有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100VGBM (EDINETへの外部リンク)
株式会社ブリヂストン 研究開発活動 (2024年12月期)
当社グループの研究開発活動は、「ゴムを極める」、「接地を極める」、「モノづくりを極める」の3つの「極める」を軸に技術イノベーションに取り組み、ビジョンに掲げる社会価値・顧客価値の創造を推進するものです。コア事業であるプレミアムタイヤ事業において「断トツ商品」の開発を強化し、成長事業であるソリューション事業との連携を深めることで、お客様が「断トツ商品」を使う段階でその価値を増幅させ、お客様の困りごとを解決することを目指しております。これらの活動は、当社グループが独自に持つ技術・知見・ノウハウなどの強いリアルにデジタルを融合させることで推進してまいります。また、化工品・多角化事業、当社グループの新たな事業機会を探索する探索事業においても同様の考え方で研究開発活動に取り組んでおります。
プレミアムタイヤ事業では、商品設計基盤技術「ENLITEN」の進化に取り組んでおります。「ENLITEN」技術は、当社グループが独自に価値を創造する「新たなプレミアム」と位置付けており、タイヤを「薄く・軽く・円く」作ることで従来品のタイヤ性能を全方位で向上させると共に、商品、市場、お客様ごとに異なるタイヤ性能への要求や付加価値を、それぞれに合わせてカスタマイズして提供する「究極のカスタマイズ」を追求し、技術の確立・進化へ取り組んでおります。乗用車用タイヤから「ENLITEN」技術を搭載した新商品をグローバルで拡充しており、2024年までに、米国のEV向け専用商品「Turanza(トランザ) EV(イーブイ)」、欧州の「Turanza 6(シックス)」、インドの「Turanza 6i(シックスアイ)」などを発売いたしました。日本では2024年に「REGNO(レグノ) GR(ジーアール)-XⅢ(クロススリー)」を発売し、2025年2月にはミニバン・コンパクトSUV専用プレミアムブランド商品「REGNO GR-XⅢ TYPE(タイプ) RV(アールブイ)」を発売いたしました。この新商品は、REGNO GR-XⅢの特性を引き継ぎながらミニバン・コンパクトSUVユーザーのニーズと車両の特徴に合わせてカスタマイズしており、従来のミニバンユーザーだけでなく、コンパクトSUVユーザーにも深みを増した空間品質や磨き抜かれた走行性能といった新たな「REGNO FEELING(フィーリング)」の価値を提供するものです。今後もより多くのお客様に当社プレミアム商品の価値を実感いただける様、「ENLITEN」技術搭載商品の拡充をグローバルで進めてまいります。
さらに、次世代の「ENLITEN」技術の進化に向けては、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動を「走る実験室」として、極限の条件で使用されるモータースポーツタイヤの開発を通じて、市販用タイヤ技術開発も加速してまいります。
また、「ENLITEN」技術を、モノづくり基盤技術であるBCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture)と融合させることで、商品力アップとビジネスコストダウンの両立、環境負荷の低減を推進しております。BCMAは、タイヤを骨組みであるカーカス、補強帯のベルト、表面のトレッドの3つのモジュールに分け、モジュール1(カーカス)、モジュール2(ベルト)を異なる商品間で共有し、開発から生産のバリューチェーンをシンプル化することでビジネスコストを低減し、モジュール3(トレッド)でタイヤ性能をカスタマイズし差別化するものです。2024年より本格的にグローバルへ導入し、まずは乗用車用タイヤ工場から4つのモデル工場を設定し、モデル工場を起点に各地域・グローバルのBCMAに関わる活動を推進しております。2024年は、モジュール共用による連続生産の実現などの取り組みを広め、ビジネスコストの低減に寄与しました。さらに、原材料調達や在庫削減などバリューチェーン全体においても効果を波及させてまいります。また、日本をグローバルにおける「モノづくりの中核」として、BCMAと連動し、「モノづくり」の本質を追求し、次のレベルへ進化させる取り組みを「シン・彦根モデル」として展開を開始しました。このモデルは、AIを実装したタイヤ成型システム「EXAMATION(エクサメーション)」の導入を起点に、生産に関連するデータを収集し、デジタル技術を駆使した分析を実施し、タイヤ生産過程における課題を抽出し、現物現場での改善活動を推進するものです。リアルとデジタルの融合によりモノづくりを進化させ、さらに、BCMAによる「バラつきのないシンプルなモノづくり」の実現と掛け合わせた相乗効果により、安全、環境、品質、コストなどのモノづくりの指標を連鎖的に改善してまいります。
