有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100YCDA (EDINETへの外部リンク)
株式会社 神戸製鋼所 研究開発活動 (2026年3月期)
当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を源泉として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販のための技術支援、ソリューション提案など多くの成果を上げています。
技術開発本部では、①既存事業と新規事業創出に資する課題形成と解決、②足元/将来にわたり競争力の源泉となる技術の強化、③技術資産の掛け合わせによる総合力の発揮、の3点に注力します。技術力を軸に、2030年代以降の挑戦に資する技術分野の取組みを強化し、技術起点での新たなアイデアやビジネス機会を持続的に創出していきます。
これらの取組みの具体的な事例として、2025年6月1日に国立大学法人東北大学(以下、東北大学)と「神戸製鋼所×東北大学 先端半導体用素材・プロセス技術 共創研究所」(以下、共創研究所)を東北大学青葉山キャンパス内に設置し、活動を開始しました。近年、半導体技術は急速に進化しており、これに伴い素材・部材の開発及び製造プロセスにおいても新しい技術が求められています。本共創研究所では、半導体市場や技術の変化点を捉え、東北大学の世界トップレベルの半導体関連技術とKOBELCOの保有技術をかけ合わせることで、半導体に関わる新たな素材やプロセス技術の可能性を探索し、共同研究を推進していきます。また、ここで得られた技術知見は、学会発表などを通じて情報発信し、次世代の技術者や研究者育成を目的とした人材育成を積極的に進めます。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費は466億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行っている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用81億円が含まれています。主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。
[鉄鋼アルミ]
特殊鋼線材、自動車用高強度鋼、ディスク用アルミ板などの戦略製品の差別化による拡販と生産性・歩留まり向上による収益改善のための技術開発に注力しています。また、CO₂排出量削減に直接貢献できる技術開発にも引き続き取り組んでいます。
(鉄鋼)
・当社は、低CO₂高炉鋼材“Kobenable® Steel”に関する技術展開を進めており、同鋼材は以下の製品に採用されました。
①いすゞ自動車(株)が製造する小型トラック「エルフ」などに使用される薄板製品の一部
②中嶋産業(株)(以下、中嶋産業)が導入する2.8トンホイストクレーン5基(今後中嶋産業が導入予定の30トン大型クレーン1基にも採用予定)
③三井不動産(株)が開発し鹿島建設(株)が施工する「表参道Grid Tower」の新築工事
④山口重工業(株)が受注した建築物件における柱の主要突合せ溶接部に使用されるダイアフラム及びベースプレート
⑤トヨタ自動車(株)の量産車
上記で採用されたのは、鋼材製造におけるCO₂排出量をマスバランス方式により100%削減した“Kobenable® Premier”です。
・当社は、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)が認証するSuMPO環境ラベルプログラムのSuMPO EPD(旧エコリーフ)について、厚鋼板及び建築構造用厚鋼板の2製品で取得しました。SuMPO EPDの取得は当社として初めてです。SuMPO EPDは、LCA(ライフサイクルアセスメント)手法により製品のライフサイクル全体の環境情報を定量的に評価する枠組みであり、国際基準に基づき高い信頼性と透明性を確保しています。本認証の取得により、製品の環境情報の妥当性及び国際規格への適合性が確認され、お客様において当該製品の環境負荷を定量的・客観的に把握することが可能となります。また、米国のLEED(Leadership in Energy & Environmental Design)においても加点対象とされており、建物の資産価値の向上に資するものと考えられます。このたび当社がSuMPO EPDを取得した対象製品は以下のとおりです。
①厚鋼板:JR-AW-24068E
②建築構造用厚鋼板:JR-AJ-24076E
