有価証券報告書の歩き方 (1) ~ あの会社では、どのくらいの給与をもらっているのか
マスコミ各社の企画で給与ランキングをやっているのをよく見かけます。これ、人気コンテンツなんですね。他の人はどのくらいの給与をもらっているのか、やっぱり、みなさん気になるんでしょう。でも、どうやって調べたのでしょうか?実は、この給与ランキングの情報元は有価証券報告書なのです。
どんブログの投稿: 有価証券報告書の歩き方 (1) ~ あの会社では、どのくらいの給与をもらっているのか 【導入】
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従業員の給与を知るには、有価証券報告書のどこを見ればよいのでしょうか?
それは、有価証券報告書の「従業員の状況」という章です。この中に「提出会社の状況」として、従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与が書かれています。この情報が給与ランキングを作るための情報源になっているのです。
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では、具体的に見てみましょう。
給与ランキングで、いつも上位に来るので有名な「株式会社キーエンス」という会社を例に見てみます。
キーエンスの従業員の平均年間給与は、1,777万円もあるんですね。国税庁の調査(民間給与実態統計調査)によると、日本の民間企業の年収平均は420万円ですから、実に平均の約4倍の給与が、この会社の平均ということになります。
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さて、上場企業にお勤めの方で、自分の給与明細を見て、「あれ?これって、本当に自分が勤めている会社の平均給与なのか?」と実態とかけはなれていると疑問を持たれる方もいると思います。ここでポイントなのが、「提出会社の状況」として開示されている情報ということです。特に、親会社は具体的な事業を行わない持ち株会社にする、いわゆるホールディングスという形をとっている会社が増えています。注意しなくてはならないのが、有価証券報告書に書かれている給与は、これを提出した会社の従業員の状況だということです。
具体的にソフトバンクを例に見てみましょう。提出会社は、ソフトバンクグループになっていて、平均給与は、1,164万円です。高いですね。しかし、合わせて見なくてはならないのは従業員数で、わずか199名です。この上に「連結会社の状況」が書かれています。これを見ると、63,591名の従業員がいることがわかります。一般にソフトバンクグループの平均給与と言われて思い描く、グループ企業の従業員全員の平均給与とは異なるため、63,591名の実態とはかけ離れている可能性があります。
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このように注意して見なくてはならない点はあるものの、平均給与は、やはり安いより高い方が良いわけで、これを参考に就職や転職を考えてみるのも良いでしょう。また、待遇の良さは従業員のやる気を引き出し、企業の力となっていきます。企業を評価する上でも、従業員の平均給与は重要な指標と言えます。ただし、他社と平均給与を比較するには平均年齢も加味する必要があります。
また、合わせて書かれている平均勤続年数も、働く環境を表す指標と言えます。この指標も単純には他社比較はできません。創立何年の会社なのか、従業員数は増えているのか減っているのか、新卒採用に積極的なのか、早期退職制度があるのか、従業員は活き活きと働けているか(実際の表情)、なども、この指標と合わせて見ることで、はじめて本当にその会社の従業員の状況がわかるものだからです。
働き方は多様化しています。最近話題になっている、給与は高くても、残業時間が多いブラック企業と言われる会社もあります。有価証券報告書ではわからない時給換算でランキングも見てみたいものですね。
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どんぶり会計β版では、有価証券報告書抜粋メニューから企業を検索して、「従業員」ボタンを押すだけの簡単操作で、平均年間給与の調査が可能です。気になる会社の平均年間給与を調べるのにお役立てください。
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