有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100T58N (EDINETへの外部リンク)
キヤノン株式会社 研究開発活動 (2023年12月期)
当社は創業当時から、業界をリードするコア製品を生みだす「コアコンピタンス技術(以下、コア技術)」と、技術蓄積のベースとなる「基盤要素技術」、さらには、商品化技術のベースとなる「価値創造基盤技術」を多様に組み合わせた「コアコンピタンスマネジメント」を展開して事業の多角化を行ってきました。
コアコンピタンスマネジメントでは、コア技術はその進化にともない、他事業でも再活用できる基盤要素技術として蓄積されていきます。たとえば、カメラの人物認識というコア技術は、AI・データ統計解析という基盤要素技術として蓄積され進化し、現在では、多角化を担うメディカル事業の医療ITシステムに組み込まれて事業の強化に貢献しています。
このコアコンピタンスマネジメントは、研究開発のプロセスのなかでは「マトリックス研究開発体制」を通して行われています。本社の研究部門とそれぞれの製品を担う事業部の開発部門がマトリックス型の体制を敷き、全社技術の利活用が可能な体系を構築しています。製品の競争力のもととなるコア技術は事業部の開発部門が主体ですが、本社の研究部門は、先行的なトレンドリサーチと基盤技術開発を担い、事業部のもつコア技術の先行的な開発につなげています。
さらに、コア技術/基盤要素技術という「製品に入る技術」と、価値創造基盤技術という「製品を支える技術」が一体となって全社で利活用が可能なホリスティックな(技術を複合的に連携できる)開発環境が整っていることが、当社の研究開発の最大の特徴となっています。これにより、製品に入る技術と製品を支える技術が強い技術として、同時に製品開発に投入されることで、競争力のある製品を生みだしています。
当期におけるグループ全体の研究開発費は、331,914百万円であり、セグメントごとの主な研究開発の成果は次のとおりです。
Ⅰ.プリンティングビジネスユニット
商業印刷向け大型複合機においては、定着ベルトの温度を均一に制御できる大径加熱ローラーと、用紙との接触面積が広いワイドニップを用いた新定着システム「POD-SURF」を開発し、「imagePRESS V1350」と「imagePRESS V1000」の2機種に搭載しました。「imagePRESS V1350」では、従来機種より35%向上した135枚/分のシリーズ最高の高速印刷を実現し、印刷物の短納期化に寄与します。「imagePRESS V1000」では、一冊の冊子で厚紙と普通紙が混在するような印刷でも用紙ごとに定着温度を切り替える頻度を抑制し、温度調整によるダウンタイムを削減しました。厚紙と普通紙で機器を分けずに、1台で高い生産性を維持した連続印刷が可能です。「imagePRESS V900」では、コンパクト設計でありながら、オプションユニットの拡張性と幅広い用紙対応力で多様な印刷が可能になりました。これまで上位機種でしか採用されていなかったオプションのインライン分光センサーで、高精度な色調整がボタン一つで実施可能になり、オペレーターの負荷軽減を実現します。ハードウエアだけでなく、リモート印刷管理アプリ「PRISMAremote Manager」を活用することで、印刷機から離れた場所でも用紙の補充タイミングや稼働状況をリアルタイムに把握可能です。用紙切れなどのエラーを事前に防止することで、ダウンタイムを削減し業務効率化を支援します。
プロダクションCAD市場向けの大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF TZ-30000 MFP」は、業界初となる「ストップレスロール紙交換システム」を搭載しています。本体にセットされた上下2段のロール紙のうち、一方が印刷中でも、もう一方のロール紙交換が可能となり、ダウンタイムを削減します。また、ポスター市場向けの「imagePROGRAF GP-4000/GP-2000/GP-300/GP-200」は、業界初となる蛍光インクを搭載し、ポスター印刷での明度と彩度を向上させ、明るく柔らかな色表現が可能になりました。図面印刷とポスター印刷のマルチユースに対応する「imagePROGRAF TM-355/350/340/255/250/240」はフラットトップデザインを採用し、ユーザーにロール紙を置く作業スペースとして平らな天面をご活用頂く事で、手間のかかるロール紙交換を簡単にしました。
