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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100T65H (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 オンコリスバイオファーマ株式会社 研究開発活動 (2023年12月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等


当社の当事業年度における研究開発費は、1,351,940千円となりました。
なお、当事業年度における研究開発活動の状況は以下のとおりです。

(1) 研究開発体制について

2023年12月31日現在、研究開発部門は19名在籍しており、これは総従業員数の47.5%に当たります。

(2) 研究開発並びにビジネス活動について
当社は、以下のプロジェクトを中心に研究開発並びにビジネス活動を進めました。

① がんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301,国際一般名称:suratadenoturev)に関する活動
テロメライシンは、日本国内で厚生労働省より再生医療等製品の「先駆け審査指定」を受けて「放射線併用による食道がんPhase2臨床試験」を実施し、2023年10月に専門委員会を経てトップラインデータを開示しました。この結果を基に、2024年の国内でのテロメライシンの新薬承認申請に向けたPMDAとの折衝を行う計画です。テロメライシンの供給面では、商用スケールのウイルス製造開発を進め、2023年11月にプロセスバリデーションの製造を開始し、2024年には商用製造を行う計画です。また、2023年12月には三井倉庫ホールディングス株式会社(以下、「三井倉庫HD」)とテロメライシンの国内製造所に関する契約を締結しました。さらに、テロメライシンの製造販売体制の整備を進め、2024年2月には富士フイルム富山化学とテロメライシンの販売提携契約を締結しました。この結果、ベルギーのヘノジェン社で製造したテロメライシンを日本国内へ輸入し、国内製造所である三井倉庫HDで最終製品化し、富士フイルム富山化学を通じて医療現場へ届けるサプライチェーンが構築できました。
一方、海外では、米国における胃がんを対象としてテロメライシンと免疫チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブの共同開発体制を構築するために、コーネル大学と当社、並びにコーネル大学とメルク社の間で、2023年12月に契約が締結されました。本治験はPhase2医師主導治験、当社とメルク社で研究開発費を折半し、2024年から投与が開始される計画です。

現在、テロメライシンは、組入れが終了した臨床試験も含めて、以下の4つの臨床試験が国内外で進められています。

i) 放射線併用食道がんPhase2臨床試験
ii) 抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験
iii)免疫チェックポイント阻害剤併用セカンドライン胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験
iv) 放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験

上記i)の「放射線併用食道がんPhase2臨床試験」は、2019年4月の「先駆け審査制度」の指定に基づき全国17か所の治験実施施設で進められ、2023年10月にトップラインデータを開示しました。なお、同トップラインデータの主な結果は、以下のとおりです。

1)有効性
主要評価項目である「局所完全奏効率」(L-CR率)は、内視鏡中央判定委員会の評価により41.7%(小数点以下第2位四捨五入。以下同様。)と示されました。この結果は、事前に試験計画書に示された有効性閾値30.2%を上回る結果であることが確認されました。また、副次的評価項目として規定された「局所著効率」(L-RR率。原発巣は完全に消失しなかったものの、著明に縮小が認められた症例)は16.7%を示し、このL-RRを含めた「局所奏効率」([L-CR+L-RR]率)は58.3%を示しました。
さらに、本試験でのデータカットオフ時点での1年生存率は71.4%となり、「食道学会全国登録データ」による放射線単独治療での1年生存率57.4%を上回る成績でした。

2)安全性
テロメライシンと関連性のある主な副作用は、発熱が51.4%、リンパ球数減少又はリンパ球減少症が48.6%に認められましたが、軽度ないしは中等度又は一過性の変化でした。

なお、本臨床試験の結果の解釈に関しては、本試験の専門委員会(治験調整委員会、効果安全性評価委員会、内視鏡中央判定委員会、放射線品質管理委員会、医学専門家、生物統計専門家)の同意も得ています。

上記のトップラインデータ結果を受けて、現在当社は2024年に日本国内でテロメライシンの新薬承認申請を行うべく、PMDAと非臨床試験・臨床試験・製造等に関する事前相談を進めています。

