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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100TPPL (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 古河電気工業株式会社 研究開発活動 (2024年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

当社グループは、古河電工グループ ビジョン2030を達成するために、情報/エネルギー/モビリティ融合領域での社会課題解決に向け、積極的に研究開発へ取り組んでおります。当事業年度における当社グループの研究体制は、国内の当社研究所等(サステナブルテクノロジー研究所、エレクトロニクス研究所、フォトニクス研究所、マテリアル研究所、デジタルトランスフォーメーション&イノベーションセンター)及び海外の OFS Laboratories, LLC (米国)、 Furukawa Electric Institute of Technology Ltd.(ハンガリー)、SuperPower Inc.(米国)、 Silicon Valley Innovation Laboratories, Furukawa Electric (米国)を中心に構成されております。

当連結会計年度における研究開発費は、前連結会計年度比5.2%増の24,539百万円とし、各セグメントの主な成果等は以下のとおりであります。

(1)インフラ

① 大容量かつ消費電力が少ない次世代ネットワークスイッチの実現に向けて、エネルギー効率に優れたCo-packaged Optics用外部光源を開発し、2024年1月より量産を開始いたしました。本製品には、伝送速度の高速化及び消費電力低減を両立させた、高出力で電力変換効率が高いDFBレーザダイオードチップが内蔵されております。
また、データセンタや陸上の光通信におけるマルチコアファイバの適用への期待に伴い、当社は従来のシングルモードファイバから外径を変えずにコア数のみを増やした19コアのマルチコアファイバを作製いたしました。この成果を、光通信及びネットワークに関する展示会であるOFC2024にて報告いたしました。
さらに、光ファイバによる通信容量の拡大が期待されているO(オー)バンドについても研究を進めております。従来の直接変調方式ではさらなる高速化、大容量化が難しいとされておりましたが、株式会社KDDI総合研究所との研究により、Oバンドに超広帯域なビスマス添加光ファイバ増幅器を適用することで、大容量なコヒーレント高密度波長多重信号の伝送実験に世界で初めて成功いたしました。このビスマス添加光ファイバ増幅器は当社独自の技術を用いた製品であり、この製品の活用によりOバンドの欠点であるファイバの伝送損失の高さを補いました。
このほか、当社は、2024年2月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発」プロジェクトに採択されて以降、光と電子の融合を実現するための光半導体デバイスの実現に向けた研究開発を加速させております。また、総務省から委託を受けている「グリーン社会に資する先端光伝送技術の研究開発」プロジェクトにおいて、低遅延・大容量情報伝送などが期待される空孔コアファイバケーブルを慶應義塾大学キャンパス内に敷設し、実用化に向けた実験を進めております。
② モビリティの電動化に向けた取組みとしては、加工用高出力レーザの製品群として、高輝度青色レーザダイオードモジュールを搭載するBlue-IRハイブリッドレーザ「BRACE®シリーズ」を販売しております。当社と日亜化学工業株式会社は、この「BRACE®シリーズ」の新たなラインナップとして、出力が従来比で2倍の500W以上となる青色レーザダイオードモジュールを共同開発いたしました。本製品は、電動モビリティ向け主要部品であるリチウムイオン電池、モータ、インバータ等の導体となる銅の溶接工程の生産性向上(品質・加工速度の向上)や製造工程の省人化に貢献することができます。
③ カーボンニュートラルに向けた取組みとしては、再生可能エネルギーにより発電した電力の安定供給に貢献するため、古河電池株式会社とバイポーラ型蓄電池の共同開発を推進しております。本製品は、シンプルな構造のため電池の大容量化が可能であるほか、従来の鉛蓄電池と同様に稼働時の空調コストを抑制できる高い経済性を持ち合わせた電力貯蔵用蓄電池です。2023年4月からは株式会社関電工及び古河電池株式会社と共同での性能確認試験を開始しており、本試験を通じてバイポーラ型鉛蓄電池の社会実装に向けた共創に取り組んでおります。

