有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100TX58 (EDINETへの外部リンク)
株式会社ライスカレー 事業の内容 (2024年3月期)
(1) ミッション及びビジョン
当社グループは、「誰もが、ありのままに一歩ふみ出せる場所づくりを。」をミッションとして掲げ、コミュニティデータプラットフォーム事業※1、※2の展開を通じて「コミュニティデータプラットフォーマーとしての地位を確立し、さまざまなコミュニティから収集されたデータの活用を通じて多様化する社会のニーズに沿った事業を創出し、多様な価値観による経済活動に主導された持続可能な社会を実現すること」を経営目標としております。そのために、データを基盤に社会の多様な価値観やニーズ、想いに応える事業を創り続けるべく「次の時代のコミュニティを創っていく。」というビジョンを掲げております。※1 コミュニティ:特定の共通した価値観や興味関心を持つ人々の集まり。
※2 コミュニティデータ:SNSをはじめとした消費者のデジタル上の情報発信から得られる、市場ニーズや消費者インサイトなど、付加価値の高い独自データ。
(2) 市場分析と事業展開の背景
当社グループは当社(株式会社ライスカレー)及び連結子会社1社(株式会社RiLi)により構成されており、インターネットコミュニティ領域※1において事業を展開しています。当社グループが事業を展開するインターネットコミュニティ領域においては、個人の滞在時間が大幅な増加傾向にあります。総務省情報通信政策研究所の「2022年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、いわゆるZ世代やミレニアル世代と呼ばれる、10代や20代においては、2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降の個人の可処分時間増のうち、「動画投稿・共有サービスを見る」や「ソーシャルメディアを見る・書く」といったインターネットコミュニティ領域に、最も多くの時間が配分されたと調査されました。
また、それに伴い、財・サービスの提供者である企業は、この変化に適応するため、広告資源のインターネット領域への配分を拡大させています。さらに、従来は消費者であった個人が、供給者側に回る例(CtoC※2)も、個人の利用が可能なECプラットフォーム等の発展により拡大しています。
当社グループは、上記の大きなトレンドを踏まえ、消費者が今後より一層インターネットコミュニティ領域の中での消費行動を拡大していくと考え、コミュニティデータを起点として経済の場を生み出すコミュニティデータプラットフォーム事業を展開しております。
※1 インターネットコミュニティ領域:SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)をはじめとしたインターネットのアプリケーションを通じて共通の関心分野、価値観や目的を持った利用者が集まって持続的に相互作用する場。
※2 CtoC:Consumer to Consumerの略。日本語では「個人間取引」を指し、消費者が消費者に対して商品の販売やサービスの提供をするビジネスモデル。
(3) 当社グループの事業内容
当社グループはコミュニティデータプラットフォーム事業のみの単一セグメントであり、自社開発をしたコミュニティデータマネジメントツール群であるデータクラウドを基盤として、企業向けにサービスを提供するエンタープライズ領域と、一般消費者向けにブランドやサービスを提供するコンシューマ領域を展開しております。はじめに、事業基盤としてデータクラウド『CCXcloud』シリーズによって蓄積・分析された、SNSをはじめとするコミュニティに関連する資産、すなわちデータアセット(コミュニティデータ)が当社グループの事業の特徴として挙げられます。
『CCXcloud』にはSNSをはじめとしたコミュニティから取得できるマーケティングデータやユーザーのインサイト※1、そしてEC等の購買データなど多様なコミュニティデータの蓄積・分析が可能となっており、当社グループが主にインターネット上で自社運営しているコミュニティ(自社コミュニティ)及び当社グループが支援する顧客のコミュニティには全て『CCXcloud』を導入しております。
[事業構成図]
(注) SMB:Small and Medium-sized Businessの略で、中小・中堅企業を指す。