成長事業であるソリューション事業では、鉱山車両用、航空機用、トラック・バス用タイヤの生産財にフォーカスしてソリューション開発を推進しております。鉱山車両用タイヤにおいては、「断トツ商品」の「Bridgestone MASTERCORE」を中核として、強いリアルとデジタルを組み合わせ、鉱山オペレーションの最適化に貢献するソリューションの拡充に取り組んでおります。一例として、鉱山事業者の大きな困りごとであるタイヤの熱に起因する故障を未然に防止するため、お客様との信頼をベースに鉱山車両情報を共有いただきながら、お客様のデータと、鉱山車両向け次世代タイヤモニタリングシステム「Bridgestone iTrack(アイトラック)」から取得できるタイヤの温度や空気圧などの当社のデータを組み合わせ、AIを活用した独自のアルゴリズムを構築しております。これにより、タイヤ耐久を予測し、最適なタイヤメンテナンスのタイミングや車両運行ルートをお客様へご提案し、タイヤにかかるコスト削減や、車両のダウンタイム削減といった鉱山オペレーションの生産性、経済価値の最大化へ貢献してまいります。また、タイヤを安全に長く使用いただくことでタイヤ使用本数を削減でき、資源生産性を向上させ、サステナビリティへも貢献してまいります。今後も、「断トツ商品」の強化とデジタル技術の進化により鉱山ソリューションを拡充させてまいります。航空ソリューションにおいても、お客様との共創をベースにソリューション開発を強化しております。これまで、日本航空株式会社との共創において、株式会社ジェイエアが運航するリージョナル機を対象に、精度の高い計画的なタイヤ交換を実現するため、オペレーション中のタイヤ摩耗量を予測する技術開発を進めてまいりました。この知見をもとに、タイヤ摩耗予測技術をさらに進化させ、2024年5月からは精度の高い計画的なタイヤ交換オペレーションの対象を、A350-900型機をはじめとした大型機に拡大いたしました。今後も航空業界におけるオペレーションの安心・安全を支え、新たな価値の創造を進めてまいります。
さらに探索事業領域においても、社会価値の創造を中核に研究開発活動を推進しております。
1つ目は、リサイクル事業の推進であります。リサイクル事業では、日本において、使用済タイヤのケミカルリサイクル技術の社会実装に向けたENEOS株式会社との共同プロジェクトを開始しております。本プロジェクトでは、経済産業省により設置された「グリーンイノベーション基金事業」の支援を受け、タイヤ・ゴム産業及び石油化学産業のバリューチェーンにおける資源循環性の向上とカーボンニュートラル化への貢献を目指しております。使用済タイヤの精密熱分解(油化)によるケミカルリサイクル技術の社会実装に向け、2023年6月に「Bridgestone Innovation(イノベーション) Park(パーク)」(以下「BIP」といいます。)内に導入した実証機により、使用済タイヤを精密熱分解して得られる分解油をリサイクルオイル化し、このオイルから合成ゴムの素原料であるブタジエンなどの化学品を高収率に製造するケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた実証実験を開始しております。さらに、2025年1月には、実証機で得た精密熱分解の基盤技術を実装した使用済みタイヤの精密熱分解パイロット実証プラントの建設を発表し、今後も、社会実装に向けて量産を想定したスケールアップ技術の確立を目指してまいります。また、もう1つのリサイクルの取り組みとして、廃プラスチックの半分以上を占めるポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレンなど)のマテリアルリサイクル技術確立に向けた産官学の取り組みについても、2024年に開始いたしました。これは、当社が開発した世界初の高機能性エチレン系熱可塑性エラストマー(ESB)を用いてポリオレフィン再生材の強度を高め、繰り返しリサイクルできる新たな資源循環型プラスチック材料の創出を目指すものです。本取り組みを通じて、ポリオレフィン特性の変化メカニズムを分子レベルで解明し、ESBの最適な分子設計を行うことで、プラスチックの効果的なマテリアルリサイクルの実現に向けた可能性を検討してまいります。
