制することをsenolyticsと言い、その作用を有する医薬品をセノリティック医薬品と言います。老化(senescence)と対抗(lytics)を組み合わせた言葉で、「老化防止」を意味します。
組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)血漿タンパク質のプラスミノーゲンをプラスミンに活性化する酵素。生じたプラスミンが血栓の主な構成タンパク質であるフィブリンを分解します。
薬機法「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」2014年に薬事法改正により名称変更となり医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の品質・有効性及び安全性を確保することを目的とした法律
チロシンキナーゼたんぱく質を構成するアミノ酸のひとつであるチロシンにリン酸を付加する機能を持つ酵素。プロテインキナーゼの一種。細胞の増殖・分化などに関わる信号の伝達に重要な役割を果たす。遺伝子の変異に依ってチロシンキナーゼが異常に活性化すると、細胞が異常に増殖し、がんなどの疾病の原因となります。
骨髄ニッチ造血幹細胞は骨髄の中にある特別な環境「ニッチ」によって分裂しないように静止状態を維持され、必要に応じた自己複製能力と老化して機能を失わないための仕組みを持っていると考えられています。



用語解説
深い分子遺伝的寛解慢性骨髄性白血病の原因となるBCR/ABL遺伝子の量を分子遺伝学的に測定します。治療の結果、その遺伝子量が2回連続して0.0032%以下に低下した場合、分子遺伝学的完全寛解(DMR)と判断されます。
奏効率固形がんに対する治療効果の判定に用いる一般的な評価基準です。治療開始前に腫瘍の大きさをCTなどの画像診断で計測し、大きな腫瘍を選択して標的病変、それ以外を非標的病変と呼びます。これら病変の治療中の大きさの変化を「完全奏効(CR)」「部分奏効(PR)」「安定(SD)」「進行(PD)」と表します。完全奏効(CR)+部分奏効(PR)の割合を奏効率と定義します。
完全奏功(CR)すべての標的病変の消失もしくはリンパ節の場合は短径10mm未満に縮小
部分奏功(PR)治療開始前より30%以上縮小
進行(PD)治療中に最も腫瘍が小さい時より20%以上腫瘍が増大もしくは径にして5mm 以上の増大
安定(SD)部分奏功(PR)と進行(PD)の間

免疫チェックポイント
阻害薬
チェックポイントという免疫にブレーキをかける分子(CTLA-4、PD-1、PD-L1など)が、免疫のバランス維持に重要です。がん細胞はこのブレーキを逆手にとって免疫系の攻撃を抑え込みます(免疫逃避)。免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブなど)はこのブレーキをはずし、免疫逃避を解除します。
アポトーシス不要になった細胞を除去するため、細胞自らがプログラムを作動して自殺する細胞死現象をいいます。
抗線維化薬その名の通り、組織の線維化を抑える薬です。線維化がおきていると判断される方や今後、線維化が進行することが予想される患者さんに処方されることがあります。抗線維化薬にはピルフェニドンとニンテダニブをいう2種類があります。
脳内モノアミンドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニン、ヒスタミンなどの神経伝達物質の総称
γアミノ酪酸(GABA)Gamma Amino Butyric Acidの略。哺乳類の中枢神経に生じるアミノ酸の一種
セロトニン脳内で働く神経伝達物質、別名5-ヒドロキシトリプタミン
主に生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などに関与する。
ドーパミン中枢神経系に存在する神経伝達物質
運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わる。
ウェルニッケ脳症チアミンとも呼ばれるビタミンB1が不足することから引き起こされる神経系の急性症状
ホットフラッシュ更年期障害の代表的な症状。上半身ののぼせ、ほてり、発汗等が起こります。
腹膜透析透析の装置として、自分の体の腹膜(胃や腸などの臓器を覆っている薄い膜)を使う方法。お腹の中に管(カテーテル)を通して透析液を入れておくと血液中の老廃物や不要な尿毒素、電解質などが透析液の中に移動します(拡散)。また、透析液と血液の浸透圧の差(透析液は糖などの浸透圧物質のため、浸透圧が血液より高くなります)で体の余分な水分を除去します(浸透)。
スパイロメトリー苦痛を伴わずにできる簡単な呼吸機能検査、被験者が吐き出す息の量と吐き出す時間を測定する。COPD(慢性閉塞性肺疾患)及びその他の肺の病気の診断に重要な検査
セノリティクス老化細胞は、細胞分裂が停止し、その特性を変えた細胞です。これらの細胞は増殖しなくなると同時に、周囲の組織に悪影響を及ぼす物質を大量に分泌し続けます。セノリティクスは、このような害をなす老化細胞を特異的に認識して除去する治療アプローチです。従来の疾患治療とは異なり、加齢そのものを緩和・逆転させることを目指しています。