以上、当該事業に係る研究開発費は12,876百万円であります。

(2)電装エレクトロニクス
① カーボンニュートラルに向けた電動車市場の拡大に対する取組みとして、引き続き、高圧ハーネス・高圧部品の開発に注力しております。その成果として、EV車向けに新たに開発した変換ボックスを顧客向けに量産納入しており、本製品が内蔵されたEV車は2023年7月から市場投入されております。
このほか、引き続き、電動車用コネクタ・電線については、次世代製品の開発や表面処理を含む端子材料の開発も進めているとともに、自動車用ワイヤハーネスについては、車両軽量化へのニーズに応えるため、当社独自のα端子を活用し、アルミ電線のさらなる適用部位拡大を進めております。
また、当社が開発したBSS®(鉛バッテリ状態検知センサ)が、過充電抑制による燃費向上及び過放電によるバッテリ上がり防止等に貢献しており、今後予想される車載電子機器の増加や頻繁なソフトウェアアップデートに向けて、拡販及び受注活動を進めております。
加えて当社は、軽量かつ金属異物を加熱し難い特徴を有する電界共振結合方式を用いて、世界トップクラスとなる9.1kWの電力伝送に成功しております。本方式を採用した電動キックボードのワイヤレス充電ポートシステムを株式会社大林組とともに開発し、引き続き実証実験を行っております。
さらに素材開発としては、高強度・高導電・高機能な銅合金及び貴金属めっきの開発を引き続き行っております。本開発により、電子機器における接続部品(コネクタ、端子等)の多極化・高密度化、発熱の制御、電流を検出・制御する抵抗器(チップ抵抗器、シャント抵抗器等)の高性能化、電装品(ワイヤハーネス等)の高電圧化・大電流化への対応を進めております。
また、加工用高出力レーザの対象材料については、これまで、光反射率が極めて高く難加工素材とされてきた純銅の加工において、高水準の品質・深度・加工速度を実現いたしました。
② 自動運転に向けた取組みとしては、雨・雪等の環境下でも安定して物体検知可能な車載用の24GHz帯周辺監視レーダのほか、先進安全運転支援システム高度化に適応するため、後方監視だけでなく前方監視まで機能を拡張し、体積と重量をそれぞれ約30%削減した周辺監視レーダの量産を行っております。また汚れやホコリに強い特長を活かして建機・農機等向け周辺監視レーダの量産を開始しております。
③ シミュレーション技術及び分析技術に関する取組みとしては、大学や公的機関の先端分析装置を有効活用して研究開発の効率化を推進しており、ワイヤハーネスなどの自動車用部品においては変形・応力シミュレーション、電子機器開発においては振動・熱流体・電磁界シミュレーションを実施いたしました。また、Furukawa Electric Institute of Technology Ltd. (ハンガリー)では、先進的なシミュレーション技術開発に取り組んでおり、触媒構造解析のための分子動力学シミュレーションを実施いたしました。

以上、当該事業に係る研究開発費は5,219百万円であります。

(3)機能製品
① 当社グループは、「古河電工グループ 環境ビジョン2050」に基づき、脱炭素社会、水・資源循環型社会及び自然共生社会への貢献を目指しております。このため、CO2の排出量削減に向けたバリューチェーン全体における再生材の利用を促進すべく、再生ポリプロピレンの使用比率を従来の約50%から100%に高めた無架橋低発泡ポリプロピレンシート「エフセル®」のRCグレードや、排出された木粉を再生プラスチックに配合した木粉複合景観色グリーントラフ®を開発いたしました。
また、カーボンニュートラルに向けた取組みとして、セルロース繊維強化樹脂「CELRe®」の開発を進めております。本製品は、セルロース繊維の高分散化技術により、強度と耐衝撃性を両立させつつ、低コストでの製造が可能となっております。さらに、自動車分野などでの利用が期待されるセルロース繊維強化樹脂の量産に向けた技術開発や、プラスチック再生技術におけるセルロース繊維利用の検証も行っております。このほか社外での取組みとして、当社は、環境省が実施する「プラスチック・スマート」に参加しております。
さらに、製品の高発熱化、薄型化、軽量化へ対応するヒートパイプ式ヒートシンクのほか、データセンタの高発熱密度に対応した製品、エレクトロニクス機器の高発熱化、軽量化に対応した製品や、次世代モビリティに向けた熱技術を応用した製品の開発にも注力しております。
② 情報分野においては、通信基地局用のルーター、スイッチ、アンテナや、生成系AI用やデータセンタ用のサーバー等に使用されるプリント基板の高周波化が進展しており、高周波プリント基板を構成する銅箔の需要も高まっていることから、当社は、さらなる高周波化にも対応できる次世代高周波プリント基板用銅箔であるF0X-WSを開発し、量産化を進めております。