2つ目は、天然ゴム供給源の多様化を図るグアユール事業です。米国を中心に、米国エネルギー省・地域NGO・外部パートナーとの共創やオープンイノベーションをベースに推進しております。グアユールは乾燥地帯で栽培できることから、天然ゴムの代替原料として供給源の多様化だけでなく、乾燥地帯の緑化にも貢献します。グアユール由来のタイヤ開発を、2012年から本格的に推進し、2022年には、NTT INDYCAR(インディカー)® SERIES(シリーズ)において、グアユール由来の天然ゴムを使用したレースタイヤを供給し、パフォーマンスを実証しました。今後も、「走る実験室」コンセプトの下、NTT INDYCAR® SERIES を活用し、実用化へ向けた技術を探索してまいります。
3つ目は、ソフトロボティクス事業であります。ソフトロボットハンド(商品名:TETOTE(テトテ))を用いて、主に物流業、製造業におけるピースピッキング作業の自動化に向けた提案を行っております。小規模事業化フェーズとして、業界リーダーとの共創を通じて、社会と顧客の期待値に応え、需要を獲得すべく商品・サービスの開発を推進しております。加えて、ヒトのこころを動かすやわらかいロボット(umaru(ウマル)、Morph(モーフ) inn(イン))を通じて新たな感動・体験価値の創造を進めております。幅広いパートナーとの共創をベースに、探索事業としての新たな種まきを展開するとともに、若手を中心に多様な人財が活躍する場として、当社グループにおける人的創造性向上へも活かしてまいります。
4つ目は、空気充填が要らない次世代タイヤ「AirFree」の開発です。当社は安心・安全な移動を支える次世代タイヤとして、パンクの心配がなく省メンテナンスに優れ、リサイクルにも対応した非空気入りタイヤの開発を2008年より開始し、AirFreeConcept(エアフリーコンセプト)として技術を磨いてまいりました。当社グループのコアコンピタンスである「ゴムを極める」を活用した樹脂素材技術と「接地を極める」技術を軸に、デジタルによるシミュレーション技術とタイヤ技術を活用することで、非空気入りタイヤを安心・安全で乗り心地が良く、リサイクル・リトレッド性にも優れた新たな素材・構造へと進化させました。2024年には、社会実装を見据えて、AirFreeConceptを「AirFree」へと進化させ、公道における実証実験を小平市近郊で開始し、実際の使用環境により近い様々な環境で「AirFree」の特性や機能を検証しております。今後は、「AirFree」の提供価値と親和性が高いと考える「グリーンスローモビリティ(時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービス)」を事業化に向けたターゲットの1つとして、地方自治体との共創を広めることで、地域社会のモビリティを支えるべく、2026年の社会実装を目指してまいります。
また、当社は国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、トヨタ自動車株式会社と共に、人類の夢を背負って過酷な月面環境に挑戦する国際宇宙探査ミッションへ参加し、有人月面探査車向けタイヤの研究開発を推進しております。ラクダのふっくらとした足裏から着想を得て、金属製の柔らかいフエルトを接地面となるトレッド部に配置することで月面を覆うきめ細かい砂との摩擦力を高めた第1世代タイヤの技術を進化させ、「AirFree」で培った技術を活かしてしなやかに変形する薄い金属製スポークを採用し、さらにトレッド部を分割させた点を特徴とする第2世代タイヤを開発、過酷な月面環境下で求められる高い耐久性と走破性の両立を目指しております。この第2世代タイヤの開発を加速するために米国のアストロボティック社との技術協業を進めております。これまで地上走行試験やシミュレーションを中心に技術開発を進めてまいりましたが、本協業を通じて月面で実際に得られる走行データの検証により、タイヤ技術開発が大きく前進すると考えております。月面という「究極」の環境においても安心・安全な人とモノの移動を支え、スペースモビリティの未来になくてはならない存在となるべく、共創を推進し開発を進めてまいります。
さらに、モビリティの進化やサステナビリティを中核とした共創活動を推進しております。
安心・安全な自動運転車両の開発及び運営に必要となるソリューションを提供する株式会社ティアフォーとの共創を通じて、自動運転の研究開発や実用化などモビリティの進化へも貢献してまいります。自動運転技術の共創については2022年よりBIPにて開始し、2024年は自動運転車両の安全運行に向けた実証実験を長野県塩尻市の公道で行っております。この実証実験で得られるデータを用い、自動運転の技術・ノウハウを取り入れたモビリティの安全性や生産性の向上に貢献するタイヤ技術や、次世代のモビリティソリューションなどの開発を加速してまいります。