用語解説
エクソソーム細胞が分泌する直径30~150ナノメートルの極小な小胞です。細胞内から様々なタンパク質、脂質、遺伝物質(RNA)を包み込んで体液中に放出され、他の細胞に取り込まれて情報伝達を行います。治療用途では、幹細胞由来のエクソソームが再生促進・炎症軽減効果を期待されており、新しいバイオ医薬品として開発が進行中です。
エピジェネティック・リプログラミング(老化細胞若返り)遺伝子の配列自体は変えずに、遺伝子の働きを制御する化学的な「目印」(エピジェネティック修飾)を修正し、細胞を初期化する技術です。例えば、転写因子(遺伝子スイッチ)を導入することで、成熟した細胞を若い細胞状態に戻します。Life Biosciences社の「ER-100」は視神経症を対象とした遺伝子治療ですが、老化細胞の若返りに向けた基礎研究としても位置づけられています。
炎症性サイトカイン細胞が放出する信号物質で、免疫応答と炎症を引き起こします。代表的なものにはTNF-α、IL-1β、IL-6などがあります。通常、感染や組織損傷への一時的な防御応答として機能しますが、老化細胞から持続的に放出されると慢性炎症となり、全身の組織を傷つけます。
ケモカイン細胞が分泌する低分子の信号物質で、特に免疫細胞の移動・誘引を促します。MCP-1(CCL2)、RANTES(CCL5)など多くの種類があります。正常時は病原体への対抗に役立ちますが、老化細胞が異常に放出する場合、不要な免疫細胞浸潤を招き、組織損傷を加速させます。
老化関連分泌形質(SASP)老化した細胞が周囲に放出する炎症物質の総称です。具体的には、IL-6、TNF-α、IL-1βなどの炎症性サイトカイン、MCP-1などのケモカイン、及び様々な成長因子が含まれます。これらの物質は周囲の健全な細胞や組織に慢性炎症を引き起こし、動脈硬化、線維化、神経変性、代謝異常といった加齢関連疾患の共通基盤を形成しています。
細胞周期調節因子細胞周期は、細胞が成長し、DNAを複製して2つの娘細胞に分裂する一連の過程です。このプロセスが順序正しく、かつ正確に行われるように制御しているのが細胞周期調節因子です。
klothoマウスKlotho遺伝子の変異により、実年齢より非常に急速に老化する実験動物モデルです。カレンダー年齢数ヶ月で、実年齢なら数年分の老化が進行します。PAI-1阻害薬投与により老化症状が改善し、寿命が延長されたという研究成果により、RS5614の有効性が実証されています。
ウェルナー症候群「成人型早老症」とも呼ばれる遺伝疾患で、WRN遺伝子の変異に起因します。思春期までは正常だが、その後加速度的に老化が進行し、30~40代で糖尿病、心筋梗塞、がんなどの加齢関連疾患が発症します。患者由来の細胞を使った研究でPAI-1阻害薬が細胞老化を改善することが報告されており、RS5614の老化制御メカニズムを支持する重要なエビデンスとなっています。
エピゲノム(遺伝子修飾)すべての細胞は全く同じDNA(ゲノム)を持っていますが、それぞれ異なる姿や機能を持てるのはエピゲノムのおかげです。エピゲノムとは、DNAの配列そのものを書き換えることなく、どの遺伝子を「オン(使う)」にして、どれを「オフ(休ませる)」にするかをコントロールする、化学的な目印(付箋やマーカー)の総称です。
生物学的年齢(エピジェネティック・クロック)DNAメチル化などのエピジェネティック修飾パターンから計算される、生物学的な老化度合いです。カレンダー上の実年齢(時系列年齢)とは異なり、臓器や組織の実際の老化状態を反映しています。Horvath法などで算出されたエピジェネティック・クロックは、健康寿命の予測や加齢関連疾患のリスク評価に有用な生物学的マーカーとされています。
Horvath法生物学的年齢を計算するための異なるアルゴリズム(計算手法)です。Horvath法は多臓器での加齢を捉える汎用的なエピジェネティック・クロック。機械学習により、数百から数千のDNAメチル化サイトから生物学的年齢を推定します。