上記2件のSuMPO EPD取得により、当社が製造するすべての厚鋼板の環境情報が開示されます。当社の厚鋼板は船舶・高層建築・橋梁等の鋼構造物に使用されており、今後も厚鋼板の提供を通して、安全・安心で環境に配慮したインフラの構築を支えることで社会に貢献していきます。
(アルミ板)
・当社は、当社がブランド展開する低CO₂アルミ製品“Kobenable® Aluminum”の展開を進めており、同製品は新晃工業(株)が製造する業務用空調機の熱交換器に採用されました。これは空調機分野での初採用事例となります。本製品はグリーンアルミ原料を使用し、マスバランス方式によりCO₂削減効果を製品に割り当てたものであり、従来製品と同等の品質を維持しながらCO₂排出量削減を可能とします。今回の採用は、新晃工業(株)マテリアリティの一つとして掲げる「持続可能な社会の実現に向けた空調インフラの提供」という取組みに合致したものです。なお、本製品は同社のデータセンター空調機やコンパクト型空調機等の業務用空調機の熱交換器用プレコートアルミフィン材として使用されます。
なお、当連結会計年度における研究開発費は82億円であります。
[素形材]
輸送機や半導体分野を中心に、特徴ある製品開発や生産技術開発に取り組んでいます。あわせてカーボンニュートラルへの対応や製品開発・生産プロセスの高度化など、将来の価値創造に向けた研究開発も推進しています。
なお、当連結会計年度における研究開発費は21億円であります。
[溶接]
「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」の実現を目指し、お客様の溶接に関する課題解決を図るとともに、溶接材料、溶接プロセス、溶接機器及びロボットによる「溶接ソリューション」を提供する溶接総合メーカーとして、特徴ある製品の開発に注力しています。
・当社は、2024年に商品化したワイヤ送給制御プロセス「AXELARC™」をベースに、パナソニック コネクト(株)と、自動車・二輪業種を対象としたアーク溶接新工法・新溶接材料の販売及び開発協力に関する協業に合意しました。同社が保有する薄板向け溶接ロボットシステム「Active TAWERS 4」に最適な溶接材料「AXELARC™ AX-1AS」、「AXELARC™ AX-1A」を搭載することで、低スパッタ化はもちろんのこと、薄板溶接で要求されるワイヤ狙いズレ裕度や耐ギャップ性の確保、溶接速度向上による生産性改善を実現します。さらに、亜鉛めっき鋼板における気孔欠陥抑制や溶接部の電着塗装性の向上により、溶接品質の安定化も実現できます。今後、国内外の自動車・二輪業種のお客様に対して、これまでの薄板溶接の課題を解決する新たな溶接ソリューションとして提案していきます。
・当社は、建築鉄骨市場向けに大型梁溶接システムを開発しました。日本の建築鉄骨製作では、角形鋼管柱の溶接自動化は普及している一方、梁工程の自動化は溶着金属量が少なく、採算性の観点から普及初期段階にあります。しかし近年、労働人口の減少を背景に、梁工程においても自動化ニーズが高まっており、欧米、中国、アジア地域を中心に、海外市場でも関心が拡大しています。本システムは、溶接ロボットARCMAN™、梁溶接自動化に適した反転ポジショナ、3軸スライダで構成され、BIM対応ソフトウェアSMART TEACHING™により梁形状を自動認識し、簡単な操作で溶接が可能です。加えて、多層すみ肉溶接に最適なフラックス入りワイヤFAMILIARC™ MX-Z200MPの採用により、スパッタの発生量を低減し、回し溶接にも対応しています。2025年には3式を納入し、お客様の生産性向上に寄与しています。今後も当社は溶接工程の自動化を通じて社会課題の解決に貢献していきます。
なお、当連結会計年度における研究開発費は48億円であります。
[機械]
2030年に向けコアビジネスをより強化するとともに、カーボンニュートラル社会の実現に向けた新規事業を創出・育成し、機械事業部門として取り組むべき社会課題に挑戦することで、全社の安定収益の最大の柱となることを目指します。
・当社は、回転機・機器関連分野において、川崎重工業(株)と協同で、水素発電における次世代水素燃料供給システムの運転を開始し、世界で初めて、液化水素ポンプによる臨界圧力以上への昇圧と中間媒体式液化水素気化器(IFV:Intermediate Fluid Vaporizer)※1 を組み合わせた、発電設備への水素燃料の供給に成功しました。両社は、NEDO 補助事業「水素 CGS※2 の地域モデルにおける水素燃料供給システムの効率化・高度化に向けた技術開発」として、神戸市ポートアイランド地区の神戸水素エネルギーセンターに設置した水素ガスタービン発電実証設備をもとに、液化水素ポンプ、IFV、水素ガスタービンの3つを組み合わせた水素燃料供給システムの設計・運用ノウハウの体系化に取り組んでいます。