オフィス向け複合機においては、「imageRUNNER ADVANCE DX シリーズ」のラインアップを強化しています。新開発の低融点トナーにより定着温度を下げたことで、業界トップレベル※1の標準消費電力量(TEC2018※2)を実現しており、加えて小サイズ紙の出力生産性向上や、さまざまな静音化の工夫により稼働音の低減を図るなど、複合機としての本質性能を向上させています。増加するセキュリティリスクに対しても、ネットワークに接続されるIoT機器として、データの保存や通信において強固な暗号化機能を提供する「TPM 2.0」や「TLS 1.3」、無線LANのセキュリティプロトコル「WPA3」といった最新規格への対応、米国政府機関が定めたセキュリティ基準を示すガイドライン「NIST SP 800-171/172/193」への対応、「ネットワーク機能付き事務機セキュリティーガイドライン」への適合を示す「BMSec」マークの取得を行っています。加えて、「imageRUNNER ADVANCE DX シリーズ」はクラウド型MFP機能拡張プラットフォーム「uniFLOW Online」を介して、認証によるセキュアな印刷や集計レポート機能、さまざまなクラウドサービスとの連携や在宅勤務時でもオフィス同様のセキュリティを保って業務印刷が行える機能などを実現し、幅広いユーザーの業務のさらなる効率化に寄与します。使いやすく高性能な複合機と多彩なデジタルサービスの組み合わせで、オフィス業務のデジタルトランスフォーメーションを強力にサポートします。
家庭用インクジェットプリンター「PIXUS XK120/TS8730/TS6730/TS6630」は、仕事や趣味・学習などのさまざまなユースシーンに応える機能と使い勝手を向上させました。写真や文書印刷に適した「XK120/TS8730」には、ユーザーのユースシーンに合わせて選択できるUI(ユーザーインターフェース)を採用し、少ない操作でプリントやスキャンなどを行えます。文書を印刷するユーザーに最適な「TS6730/TS6630」では、新開発のインクカートリッジの採用により、導入しやすいスタンダードモデルながら高速な文書スピードを実現しています。また、ビジネス向けインクジェットプリンターについては、低ランニングコストを実現する特大容量タンクを搭載した各種のプリンターを発売しました。在宅勤務に特化したフルフロントオペレーション対応の「GX2030/GX1030」、物流・薬局・小売りで使用される用紙の種類・サイズに幅広く対応し、1台で様々な印刷ができる「GX5530」、さらには、受付業務や窓口業務に特化したフロント操作のADFによる対面業務の効率化を実現した「GX6530」により、さまざまな角度からビジネスを支援していきます。
当ビジネスユニットに係る研究開発費は、97,925百万円であります。
※1 オフィス向けカラー複合機(A4片面、毎分25-35枚の出力速度)において。2023年8月1日現在。
オフィス向けモノクロ複合機(A4片面、毎分25-45枚の出力速度)において。2022年9月27日現在。(当社調べ)
※2 国際エネルギースタープログラムで定められた測定法による数値。
Ⅱ.メディカルビジネスユニット
当社では国産としては初めてのフォトンカウンティング検出器を搭載したX線CTの医療機器としての認証を2022年12月に取得、国立がん研究センター先端医療開発センター・国立がん研究センター東病院と連携し、特定臨床研究として早期のフォトンカウンティングCT(PCCT)実用化に向けた研究を推進し、新たな診断法の開発とその臨床的有用性の探索を行っています。加えて、専用の椅子に座ったままでも全身をスキャンできる世界初の全身用320列面検出器型の立位・座位CTの開発にも取り組んでおり、既に国内における健診での活用が開始されています。
このような新たな臨床価値を生み出すユニークな技術をベースにアップストリームマーケティングを強化するべく、米国クリーブランド市近郊に「Canon Healthcare USA,Inc.」を設立し、臨床ニーズをとらえたグローバルな製品開発につなげる活動を行っています。
また、2023年11月には米国クリーブランド・クリニック財団と当社は、患者さんにとってより良い医療を実現する画期的な医用画像ソリューションおよびヘルスケアIT技術の開発を目指す戦略的研究パートナーシップに合意しました。クリーブランド・クリニックの生物医学研究や臨床ケアにおける高い専門性と当社のイメージング技術を生かして共同研究を推進していきます。