以上、当該事業に係る研究開発費は1,869百万円であります。

(4)サービス・開発等

① 超電導分野では、低温超電導線材及び高温超電導線材の開発・製造リソースを持つ強みを生かし、顧客への新製品提案・開発を進めております。
超電導製品部では、低温超電導線材の開発・量産化を進めており、顧客のコイル製造プロセスを効率化する自己融着機能を有する新製品を販売しております。
SuperPower Inc.(米国)においては、イットリウム高温超電導線材の研究開発及び製造をしております。高温超電導線材は、当社製低温超電導線材と併せて用いることにより、新素材や先端医薬の開発に欠かせない高磁場マグネットなどに利用されております。さらに、先進核融合原型炉の分野では、高温超電導線材の供給を通じて海外有力顧客との関係強化を進めており、そのうちトカマクエナジー社(英国)へは約1,000万ポンドの出資契約を締結し、商用核融合エネルギーの推進に向けて同社とのパートナーシップを強化しております。
また、内閣府が2024年3月に設立した「一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会」において、当社は理事を務めており、活動を通じてフュージョンインダストリーの育成に貢献しております。さらに、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の未来社会創造事業において、京都大学との共同研究により、キロアンペア級の交流電流を低損失で流せる高温超電導集合導体ケーブルを開発いたしました。
② Silicon Valley Innovation Laboratories, Furukawa Electric(米国)では、社会課題解決型の新技術や新事業の創出を目的に、スタートアップを中心としたイノベーションエコシステムのステークホルダーとのオープンイノベーションを積極的に推進しております。現地アクセラレータと提携し、当社グループのコア技術とシリコンバレーに集まる技術やビジネスモデルを結合させ新たな顧客体験や価値創出を目指す共創に加え、米国内の大学と提携し当社の技術課題のみならず社会課題を解決する新技術の探索を開始しております。さらに、現地ネットワークを活用したVOC(Voice Of Customer)の収集や北米のエコシステム調査分析などのマーケティングを行い、当社技術のインキュベーション北米拠点として活動しております。
③ 技術開発及び事業開発の両方の機能を担うソーシャルデザイン統括部では、社会インフラ維持管理・ライフサイエンス・宇宙等の各領域において、当社の技術を活かした新事業開発を進めております。社会インフラ維持管理の領域では、「みちてん®」「てつてん®」に代表されるインフラDXや、当社のレーザ技術を活用したインフラレーザについて、市場展開を加速させ着実に社会実装を進めております。ライフサイエンス領域では、2022年12月に設立したMFオプテックス株式会社との共創を継続しており、光技術を活用した医療機器向け部品等の開発及び市場展開を行っております。宇宙領域では、2023年度からの東京大学大学院工学系研究科との社会連携講座を活用し、事業創出を加速させております。
④ 2050年のカーボンニュートラル実現と持続可能なエネルギーの安定供給のために、化石燃料によらないグリーンLPガスの社会実装に向けて取り組んでおります。グリーンLPガスを世界で年間数百万トン規模で製造することを目標に、2023年11月には、商業化のノウハウと国際的なLPガスの供給網を保有するアストモスエネルギー株式会社及びFuturia Fuels社(オランダ)との間でグリーンLPガス共同検討に関する基本合意書を締結いたしました。
このほか、北海道鹿追町での実証実験用プラントの開発や、北海道大学との共創を通じて、様々な地域資源を最大限利活用した脱炭素社会・循環型社会の実現に向けて技術開発を進めるとともに、専門人材の育成に取り組んでおります。
⑤ 近年の激甚化する自然災害への対策として、風水害発生時の自主避難を支援する自治体向けサービス「みんなんサポート®」を開発いたしました。本サービスは、これまでに鹿児島県薩摩川内市・島根県美郷町・長野県長野市など全7地区で実証実験を実施しており、これらの実績が高く評価された結果、次世代に向けたレジリエンス社会構築のため先進的な取組みを行っている企業等を評価・表彰する「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2023」において優良賞を受賞いたしました。また、2023年6月からは島根県美郷町の地区防災計画作成支援業務において本サービスの社会実装を開始し、災害を想定した自助・共助・公助の連携強化に貢献しております。

以上、当該事業に係る研究開発費は4,574百万円であります。

事業等のリスク株式の総数等


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