有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1007RRC
日本海洋掘削株式会社 事業の内容 (2016年3月期)
当社グループは、当社、連結子会社13社、非連結子会社1社及び持分法適用関連会社1社により構成されており、石油・天然ガス等の探鉱・開発に関する海洋坑井掘削及びエンジニアリングを主たる事業としております。
当社グループのセグメントごとの事業の内容は以下のとおりであります。また、当社と主な連結子会社・持分法適
用関連会社の海洋掘削事業及び運用・管理受託事業における位置付けは[事業系統図(モデル図)]のとおりであります。
なお、次の(1)、(2)の2部門は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
(1) 海洋掘削事業
当社グループは、国内外において、石油・天然ガス開発会社に対し、探鉱・開発に係わる坑井掘削作業その他関連サービスを提供しております。海外においては、事業の実施主体として現地法人であることが求められる場合や、現地法人への発注が優先される場合があるため、当社も現地に掘削工事の請負や掘削サービスの提供を行う子会社(掘削工事請負会社)を設立し、事業を展開する例が多くなっております。具体的には、PT. Japan Drilling Indonesia、JDC Offshore Malaysia Sdn. Bhd.がそれに該当します。
マレーシアにおきましては、現地有力企業をパートナーとする合弁会社UMW JDC Drilling Sdn. Bhd.(UJD社)を設立し、当該合弁会社が主体となって同国他での海洋掘削事業を行っております。
また、当社は、海洋掘削リグを保有する子会社(リグ保有会社)を設立しており、掘削工事請負会社がリグ保有会社からリグの賃貸を受けて操業する形態をとっております。リグ保有会社には、Hakuryu 5, Inc. 、Japan Drilling (Netherlands) B.V. 、Sagadril, Inc.、Sagadril 2, Inc.及び JDC Panama, Inc.があります。なお、Hakuryu 5, Inc. 、Japan Drilling (Netherlands) B.V.、Sagadril, Inc.及びSagadril 2, Inc.は自ら掘削工事を請け負うこともあります。また、Japan Drilling (Netherlands) B.V.はリース会社からのリースにより、リグ1基を運用しております。
(2) 運用・管理受託事業
当社グループは、日本郵船株式会社との共同出資により設立した日本マントル・クエスト株式会社(MQJ社)を通じ、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が保有する「ちきゅう」の運用・管理業務を受託しております。また、JDC RIG Management Services,Inc.は「ちきゅう」に外国人船員を配乗する人員派遣会社であります。
(3) その他の事業
当社グループは、メタンハイドレート開発・エンジニアリングサービス事業及び教育・研修事業等と、水平孔掘削工法による石油・ガスパイプライン、電力ケーブル、通信ケーブル、上下水道等の管路敷設のための掘削工事請負事業を行っております。また、子会社の石油開発サービス株式会社を通じ、石油・天然ガスその他地下資源の探鉱・開発に関する設備、機械、器具及び資材の販売並びに輸出入等の業務を行っております。
[事業系統図(モデル図)]
[当社グループのセグメント別事業内容について]
(1) 海洋掘削
① 当社グループの事業分野
海洋掘削事業とは、リグと呼ばれる海洋掘削装置を運用し、国内外の石油・天然ガス開発会社に対して、海洋における石油・天然ガス井等の掘削サービスを提供する事業であります。石油開発全体の流れの中で海洋掘削事業者が係わる分野は、海洋における試掘井、探掘井及び生産井の掘削(下図の「試掘・探掘」及び「生産井の掘削」)であります。海洋掘削事業者は「オフショア・ドリリング・コントラクター」あるいは「ドリリング・コントラクター」とも呼ばれます。