超音波診断装置では2023年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において、「2つの基本波の差周波と第2高調波を利用する超音波診断装置の開発」が科学技術賞(開発部門)を受賞しました。また画像処理の分野において2023年度全国発明表彰「心臓血管内治療中における治療用器具の表示方法改善の発明(特許第5523791号)」が「発明協会会長賞」および「発明実施功績賞」を受賞いたしました。
当ビジネスユニットに係る研究開発費は、47,182百万円であります。
Ⅲ.イメージングビジネスユニット
レンズ交換式デジタルカメラ(デジタル一眼レフカメラ及びミラーレスカメラ)の世界市場において、2003年から21年連続で台数シェアNo.1※3を達成しました。これからも基本コンセプトである「快速・快適・高画質」を追求し続けることで、幅広い製品ラインアップを揃え、写真・映像文化の発展に貢献していきます。
「EOS Rシステム」では、さらなるラインアップ拡充として、小型・軽量のフルサイズミラーレスカメラ「EOS R8」やAPS-Cサイズのエントリーモデル「EOS R50」、「EOS R100」を発売しました。一眼レフカメラからの買い替えを促進するとともに、初めてフルサイズカメラやレンズ交換式カメラを使用するユーザーでも本格的な撮影を気軽に楽しめるモデルを投入することで、多様化する顧客のニーズにお応えし、新規顧客獲得に努めています。
また、「RFレンズ」では、大口径望遠ズームレンズ「RF100-300mm F2.8 L IS USM」や静止画撮影・映像制作現場両方のニーズに応える大口径標準ズームレンズ「RF24-105mm F2.8 L IS USM Z」、APS-C 専用の「RF-Sレンズ」2機種など、9機種をラインアップに加え累計41本まで拡充しています。
超高感度カメラでは、世界最高画素数の約320万画素※4 1.0型SPADセンサーを搭載した「MS-500」を発売しました。当社は、SPADセンサーをはじめ、放送用レンズ、カメラの映像エンジンなどを自社で開発・製品化しています。各デバイスの特性と知見を十分に生かすことで、センサーやレンズの性能の良さを引きだしつつ、解像感や階調・色再現性の基本性能を向上しています。また、「映像鮮明化ソフトウエア」は、カメラメーカーとして蓄積してきた膨大な画像データベースと画像処理の知見をもとに、独自開発したディープラーニング画像処理技術を採用しています。カメラ単体では避けられない低照度環境下などで発生するノイズに対して、さらなる低減処理を行うことが可能です。
製造や流通などにおける点検・検査の自動化を支援する映像解析ソフトウエア「Vision Edition」では、大規模遠隔監視システムに対応するためのマルチカメラ接続や、ビデオ管理ソフトウエア「Milestone XProtect」からの映像取得が可能になりました。また、画像添付可能なメール通知機能やAI画像処理との連携機能なども新機能として追加し、より多くの場面で顧客のDX推進に貢献してまいります。
リモートカメラシステムでは、パン、チルト機構とズーム機能を備えた「CR-N100」で映像出力機能を講義や会議市場向けに改良することで従来機種からのローコスト化を実現しました。リモートカメラコントローラー「RC-IP1000」はIP接続され入力されたリモートカメラ映像を最大9台分表示し、表示映像のタッチ操作で制御カメラの切り替えが可能です。また最大200台までのカメラ接続が可能な「マルチカメラマネジメントアプリ」や人物の動きに合わせて自動で被写体を追尾する「自動追尾アプリケーション」、登録した画角へ繰り返し動作する「自動ループアプリケーション」によって、作業負荷軽減や省人化を支援します。
「CINEMA EOS SYSTEM」と業務用ビデオカメラにおいては、ファームウエアアップデートによる商品力強化を図りました。またiPhoneアプリ「Canon Multi-Camera Control」は複数カメラの状態や映像表示可能とし、効率的な機材設定やリモート撮影ができるようになるなど、マルチカメラワークフローの効率化が実現できます。