また、タイヤの原材料領域においては、天然ゴムの持続可能な安定供給・生産性向上、供給源の多様化を推進するため、様々なパートナーとの共創を通じて技術の構築を進めております。当社は2024年に福岡バイオコミュニティが実施するプロジェクトに参画し、天然ゴム資源であるパラゴムノキの栽培現場が抱えている、天然ゴムの持続的かつ安定供給上の課題である根白腐病に対して、根白腐病原菌への感染予防技術を開発し天然ゴム農園の生産性向上に貢献する研究を開始いたしました。また、米国のパシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)と提携し、タイヤの主な材料の1つで従来は石油由来で精製されるブタジエンをエタノールから合成する手法に関する研究開発に取り組んでおります。この取り組みでは、PNNLの触媒技術とブリヂストンのプロセスエンジニアリングを組み合わせ、持続可能で費用対効果の高いエタノールからブタジエンを合成する手法の確立を目指します。この手法の確立により、植物由来あるいはリサイクルより得られるエタノールからブタジエンを合成するという将来の可能性に繋げるべく研究開発を進めてまいります。
加えて、材料開発においては、国立大学法人東北大学の構内に「ブリヂストン×東北大学共創ラボ」を設置し、ゴムのシミュレーション基盤技術に関する共同研究を開始するなど、共創をベースにデジタル技術を駆使した取り組みを進めております。さらに、次世代放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」を活用したタイヤ材料の研究開発を2024年から開始いたしました。タイヤ製品に広く使用されている高分子材料を分子スケールで観察していき、ここから生まれる様々なデータとシミュレーションを融合させ、革新的な材料開発を加速してまいります。
これらの技術イノベーションを推進する場として、東京都小平市にある技術センターをグローバルなイノベーション拠点BIPとして再構築いたしました。BIPを中核に、欧州・ローマ、米国オハイオ州アクロンにある当社グループのイノベーション拠点とも連携を強化し、それぞれの強みを活かすことで、グローバルにおけるイノベーションを促進してまいります。また、BIPにおけるイノベーションを加速させるため、従業員一人ひとりが個とチームのアウトプット最大化のために自分自身で多様な働き方をデザインするABW(Activity(アクティビティ) Based(ベースド) Working(ワーキング))の考え方を取り入れた働き方変革を推進し、一人ひとりの生産性と人的創造性の向上に取り組んでまいります。
なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は1,262億円であります。
(注) 当社グループの研究開発活動には、特定のセグメントに紐づかないものがあり、またその成果はセグメント横断的に効果があるため、セグメント別の状況及び金額の記載を省略しております。
プレミアムタイヤ事業では、商品設計基盤技術「ENLITEN」の進化に取り組んでおります。「ENLITEN」技術は、当社グループが独自に価値を創造する「新たなプレミアム」と位置付けており、タイヤを「薄く・軽く・円く」作ることで従来品のタイヤ性能を全方位で向上させると共に、商品、市場、お客様ごとに異なるタイヤ性能への要求や付加価値を、それぞれに合わせてカスタマイズして提供する「究極のカスタマイズ」を追求し、技術の確立・進化へ取り組んでおります。乗用車用タイヤから「ENLITEN」技術を搭載した新商品をグローバルで拡充しており、2024年までに、米国のEV向け専用商品「Turanza(トランザ) EV(イーブイ)」、欧州の「Turanza 6(シックス)」、インドの「Turanza 6i(シックスアイ)」などを発売いたしました。日本では2024年に「REGNO(レグノ) GR(ジーアール)-XⅢ(クロススリー)」を発売し、2025年2月にはミニバン・コンパクトSUV専用プレミアムブランド商品「REGNO GR-XⅢ TYPE(タイプ) RV(アールブイ)」を発売いたしました。この新商品は、REGNO GR-XⅢの特性を引き継ぎながらミニバン・コンパクトSUVユーザーのニーズと車両の特徴に合わせてカスタマイズしており、従来のミニバンユーザーだけでなく、コンパクトSUVユーザーにも深みを増した空間品質や磨き抜かれた走行性能といった新たな「REGNO FEELING(フィーリング)」の価値を提供するものです。今後もより多くのお客様に当社プレミアム商品の価値を実感いただける様、「ENLITEN」技術搭載商品の拡充をグローバルで進めてまいります。
さらに、次世代の「ENLITEN」技術の進化に向けては、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動を「走る実験室」として、極限の条件で使用されるモータースポーツタイヤの開発を通じて、市販用タイヤ技術開発も加速してまいります。