石油・天然ガスの探鉱開発事業は、オペレータと呼ばれる石油・天然ガス開発会社が、ドリリング・コントラクターのほか、様々な専門分野の技術・サービス提供会社と契約を締結して行われます。当社は、掘削契約をオペレータと締結し、リグ本体及びドリルパイプ等の機器・資材、掘削監督者・作業員等の人材を提供し、海洋において石油・天然ガス井等の掘削作業及び付随するサービスを提供いたします。
② 当社グループが運用するリグ
当社グループが運用するリグは、稼働する海域の水深により、次のイメージ図にある3つの型式に分類されます。
a.ジャッキアップ型 b.セミサブ型 c.ドリルシップ型
a.ジャッキアップ型
ジャッキアップ型は、接地式甲板昇降型とも呼ばれ、船体が昇降可能な脚によって支えられており、曳航時には脚を上げて浮上し、掘削地点に到着すると脚を下げ、海底面に設置させて掘削作業を行います。
このタイプは、掘削作業時には脚を海底面に着け、船体を海面上まで引き上げて作業をするので、波浪の影響を直接受けにくく、比較的気象・海象の荒い海でも稼働が可能という特徴がありますが、最大水深150m程度までの浅い沿岸海域での稼働が中心となります。当社グループのリグでは「SAGADRIL-1」(最大稼働水深約92m)、「SAGADRIL-2」(最大稼働水深約92m)、プレミアムクラスのリグ「HAKURYU-10」(最大稼働水深約115m)、「HAKURYU-11」(最大稼働水深約130m)及びリース方式により運用している「HAKURYU-12」(最大稼働水深約122m)がこのタイプに属します。
b.セミサブマーシブル型(セミサブ型)
セミサブ型は半潜水型ともいわれ、船体下部の浮力体上に複数の脚柱があり、その上に作業甲板を搭載した構造の掘削装置です。
移動時はリグ自体が浮上した状態で曳船により曳航され、目的地でバラストタンクに海水を入れることによってリグの船体を半分ほど海中に沈め(半潜水)、リグの周囲に複数の錨を打ち、リグを係留します。最近では投錨の代わりにDPS(注)を使用した自動制御により船位を保持するタイプもあります。
ジャッキアップ型と比較して稼働水深が深く、また、構造上船体の揺れが少なく安定性が高いことから、気象・海象の厳しい海域での稼働が可能です。当社グループのリグでは、「NAGA1(最大稼働水深約300m)」及び「HAKURYU-5(最大稼働水深約500m)」がこのタイプに属します。
c.ドリルシップ型
ドリルシップ型は通常の船舶に掘削機器等を取り付けたタイプのリグで、掘削船とも呼ばれます。掘削作業時は、かつてはセミサブ型と同様に複数の錨により船位を保持しましたが、現在は、DPSを使用した自動制御システムにより船位を保持するタイプが主流となっております。探鉱開発活動が大水深海域に拡がるにつれて、船体の大型化が進み、セミサブ型並みに安定性が向上し、資機材の搭載能力も高くなり、1,500メートル以上の大水深海域での稼働が可能となっております。なお、ロケーション移動時には普通の船舶と同様にスクリュー推進により自航が可能であるなど機動性にも富んでおります。「ちきゅう(最大稼働水深2,500m)」がこの型式に属します。
(注)DPS(ダイナミック・ポジショニング・システム)
船又は浮遊式海洋掘削リグ(船型、半潜水型)を洋上の一定位置に保持するにあたり、船自体の持つ推進装置(スラスター)を自動的に制御することにより、アンカーなしで船を定位置に保持するシステムをいいます。
③ 掘削作業
④ 当社グループが運用するリグの稼働海域
当社グループは、国内外の石油会社・石油・天然ガス開発会社を顧客とし、極東、東南アジア、インド洋、中東、アフリカ、地中海、メキシコ湾、オセアニア、南米などの海域で海洋掘削工事を実施してまいりました。
また、当社グループは事業戦略の一環として主要な石油・天然ガス生産国の現地企業と合弁会社を設立し、長期の掘削契約に基づいた安定的事業基盤の構築に努めております。
マレーシアでは同国上場企業である UMWグループのUMW Oil & Gas Corporation Berhad(UMW Oil & Gas社)との合弁会社であるUJD社が主体となって、マレーシア海域を中心に操業しております。
2016年3月31日現在の当社グループが運用するリグの操業海域は下図のとおりであります。