用語解説
PC-Horvath法生物学的年齢を計算するための異なるアルゴリズム(計算手法)です。PC-Horvath法はより特定の臨床的表現型と相関するよう改良されています。機械学習により、数百から数千のDNAメチル化サイトから生物学的年齢を推定します。
老化関連マイクロRNA(SA-miRNA)マイクロRNA(miRNA)はタンパク質をコードしない短いRNA分子(22ヌクレオチド)で、遺伝子発現を調節します。SA-miRNAは老化細胞の出現と蓄積を促進し、老化形質の波及を媒介するmiRNAの総称です。本文中の「miR-22-3p、miR-18a-5p、miR-28-5p」などが該当し、これらの低下は老化進行の抑制を示唆しています。
NK細胞「ナチュラルキラー細胞」の略で、獲得免疫の学習を必要とせず、がん細胞やウイルス感染細胞を直感的に認識・破壊する先天的な免疫細胞です。加齢により機能が低下し、その代償として数が異常に増加する傾向があります。XPRIZE試験で「老化NK細胞」が減少したのは、免疫機能の健全な回復を示唆しています。
樹状細胞免疫の「プロフェッショナル情報仲介人」で、病原体や異物を取り込んだ後、その情報をヘルパーT細胞などに呈示し、適切な免疫応答を展開させます。老化に伴い数や機能が低下しますが、本試験で有意に増加したことは、免疫監視能力の回復を意味しています。
造血幹細胞骨髄に存在し、赤血球、白血球、血小板などすべての血液細胞の供給源となる幹細胞です。加齢により数と機能が低下し、免疫細胞を含む血液細胞の供給が減少します。RS5614投与により造血幹細胞が増加・活性化したことは、血液と免疫の再構築を示唆します。
多能性リンパ系前駆細胞(MLP)造血幹細胞から分化した前駆細胞で、B細胞、T細胞、ナチュラルキラーT細胞など、全てのリンパ球に分化する潜在能を持ちます。加齢により減少し、結果としてリンパ球(特にT細胞)産生が低下して免疫機能が衰えます。MLPの増加は、加齢に伴う免疫機能低下の改善を直接示す重要なマーカーです。
トランスクリプトーム細胞やティッシュから抽出された、ある時点で実際に発現している全遺伝子のmRNA(転写産物)の総体です。ゲノム(遺伝子の設計図)とは異なり、トランスクリプトームは細胞の状態や環境応答を直接反映します。若年細胞と老化細胞のトランスクリプトームを比較することで、加齢による遺伝子発現の変化を網羅的に把握できます。
RNA-seq次世代シーケンサー(NGS)を用いた遺伝子発現測定技術です。細胞内のすべてのmRNAを検出し、各遺伝子の発現量を定量化します。従来のマイクロアレイよりも高い感度と動的範囲を持ち、未知の遺伝子転写体の発見も可能です。本試験で造血幹細胞のトランスクリプトームの若齢化を立証した主要な手法です。
オートファジー細胞が自分自身のタンパク質や古くなった小器官を分解し、リサイクルする仕組みです。細胞内を掃除して正常な状態を維持するだけでなく、飢餓時に分解物からエネルギーを生み出したり、有害な病原体を排除したりする役割があり、健康維持に不可欠な機能です。
SomaScanSomalogics社が開発した網羅的タンパク質解析プラットフォームで、血液中の7,000~7,600種類のタンパク質を同時に測定・定量化できます。アプタマー技術(特定のタンパク質に結合する短いDNA/RNA分子)を用いており、従来の方法では検出困難な低濃度タンパク質も測定可能です。本試験では全身の臓器機能改善を包括的に評価する手段となりました。
アミロイドβA4アルツハイマー病の主要な原因物質とされるタンパク質断片です。前駆体タンパク質(APP)が切断されて生成されます。加齢とともに蓄積し、神経毒性を持つ凝集体(アミロイド・プラーク)を形成し、認知機能低下を引き起こします。本試験でアミロイドβA4が減少したことは、認知症予防・改善の可能性を示唆しています。