当社グループは自社コミュニティとしてさまざまなテーマ、年齢層に向けたメディアコミュニティやクリエイター※2コミュニティを運営しており、累計400万人を超えるコミュニティ規模となっています(2024年3月31日時点)。それらの自社コミュニティより生まれ、『CCXcloud』に蓄積したコミュニティデータをもとに、一般消費者向けにさまざまなコミュニティブランドをはじめとした各種サービスを展開しています。また、『CCXcloud』に蓄積されたコミュニティデータから生み出されたマーケティングソリューションを顧客に提供する、コミュニティマーケティング関連サービスを展開しています。
『CCXcloud』には、SNSフォロワー数※310.2億ユーザー、SNSリアクション数※449.4億回、連携アカウント数※512,762アカウント(2024年3月時点)のコミュニティデータが蓄積されており、コミュニティデータプラットフォームとしての規模を拡大し続けております。
さらに、『CCXcloud』はジェネレーティブAI(生成AI)※6を活用したリコメンド(おすすめ)機能をはじめとした先進的な技術を取り入れております。
上述の通り、当社グループはエンタープライズ領域とコンシューマ領域の両軸でデータドリブン※7でのコミュニティデータプラットフォーム事業に取組んでおり、この事業展開並びに『CCXcloud』へのコミュニティデータの蓄積こそが当社グループならではの強みとなります。
※1 ユーザーのインサイト:ユーザー自身も認識していない隠れたニーズや本音。
※2 クリエイター:世間や流行に大きな影響を持つ人(=インフルエンサー)やタレント、Youtuberなどコンテンツを発信している人。
※3 SNSフォロワー数: 『CCXcloud』 の構成ツールの一つであるSNS分析ツール『CCXsocial』においてデータを連携して取得しているSNSアカウントのフォロワー総数。
※4 SNSリアクション数: 『CCXcloud』 の構成ツールの一つであるSNS分析ツール『CCXsocial』においてデータを連携して取得しているSNSアカウントに対するフォロワーからのリアクションデータの総数(いいね、保存、コメント等)。
※5 連携アカウント数:自社開発をしたコミュニティデータマネジメントツール群であるデータクラウド『CCXcloud』の主要ツールである、『CCXsocial』の累計データ連携アカウント数及び『アドスタ byCCXcloud』の累計広告配信アカウント数を足し合わせたもの。
※6 ジェネレーティブAI(生成AI):コンテンツやモノについてデータから学習し、それを使用して創造的及び現実的な、まったく新しいアウトプットを生み出す機械学習方法。既存のAIと違い、AI自身がコンテンツ等を生成できる。
※7 データドリブン:収集したデータを分析し、意思決定や企画の立案に役立てていく方法。
[コミュニティデータとは]
以下では主にコミュニティデータプラットフォーム事業を構成する2つの事業領域(①エンタープライズ領域、②コンシューマ領域)について詳細に説明します。
① エンタープライズ領域
当社グループで展開するエンタープライズ領域は、まず顧客(クライアント企業)が主にオンライン上で運営するSNSを中心としたコミュニティに関連する運用、マーケティング、広告、キャンペーン企画等の戦略立案及び実行を総合的に支援する各種ソリューションを提供するマーケティング・DX※1と、次にSNS分析ツール『CCXsocial』や中小企業向けSNSコミュニティ集客ツール『アドスタ byCCXcloud』等から構成されるコミュニティデータマネジメントツール群である『CCXcloud』を提供するデータクラウドから成り立っております。マーケティング・DXは『CCXcloud』に蓄積される社内外の幅広いコミュニティデータの収集・分析に基づいた一気通貫したマーケティングソリューションであることが特徴です。SNS運用代行、インフルエンサーPR、デジタル広告、WEB制作といった幅広いソリューションの提供を行っています。SNSへの企業の関心が高まり、企業のSNSをはじめとしたデジタルマーケティング予算が拡大する昨今において需要が高まっております。また、当社グループが提供するデータドリブンのSNSコミュニティ運用手法は顧客から高く評価され、単発的なキャンペーン施策やインフルエンサーキャスティング施策の提供などとは異なり、クライアント企業の中長期的な企業価値向上につながる本質的な支援を行っております。