(2) 運用・管理受託
当社連結子会社のMQJ社は、当社と日本郵船株式会社の共同出資により2008年9月10日に設立され、JAMSTECより「ちきゅう」の運用・管理業務を受託しております。
世界最高レベルの掘削能力を有する「ちきゅう」は、国際的研究プロジェクトである国際深海科学掘削計画(注1)のための主力船として我が国が建造し、提供している掘削船であり、地球深部の地層を掘削してそのサンプルを採取することにより、巨大地震発生のメカニズムや地球規模の環境変動、海底下生命圏、新しい海底資源の解明などを目指す科学掘削を実施しています。また、国家が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)(注2)の下、熱水鉱床を始めとした海洋資源成因に関する科学研究・海洋資源調査技術開発のための掘削作業も行っています。MQJ社は、当社と日本郵船株式会社が有するそれぞれの知見、技術等を生かし、JAMSTECが計画する「ちきゅう」の科学掘削プログラムに従事しております。
MQJ社が受託する運用・管理業務は、掘削作業の実施、船舶の運航管理のみならず、掘削機器等の保守管理、サブコントラクターが行うサービスの管理、資機材の調達、科学掘削支援基地の運営など広範囲にわたっております。
(注1) 国際深海科学掘削計画 (International Ocean Discovery Program)
日米両国を中心に欧州及び中国が参加し、2003年10月からスタートした多国間国際協力プロジェクトである統合国際深海掘削計画(Integrated Ocean Drilling Program)は2013年9月で10年間の計画期間を満了し、同年10月から新たに多国間科学研究協力プロジェクトである国際深海科学掘削計画(International Ocean Discovery Program)へと移行しました。新プログラムでは「ちきゅう」等の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、気候・海洋変動、生命圏フロンティア、地球活動の関連性、変動する地球を4大テーマとして研究活動を行うことが目的とされております。
(注2) 戦略的イノベーション創造プログラム
(SIP:Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program)
内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が府省・分野の枠を超えて自ら予算配分して、基礎研究から実用化・事業化までを見据え、規制・制度改革を含めた取組を推進するプログラムです。
(3) その他
① 掘削技術事業
本事業では、海洋掘削技術・ノウハウを応用したエンジニアリングサービス、具体的には、「メタンハイドレート開発に関する受託研究及び技術提供」、「石油掘削技術に関する教育研修業務」及び「その他の業務」に係る事業を行っております。
a.メタンハイドレート開発に関する受託研究及び技術提供
メタンハイドレートは、メタン(天然ガスの主成分)と水分子が低温・高圧状態で結晶化した氷状の固体で、海底面下や凍土地帯に存在します。日本周辺にも大量に存在すると推測され、将来のクリーンな国産エネルギーとして注目されております。
2001年に経済産業省(当時、通商産業省)から「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」が公表されました。これに沿って2002年にメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(通称:MH21)が組織され、メタンハイドレート開発の研究が進められています。
