有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100IY1B (EDINETへの外部リンク)
味の素株式会社 研究開発活動 (2020年3月期)
味の素グループは、2030年に食と健康の課題解決企業に生まれ変わります。2020-2025中期経営計画ではその実現に向けて経営資源を集中します。研究開発に関しては、これまで新規分野の研究開発や全社横断で技術支援をしてきた味の素㈱旧イノベーション研究所を、事業に沿ったR&D体制という観点から、2019年4月にバイオ・ファイン研究所、食品研究所、情報企画部などに役割・機能ごとに再編しました。新たにスタートした事業に紐づくR&D体制のもと、基礎研究から製品開発、工業化までを一気通貫とすることで、顧客課題解決への機動性とスピードの向上と、持続的な成長を目指していきます。
食品領域においてはおいしさと栄養、そして生活者価値に基づく技術と商品開発を通じて、また、アミノサイエンス領域においては先端バイオ・ファイン技術を追求し新価値を創造することで、世界の食と人々の「こころとからだ」の健康課題を解決し、未来のより良い生活に貢献します。
当連結会計年度における味の素グループの研究開発費は27,596百万円です。
また、当社グループが保有している特許は国内外合わせて約3,900件です。
当連結会計年度の各事業区分における研究開発活動の概要とその成果は次のとおりです。
(1)日本食品セグメント
味の素㈱食品研究所が中心となり、味の素冷凍食品㈱、味の素AGF㈱、上海味の素食品研究開発センター社(中国)をはじめとする国内外のグループ会社の研究開発部門とも密接に連携し、味、香り・風味、食感など、「おいしさを構成するすべての要素」を俯瞰した技術開発、商品開発、及びそのアプリケーション開発を行っています。また、少子化・高齢化、世帯人数の減少、健康志向といった国内市場におけるニーズを掘り起こし、当社独自の素材と技術及び斬新な発想による価値提案型の製品開発に取り組んでいます。
2019年度の家庭用商品は、多様化するお客様のニーズと価値観に対応し、おいしさと栄養そして生活者価値に基づく技術・商品を通じて、人々の「健康なこころとからだ」に貢献すべく「スペシャリティ」を持った新製品を開発・発売しました。
高品質・スマートな調理をお客様にご提供すべく、メニュー用調味料市場においては、当社独自技術を活用して、身近な食材1つで簡単に本格麺メニューが楽しめる「Cook Do®」、「Cook Do®」、「Cook Do®」を発売しました。また、コンビニエンスストアで購入できる豆腐やサラダチキン等、身近な食材と合わせるだけで、簡便に本格ディナーを作れる「今夜はてづくり気分®」、「今夜はてづくり気分®」を発売しました。スープ市場においては、野菜の甘みとしゃきしゃきの食感にこだわった、たっぷり野菜のスープごはんの素「スープごはん」、野菜のおいしさをとことん引き出した「クノール®カップスープベジレシピ®」、「クノール®カップスープベジレシピ®」、「クノール®スープDELI®」、贅沢に使用した素材をじっくり時間をかけてとろとろに煮込んだ、濃厚で軽い食事になるスープ「クノール®スープグランデ®」、「クノール®スープグランデ®」を発売しました。また、たっぷりのフリーズドライ具材とサッと溶ける風味豊かな“だし味噌”が入った即席味噌汁「具たっぷり味噌汁」シリーズにおいて、を発売しました。当社独自技術を活用して、簡単に本格的な味付けができる肉用調味料「お肉やわらかの素®」シリーズにおいて、、を発売しました。洋風だし市場においては、独自のおいしく減塩する技術を更に深化させ、「味の素KKコンソメ」のおいしさそのままに40%減塩を実現した「味の素KKコンソメ」を発売しました。また、電子レンジでやわらかジューシーなおかずが手軽にできる「スチーミー」を首都圏エリア及びEコマースチャネル限定で発売しました。健康志向向けの市場においては、筋肉や血液などを構成する「たんぱく質」のもととなるアミノ酸を効率的に補える独自成分「Amino L40」を配合したまったく新しいダイエットサポート食品「Amino Line」をEコマースチャネルにて発売しました。