本実証において、川崎重工業(株)は液化水素ポンプによる昇圧を活用したガスタービン発電向け燃料供給システムの高効率化を、当社は液化水素の冷熱利用が可能となる IFV の開発をそれぞれ担当しています。両社が開発を進めている水素燃料供給システムでは、IFV において気化時に発生する冷熱エネルギーを回収することで、ガスタービンの吸気冷却用途をはじめ、冷凍・冷蔵設備、データセンターの冷却、業務用・産業用空調など多様な用途への応用が可能となります。さらに、将来のコンビナート・工場・コミュニティー等における水素 CGS の社会実装を見据えた、液化水素による大規模水素発電への拡張性も備えています。
※1 気化熱源として海水や工業用水を用い、プロパンなどの中間媒体を介して、液化天然ガス(LNG)などの低温流体を気化させるタイプの気化器。中間媒体を用いることで、気化熱源の工業用水の凍結を避けられ、LNG などの低温流体の冷熱の有効活用にも適している。
※2 Co-Generation System(CGS):熱電併給システム
・(株)コベルコ科研は、分析・試験技術分野において、水素環境下の材料評価、新型二次電池の試作・評価、高電圧・大電流通電試験等のグリーントランスフォーメーションに寄与する技術開発、2025年1月に稼働した最新鋭の球面収差補正走査透過型電子顕微鏡(Cs-STEM)を活用した観察技術の開発を進めています。また、ターゲット材料・半導体ウェハ検査装置分野に関しても、高移動度酸化物ターゲット材料の用途拡大や、半導体ウェハ向け検査・測定装置の高精度、高機能化のための開発にも取り組んでいます。
なお、当連結会計年度における研究開発費は65億円であります。
[エンジニアリング]
循環型社会、脱炭素社会の実現に向け、将来の成長が見込まれる分野における独自プロセス・技術の開発、更なる差別化、競争力強化に向けた開発を推進しています。
・Midrex社は、還元鉄関連分野において、天然ガスを還元剤とするMIDREX NG™に加え、天然ガスを最大100%まで柔軟に水素に置き換えることができるMIDREX Flex™や、水素を100%還元剤として用いるMIDREX H2™の競争力維持・強化に向けた開発を継続しています。
・(株)神鋼環境ソリューションは、水処理関連分野において、「ボルト締結型グラスライニング消化タンク」が日本下水道事業団の新技術Ⅰ類に選定されました。同技術は、高耐食性のグラスライニングパネルを採用し、パネル同士をボルト締結して組み立てる新しい技術であり、施工・品質管理が容易となることで、消化設備のLCCを大幅に縮減します。本技術により、下水道事業におけるカーボンニュートラルの実現に不可欠な嫌気性消化技術の普及・導入を促進します。
・(株)神鋼環境ソリューションは、廃棄物処理関連分野において、廃プラスチックのガス化及びメタノール化に関する開発を継続しています。社会実装に向け技術開発は着実に進捗しており、関連企業と連携しながら事業化に関する検証を行い、これまで廃棄されていたプラスチックについて、ケミカルリサイクルによる資源循環システムの構築を目指します。
・当社は、水素事業において、グリーン水素需要の高まりを見据え、水電解式水素発生装置の大型化やコスト低減、次世代技術の開発を推進しています。水素の普及拡大及び低炭素化社会の実現に向け、水電解式水素発生装置の新商品開発に取り組んでいきます。
なお、当連結会計年度における研究開発費は50億円であります。
[建設機械]
主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。クラウドやAI、IoT等の先進テクノロジーの活用により「建設現場のテレワーク化」を実現し、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保などを目指しています。また、カーボンニュートラルに向けた取組みの一環としてゼロエミッション建機の開発に取り組んでいます。
(ショベル)
コベルコ建機(株)(以下、コベルコ建機)は以下の取組みを行いました。
・カーボンニュートラル(CN)実現に向けた取組みの一環として、CN対応建機の開発を推進しています。2025年4月にドイツ・ミュンヘンで開催された国際建設機械展示会「bauma 2025」において、現在開発中の7トンクラスのバッテリー式電動ショベルを初めて展示しました。この電動ショベルは、都市部の狭隘な現場でも小回りが効き、1回当たりの充電可能量が多く、掘削性能や作業スピードにおいて、ディーゼル機と同等のパフォーマンスを実現します。