同開発計画のフェーズ1(2001年度〜2008年度)において、当社は基礎試錐での実証実験、海洋産出試験準備、生産手法開発及び経済性評価の分野での開発研究を独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)から受託し実施いたしました。フェーズ2(2009年度~2015年度)においては、当社は2013年3月に実施された第1回海洋産出試験に関わる技術検討及び基本計画立案、メタンハイドレート開発システムの実現可能性及び最適化に関する技術検討等の開発研究を受託・実施するとともに、産出試験のコア技術となる坑内試験システムの設計・調達・運用・評価業務等を受託・実施し、世界で初めて海底下のメタンハイドレート層に減圧法を適用したガス生産の成功に貢献しました。2014年度には、「メタンハイドレート中長期海洋産出試験にむけての基本方針・基本計画検討に係る支援作業」を石油資源開発株式会社、当社及び国際石油開発帝石株式会社の3社で受託し、基本方針案策定の支援作業、試験基本計画の立案に必要な技術検討を実施、さらに追加業務として技術検証のための短期試験に向けての技術検討を実施しました。
また、国が実施する砂層型メタンハイドレート開発に関する中長期の海洋産出試験計画への参画を目指して、2014年10月に新たに「日本メタンハイドレート調査株式会社」(JMH社)が設立されました。当社は、石油開発会社、エンジニアリング会社ほかと共に同社に資本参加しました。
2015年度は、JMH社がJOGMECから受託した「メタンハイドレート開発促進事業に関する委託業務に係るメタンハイドレート海洋産出試験オペレータ業務」に関連した「次回海洋産出試験のための試験用機器・設備の最適化業務」を受託し、試験用機器・設備の最適化に係る技術検討、設計、調達等を実施しました。
b.石油掘削技術に関する教育研修業務
国内外の石油開発関連技術者の育成を目的とした、石油掘削技術に関する教育研修業務(「産油国技術者等研修事業、掘削マネジメントコース」、「ウェルコントロール講座」等)をJOGMEC等から受託し、実施しております。特に「産油国技術者等研修事業、掘削マネジメントコース」につきましては、産油国の研修生に向けた講座を、JOGMECの前身の石油公団からの受託を含め1992年から2014年まで15回開催し、我が国と産油国との関係強化に貢献しております。
c.その他の業務
当社は、海洋掘削技術・海洋開発技術のノウハウを応用・発展させたエンジニアリング事業の推進が、幅広いサービスの提供へ繋がると考えています。
マントル掘削を含む大深度・大水深掘削や、北極海を含む高緯度極寒海域・氷海域の石油ガス開発、資源開発以外に海底下を利用するための大坑径・大深度掘削等は、現状の海洋掘削技術では難しく、その実現へ向けた研究・技術開発の業務を推進しています。
また、熱水鉱床やレアアース等の海洋鉱物資源開発技術等は、海洋掘削技術を適用・応用可能な分野のひとつとして捕らえ、その事業化へ向けた取り組みを推進しております。
さらに、レーザー技術を応用した新しい掘削技術の研究を実施しております。これは、今まで掘削困難とされた硬岩や掘削環境下において、掘削ビットに代わる新しい掘削方法として利用可能な技術として期待されています。
② 水平孔掘削事業
本事業では、リードドリル工法(弧状推進工法)による石油・ガスパイプライン、電力ケーブル、通信ケーブル、上下水道等の管路掘削のための工事を国内外で行っております。
a.リードドリル工法とは、小~大口径(100~1,000mm)の孔を地表から地中に向けて水平方向に2,000m程度までの長距離にわたって計画された三次元曲線に沿って掘削する工法です。また地表の改変を伴わないことから、地球環境にやさしい工法であり、河川や海峡等を横断するパイプラインや、海底に敷設された通信・電力ケーブル等の陸揚げ管路掘削に応用することができます。
当社のリードドリル工法は、高精度位置測定システムを使用し、硬質岩~軟質岩中を高速度で掘進することができます。
b.エンジニアリング業務
リードドリル工法を用いた概念・詳細設計、工事計画立案、技術・経済性評価及び技術指導等に係るエンジニアリング業務を国内外で展開しております。
当社グループのセグメントごとの事業の内容は以下のとおりであります。また、当社と主な連結子会社・持分法適
用関連会社の海洋掘削事業及び運用・管理受託事業における位置付けは[事業系統図(モデル図)]のとおりであります。
なお、次の(1)、(2)の2部門は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。
(1) 海洋掘削事業