映像ソリューションにおいては、「ボリュメトリックビデオシステム」によりスポーツ放送で実際のカメラ位置にとらわれない自由な視点からの映像を展開しました。3Dコンテンツの撮影から編集までをワンストップで実現した「ボリュメトリックビデオスタジオ-川崎」では、CMやミュージックビデオ、TV番組で実績を積み重ね、虎ノ門ヒルズの情報発信拠点「TOKYO NODE」にも最先端のボリュメトリックビデオスタジオを開設しました。東京から世界に発信するためのクリエイティブエコシステム作りを目指します。
当ビジネスユニットに係る研究開発費は、93,834百万円であります。
※3 2024年3月現在。(当社調べ)
※4 映像撮影用のSPADセンサーとして。2023年7月31日現在。(当社調べ)有効画素数約210万画素。
Ⅳ.インダストリアルビジネスユニット
半導体露光装置においては、ハンコのように押し付けるシンプルな仕組みで微細な回路パターン形成を実現するナノインプリント半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」により、最先端の半導体デバイス製造に貢献します。この装置は、投影露光装置のように光源の波長による微細化を必要としないため、消費電力やCO2の削減にも貢献しています。また、広画角と高解像力の両立により、フルサイズCMOSセンサーの製造に求められる高解像力での一括露光を実現するi線ステッパー「FPA-5550iX」により、拡大が期待されるXR市場等の幅広いデバイス製造をサポートします。
FPD露光装置においては、第8世代ガラス基板にて、高生産性と高精細化を両立したIT機器用ディスプレイ向け露光装置「MPAsp-H1003H」により、需要が増加するノートPCやタブレット向けディスプレイパネルのニーズに応えています。この装置は第6世代ガラス基板向け露光装置の超解像技術を採用しており、1.5マイクロメートルの解像力を実現しています。また、従来から定評のある高速ステージ技術の進化改良により生産性向上にも寄与しています。
計測機器分野においては、リサイクルの際に判別が困難な黒色プラスチック片とその他プラスチック片を高精度に選別する「トラッキング型ラマン分光技術」を開発し、再利用できるプラスチック量の最大化を目指します。
当ビジネスユニットに係る研究開発費は、27,872百万円であります。
また、基礎研究等のその他及び全社に係る研究開発費は65,101百万円であります。
注:製品名は日本国内での名称です。
コアコンピタンスマネジメントでは、コア技術はその進化にともない、他事業でも再活用できる基盤要素技術として蓄積されていきます。たとえば、カメラの人物認識というコア技術は、AI・データ統計解析という基盤要素技術として蓄積され進化し、現在では、多角化を担うメディカル事業の医療ITシステムに組み込まれて事業の強化に貢献しています。
このコアコンピタンスマネジメントは、研究開発のプロセスのなかでは「マトリックス研究開発体制」を通して行われています。本社の研究部門とそれぞれの製品を担う事業部の開発部門がマトリックス型の体制を敷き、全社技術の利活用が可能な体系を構築しています。製品の競争力のもととなるコア技術は事業部の開発部門が主体ですが、本社の研究部門は、先行的なトレンドリサーチと基盤技術開発を担い、事業部のもつコア技術の先行的な開発につなげています。
さらに、コア技術/基盤要素技術という「製品に入る技術」と、価値創造基盤技術という「製品を支える技術」が一体となって全社で利活用が可能なホリスティックな(技術を複合的に連携できる)開発環境が整っていることが、当社の研究開発の最大の特徴となっています。これにより、製品に入る技術と製品を支える技術が強い技術として、同時に製品開発に投入されることで、競争力のある製品を生みだしています。
当期におけるグループ全体の研究開発費は、331,914百万円であり、セグメントごとの主な研究開発の成果は次のとおりです。
Ⅰ.プリンティングビジネスユニット