・「bauma 2025」において、重機の遠隔操作システム「K-DIVE®」を活用し、展示会場のコックピットからデンマークや兵庫県神戸市に設置されたショベルを遠隔操作しました。国境を越えた遠隔地においても、実機に搭乗した場合と同等の操作性を実演しました。
・環境省が公募した「2025年度コスト競争力強化を図る再エネ等由来水素サプライチェーンモデル構築・実証事業」の一環として採択された、愛知県の「知多市における低炭素水素モデルタウン実証事業」に共同実施者として参画します。本事業は、全国一の設置数を誇る水素ステーションを拠点に、地域資源を活用して製造・調達した低炭素水素を街利用分野の需要先へ効率的に供給することや、水素供給の低コスト化、水素ステーションの自立化への貢献などを目的に実施されます。コベルコ建機は、2021年から水素燃料電池ショベルの実用化に取り組み、2023年3月に試作機を完成させました。基礎評価を経て、現在は高砂製作所で連続掘削作業などの本格稼働評価を行っています。今回の参画を通じて、実際の工事現場での稼働評価を進め、本格展開を加速させていきます。
・(株)安藤・間(以下、安藤ハザマ)と共同で、2025年4月から6月にかけて、国土交通省発注の「霞ヶ浦導水石岡トンネル(第3工区)新設工事」において、自動運転ショベルによる有人ダンプへの掘削土砂積込み作業を継続的に実施しました。シールド掘削現場特有の土砂の排出量や土砂質の環境変化には、現場人員がタブレットによる調整機能を使って柔軟に対応しました。ダンプトラックの停車位置の変化には、新たに開発した物体検知機能で対応しました。さらに、国土交通省の「自動施工における安全ルールVer.1.0」に沿ってリスクアセスメントを実施し、無人エリアや中継エリア、立ち入り禁止エリアなどを設定しました。無人エリアでは、「K-DIVE®」による遠隔操作と自動運転を組み合わせて無人作業を実現しました。一方で、車両走行路や建屋が近く、自動施工エリアの確保が難しい課題に対しては、自動運転ショベルの動作経路逸脱検知機能やレーザーバリアセンサとの連携によるエリア監視機能を活用し、長期間の作業を無事故で安全に完了しました。
・安藤ハザマと共同で、トンネル切羽におけるあたり取り作業※1の自動化技術を開発し、施工中のトンネル現場で実証実験を行いました。山岳トンネル工事では、発破後に生じる切羽岩盤の凸凹に対し、設計断面から飛び出た箇所(あたり)をブレーカ・ショベルで除去するあたり取り作業が行われます。従来、この作業は、重機のオペレータと作業員の2名で行いますが、掘削直後に切羽付近で目視確認を行う必要があるため、肌落ち災害のリスクが問題となっています。こうした問題を解決するため、安藤ハザマでは2024年に、トンネル切羽のあたり箇所をリアルタイムに把握できる「あたり検知システム」を開発しました。実証実験では、あたり検知システムとブレーカを装着した自動運転ショベルを連携させ、切羽前に配置した無人のショベルに対して後方からタブレットで自動運転指示を行い、一つひとつの動作状況を確認しました。その結果、これまで把握できなかった岩盤を打撃する動作に関する課題が明らかとなり、今後の改良に向けた具体的な検討項目を抽出することができました。また、トンネル特有の限られた作業空間において、自動で動作するブレーカ・ショベルがトンネル壁面に触れることなく、あたり箇所にブレーカ先端を適切に誘導できることを確認しました。今後、遠隔化も組み合わせた自動施工技術によるあたり取り作業の安全性向上を目指し、引き続き開発を推進していきます。また、自動運転ショベルの適用工種の拡大と現場展開に向けた取組みをより一層加速させます。
※1 あたり取り作業とは、掘削した切羽の岩盤において、設計掘削断面より内空側に飛び出している岩塊(あたり)部分を除去する作業。
(クレーン)
・コベルコ建機は、Autodesk社製3D-CADのアドインソフトとして開発したクレーン施工計画策定支援ソフト「K-D2 PLANNER®」の最新バージョン(ver.1.5)を、2025年12月8日にリリースしました。「K-D2 PLANNER®」は、直感的なクリック操作によりクレーンの吊り荷の姿勢を再現し、その姿勢における負荷率の算出や、平面図・断面図の作成が可能なシミュレーションソフトです。エビデンス(記録)を残しながら、3D施工ステップ図を作成できるため、現場とのイメージ共有が的確に行え、手戻りの防止や最適なクラスのクレーン選定が可能になるなど、施工計画の精度向上や策定時間の短縮、コスト削減を実現します。今回、新たに3D画面上で干渉チェックを簡単に行える機能を搭載しました。従来も断面図により目視での干渉チェックは可能でしたが、本機能を使用することで干渉部分を視覚的に確認できます。これにより、従来以上に手軽な干渉チェックが可能となり、安全で高品質な施工計画の策定に寄与します。