当社グループは、国内外において、石油・天然ガス開発会社に対し、探鉱・開発に係わる坑井掘削作業その他関連サービスを提供しております。海外においては、事業の実施主体として現地法人であることが求められる場合や、現地法人への発注が優先される場合があるため、当社も現地に掘削工事の請負や掘削サービスの提供を行う子会社(掘削工事請負会社)を設立し、事業を展開する例が多くなっております。具体的には、PT. Japan Drilling Indonesia、JDC Offshore Malaysia Sdn. Bhd.がそれに該当します。
マレーシアにおきましては、現地有力企業をパートナーとする合弁会社UMW JDC Drilling Sdn. Bhd.(UJD社)を設立し、当該合弁会社が主体となって同国他での海洋掘削事業を行っております。
また、当社は、海洋掘削リグを保有する子会社(リグ保有会社)を設立しており、掘削工事請負会社がリグ保有会社からリグの賃貸を受けて操業する形態をとっております。リグ保有会社には、Hakuryu 5, Inc. 、Japan Drilling (Netherlands) B.V. 、Sagadril, Inc.、Sagadril 2, Inc.及び JDC Panama, Inc.があります。なお、Hakuryu 5, Inc. 、Japan Drilling (Netherlands) B.V.、Sagadril, Inc.及びSagadril 2, Inc.は自ら掘削工事を請け負うこともあります。また、Japan Drilling (Netherlands) B.V.はリース会社からのリースにより、リグ1基を運用しております。
(2) 運用・管理受託事業
当社グループは、日本郵船株式会社との共同出資により設立した日本マントル・クエスト株式会社(MQJ社)を通じ、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が保有する「ちきゅう」の運用・管理業務を受託しております。また、JDC RIG Management Services,Inc.は「ちきゅう」に外国人船員を配乗する人員派遣会社であります。
(3) その他の事業
当社グループは、メタンハイドレート開発・エンジニアリングサービス事業及び教育・研修事業等と、水平孔掘削工法による石油・ガスパイプライン、電力ケーブル、通信ケーブル、上下水道等の管路敷設のための掘削工事請負事業を行っております。また、子会社の石油開発サービス株式会社を通じ、石油・天然ガスその他地下資源の探鉱・開発に関する設備、機械、器具及び資材の販売並びに輸出入等の業務を行っております。
[事業系統図(モデル図)]
[当社グループのセグメント別事業内容について]
(1) 海洋掘削
① 当社グループの事業分野
海洋掘削事業とは、リグと呼ばれる海洋掘削装置を運用し、国内外の石油・天然ガス開発会社に対して、海洋における石油・天然ガス井等の掘削サービスを提供する事業であります。石油開発全体の流れの中で海洋掘削事業者が係わる分野は、海洋における試掘井、探掘井及び生産井の掘削(下図の「試掘・探掘」及び「生産井の掘削」)であります。海洋掘削事業者は「オフショア・ドリリング・コントラクター」あるいは「ドリリング・コントラクター」とも呼ばれます。
石油・天然ガスの探鉱開発事業は、オペレータと呼ばれる石油・天然ガス開発会社が、ドリリング・コントラクターのほか、様々な専門分野の技術・サービス提供会社と契約を締結して行われます。当社は、掘削契約をオペレータと締結し、リグ本体及びドリルパイプ等の機器・資材、掘削監督者・作業員等の人材を提供し、海洋において石油・天然ガス井等の掘削作業及び付随するサービスを提供いたします。
② 当社グループが運用するリグ
当社グループが運用するリグは、稼働する海域の水深により、次のイメージ図にある3つの型式に分類されます。
a.ジャッキアップ型 b.セミサブ型 c.ドリルシップ型
a.ジャッキアップ型
ジャッキアップ型は、接地式甲板昇降型とも呼ばれ、船体が昇降可能な脚によって支えられており、曳航時には脚を上げて浮上し、掘削地点に到着すると脚を下げ、海底面に設置させて掘削作業を行います。