結果、当社は継続性の高い取引を実現しており、2024年3月期における取引※2においては、12ヶ月のうち6ヶ月以上取引のあったクライアント企業数は全クライアント企業数の50.3%を占めており、3ヶ月~5ヶ月取引のあったクライアント企業割合は23.0%、1ヶ月~2ヶ月取引のあったクライアント企業割合は26.7%となりました。また、SNSを中心としたマーケティングの上流から下流まで幅広いソリューションを提供していることから、大手企業が求める総合的なマーケティング支援を直接行うことができるため、2024年3月期の主要な取引※3における代理店を挟まない直接取引を行う顧客数割合は60.0%、1,000億円以上の売上規模※4を持つ顧客企業が全体の33.3%となりました。さらに、コンシューマ領域において提供している自社のブランド・サービスから得られるマーケティングに関するデータやノウハウを活用することで、より質の高いソリューションの提供を実現しています。
データクラウドにて展開している『CCXcloud』は、SNSを中心としたさまざまなコミュニティデータを取得・統合管理できるデータマネジメントツール群です。SNS分析ツール『CCXsocial』は、当社の運営するブランド・サービスやメディア、当社顧客など当社が関わるSNSコミュニティに無料で提供され、当社のSNS分析に関する基盤としての役割を果たしています。2024年3月期末には前期末と比較して累計契約アカウント数※5は578.0%増加しました。また、SNSコミュニティ集客ツール『アドスタ byCCXcloud』は、SNS広告を中心としたインターネット広告配信による集客ができるサービスです。インターネット広告業界で慣習的に設定されている配信金額の下限を廃止して低予算から広告を簡単に配信することを可能にしたツールです。低予算から広告を配信することが可能になったため、中小企業を中心にサービスの利用が拡大しており、2024年3月期末には前期末と比較して累計広告アカウント数※6が307.9%増加しました。
※1 DX:「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称で、デジタル技術によってビジネスや社会、ライフスタイルを変革することを指す。
※2 ただし、2024年2月以降の新規獲得クライアント企業については除く。
※3 2024年3月期通期のエンタープライズ領域のマーケティング・DXに関するソリューション提供に起因する売上高の約80%を占める取引先企業45社のうちの取引形態の比率。
※4 売上規模については2024年3月末時点における各社直前通期決算の数値に基づく。
※5 『CCXsocial』に契約しているアカウント数の累計について、2023年3月末時点と2024年3月末時点を比較したもの。
※6 『アドスタ byCCXcloud』を通じて広告配信を行ったアカウント数の累計について、2023年3月末時点と2024年3月末時点を比較したもの。
[マーケティング・DX関連のソリューション]
(注) 1.LPO:Landing Page Optimizationの略で、「LP(ランディングページ)最適化」を指す。 製品・サービスの紹介から購入までを一つのページにまとめたLPの内容を、ユーザーのニーズに合わせて改善すること。
2.プロコミュニティs IF:当社の提供する、特定のコミュニティに特化してインフルエンサーや質の高い一般ユーザーを集めた「インフルエンサー・エージェンシー」の総称。IFはインフルエンサーを指す。
3.プロコミュニティs UG:UGはUser Generatedの略で、質の高い一般ユーザーにより生み出させるSNS上の投稿のことを指す。
[データクラウド関連サービス]
② コンシューマ領域
当社グループは、『CCXcloud』へ蓄積されたコミュニティデータとノウハウを基に、消費者に対して価値あるサービスを提供する事業領域をコンシューマ領域としており、主力ブランドの『MiiS』や『RiLi』のほか、3つのコミュニティブランド・5つのコミュニティメディアを運営しております。コミュニティブランド『MiiS』の場合、オーラル美容をコンセプトに、SNSなどをはじめとした美容関連コミュニティでの販売促進活動を行っております。さらには、自ら購入した『MiiS』商品を自身のSNSで紹介しているようなMiiS愛好インフルエンサー※1がアンバサダーとしてオーラル美容そのものの普及やホワイトニング歯磨きジェルなどの商品の販売に努めています。また、店舗での卸売販売、さらには『MiiS』のブランディング力を活用したデンタルクリニックのプロデュースをはじめとしたオフラインでのサービス提供まで行っております。