なお、当連結会計年度における研究開発費は117億円であります。
[電力]
当連結会計年度における研究開発費は0億円であります。
[その他]
上記外の事業セグメントに係る当連結会計年度における研究開発費は0億円であります。
技術開発本部では、①既存事業と新規事業創出に資する課題形成と解決、②足元/将来にわたり競争力の源泉となる技術の強化、③技術資産の掛け合わせによる総合力の発揮、の3点に注力します。技術力を軸に、2030年代以降の挑戦に資する技術分野の取組みを強化し、技術起点での新たなアイデアやビジネス機会を持続的に創出していきます。
これらの取組みの具体的な事例として、2025年6月1日に国立大学法人東北大学(以下、東北大学)と「神戸製鋼所×東北大学 先端半導体用素材・プロセス技術 共創研究所」(以下、共創研究所)を東北大学青葉山キャンパス内に設置し、活動を開始しました。近年、半導体技術は急速に進化しており、これに伴い素材・部材の開発及び製造プロセスにおいても新しい技術が求められています。本共創研究所では、半導体市場や技術の変化点を捉え、東北大学の世界トップレベルの半導体関連技術とKOBELCOの保有技術をかけ合わせることで、半導体に関わる新たな素材やプロセス技術の可能性を探索し、共同研究を推進していきます。また、ここで得られた技術知見は、学会発表などを通じて情報発信し、次世代の技術者や研究者育成を目的とした人材育成を積極的に進めます。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費は466億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行っている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用81億円が含まれています。主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。
[鉄鋼アルミ]
特殊鋼線材、自動車用高強度鋼、ディスク用アルミ板などの戦略製品の差別化による拡販と生産性・歩留まり向上による収益改善のための技術開発に注力しています。また、CO₂排出量削減に直接貢献できる技術開発にも引き続き取り組んでいます。
(鉄鋼)
・当社は、低CO₂高炉鋼材“Kobenable® Steel”に関する技術展開を進めており、同鋼材は以下の製品に採用されました。
①いすゞ自動車(株)が製造する小型トラック「エルフ」などに使用される薄板製品の一部
②中嶋産業(株)(以下、中嶋産業)が導入する2.8トンホイストクレーン5基(今後中嶋産業が導入予定の30トン大型クレーン1基にも採用予定)
③三井不動産(株)が開発し鹿島建設(株)が施工する「表参道Grid Tower」の新築工事
④山口重工業(株)が受注した建築物件における柱の主要突合せ溶接部に使用されるダイアフラム及びベースプレート
⑤トヨタ自動車(株)の量産車
上記で採用されたのは、鋼材製造におけるCO₂排出量をマスバランス方式により100%削減した“Kobenable® Premier”です。
・当社は、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)が認証するSuMPO環境ラベルプログラムのSuMPO EPD(旧エコリーフ)について、厚鋼板及び建築構造用厚鋼板の2製品で取得しました。SuMPO EPDの取得は当社として初めてです。SuMPO EPDは、LCA(ライフサイクルアセスメント)手法により製品のライフサイクル全体の環境情報を定量的に評価する枠組みであり、国際基準に基づき高い信頼性と透明性を確保しています。本認証の取得により、製品の環境情報の妥当性及び国際規格への適合性が確認され、お客様において当該製品の環境負荷を定量的・客観的に把握することが可能となります。また、米国のLEED(Leadership in Energy & Environmental Design)においても加点対象とされており、建物の資産価値の向上に資するものと考えられます。このたび当社がSuMPO EPDを取得した対象製品は以下のとおりです。
①厚鋼板:JR-AW-24068E
②建築構造用厚鋼板:JR-AJ-24076E
上記2件のSuMPO EPD取得により、当社が製造するすべての厚鋼板の環境情報が開示されます。当社の厚鋼板は船舶・高層建築・橋梁等の鋼構造物に使用されており、今後も厚鋼板の提供を通して、安全・安心で環境に配慮したインフラの構築を支えることで社会に貢献していきます。
(アルミ板)
