有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100VY3Q (EDINETへの外部リンク)
中外炉工業株式会社 研究開発活動 (2025年3月期)
当社グループは、熱技術を核として、カーボンニュートラル、高機能材料、資源循環(ゼロエミッション)などの社会的要請を的確に捉え、新しい価値を創造し、社会に貢献することを企業理念として、熱処理事業、プラント事業、開発事業の3分野において研究開発を進めています。
当社を取り巻く外部環境の変化や多様化は著しく、その潮流は今後、ますます激化することが予想されます。その潮流に迅速に対応し、顧客の満足する技術、商品を創出すべく、開発事業の中核を担う『商品開発部』『コンバーテック部』『GXプロジェクト室』は、それぞれの専門性を活かし活動を行ってまいりました。
『商品開発部』は2019年4月に発足した新規事業創出を担う部門で、熱技術を活かした商品開発を推進しています。市場ニーズの調査や外部コンサルとの連携を通じてアイデアを抽出・評価し、技術課題や市場性の検証を繰り返しながら開発を進行。マーケティングと開発を連動させ、新たな価値の創出に取り組んでいます。
『コンバーテック部』は精密塗布装置の開発・設計を行い、主にディスプレーパネルや電池、半導体などの先端産業向けの製造プロセスを支えています。「RSコータ™」などの革新的な装置を提供し、製品の精度と効率向上に貢献。テスト対応から設計、製作、現地での据付・試運転までを一貫して担当し、お客様のニーズに応じた柔軟な対応をしています。
『GXプロジェクト室』は、水素やアンモニアを燃料とする新たな燃焼技術の開発とともに新しい電熱技術の開発を進めています。この取り組みにより、工業炉の脱炭素化を実現し、カーボンニュートラル社会への貢献を目指しています。また、NEDOのグリーンイノベーション基金事業にも採択され、技術革新を通じて持続可能な社会の実現をサポートしています。
当社は、2025年4月1日付で開発本部を新設し、これまで独立していたこれら3部門を同本部の傘下に統合しました。この組織再編の目的は、開発機能の一体化を図り、部門間の連携強化と開発スピードの向上、技術シナジーの最大化を目指すことにあります。各部門が一体となることで、より柔軟かつ機動的な開発体制を構築し、今後の事業成長に向けた開発力の強化と持続可能な社会の実現に向けた技術革新を一層推進していきます。
また2023年11月に堺事業所内に開設された「熱技術創造センター」は、当社の研究開発機能を統合・強化するための最先端の拠点であり、カーボンニュートラルや脱炭素化、EV化といった社会的課題に対応し、熱技術の革新と新たな価値創造を目指しています。施設は主に、次世代燃料(水素やアンモニア)を用いた脱炭素・省エネ燃焼技術を開発する「燃焼ゾーン」、先端材料の熱処理技術を研究する「機能材ゾーン」、社内外の共同研究・開発を促進する「共創スペース」の3つのゾーンで構成されています。また、熱技術創造センターはGXプロジェクト室が中心となって進めているNEDOのグリーンイノベーション基金事業にも活用され、脱炭素技術の開発を推進しています。このセンターを通じて、当社は持続可能な社会の実現に向けた技術革新を加速させ、企業の社会的責任を果たす取り組みを強化しています。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は1,198百万円であります。各分野での研究開発のトピックスを下記に記載します。
(1) 熱処理事業
CO₂を排出しない電気自動車や燃料電池車向けの高機能材料・機能部品事業領域分野だけでなく、次世代の二次電池として期待される全固体電池向けの製造装置についても開発を進めており、開発段階~連続処理装置のプロセス提案に向けて継続して取り組んでおります。
また、自動車業界の製造プロセスで必要とされる金型の長寿命化ニーズに対しては、ガス窒化、ガス軟窒化をはじめ、浸窒焼入、チタン窒化処理が可能なだけでなく、雰囲気ガス発生に伴うエネルギーを40%削減(当社比)、アンモニアガス使用量を30%削減可能な多目的窒化炉を開発し、お客様のニーズにお応えできるよう取り組んでおります。
(2) プラント事業
加熱炉のCO₂排出量削減や省エネルギーだけでなく、高品質を実現するために、炉内温度分布の改善や、圧延機の効率向上に貢献する鋼材の傾斜加熱など、炉内温度を自在に制御する技術の開発に取り組んでいます。その一環として、拡散燃焼方式で燃焼するリジェネバーナに火炎長可変機構を設けたバーナおよび制御システムを開発しました。
さらに、火炎を利用した高温加熱による粉体の球状化試験にも継続して取り組んでおり、国内およびアジアを中心に成長が著しい機能材料分野での製造プロセス開発と用途拡大を目指しています。
また、2016年から取り組んでいる水素燃焼技術では、汎用的なHSGBバーナに加え、間接加熱型のラジアントチューブ式水素バーナ、自動車塗装乾燥炉用水素バーナ、パッケージ型水素バーナなどの水素バーナのラインナップ拡充に向けた開発を継続しています。昨年度には水素リジェネバーナの開発を完了しました。