テロメライシンのサプライチェーンに関しては、テロメライシンの新薬承認申請に向けて、ベルギーのヘノジェン社で商用製品製造の開発を進めています。2023年11月にプロセスバリデーションを開始し、承認申請を行う2024年には商用製造を開始する計画です。また、2023年12月に、当社はテロメライシンの製剤を最終包装し保管などを担う国内製造所として、再生医療等製品の取扱いなど先端医療に関する物流分野においても豊富な経験があり、再生医療等製品における品質確保のための知見と実績を有する三井倉庫HDと契約を締結しました。2023年6月にはユーロフィン分析科学研究所(京都市)と契約し、当社の神戸リサーチラボとともに、テロメライシンの最終出荷判定に必要とされる品質試験のバリデーションを開始しています。さらに、最終出荷可能と判定されたテロメライシンを国内で効率的に医療現場へ届けるために、富士フイルム富山化学と2024年2月に販売提携契約を締結しました。
これらの契約により、テロメライシンの海外から国内医療機関までのサプライチェーン全体に対して、高品質かつ安定的に供給できる流通体制の構築を進めていきます。

また、当社は富士フイルム富山化学との販売提携契約の有無にかかわらず、日本国内へテロメライシンを出荷する製造販売業者に位置付けられます。製造販売には、テロメライシン自体の品質・有効性並びに安全性に関する薬事承認審査以外に、東京都から「GQP(Good Quality Practice:品質管理の基準)」及び「GVP(Good Vigilance Practice: 製造販売後安全管理の基準)」への適合性などの要件に関する審査を受け、再生医療等製品製造販売業の許可を得る必要があります。
当社は、2024年1月に総括製造販売責任者・品質保証責任者・安全管理責任者の製販三役の採用を完了し、「信頼性保証本部」を立ち上げました。今後、GQP及びGVPに適合した体制をさらに整備した上で、当社がテロメライシンの市場への出荷に対し品質保証業務及び安全管理業務に関する最終責任を担う能力を持つことをもって東京都に申請し、テロメライシンの承認申請までに再生医療等製品製造販売業の許可を受ける方針です。

上記ii)の「抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験」は、過去に治療歴のある最も重症度が高い患者を対象に、テロメライシンと抗PD-1抗体ペムブロリズマブを併用した場合の有効性及び安全性の評価を行うことを目的として、2019年5月から米国コーネル大学を中心に開始されました。これまでに組入れた16例のうち3例で長期生存が確認され、この結果は本試験の有効性を示す基準を満たす結果と判断されました。本治験の中間解析結果は、米国コーネル大学のマニッシュ・シャー医師により2023年6月に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2023)や2023年11月の米国がん免疫療法学会(SITC2023)で発表されました。

上記iii)の「免疫チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブ併用セカンドライン胃がん・胃食道接合部がんPhase2医師主導治験」は、米国コーネル大学が当社の事前合意を得た上で、メルク社へ新たな治験の実施や治験費用の負担を提案し、2023年12月には、当社とコーネル大学の契約、コーネル大学とメルク社の契約が締結され、共同開発体制が構築されました。今後、当社はテロメライシンを、メルク社は免疫チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブをコーネル大学に提供します。また、治験費用は当社とメルク社で折半します。なお、本治験は2024年から投与が開始される見込みです。

上記iv)の「放射線化学療法併用食道がんPhase1医師主導治験」は、米国の権威あるがん研究組織NRGオンコロジーグループにより、テロメライシンと放射線化学療法を併用した際の安全性と有効性の検討を目的として2021年12月から開始されました。アメリカ国内6施設で実施されており、第一段階の全6例の組み入れが完了し、第二段階では4例が投与されています。これまでに問題となるような副作用は報告されていません。テロメライシンは米国において食道がんのオーファンドラッグ指定を受けており、同指定の下、本治験は実施されています。そのため、補助金の支給や臨床研究費用の税額控除の優遇を受けることができ、さらに、米国においてテロメライシン承認後の7年間は先発権保護が与えられ、その期間中は市場独占権が得られることになっています。