このタイプは、掘削作業時には脚を海底面に着け、船体を海面上まで引き上げて作業をするので、波浪の影響を直接受けにくく、比較的気象・海象の荒い海でも稼働が可能という特徴がありますが、最大水深150m程度までの浅い沿岸海域での稼働が中心となります。当社グループのリグでは「SAGADRIL-1」(最大稼働水深約92m)、「SAGADRIL-2」(最大稼働水深約92m)、プレミアムクラスのリグ「HAKURYU-10」(最大稼働水深約115m)、「HAKURYU-11」(最大稼働水深約130m)及びリース方式により運用している「HAKURYU-12」(最大稼働水深約122m)がこのタイプに属します。
b.セミサブマーシブル型(セミサブ型)
セミサブ型は半潜水型ともいわれ、船体下部の浮力体上に複数の脚柱があり、その上に作業甲板を搭載した構造の掘削装置です。
移動時はリグ自体が浮上した状態で曳船により曳航され、目的地でバラストタンクに海水を入れることによってリグの船体を半分ほど海中に沈め(半潜水)、リグの周囲に複数の錨を打ち、リグを係留します。最近では投錨の代わりにDPS(注)を使用した自動制御により船位を保持するタイプもあります。
ジャッキアップ型と比較して稼働水深が深く、また、構造上船体の揺れが少なく安定性が高いことから、気象・海象の厳しい海域での稼働が可能です。当社グループのリグでは、「NAGA1(最大稼働水深約300m)」及び「HAKURYU-5(最大稼働水深約500m)」がこのタイプに属します。
c.ドリルシップ型
ドリルシップ型は通常の船舶に掘削機器等を取り付けたタイプのリグで、掘削船とも呼ばれます。掘削作業時は、かつてはセミサブ型と同様に複数の錨により船位を保持しましたが、現在は、DPSを使用した自動制御システムにより船位を保持するタイプが主流となっております。探鉱開発活動が大水深海域に拡がるにつれて、船体の大型化が進み、セミサブ型並みに安定性が向上し、資機材の搭載能力も高くなり、1,500メートル以上の大水深海域での稼働が可能となっております。なお、ロケーション移動時には普通の船舶と同様にスクリュー推進により自航が可能であるなど機動性にも富んでおります。「ちきゅう(最大稼働水深2,500m)」がこの型式に属します。
(注)DPS(ダイナミック・ポジショニング・システム)
船又は浮遊式海洋掘削リグ(船型、半潜水型)を洋上の一定位置に保持するにあたり、船自体の持つ推進装置(スラスター)を自動的に制御することにより、アンカーなしで船を定位置に保持するシステムをいいます。
③ 掘削作業
海底下の地層は、中空のパイプ(ドリルパイプ、ドリルカラー)の先にビットと呼ばれる一種のキリを取り付け、それを回転させることによって掘り進みます。その際生成される掘り屑は、パイプを通して循環される掘削泥水とよばれる流体により海上の掘削リグまで運ばれ、掘り屑除去装置により取り除かれます。掘削泥水は各種調泥剤を調合した流体で、掘削された穴(坑壁)を保護して崩れるのを防いだり、地層から流体が噴出するのを防いだりするなど様々な重要な役目があります。 掘削泥水を使っても坑壁を保護するには限度があるため、ある程度の深度を掘削すると、ケーシングパイプと呼ばれる大径のパイプを坑井内に挿入し、その周囲をセメントで固めて地層の圧力を抑えるとともに、地層の崩れを防ぎます。その後さらに掘削を進め、先に挿入したケーシングパイプよりも小径のパイプを挿入するという作業を繰り返しながら、目的深度まで掘り進めます。これらの一連の作業過程では、BOP(Blow Out Preventer)と呼ばれる暴噴防止装置を使用して、地層からの流体の噴出を防ぎ、安全に作業が行われるように留意しています。 |
④ 当社グループが運用するリグの稼働海域
当社グループは、国内外の石油会社・石油・天然ガス開発会社を顧客とし、極東、東南アジア、インド洋、中東、アフリカ、地中海、メキシコ湾、オセアニア、南米などの海域で海洋掘削工事を実施してまいりました。
また、当社グループは事業戦略の一環として主要な石油・天然ガス生産国の現地企業と合弁会社を設立し、長期の掘削契約に基づいた安定的事業基盤の構築に努めております。
マレーシアでは同国上場企業である UMWグループのUMW Oil & Gas Corporation Berhad(UMW Oil & Gas社)との合弁会社であるUJD社が主体となって、マレーシア海域を中心に操業しております。