さらには、2025年2月には、トヨタ自動車株式会社様(以下、トヨタ様)より、従来のLPガスを水素に置き換えた水素燃焼式アフターバーナ炉に関して、「トヨタ技術開発最優秀賞」を受賞しました。この賞は、トヨタ様の商品力向上に大きな成果を上げたサプライヤーに贈られる最上位の評価です。
(3) 開発事業
・カーボンニュートラル
日本の産業におけるCO₂排出量の約3割は製造業から発生しており、特に金属を加熱する熱プロセスで用いられる工業炉が大きな割合を占めています。このため、製造業における熱プロセスのカーボンニュートラル化は急務です。特に工業炉には燃焼炉と電気炉の2種類があり、燃焼炉ではCO₂を排出しない代替燃料(アンモニアや水素など)の利用が課題となっています。一方、電気炉はCO₂を排出しない利点がありますが、燃焼炉から電気炉に転換する際には、特別高圧電力契約や受電設備の設置といった課題があります。これらを踏まえ、燃焼炉の選択肢を確立しつつ、電気炉の小型化・省エネルギー化を進めることが重要です。
このような背景を受け、経済産業省が策定した研究開発・社会実装計画に基づき、NEDOが2023年度に公募した「製造分野における熱プロセスの脱炭素化」プロジェクトが始まりました。当社は、1独法、12の国立大学法人、1大学法人、19の企業が参加するコンソーシアム「脱炭素産業熱システム技術研究組合」の一員として採択され、大型炉開発グループとして、製鉄所における鉄鋼加熱炉や大型連続焼鈍炉への技術実装を目指しています。この取り組みでは、アンモニア燃焼技術、水素燃焼技術、電熱加熱技術の開発を進めています。燃焼技術の開発においては、昨秋からバーナ燃焼試験を開始し、順調に試験が進んでいます。また、電熱加熱技術に関しても、今春に試験装置が完成し、鋼板の温度分布の均一化や効率向上を目指した試験を行っています。今後は、組合員である各大学や当社の設備ユーザーと連携・協力し、技術開発を円滑に進め、中規模実証試験・評価ステージに向けた技術開発を推進していきます。
鉄鋼業界や非鉄金属製錬業界では、鉱石の煆焼や還元工程で多量の化石燃料を使用しており、CO₂排出が課題となっています。現在主流のロータリーキルンに代わって、省スペースでハンドリング性に優れた回転炉床炉を活用し、マイクロ波加熱による還元・処理技術の開発に取り組んでいます。この技術の開発を進めるため、マイクロ波化学株式会社様との戦略的提携を結び、両社でエネルギー消費とCO₂排出削減に貢献する新たな炉の設計・製造を行っています。
・精密塗工装置
人工知能(AI)、データセンター、自動車の自動運転支援システム、ビッグデータ、5G、6Gといった高速・大容量通信技術に必要となる次世代半導体実装関連技術や、全固体電池、ペロブスカイト型太陽電池などの次世代電池の製造プロセス用設備に関する商品開発を継続的に推進しており、当社の技術をさまざまな用途に広げていくことを目指しています。
特に車載用二次電池業界においては、異形状の枠形状にも対応する精密塗布装置を提供しています。従来のように基材全面に塗布し、使用部分を打ち抜く方法から、必要な部分にだけ塗布する方式に切り替えることで、使用する高価な塗布液や廃棄物、工程を大幅に削減できます。このサステナブルな塗布装置「RSコータ™」の販売を拡大し、さらに市場の多様なニーズに応えるべく開発を進めています。
・ゼロエミッション
近年、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸:メッキ処理剤、泡消火薬剤用)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸:撥水剤、界面活性剤用)などの有機フッ素化合物(PFAS)の無害化に向けた技術開発への関心が高まっております。当社は株式会社鴻池組様と共同で、環境省が2022年9月に策定した「PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項」を遵守しつつ、従来の処理方法に比べて環境負荷を低減する新たな分解処理技術を開発いたしました。
本技術では、粉末状の活性炭にPFASを吸着させ、その後、水素燃焼式過熱水蒸気発生技術を用いて熱分解を行います。実証実験は完了し、開発成果を公表したことにより、現在では水質・ガス・土壌浄化など、他分野への応用が進展しています。
また、資源循環の観点では、鉄鋼電炉から排出される製鋼ダストのリサイクルに注力しています。当社は、メッキ鋼板に含まれる亜鉛などの有価金属の回収を通じて資源の循環利用を推進し、工場外への廃棄物排出を削減するゼロエミッションの実現を目指しています。この取り組みの一環として、電炉ダストリサイクル設備の技術開発に注力するとともに、業界内への営業活動および情報発信を強化してまいりました。現在、お客様との共同実証活動はほぼ完了しており、商用機1号機の受注に向けて最終段階に進んでいます。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00119] S100VY3Q)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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