また、「ENLITEN」技術を、モノづくり基盤技術であるBCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture)と融合させることで、商品力アップとビジネスコストダウンの両立、環境負荷の低減を推進しております。BCMAは、タイヤを骨組みであるカーカス、補強帯のベルト、表面のトレッドの3つのモジュールに分け、モジュール1(カーカス)、モジュール2(ベルト)を異なる商品間で共有し、開発から生産のバリューチェーンをシンプル化することでビジネスコストを低減し、モジュール3(トレッド)でタイヤ性能をカスタマイズし差別化するものです。2024年より本格的にグローバルへ導入し、まずは乗用車用タイヤ工場から4つのモデル工場を設定し、モデル工場を起点に各地域・グローバルのBCMAに関わる活動を推進しております。2024年は、モジュール共用による連続生産の実現などの取り組みを広め、ビジネスコストの低減に寄与しました。さらに、原材料調達や在庫削減などバリューチェーン全体においても効果を波及させてまいります。また、日本をグローバルにおける「モノづくりの中核」として、BCMAと連動し、「モノづくり」の本質を追求し、次のレベルへ進化させる取り組みを「シン・彦根モデル」として展開を開始しました。このモデルは、AIを実装したタイヤ成型システム「EXAMATION(エクサメーション)」の導入を起点に、生産に関連するデータを収集し、デジタル技術を駆使した分析を実施し、タイヤ生産過程における課題を抽出し、現物現場での改善活動を推進するものです。リアルとデジタルの融合によりモノづくりを進化させ、さらに、BCMAによる「バラつきのないシンプルなモノづくり」の実現と掛け合わせた相乗効果により、安全、環境、品質、コストなどのモノづくりの指標を連鎖的に改善してまいります。
成長事業であるソリューション事業では、鉱山車両用、航空機用、トラック・バス用タイヤの生産財にフォーカスしてソリューション開発を推進しております。鉱山車両用タイヤにおいては、「断トツ商品」の「Bridgestone MASTERCORE」を中核として、強いリアルとデジタルを組み合わせ、鉱山オペレーションの最適化に貢献するソリューションの拡充に取り組んでおります。一例として、鉱山事業者の大きな困りごとであるタイヤの熱に起因する故障を未然に防止するため、お客様との信頼をベースに鉱山車両情報を共有いただきながら、お客様のデータと、鉱山車両向け次世代タイヤモニタリングシステム「Bridgestone iTrack(アイトラック)」から取得できるタイヤの温度や空気圧などの当社のデータを組み合わせ、AIを活用した独自のアルゴリズムを構築しております。これにより、タイヤ耐久を予測し、最適なタイヤメンテナンスのタイミングや車両運行ルートをお客様へご提案し、タイヤにかかるコスト削減や、車両のダウンタイム削減といった鉱山オペレーションの生産性、経済価値の最大化へ貢献してまいります。また、タイヤを安全に長く使用いただくことでタイヤ使用本数を削減でき、資源生産性を向上させ、サステナビリティへも貢献してまいります。今後も、「断トツ商品」の強化とデジタル技術の進化により鉱山ソリューションを拡充させてまいります。航空ソリューションにおいても、お客様との共創をベースにソリューション開発を強化しております。これまで、日本航空株式会社との共創において、株式会社ジェイエアが運航するリージョナル機を対象に、精度の高い計画的なタイヤ交換を実現するため、オペレーション中のタイヤ摩耗量を予測する技術開発を進めてまいりました。この知見をもとに、タイヤ摩耗予測技術をさらに進化させ、2024年5月からは精度の高い計画的なタイヤ交換オペレーションの対象を、A350-900型機をはじめとした大型機に拡大いたしました。今後も航空業界におけるオペレーションの安心・安全を支え、新たな価値の創造を進めてまいります。
さらに探索事業領域においても、社会価値の創造を中核に研究開発活動を推進しております。