2016年3月31日現在の当社グループが運用するリグの操業海域は下図のとおりであります。
(2) 運用・管理受託
当社連結子会社のMQJ社は、当社と日本郵船株式会社の共同出資により2008年9月10日に設立され、JAMSTECより「ちきゅう」の運用・管理業務を受託しております。
世界最高レベルの掘削能力を有する「ちきゅう」は、国際的研究プロジェクトである国際深海科学掘削計画(注1)のための主力船として我が国が建造し、提供している掘削船であり、地球深部の地層を掘削してそのサンプルを採取することにより、巨大地震発生のメカニズムや地球規模の環境変動、海底下生命圏、新しい海底資源の解明などを目指す科学掘削を実施しています。また、国家が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)(注2)の下、熱水鉱床を始めとした海洋資源成因に関する科学研究・海洋資源調査技術開発のための掘削作業も行っています。MQJ社は、当社と日本郵船株式会社が有するそれぞれの知見、技術等を生かし、JAMSTECが計画する「ちきゅう」の科学掘削プログラムに従事しております。
MQJ社が受託する運用・管理業務は、掘削作業の実施、船舶の運航管理のみならず、掘削機器等の保守管理、サブコントラクターが行うサービスの管理、資機材の調達、科学掘削支援基地の運営など広範囲にわたっております。
(注1) 国際深海科学掘削計画 (International Ocean Discovery Program)
日米両国を中心に欧州及び中国が参加し、2003年10月からスタートした多国間国際協力プロジェクトである統合国際深海掘削計画(Integrated Ocean Drilling Program)は2013年9月で10年間の計画期間を満了し、同年10月から新たに多国間科学研究協力プロジェクトである国際深海科学掘削計画(International Ocean Discovery Program)へと移行しました。新プログラムでは「ちきゅう」等の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、気候・海洋変動、生命圏フロンティア、地球活動の関連性、変動する地球を4大テーマとして研究活動を行うことが目的とされております。
(注2) 戦略的イノベーション創造プログラム
(SIP:Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program)
内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が府省・分野の枠を超えて自ら予算配分して、基礎研究から実用化・事業化までを見据え、規制・制度改革を含めた取組を推進するプログラムです。
(3) その他
① 掘削技術事業
本事業では、海洋掘削技術・ノウハウを応用したエンジニアリングサービス、具体的には、「メタンハイドレート開発に関する受託研究及び技術提供」、「石油掘削技術に関する教育研修業務」及び「その他の業務」に係る事業を行っております。
a.メタンハイドレート開発に関する受託研究及び技術提供
メタンハイドレートは、メタン(天然ガスの主成分)と水分子が低温・高圧状態で結晶化した氷状の固体で、海底面下や凍土地帯に存在します。日本周辺にも大量に存在すると推測され、将来のクリーンな国産エネルギーとして注目されております。
2001年に経済産業省(当時、通商産業省)から「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」が公表されました。これに沿って2002年にメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(通称:MH21)が組織され、メタンハイドレート開発の研究が進められています。