子会社で運営するコミュニティブランド『RiLi』の場合、Z世代※2向けのSNS映え※3ファッションをコンセプトに、アパレル商品の販売を行っております。『RiLi』に関しても『MiiS』同様に、RiLi愛好インフルエンサー※4がアンバサダーとして『RiLi』ブランドの普及に努めております。
さらに、コミュニティブランド『HICAT』の場合、ゲームなどのサブカルチャーを好む消費者層を対象に、カフェインレスのエナジードリンク『HICAT Hi-ENERGY』の販売を行っております。また、ブランドの世界観を体現するVTuber※5のプロデュース、タイアップ商品の開発を行い、『HICAT』ブランドの普及に努めております。
また、こうしたブランド開発を通じて得られた知見はエンタープライズ領域にも還元しており、新たなソリューションの開発や既存ソリューションの改善はもちろん、顧客やリード企業向けのセミナーに自社ブランド担当者が登壇するなど、営業における連携も行っております。
今後もコミュニティデータを活用した熱量の高いコミュニティブランドの持続可能な成長や新しいコミュニティブランドの創出に継続的に挑戦していきます。
※1 MiiS愛好インフルエンサー:実際に『MiiS』の商品を利用している、SNS等で多くのフォロワー(ファン)を保持している人物のこと。
※2 Z世代:1990年代後半から2010年代に生まれた世代のこと。
※3 SNS映え(ばえ):SNSユーザーが好む、写真に映えるような風景・人・モノのこと。
※4 RiLi愛好インフルエンサー:実際に『RiLi』の商品を利用している、SNS等で多くのフォロワー(ファン)を保持している人物のこと。
※5 VTuber:「Virtual Youtuber」の略語であり、動画配信サービスYouTube上で本人ではなく2D又は3Dのキャラクターを使って活動している人物のこと。
[オーラル美容ブランド『MiiS』のケース]
当社のオーラル美容ブランド『MiiS』の商品開発においては、開発初期に、美容関連の自社メディアやインフルエンサーを通じて、消費者の課題やニーズに関するデータを収集・分析することで、美容コミュニティにある「オーラルケア×美容」というニーズと商品のマーケットポテンシャルを検証しました。これにより、ブランドの収益可能性が見込めるという示唆を得ることができたことに加え、パッケージデザインやコピーなどの具体的な方向性についても定量的に判断することが可能になりました。こうしたコミュニティデータを活用したブランドの展開は加速しており、「ホワイティエッセンス(歯の美容液)」を中心に自社ECや海外EC、モールEC、卸店舗、さらにはデンタルクリニックのプロデュースも行うなど、多様な販路を通じた収益化にも成功しております。
[ブランド・サービス一覧と収益化手法]
当社グループは特定の分野に絞られない再現性のあるブランド・サービスの展開を目指しています。例えば『MiiLabo』や『RiLi.tokyo』など、自社SNSメディアを通じて収集されたコミュニティデータは、オーラル美容ブランド『MiiS』や、Z世代など若年層コミュニティを抱えるアパレルブランド『RiLi』などの運営に活用されており、商品開発・マーケティングに関するノウハウの共通化に貢献しております。当社グループは自社で提供する複数のブランド・サービスにおいて、共通したデータ分析基盤やブランド管理体制を整えており、『RiLi』のようにM&Aを通じた当社グループへの参画も実現しております。
(注) 1.IPやメディアの知名度を活かした、商品企画やPRに関するコラボレーションによるマネタイズ。
2.メディアへの広告出稿など、委託型のタイアップによるマネタイズ。
3.サービスの利用顧客数、フォロワー数を含む、コミュニティ内のユーザー数(2024年3月31日時点)。
4.大手バラエティストアへの卸売とクリニックの開業支援による。
5.期間限定のPOPUPストアや、卸売による他社運営店舗を含む。
6.大手バラエティストアやドラッグストアへの卸売。
[事業系統図]
データクラウドである『CCXcloud』を基盤に、企業から一般消費者まで、SNS上の消費活動・情報発信に関する横断的なデータを蓄積。データから導かれる多様なインサイトを軸に、エンタープライズ・コンシューマ領域において相互にシナジーを発揮した事業成長を実現し、競合優位性を構築しています。
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