業務用では、外食市場の多くを占める個人外食店での「コストを抑え、人手や手間をかけずに他店とは異なったメニューを提供したい」、「客数や注文が少なくても使い切れる適度な容量の商品が欲しい」等の要望、及び、業務用スーパー等の利用が増えにも対応するために、従来の業務用品種の半分のサイズである中容量製品(「ほんだし®」かつおだし500g他・「GABAN®スパイスソース」黒胡椒&ガーリック500ml他)を発売しました。
また、加工領域ではユーザーの使用特性(性状・濃度等)に合わせた製品を開発・発売しました。
ベーカリー製品では、コンビニエンスストア(CVS)向けに既存の焼きたてパンに加え、チルド調理パン向け製品やデザート向け製品の開発を行い、CVS内での新領域への提案を進めました。また、外食産業の省人・省力化ニーズに対応し、解凍及び最終発酵工程の省略を可能とする時短型商品の開発を進め、ファストフードチェーンに製品導入を果たすなど事業拡大に取り組みました。
超高齢化が進む今日の日本において、国、地方自治体は健康寿命延伸施策を積極的に進めています。当社においても、高齢者のフレイル(虚弱)、低栄養の予防改善に向け、当社のスペシャリティである「たんぱく質・アミノ酸栄養」の研究開発知見を活かした製品の開発を進めています。2019年度は、当社では、従来の医療機関、介護施設向けのみならず在宅で療養される高齢者・ご家族、また介護予備軍とされる方々をも対象とした味の素KK「栄養ケア食品」の新製品の開発を進め(発売は2020年以降)、併せて、これまでの研究成果に基づく機能性情報の発信や高齢者の健康栄養課題解決に向けた啓発活動も推進しました。
家庭用では、「やわらか若鶏から揚げ ボリュームパック」を、“香ばしい醤油風味で、食べごたえあるから揚げ”に製品改定を行いました。指定農場で大切に育てた安心の若鶏の一枚肉を大ぶりにカットし、さらに生姜醤油に漬け込むことでお肉をやわらかくし、揚げる前に丸大豆醤油に絡めて香ばしくする「二段仕込み製法」で仕上げました。「小麦・卵・乳」不使用でみんな一緒に同じものを“おいしく”“安心”して食べられる製品ラインナップを強化しました。
業務用では、提供者のオペレーション課題を解決しながら、生活者それぞれのニーズに合った製品を開発しました。手間のかかるベジタリアンメニューをおいしく、大量に調理できる「ベジタリアン向け」、、、の4品種を新しく発売しました。
スティック市場の牽引役である「ブレンディ®」スティックは、“クリーミー&スイートな味わい”を維持しつつ、味の素グループの素材活用により更にコーヒー感・濃度感を増強する品質改良を行い、お客様の嗜好性評価を高める改訂を実施しました。また、当社紅茶オレ比糖質50%オフの「ブレンディ®」スティックを発売するなど健康意識の高まりに呼応した製品開発も進めました。そして、茶筅無しで豊かに泡立ち、上質な抹茶ならではの旨みを手軽に味わえる「ブレンディ®」2種を市場導入するなど新たな市場開拓を図っています。
「ちょっと贅沢な珈琲店®」では、前年度九州エリア限定で発売したの好評を受け、を追加するとともに、東北エリア限定商品として“豊かなコク”と“まろやかな口当たり”を特徴とするを発売し、エリア嗜好への対応によるファンの獲得に結び付く開発を行っています。
日本食品セグメントに係わる研究開発費は、3,572百万円です。
(2)海外食品セグメント
味の素㈱食品研究所を中心とし、国内外のグループ会社の研究開発部門と密接に連携を図ったグローバルな製品開発体制のもと、マーケティング力、ブランド力を強みに、各国生活者の嗜好とニーズに適応した調味料、加工食品、冷凍食品の開発に継続して取り組んでいます。