・当社は、当社がブランド展開する低CO₂アルミ製品“Kobenable® Aluminum”の展開を進めており、同製品は新晃工業(株)が製造する業務用空調機の熱交換器に採用されました。これは空調機分野での初採用事例となります。本製品はグリーンアルミ原料を使用し、マスバランス方式によりCO₂削減効果を製品に割り当てたものであり、従来製品と同等の品質を維持しながらCO₂排出量削減を可能とします。今回の採用は、新晃工業(株)マテリアリティの一つとして掲げる「持続可能な社会の実現に向けた空調インフラの提供」という取組みに合致したものです。なお、本製品は同社のデータセンター空調機やコンパクト型空調機等の業務用空調機の熱交換器用プレコートアルミフィン材として使用されます。
なお、当連結会計年度における研究開発費は82億円であります。
[素形材]
輸送機や半導体分野を中心に、特徴ある製品開発や生産技術開発に取り組んでいます。あわせてカーボンニュートラルへの対応や製品開発・生産プロセスの高度化など、将来の価値創造に向けた研究開発も推進しています。
なお、当連結会計年度における研究開発費は21億円であります。
[溶接]
「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」の実現を目指し、お客様の溶接に関する課題解決を図るとともに、溶接材料、溶接プロセス、溶接機器及びロボットによる「溶接ソリューション」を提供する溶接総合メーカーとして、特徴ある製品の開発に注力しています。
・当社は、2024年に商品化したワイヤ送給制御プロセス「AXELARC™」をベースに、パナソニック コネクト(株)と、自動車・二輪業種を対象としたアーク溶接新工法・新溶接材料の販売及び開発協力に関する協業に合意しました。同社が保有する薄板向け溶接ロボットシステム「Active TAWERS 4」に最適な溶接材料「AXELARC™ AX-1AS」、「AXELARC™ AX-1A」を搭載することで、低スパッタ化はもちろんのこと、薄板溶接で要求されるワイヤ狙いズレ裕度や耐ギャップ性の確保、溶接速度向上による生産性改善を実現します。さらに、亜鉛めっき鋼板における気孔欠陥抑制や溶接部の電着塗装性の向上により、溶接品質の安定化も実現できます。今後、国内外の自動車・二輪業種のお客様に対して、これまでの薄板溶接の課題を解決する新たな溶接ソリューションとして提案していきます。
・当社は、建築鉄骨市場向けに大型梁溶接システムを開発しました。日本の建築鉄骨製作では、角形鋼管柱の溶接自動化は普及している一方、梁工程の自動化は溶着金属量が少なく、採算性の観点から普及初期段階にあります。しかし近年、労働人口の減少を背景に、梁工程においても自動化ニーズが高まっており、欧米、中国、アジア地域を中心に、海外市場でも関心が拡大しています。本システムは、溶接ロボットARCMAN™、梁溶接自動化に適した反転ポジショナ、3軸スライダで構成され、BIM対応ソフトウェアSMART TEACHING™により梁形状を自動認識し、簡単な操作で溶接が可能です。加えて、多層すみ肉溶接に最適なフラックス入りワイヤFAMILIARC™ MX-Z200MPの採用により、スパッタの発生量を低減し、回し溶接にも対応しています。2025年には3式を納入し、お客様の生産性向上に寄与しています。今後も当社は溶接工程の自動化を通じて社会課題の解決に貢献していきます。
なお、当連結会計年度における研究開発費は48億円であります。
[機械]
2030年に向けコアビジネスをより強化するとともに、カーボンニュートラル社会の実現に向けた新規事業を創出・育成し、機械事業部門として取り組むべき社会課題に挑戦することで、全社の安定収益の最大の柱となることを目指します。
・当社は、回転機・機器関連分野において、川崎重工業(株)と協同で、水素発電における次世代水素燃料供給システムの運転を開始し、世界で初めて、液化水素ポンプによる臨界圧力以上への昇圧と中間媒体式液化水素気化器(IFV:Intermediate Fluid Vaporizer)※1 を組み合わせた、発電設備への水素燃料の供給に成功しました。両社は、NEDO 補助事業「水素 CGS※2 の地域モデルにおける水素燃料供給システムの効率化・高度化に向けた技術開発」として、神戸市ポートアイランド地区の神戸水素エネルギーセンターに設置した水素ガスタービン発電実証設備をもとに、液化水素ポンプ、IFV、水素ガスタービンの3つを組み合わせた水素燃料供給システムの設計・運用ノウハウの体系化に取り組んでいます。本実証において、川崎重工業(株)は液化水素ポンプによる昇圧を活用したガスタービン発電向け燃料供給システムの高効率化を、当社は液化水素の冷熱利用が可能となる IFV の開発をそれぞれ担当しています。両社が開発を進めている水素燃料供給システムでは、IFV において気化時に発生する冷熱エネルギーを回収することで、ガスタービンの吸気冷却用途をはじめ、冷凍・冷蔵設備、データセンターの冷却、業務用・産業用空調など多様な用途への応用が可能となります。さらに、将来のコンビナート・工場・コミュニティー等における水素 CGS の社会実装を見据えた、液化水素による大規模水素発電への拡張性も備えています。