②LINE-1阻害剤OBP-601(censavudine)に関する活動
2006年にYale大学から導入したOBP-601は、2010年から2014年にかけてBMS社へライセンスし、抗HIV薬としてBMS社によりPhase2b臨床試験が実施され、OBP-601の既存薬との非劣性が示されました。また、BMS社によって、OBP-601の長期毒性試験、がん原性試験や多くの臨床データが得られましたが、BMS社が戦略変更によりHIV領域から撤退したため、ライセンス契約は終了しました。その後、ブラウン大学(米国)の研究成果から、HIVの核酸系逆転写酵素阻害剤(以下「NRTI」)がレトロトランスポゾンの異所性発現を抑制することが示唆されました。その後の研究により、同作用を持つOBP-601が他のNRTIと比べて脳内移行性が高く、またLINE-1という逆転写酵素を強力に阻害してレトロトランスポゾンの産生を強力に抑制するという特長が確認されました。
このメカニズムに着目してOBP-601を神経難病治療薬へ応用しようと計画していたTransposon社との間で、当社は2020年6月に全世界を対象とした総額3億ドル超のライセンス契約を締結し、同年11月にTransposon社は第1回マイルストーンを達成しています。
現在、Transposon社によって「進行性核上性麻痺(PSP: Progressive Supranuclear Palsy)」とC9 ORFという酵素の異常発現を伴った「筋萎縮性側索硬化症(ALS: Amyotrophic Lateral Sclerosis)及び前頭側頭型認知症(FTD: Frontotemporal Degeneration)」を対象としたプラセボを用いた二重盲検法による2つのPhase2a臨床試験が欧米の多施設で進められています。また、2023年7月にアイカルディ・ゴーティエ症候群(AGS: Aicardi-Goutières Syndrome)を対象にした欧州での単群のPhase2a臨床試験の投与が開始されました。

PSPを対象とした臨床試験は2021年11月に1例目への投与が開始され、2022年8月に目標症例数の組入れが完了しました。当社はTransposon社から中間解析結果の報告を受けましたが、その主な内容は下記のとおりです。
① OBP-601がPSP患者の脳脊髄液中のニューロフィラメント軽鎖(以下、「NfL」)の上昇を抑制させることが示唆された。
② OBP-601は、脳脊髄液中で神経炎症のバイオマーカーであるIL-6 を低下させることが示唆された。
③ 現在までに、本臨床試験で試験を中止するような安全性上の問題は報告されていない。

当社は上記のTransposon社からの上記の報告を受け、以下のような考察を行っています。
① OBP-601は、血液中ではなく「脳脊髄液」中のNfL値の上昇を抑制させました。この結果はOBP-601が直接中枢神経系の神経損傷を軽減させたと考えられます。
② OBP-601は、脳脊髄液中で神経炎症のバイオマーカーである IL-6 を低下させました。この結果は,OBP-601がLINE-1を阻害することによって神経組織の炎症を抑制していると考えられます。
③ 脳脊髄液中のこれらバイオマーカーの変化により、臨床においてもOBP-601が脳内に移行して効果を示すことが示唆されました。
なお、これらの結果は2024年3月に開催されるAD/PD 2024(国際アルツハイマー病・パーキンソン病学会)にて発表される予定です。

また、C9 ALS/FTDを対象とした臨床試験も2022年1月に投与が開始されました。2023年3月に目標症例数の組入れが完了し、現在組み入れ患者の長期フォローアップを行っています。現在までに、本臨床試験で試験を中止するような安全性上の問題は報告されていません。

さらに、Transposon社は、AGSという小頭症や高度な精神発達遅滞等を呈する遺伝性疾患を対象に、2023年7月に新たなPhase2a臨床試験の投与を欧州で開始しました。現在までに、本臨床試験で試験を中止するような安全性上の問題は報告されていません。

これらのOBP-601に関する臨床試験は、ライセンス契約に基づき全額Transposon社の費用負担で進められています。なお、Transposon社はOBP-601の開発を目的に設立された企業であり、当社は、Transposon社が戦略変更を理由にOBP-601の開発を中断するリスクは低いと考えています。

③次世代テロメライシンOBP-702に関する活動
OBP-702は、強力な生体内がん抑制遺伝子p53をベクター内に搭載する新規腫瘍溶解ウイルスで、「がん遺伝子治療」と、テロメライシンの持つ「腫瘍溶解作用」を組み合わせた2つの抗腫瘍効果を持つ第二世代のウイルス療法です。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成金事業を活用して、岡山大学消化器腫瘍外科学・藤原俊義教授の研究グループにより非臨床試験が進められました。特に、ゲムシタビン耐性すい臓癌細胞株のマウスモデルを用いた実験においては、PD-L1抗体を併用することでより強い抗腫瘍効果が確認されています。また、がん治療で問題となっているがん組織の間質系細胞(CAF : Cancer Associated Fibroblast)に対しても殺傷効果を示すことが示されており、今後、間質系細胞によって治療が困難と考えられているすい臓がんなどの難治性がんに対する新しい治療法として開発していくことが期待されます。なお、2024年に承認申請を目指すテロメライシンへ経営リソースを集中させるために、OBP-702の開発は助成金の範囲内で継続していく予定です。