商業印刷向け大型複合機においては、定着ベルトの温度を均一に制御できる大径加熱ローラーと、用紙との接触面積が広いワイドニップを用いた新定着システム「POD-SURF」を開発し、「imagePRESS V1350」と「imagePRESS V1000」の2機種に搭載しました。「imagePRESS V1350」では、従来機種より35%向上した135枚/分のシリーズ最高の高速印刷を実現し、印刷物の短納期化に寄与します。「imagePRESS V1000」では、一冊の冊子で厚紙と普通紙が混在するような印刷でも用紙ごとに定着温度を切り替える頻度を抑制し、温度調整によるダウンタイムを削減しました。厚紙と普通紙で機器を分けずに、1台で高い生産性を維持した連続印刷が可能です。「imagePRESS V900」では、コンパクト設計でありながら、オプションユニットの拡張性と幅広い用紙対応力で多様な印刷が可能になりました。これまで上位機種でしか採用されていなかったオプションのインライン分光センサーで、高精度な色調整がボタン一つで実施可能になり、オペレーターの負荷軽減を実現します。ハードウエアだけでなく、リモート印刷管理アプリ「PRISMAremote Manager」を活用することで、印刷機から離れた場所でも用紙の補充タイミングや稼働状況をリアルタイムに把握可能です。用紙切れなどのエラーを事前に防止することで、ダウンタイムを削減し業務効率化を支援します。
プロダクションCAD市場向けの大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF TZ-30000 MFP」は、業界初となる「ストップレスロール紙交換システム」を搭載しています。本体にセットされた上下2段のロール紙のうち、一方が印刷中でも、もう一方のロール紙交換が可能となり、ダウンタイムを削減します。また、ポスター市場向けの「imagePROGRAF GP-4000/GP-2000/GP-300/GP-200」は、業界初となる蛍光インクを搭載し、ポスター印刷での明度と彩度を向上させ、明るく柔らかな色表現が可能になりました。図面印刷とポスター印刷のマルチユースに対応する「imagePROGRAF TM-355/350/340/255/250/240」はフラットトップデザインを採用し、ユーザーにロール紙を置く作業スペースとして平らな天面をご活用頂く事で、手間のかかるロール紙交換を簡単にしました。
オフィス向け複合機においては、「imageRUNNER ADVANCE DX シリーズ」のラインアップを強化しています。新開発の低融点トナーにより定着温度を下げたことで、業界トップレベル※1の標準消費電力量(TEC2018※2)を実現しており、加えて小サイズ紙の出力生産性向上や、さまざまな静音化の工夫により稼働音の低減を図るなど、複合機としての本質性能を向上させています。増加するセキュリティリスクに対しても、ネットワークに接続されるIoT機器として、データの保存や通信において強固な暗号化機能を提供する「TPM 2.0」や「TLS 1.3」、無線LANのセキュリティプロトコル「WPA3」といった最新規格への対応、米国政府機関が定めたセキュリティ基準を示すガイドライン「NIST SP 800-171/172/193」への対応、「ネットワーク機能付き事務機セキュリティーガイドライン」への適合を示す「BMSec」マークの取得を行っています。加えて、「imageRUNNER ADVANCE DX シリーズ」はクラウド型MFP機能拡張プラットフォーム「uniFLOW Online」を介して、認証によるセキュアな印刷や集計レポート機能、さまざまなクラウドサービスとの連携や在宅勤務時でもオフィス同様のセキュリティを保って業務印刷が行える機能などを実現し、幅広いユーザーの業務のさらなる効率化に寄与します。使いやすく高性能な複合機と多彩なデジタルサービスの組み合わせで、オフィス業務のデジタルトランスフォーメーションを強力にサポートします。
家庭用インクジェットプリンター「PIXUS XK120/TS8730/TS6730/TS6630」は、仕事や趣味・学習などのさまざまなユースシーンに応える機能と使い勝手を向上させました。写真や文書印刷に適した「XK120/TS8730」には、ユーザーのユースシーンに合わせて選択できるUI(ユーザーインターフェース)を採用し、少ない操作でプリントやスキャンなどを行えます。文書を印刷するユーザーに最適な「TS6730/TS6630」では、新開発のインクカートリッジの採用により、導入しやすいスタンダードモデルながら高速な文書スピードを実現しています。また、ビジネス向けインクジェットプリンターについては、低ランニングコストを実現する特大容量タンクを搭載した各種のプリンターを発売しました。在宅勤務に特化したフルフロントオペレーション対応の「GX2030/GX1030」、物流・薬局・小売りで使用される用紙の種類・サイズに幅広く対応し、1台で様々な印刷ができる「GX5530」、さらには、受付業務や窓口業務に特化したフロント操作のADFによる対面業務の効率化を実現した「GX6530」により、さまざまな角度からビジネスを支援していきます。