用語解説
血清アミロイドPコンポーネント(SAP)全身性炎症の指標となるタンパク質で、C反応性タンパク質(CRP)と同じペントラキシン族に属します。高齢者や慢性炎症患者で上昇し、認知機能低下・血管疾患・寿命短縮と相関します。本試験での低下は、全身性炎症の改善と神経保護を意味しています。
線溶系血栓を溶解して血流を確保するシステムです。プラスミノーゲン→プラスミンへの活性化により、血栓の主成分であるフィブリンを分解します。加齢により低下し、血栓症のリスク増加につながります。本試験での活性化は血管健全性の改善を示します。
小胞体ストレス細胞内の小胞体(タンパク質合成・品質管理の工場)が過負荷状態になり、正常なタンパク質の折りたたみが障害される現象です。結果として異常なタンパク質が蓄積し、細胞死につながることもあります。加齢に伴い増加し、神経変性疾患や代謝疾患の原因となります。本試験での制御改善は、細胞機能の正常化を示します。
酸化ストレスマーカー(8-OHdG)8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンで、活性酸素(フリーラジカル)によるDNA酸化損傷の代表的な指標です。尿中や血液中で測定され、老化や各種疾患と相関します。8-OHdGの減少は、細胞レベルでの酸化ストレス軽減と抗酸化防御の向上を示唆します。
終末糖化産物(AGEs)グルコースなどの還元糖がタンパク質のアミノ基と非酵素的に反応し、複雑な褐色化合物を形成した産物です。加齢とともに蓄積し、タンパク質の架橋により組織硬化・機能障害を引き起こします。また、AGE受容体(RAGE)を介して炎症促進シグナルも送ります。AGEsの低下は老化速度の減速を示唆します。
細胞治療(CAR-T)キメラ抗原受容体T細胞(Chimeric Antigen Receptor T cell)療法で、患者自身のT細胞を遺伝子工学で改変し、がん細胞に特異的な受容体を導入する細胞治療です。導入された受容体ががん細胞表面の抗原を認識すると、T細胞が活性化してがん細胞を攻撃します。既に複数のがん治療に承認されており、セノリティクスにも応用研究が進行中です。
ドラッグリパーパシング既に医療現場で別の疾患治療に承認・使用されている医薬品を、新たな適応症(疾患)に転用する戦略です。臨床安全性データが豊富にあるため、開発期間と費用を大幅に削減できます。新規医薬品開発と比べて早期市場投入が可能という利点があります。


事業等のリスク株式の総数等


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E36825] S100YGXR)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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