1つ目は、リサイクル事業の推進であります。リサイクル事業では、日本において、使用済タイヤのケミカルリサイクル技術の社会実装に向けたENEOS株式会社との共同プロジェクトを開始しております。本プロジェクトでは、経済産業省により設置された「グリーンイノベーション基金事業」の支援を受け、タイヤ・ゴム産業及び石油化学産業のバリューチェーンにおける資源循環性の向上とカーボンニュートラル化への貢献を目指しております。使用済タイヤの精密熱分解(油化)によるケミカルリサイクル技術の社会実装に向け、2023年6月に「Bridgestone Innovation(イノベーション) Park(パーク)」(以下「BIP」といいます。)内に導入した実証機により、使用済タイヤを精密熱分解して得られる分解油をリサイクルオイル化し、このオイルから合成ゴムの素原料であるブタジエンなどの化学品を高収率に製造するケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた実証実験を開始しております。さらに、2025年1月には、実証機で得た精密熱分解の基盤技術を実装した使用済みタイヤの精密熱分解パイロット実証プラントの建設を発表し、今後も、社会実装に向けて量産を想定したスケールアップ技術の確立を目指してまいります。また、もう1つのリサイクルの取り組みとして、廃プラスチックの半分以上を占めるポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレンなど)のマテリアルリサイクル技術確立に向けた産官学の取り組みについても、2024年に開始いたしました。これは、当社が開発した世界初の高機能性エチレン系熱可塑性エラストマー(ESB)を用いてポリオレフィン再生材の強度を高め、繰り返しリサイクルできる新たな資源循環型プラスチック材料の創出を目指すものです。本取り組みを通じて、ポリオレフィン特性の変化メカニズムを分子レベルで解明し、ESBの最適な分子設計を行うことで、プラスチックの効果的なマテリアルリサイクルの実現に向けた可能性を検討してまいります。
2つ目は、天然ゴム供給源の多様化を図るグアユール事業です。米国を中心に、米国エネルギー省・地域NGO・外部パートナーとの共創やオープンイノベーションをベースに推進しております。グアユールは乾燥地帯で栽培できることから、天然ゴムの代替原料として供給源の多様化だけでなく、乾燥地帯の緑化にも貢献します。グアユール由来のタイヤ開発を、2012年から本格的に推進し、2022年には、NTT INDYCAR(インディカー)® SERIES(シリーズ)において、グアユール由来の天然ゴムを使用したレースタイヤを供給し、パフォーマンスを実証しました。今後も、「走る実験室」コンセプトの下、NTT INDYCAR® SERIES を活用し、実用化へ向けた技術を探索してまいります。
3つ目は、ソフトロボティクス事業であります。ソフトロボットハンド(商品名:TETOTE(テトテ))を用いて、主に物流業、製造業におけるピースピッキング作業の自動化に向けた提案を行っております。小規模事業化フェーズとして、業界リーダーとの共創を通じて、社会と顧客の期待値に応え、需要を獲得すべく商品・サービスの開発を推進しております。加えて、ヒトのこころを動かすやわらかいロボット(umaru(ウマル)、Morph(モーフ) inn(イン))を通じて新たな感動・体験価値の創造を進めております。幅広いパートナーとの共創をベースに、探索事業としての新たな種まきを展開するとともに、若手を中心に多様な人財が活躍する場として、当社グループにおける人的創造性向上へも活かしてまいります。
4つ目は、空気充填が要らない次世代タイヤ「AirFree」の開発です。当社は安心・安全な移動を支える次世代タイヤとして、パンクの心配がなく省メンテナンスに優れ、リサイクルにも対応した非空気入りタイヤの開発を2008年より開始し、AirFreeConcept(エアフリーコンセプト)として技術を磨いてまいりました。当社グループのコアコンピタンスである「ゴムを極める」を活用した樹脂素材技術と「接地を極める」技術を軸に、デジタルによるシミュレーション技術とタイヤ技術を活用することで、非空気入りタイヤを安心・安全で乗り心地が良く、リサイクル・リトレッド性にも優れた新たな素材・構造へと進化させました。2024年には、社会実装を見据えて、AirFreeConceptを「AirFree」へと進化させ、公道における実証実験を小平市近郊で開始し、実際の使用環境により近い様々な環境で「AirFree」の特性や機能を検証しております。今後は、「AirFree」の提供価値と親和性が高いと考える「グリーンスローモビリティ(時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービス)」を事業化に向けたターゲットの1つとして、地方自治体との共創を広めることで、地域社会のモビリティを支えるべく、2026年の社会実装を目指してまいります。