当ビジネスユニットに係る研究開発費は、97,925百万円であります。
※1 オフィス向けカラー複合機(A4片面、毎分25-35枚の出力速度)において。2023年8月1日現在。
オフィス向けモノクロ複合機(A4片面、毎分25-45枚の出力速度)において。2022年9月27日現在。(当社調べ)
※2 国際エネルギースタープログラムで定められた測定法による数値。
Ⅱ.メディカルビジネスユニット
当社では国産としては初めてのフォトンカウンティング検出器を搭載したX線CTの医療機器としての認証を2022年12月に取得、国立がん研究センター先端医療開発センター・国立がん研究センター東病院と連携し、特定臨床研究として早期のフォトンカウンティングCT(PCCT)実用化に向けた研究を推進し、新たな診断法の開発とその臨床的有用性の探索を行っています。加えて、専用の椅子に座ったままでも全身をスキャンできる世界初の全身用320列面検出器型の立位・座位CTの開発にも取り組んでおり、既に国内における健診での活用が開始されています。
このような新たな臨床価値を生み出すユニークな技術をベースにアップストリームマーケティングを強化するべく、米国クリーブランド市近郊に「Canon Healthcare USA,Inc.」を設立し、臨床ニーズをとらえたグローバルな製品開発につなげる活動を行っています。
また、2023年11月には米国クリーブランド・クリニック財団と当社は、患者さんにとってより良い医療を実現する画期的な医用画像ソリューションおよびヘルスケアIT技術の開発を目指す戦略的研究パートナーシップに合意しました。クリーブランド・クリニックの生物医学研究や臨床ケアにおける高い専門性と当社のイメージング技術を生かして共同研究を推進していきます。
超音波診断装置では2023年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において、「2つの基本波の差周波と第2高調波を利用する超音波診断装置の開発」が科学技術賞(開発部門)を受賞しました。また画像処理の分野において2023年度全国発明表彰「心臓血管内治療中における治療用器具の表示方法改善の発明(特許第5523791号)」が「発明協会会長賞」および「発明実施功績賞」を受賞いたしました。
当ビジネスユニットに係る研究開発費は、47,182百万円であります。
Ⅲ.イメージングビジネスユニット
レンズ交換式デジタルカメラ(デジタル一眼レフカメラ及びミラーレスカメラ)の世界市場において、2003年から21年連続で台数シェアNo.1※3を達成しました。これからも基本コンセプトである「快速・快適・高画質」を追求し続けることで、幅広い製品ラインアップを揃え、写真・映像文化の発展に貢献していきます。
「EOS Rシステム」では、さらなるラインアップ拡充として、小型・軽量のフルサイズミラーレスカメラ「EOS R8」やAPS-Cサイズのエントリーモデル「EOS R50」、「EOS R100」を発売しました。一眼レフカメラからの買い替えを促進するとともに、初めてフルサイズカメラやレンズ交換式カメラを使用するユーザーでも本格的な撮影を気軽に楽しめるモデルを投入することで、多様化する顧客のニーズにお応えし、新規顧客獲得に努めています。
また、「RFレンズ」では、大口径望遠ズームレンズ「RF100-300mm F2.8 L IS USM」や静止画撮影・映像制作現場両方のニーズに応える大口径標準ズームレンズ「RF24-105mm F2.8 L IS USM Z」、APS-C 専用の「RF-Sレンズ」2機種など、9機種をラインアップに加え累計41本まで拡充しています。
超高感度カメラでは、世界最高画素数の約320万画素※4 1.0型SPADセンサーを搭載した「MS-500」を発売しました。当社は、SPADセンサーをはじめ、放送用レンズ、カメラの映像エンジンなどを自社で開発・製品化しています。各デバイスの特性と知見を十分に生かすことで、センサーやレンズの性能の良さを引きだしつつ、解像感や階調・色再現性の基本性能を向上しています。また、「映像鮮明化ソフトウエア」は、カメラメーカーとして蓄積してきた膨大な画像データベースと画像処理の知見をもとに、独自開発したディープラーニング画像処理技術を採用しています。カメラ単体では避けられない低照度環境下などで発生するノイズに対して、さらなる低減処理を行うことが可能です。