※1 気化熱源として海水や工業用水を用い、プロパンなどの中間媒体を介して、液化天然ガス(LNG)などの低温流体を気化させるタイプの気化器。中間媒体を用いることで、気化熱源の工業用水の凍結を避けられ、LNG などの低温流体の冷熱の有効活用にも適している。
※2 Co-Generation System(CGS):熱電併給システム
・(株)コベルコ科研は、分析・試験技術分野において、水素環境下の材料評価、新型二次電池の試作・評価、高電圧・大電流通電試験等のグリーントランスフォーメーションに寄与する技術開発、2025年1月に稼働した最新鋭の球面収差補正走査透過型電子顕微鏡(Cs-STEM)を活用した観察技術の開発を進めています。また、ターゲット材料・半導体ウェハ検査装置分野に関しても、高移動度酸化物ターゲット材料の用途拡大や、半導体ウェハ向け検査・測定装置の高精度、高機能化のための開発にも取り組んでいます。
なお、当連結会計年度における研究開発費は65億円であります。
[エンジニアリング]
循環型社会、脱炭素社会の実現に向け、将来の成長が見込まれる分野における独自プロセス・技術の開発、更なる差別化、競争力強化に向けた開発を推進しています。
・Midrex社は、還元鉄関連分野において、天然ガスを還元剤とするMIDREX NG™に加え、天然ガスを最大100%まで柔軟に水素に置き換えることができるMIDREX Flex™や、水素を100%還元剤として用いるMIDREX H2™の競争力維持・強化に向けた開発を継続しています。
・(株)神鋼環境ソリューションは、水処理関連分野において、「ボルト締結型グラスライニング消化タンク」が日本下水道事業団の新技術Ⅰ類に選定されました。同技術は、高耐食性のグラスライニングパネルを採用し、パネル同士をボルト締結して組み立てる新しい技術であり、施工・品質管理が容易となることで、消化設備のLCCを大幅に縮減します。本技術により、下水道事業におけるカーボンニュートラルの実現に不可欠な嫌気性消化技術の普及・導入を促進します。
・(株)神鋼環境ソリューションは、廃棄物処理関連分野において、廃プラスチックのガス化及びメタノール化に関する開発を継続しています。社会実装に向け技術開発は着実に進捗しており、関連企業と連携しながら事業化に関する検証を行い、これまで廃棄されていたプラスチックについて、ケミカルリサイクルによる資源循環システムの構築を目指します。
・当社は、水素事業において、グリーン水素需要の高まりを見据え、水電解式水素発生装置の大型化やコスト低減、次世代技術の開発を推進しています。水素の普及拡大及び低炭素化社会の実現に向け、水電解式水素発生装置の新商品開発に取り組んでいきます。
なお、当連結会計年度における研究開発費は50億円であります。
[建設機械]
主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。クラウドやAI、IoT等の先進テクノロジーの活用により「建設現場のテレワーク化」を実現し、深刻化する建設技能者の不足に対する多様な人材活用、現場生産性の向上、現場無人化による本質的な安全確保などを目指しています。また、カーボンニュートラルに向けた取組みの一環としてゼロエミッション建機の開発に取り組んでいます。
(ショベル)
コベルコ建機(株)(以下、コベルコ建機)は以下の取組みを行いました。
・カーボンニュートラル(CN)実現に向けた取組みの一環として、CN対応建機の開発を推進しています。2025年4月にドイツ・ミュンヘンで開催された国際建設機械展示会「bauma 2025」において、現在開発中の7トンクラスのバッテリー式電動ショベルを初めて展示しました。この電動ショベルは、都市部の狭隘な現場でも小回りが効き、1回当たりの充電可能量が多く、掘削性能や作業スピードにおいて、ディーゼル機と同等のパフォーマンスを実現します。
・「bauma 2025」において、重機の遠隔操作システム「K-DIVE®」を活用し、展示会場のコックピットからデンマークや兵庫県神戸市に設置されたショベルを遠隔操作しました。国境を越えた遠隔地においても、実機に搭乗した場合と同等の操作性を実演しました。