④ウイルス感染症治療薬OBP-2011に関する活動
当社は、OBP-2011がヌクレオカプシド形成を阻害する新規メカニズムを有する化合物であることを実験結果から推定していますが、現段階ではその詳細なメカニズムは解明されていません。OBP-2011はすでに承認されているコロナ治療薬の主なメカニズムであるポリメラーゼ阻害やプロテアーゼ阻害とは異なるメカニズムであることが推察されており、コロナウイルスの様々な変異株に対して効果が左右されないというデータが得られています。しかし、新型コロナ治療薬の承認ハードルが上昇していること、並びに新型コロナ治療薬の複数上市による緊急性の低下などの外部環境の変化や、2024年に承認申請を目指すテロメライシンへの経営リソース集中により、開発方針を見直す必要性が生じました。今後は、鹿児島大学と詳細なメカニズム解明を行った上でコロナウイルス以外のRNAウイルスに対する新規適応を検討し、新たなパンデミックに対応できる体制を維持していく考えです。

⑤がん検査薬テロメスキャン(OBP-401)に関する活動
テロメスキャンは、がん患者の血液中を循環している生きたがん細胞(CTC:Circulating Tumor Cells)の検査自動化プラットフォームの確立を目的に、順天堂大学と共同研究講座「低侵襲テロメスキャン次世代がん診断学講座」を2021年6月に開設いたしました。しかし、AIによる画像学習のためには多くの画像取得が必要であり、当初計画と比較して画像取得に時間を要しているため、順天堂大学との開発進捗は遅延しています。なお、2024年に承認申請を目指すテロメライシンへ経営リソースを集中させるため、優先順位は引き下げています。

⑥HDAC阻害剤OBP-801に関する活動
2009年にアステラス製薬株式会社から導入したヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤であるOBP-801は、各種固形がんを対象とした米国でのPhase1臨床試験で用量制限毒性(DLT:Dose Limiting Toxicity)が発生し、推定有効量までの投与量の増量が不可能となったため、がん領域の開発を中断しました。なお、OBP-801は2023年9月に日本国内での分子標的併用腫瘍治療・予防薬としての特許査定を受けています。
一方、新規適応領域である眼科領域では、京都府立医科大学眼科学教室の実験において、緑内障手術を行った際に形成される濾過胞の線維化抑制作用が認められ、2023年4月の日本眼科学会や2023年4月に開催されたARVO(視覚と眼科学研究協会学会)で研究結果が発表されました。今後は点眼剤での開発が期待されています。なお、2024年に承認申請を目指すテロメライシンへ経営リソースを集中させるため、優先順位は引き下げています。


主なパイプラインの開発状況は、以下のとおりです。
開発品適応疾患併用療法開発地域開発ステージ
テロメライシン
(OBP-301)
(suratadenoturev)
食道がん放射線療法日本Phase2
(申請準備中)
放射線化学療法米国Phase1
抗PD-1抗体ペムブロリズマブ日本Phase1
(論文準備中)
胃がん・
胃食道接合部がん
抗PD-1抗体ペムブロリズマブ米国Phase2
(論文準備中)
免疫チェックポイント阻害剤ペムブロリズマブ米国Phase2
肝細胞がん単独療法韓国・台湾Phase1
(終了)
OBP-601
(censavudine)
進行性核上性麻痺(PSP)単独療法米国Phase2a
(予後調査中)
筋萎縮性側索硬化症(C9-ALS)
/前頭側頭型認知症(FTD)
単独療法米国・欧州Phase2a
(予後調査中)
アイカルディ・ゴーティエ
症候群(AGS)
単独療法欧州Phase2a
OBP-702固形がん抗PD-(L)1抗体を想定日本前臨床
OBP-2011ウイルス感染症未定日本前臨床
テロメスキャン
(OBP-401)
固形がん-日本臨床研究
OBP-801緑内障手術後の
濾過胞線維化抑制
-日本前臨床

事業等のリスク株式の総数等


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