また、当社は国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、トヨタ自動車株式会社と共に、人類の夢を背負って過酷な月面環境に挑戦する国際宇宙探査ミッションへ参加し、有人月面探査車向けタイヤの研究開発を推進しております。ラクダのふっくらとした足裏から着想を得て、金属製の柔らかいフエルトを接地面となるトレッド部に配置することで月面を覆うきめ細かい砂との摩擦力を高めた第1世代タイヤの技術を進化させ、「AirFree」で培った技術を活かしてしなやかに変形する薄い金属製スポークを採用し、さらにトレッド部を分割させた点を特徴とする第2世代タイヤを開発、過酷な月面環境下で求められる高い耐久性と走破性の両立を目指しております。この第2世代タイヤの開発を加速するために米国のアストロボティック社との技術協業を進めております。これまで地上走行試験やシミュレーションを中心に技術開発を進めてまいりましたが、本協業を通じて月面で実際に得られる走行データの検証により、タイヤ技術開発が大きく前進すると考えております。月面という「究極」の環境においても安心・安全な人とモノの移動を支え、スペースモビリティの未来になくてはならない存在となるべく、共創を推進し開発を進めてまいります。
さらに、モビリティの進化やサステナビリティを中核とした共創活動を推進しております。
安心・安全な自動運転車両の開発及び運営に必要となるソリューションを提供する株式会社ティアフォーとの共創を通じて、自動運転の研究開発や実用化などモビリティの進化へも貢献してまいります。自動運転技術の共創については2022年よりBIPにて開始し、2024年は自動運転車両の安全運行に向けた実証実験を長野県塩尻市の公道で行っております。この実証実験で得られるデータを用い、自動運転の技術・ノウハウを取り入れたモビリティの安全性や生産性の向上に貢献するタイヤ技術や、次世代のモビリティソリューションなどの開発を加速してまいります。
また、タイヤの原材料領域においては、天然ゴムの持続可能な安定供給・生産性向上、供給源の多様化を推進するため、様々なパートナーとの共創を通じて技術の構築を進めております。当社は2024年に福岡バイオコミュニティが実施するプロジェクトに参画し、天然ゴム資源であるパラゴムノキの栽培現場が抱えている、天然ゴムの持続的かつ安定供給上の課題である根白腐病に対して、根白腐病原菌への感染予防技術を開発し天然ゴム農園の生産性向上に貢献する研究を開始いたしました。また、米国のパシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)と提携し、タイヤの主な材料の1つで従来は石油由来で精製されるブタジエンをエタノールから合成する手法に関する研究開発に取り組んでおります。この取り組みでは、PNNLの触媒技術とブリヂストンのプロセスエンジニアリングを組み合わせ、持続可能で費用対効果の高いエタノールからブタジエンを合成する手法の確立を目指します。この手法の確立により、植物由来あるいはリサイクルより得られるエタノールからブタジエンを合成するという将来の可能性に繋げるべく研究開発を進めてまいります。
加えて、材料開発においては、国立大学法人東北大学の構内に「ブリヂストン×東北大学共創ラボ」を設置し、ゴムのシミュレーション基盤技術に関する共同研究を開始するなど、共創をベースにデジタル技術を駆使した取り組みを進めております。さらに、次世代放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」を活用したタイヤ材料の研究開発を2024年から開始いたしました。タイヤ製品に広く使用されている高分子材料を分子スケールで観察していき、ここから生まれる様々なデータとシミュレーションを融合させ、革新的な材料開発を加速してまいります。
これらの技術イノベーションを推進する場として、東京都小平市にある技術センターをグローバルなイノベーション拠点BIPとして再構築いたしました。BIPを中核に、欧州・ローマ、米国オハイオ州アクロンにある当社グループのイノベーション拠点とも連携を強化し、それぞれの強みを活かすことで、グローバルにおけるイノベーションを促進してまいります。また、BIPにおけるイノベーションを加速させるため、従業員一人ひとりが個とチームのアウトプット最大化のために自分自身で多様な働き方をデザインするABW(Activity(アクティビティ) Based(ベースド) Working(ワーキング))の考え方を取り入れた働き方変革を推進し、一人ひとりの生産性と人的創造性の向上に取り組んでまいります。
なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は1,262億円であります。
(注) 当社グループの研究開発活動には、特定のセグメントに紐づかないものがあり、またその成果はセグメント横断的に効果があるため、セグメント別の状況及び金額の記載を省略しております。
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