・環境省が公募した「2025年度コスト競争力強化を図る再エネ等由来水素サプライチェーンモデル構築・実証事業」の一環として採択された、愛知県の「知多市における低炭素水素モデルタウン実証事業」に共同実施者として参画します。本事業は、全国一の設置数を誇る水素ステーションを拠点に、地域資源を活用して製造・調達した低炭素水素を街利用分野の需要先へ効率的に供給することや、水素供給の低コスト化、水素ステーションの自立化への貢献などを目的に実施されます。コベルコ建機は、2021年から水素燃料電池ショベルの実用化に取り組み、2023年3月に試作機を完成させました。基礎評価を経て、現在は高砂製作所で連続掘削作業などの本格稼働評価を行っています。今回の参画を通じて、実際の工事現場での稼働評価を進め、本格展開を加速させていきます。
・(株)安藤・間(以下、安藤ハザマ)と共同で、2025年4月から6月にかけて、国土交通省発注の「霞ヶ浦導水石岡トンネル(第3工区)新設工事」において、自動運転ショベルによる有人ダンプへの掘削土砂積込み作業を継続的に実施しました。シールド掘削現場特有の土砂の排出量や土砂質の環境変化には、現場人員がタブレットによる調整機能を使って柔軟に対応しました。ダンプトラックの停車位置の変化には、新たに開発した物体検知機能で対応しました。さらに、国土交通省の「自動施工における安全ルールVer.1.0」に沿ってリスクアセスメントを実施し、無人エリアや中継エリア、立ち入り禁止エリアなどを設定しました。無人エリアでは、「K-DIVE®」による遠隔操作と自動運転を組み合わせて無人作業を実現しました。一方で、車両走行路や建屋が近く、自動施工エリアの確保が難しい課題に対しては、自動運転ショベルの動作経路逸脱検知機能やレーザーバリアセンサとの連携によるエリア監視機能を活用し、長期間の作業を無事故で安全に完了しました。
・安藤ハザマと共同で、トンネル切羽におけるあたり取り作業※1の自動化技術を開発し、施工中のトンネル現場で実証実験を行いました。山岳トンネル工事では、発破後に生じる切羽岩盤の凸凹に対し、設計断面から飛び出た箇所(あたり)をブレーカ・ショベルで除去するあたり取り作業が行われます。従来、この作業は、重機のオペレータと作業員の2名で行いますが、掘削直後に切羽付近で目視確認を行う必要があるため、肌落ち災害のリスクが問題となっています。こうした問題を解決するため、安藤ハザマでは2024年に、トンネル切羽のあたり箇所をリアルタイムに把握できる「あたり検知システム」を開発しました。実証実験では、あたり検知システムとブレーカを装着した自動運転ショベルを連携させ、切羽前に配置した無人のショベルに対して後方からタブレットで自動運転指示を行い、一つひとつの動作状況を確認しました。その結果、これまで把握できなかった岩盤を打撃する動作に関する課題が明らかとなり、今後の改良に向けた具体的な検討項目を抽出することができました。また、トンネル特有の限られた作業空間において、自動で動作するブレーカ・ショベルがトンネル壁面に触れることなく、あたり箇所にブレーカ先端を適切に誘導できることを確認しました。今後、遠隔化も組み合わせた自動施工技術によるあたり取り作業の安全性向上を目指し、引き続き開発を推進していきます。また、自動運転ショベルの適用工種の拡大と現場展開に向けた取組みをより一層加速させます。
※1 あたり取り作業とは、掘削した切羽の岩盤において、設計掘削断面より内空側に飛び出している岩塊(あたり)部分を除去する作業。
(クレーン)
・コベルコ建機は、Autodesk社製3D-CADのアドインソフトとして開発したクレーン施工計画策定支援ソフト「K-D2 PLANNER®」の最新バージョン(ver.1.5)を、2025年12月8日にリリースしました。「K-D2 PLANNER®」は、直感的なクリック操作によりクレーンの吊り荷の姿勢を再現し、その姿勢における負荷率の算出や、平面図・断面図の作成が可能なシミュレーションソフトです。エビデンス(記録)を残しながら、3D施工ステップ図を作成できるため、現場とのイメージ共有が的確に行え、手戻りの防止や最適なクラスのクレーン選定が可能になるなど、施工計画の精度向上や策定時間の短縮、コスト削減を実現します。今回、新たに3D画面上で干渉チェックを簡単に行える機能を搭載しました。従来も断面図により目視での干渉チェックは可能でしたが、本機能を使用することで干渉部分を視覚的に確認できます。これにより、従来以上に手軽な干渉チェックが可能となり、安全で高品質な施工計画の策定に寄与します。
なお、当連結会計年度における研究開発費は117億円であります。
[電力]
当連結会計年度における研究開発費は0億円であります。
[その他]
上記外の事業セグメントに係る当連結会計年度における研究開発費は0億円であります。
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