製造や流通などにおける点検・検査の自動化を支援する映像解析ソフトウエア「Vision Edition」では、大規模遠隔監視システムに対応するためのマルチカメラ接続や、ビデオ管理ソフトウエア「Milestone XProtect」からの映像取得が可能になりました。また、画像添付可能なメール通知機能やAI画像処理との連携機能なども新機能として追加し、より多くの場面で顧客のDX推進に貢献してまいります。
リモートカメラシステムでは、パン、チルト機構とズーム機能を備えた「CR-N100」で映像出力機能を講義や会議市場向けに改良することで従来機種からのローコスト化を実現しました。リモートカメラコントローラー「RC-IP1000」はIP接続され入力されたリモートカメラ映像を最大9台分表示し、表示映像のタッチ操作で制御カメラの切り替えが可能です。また最大200台までのカメラ接続が可能な「マルチカメラマネジメントアプリ」や人物の動きに合わせて自動で被写体を追尾する「自動追尾アプリケーション」、登録した画角へ繰り返し動作する「自動ループアプリケーション」によって、作業負荷軽減や省人化を支援します。
「CINEMA EOS SYSTEM」と業務用ビデオカメラにおいては、ファームウエアアップデートによる商品力強化を図りました。またiPhoneアプリ「Canon Multi-Camera Control」は複数カメラの状態や映像表示可能とし、効率的な機材設定やリモート撮影ができるようになるなど、マルチカメラワークフローの効率化が実現できます。
映像ソリューションにおいては、「ボリュメトリックビデオシステム」によりスポーツ放送で実際のカメラ位置にとらわれない自由な視点からの映像を展開しました。3Dコンテンツの撮影から編集までをワンストップで実現した「ボリュメトリックビデオスタジオ-川崎」では、CMやミュージックビデオ、TV番組で実績を積み重ね、虎ノ門ヒルズの情報発信拠点「TOKYO NODE」にも最先端のボリュメトリックビデオスタジオを開設しました。東京から世界に発信するためのクリエイティブエコシステム作りを目指します。
当ビジネスユニットに係る研究開発費は、93,834百万円であります。
※3 2024年3月現在。(当社調べ)
※4 映像撮影用のSPADセンサーとして。2023年7月31日現在。(当社調べ)有効画素数約210万画素。
Ⅳ.インダストリアルビジネスユニット
半導体露光装置においては、ハンコのように押し付けるシンプルな仕組みで微細な回路パターン形成を実現するナノインプリント半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」により、最先端の半導体デバイス製造に貢献します。この装置は、投影露光装置のように光源の波長による微細化を必要としないため、消費電力やCO2の削減にも貢献しています。また、広画角と高解像力の両立により、フルサイズCMOSセンサーの製造に求められる高解像力での一括露光を実現するi線ステッパー「FPA-5550iX」により、拡大が期待されるXR市場等の幅広いデバイス製造をサポートします。
FPD露光装置においては、第8世代ガラス基板にて、高生産性と高精細化を両立したIT機器用ディスプレイ向け露光装置「MPAsp-H1003H」により、需要が増加するノートPCやタブレット向けディスプレイパネルのニーズに応えています。この装置は第6世代ガラス基板向け露光装置の超解像技術を採用しており、1.5マイクロメートルの解像力を実現しています。また、従来から定評のある高速ステージ技術の進化改良により生産性向上にも寄与しています。
計測機器分野においては、リサイクルの際に判別が困難な黒色プラスチック片とその他プラスチック片を高精度に選別する「トラッキング型ラマン分光技術」を開発し、再利用できるプラスチック量の最大化を目指します。
当ビジネスユニットに係る研究開発費は、27,872百万円であります。
また、基礎研究等のその他及び全社に係る研究開発費は65,101百万円であります。
注:製品名は日本国内での名称です。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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