同開発計画のフェーズ1(2001年度〜2008年度)において、当社は基礎試錐での実証実験、海洋産出試験準備、生産手法開発及び経済性評価の分野での開発研究を独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)から受託し実施いたしました。フェーズ2(2009年度~2015年度)においては、当社は2013年3月に実施された第1回海洋産出試験に関わる技術検討及び基本計画立案、メタンハイドレート開発システムの実現可能性及び最適化に関する技術検討等の開発研究を受託・実施するとともに、産出試験のコア技術となる坑内試験システムの設計・調達・運用・評価業務等を受託・実施し、世界で初めて海底下のメタンハイドレート層に減圧法を適用したガス生産の成功に貢献しました。2014年度には、「メタンハイドレート中長期海洋産出試験にむけての基本方針・基本計画検討に係る支援作業」を石油資源開発株式会社、当社及び国際石油開発帝石株式会社の3社で受託し、基本方針案策定の支援作業、試験基本計画の立案に必要な技術検討を実施、さらに追加業務として技術検証のための短期試験に向けての技術検討を実施しました。
また、国が実施する砂層型メタンハイドレート開発に関する中長期の海洋産出試験計画への参画を目指して、2014年10月に新たに「日本メタンハイドレート調査株式会社」(JMH社)が設立されました。当社は、石油開発会社、エンジニアリング会社ほかと共に同社に資本参加しました。
2015年度は、JMH社がJOGMECから受託した「メタンハイドレート開発促進事業に関する委託業務に係るメタンハイドレート海洋産出試験オペレータ業務」に関連した「次回海洋産出試験のための試験用機器・設備の最適化業務」を受託し、試験用機器・設備の最適化に係る技術検討、設計、調達等を実施しました。
b.石油掘削技術に関する教育研修業務
国内外の石油開発関連技術者の育成を目的とした、石油掘削技術に関する教育研修業務(「産油国技術者等研修事業、掘削マネジメントコース」、「ウェルコントロール講座」等)をJOGMEC等から受託し、実施しております。特に「産油国技術者等研修事業、掘削マネジメントコース」につきましては、産油国の研修生に向けた講座を、JOGMECの前身の石油公団からの受託を含め1992年から2014年まで15回開催し、我が国と産油国との関係強化に貢献しております。
c.その他の業務
当社は、海洋掘削技術・海洋開発技術のノウハウを応用・発展させたエンジニアリング事業の推進が、幅広いサービスの提供へ繋がると考えています。
マントル掘削を含む大深度・大水深掘削や、北極海を含む高緯度極寒海域・氷海域の石油ガス開発、資源開発以外に海底下を利用するための大坑径・大深度掘削等は、現状の海洋掘削技術では難しく、その実現へ向けた研究・技術開発の業務を推進しています。
また、熱水鉱床やレアアース等の海洋鉱物資源開発技術等は、海洋掘削技術を適用・応用可能な分野のひとつとして捕らえ、その事業化へ向けた取り組みを推進しております。
さらに、レーザー技術を応用した新しい掘削技術の研究を実施しております。これは、今まで掘削困難とされた硬岩や掘削環境下において、掘削ビットに代わる新しい掘削方法として利用可能な技術として期待されています。
② 水平孔掘削事業
本事業では、リードドリル工法(弧状推進工法)による石油・ガスパイプライン、電力ケーブル、通信ケーブル、上下水道等の管路掘削のための工事を国内外で行っております。
a.リードドリル工法とは、小~大口径(100~1,000mm)の孔を地表から地中に向けて水平方向に2,000m程度までの長距離にわたって計画された三次元曲線に沿って掘削する工法です。また地表の改変を伴わないことから、地球環境にやさしい工法であり、河川や海峡等を横断するパイプラインや、海底に敷設された通信・電力ケーブル等の陸揚げ管路掘削に応用することができます。
当社のリードドリル工法は、高精度位置測定システムを使用し、硬質岩~軟質岩中を高速度で掘進することができます。
b.エンジニアリング業務
リードドリル工法を用いた概念・詳細設計、工事計画立案、技術・経済性評価及び技術指導等に係るエンジニアリング業務を国内外で展開しております。
河川横断 | 海峡横断 | ||
山岳貫通 | 汀線アプローチ | ||
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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