主力となるアセアン地域では、都市化やライフスタイルの変化が進む中、簡便で加工度の高い製品や健康価値を有す製品への需要も増加しています。
その中で、うま味調味料「AJI-NO-MOTO®」とともに主力である風味調味料製品では先進的技術を駆使した継続的な品質向上を行いました。新興国の発展に伴い需要が拡大するメニュー用調味料製品では新製品を発売しました。また、加工食品では、当社グループならではのおいしさと健康価値をコンセプトに持つプレミアムな製品の発売を通じて、拡大する個食・即食・健康ニーズへの対応を強化しています。((例)即席麺 「Yum Yum®」(タイ)、子ども向けたんぱく質高含有粉末飲料「Prottie」(タイ、フィリピン)など)
今後も当社グループの独自素材の活用や独自技術に裏打ちされたおいしさの追求とともに健康価値領域での製品開発を継続強化していきます。
北米や欧州では日本食人気の高まりや日式レストランの増加によりアジアン冷凍食品市場が引き続き成長しています。北米市場では販売好調な拉麵、炒麺に続き「うどん」を発売し、麺類の製品ラインナップが拡がりました。欧州市場では、外食から家庭用に販売を拡大し、電子レンジ調理の「焼き調理済ギョーザ」をタイで開発するなど、拠点間を跨るグローバル開発が進められています。
今後も日本で培われた生産技術で作り立ての食感・香り溢れる美味しさを提供していくと共に、健康機能を付与した製品を市場投入する等、製品の付加価値を常に向上させながら、更なる事業拡大に貢献していきます。
世界複数拠点でうま味調味料「味の素®」や核酸系調味料を生産し、グローバルネットワークを活かして100か国以上でBtoB及びBtoCビジネスを展開しています。
2019年は環境負荷を低減する取組みやプロセス改良による生産性の向上を進め、事業を通じた社会価値と経済価値の共創に貢献しました。
アスパルテーム市場は、世界の多くの国で砂糖の過剰摂取による健康課題が深刻化する中、引き続き伸張しています。当社はサステナブルな製品供給を更に強化すべく、コスト競争力の強化及び環境負荷低減を目的とするアスパルテーム改良プロセスの開発を継続して進めています。また日本国内のコンシューマー市場に向けては、砂糖代替に加えて整腸効果が期待できる機能性表示食品の新製品「パルスイート®おなかすこやかオリゴ®」を開発し発売しました。
海外食品セグメントに係わる研究開発費は、3,858百万円です。
(3)ライフサポートセグメント
味の素㈱バイオ・ファイン研究所が中心となり、味の素-ジェネチカ・リサーチ・インスティチュート社、味の素ファインテクノ㈱等の国内外の各グループ会社及びその技術開発部門とも密接に連携し、世界中の市場に向けたソリューションを提供しています。
世界トップレベルのアミノ酸に関する知見、安全性の高い素材開発力や配合評価技術、グローバルネットワークを強みとし、動物栄養、電子材料などの幅広い事業領域における研究開発に取り組んでいます。当社ならではのスペシャリティによる顧客価値を創出し、事業拡大を図っています。
動物栄養事業の構造改革の一環として、スペシャリティ事業拡大のため、乳牛用アミノ酸製剤「AjiPro®-L」のグローバル展開を目的とした研究開発を推進しています。
電子材料につきましては、味の素ファインテクノ㈱と共同で、次世代PC、データセンター向けサーバー、5G通信ネットワーク用途向けに「味の素ビルドアップフィルム®(ABF)」の開発を継続しています。また、次世代機能性材料としてCPUの低消費電力化を実現する磁性材料の開発を進めています。
ライフサポートセグメントに係わる研究開発費は、4,696百万円です。
(4)ヘルスケアセグメント
味の素㈱バイオ・ファイン研究所、食品研究所、味の素バイオ・ファーマサービス、味の素-ジェネチカ・リサーチ・インスティチュート社等の国内外の各グループ会社及びその技術開発部門とも連携し、世界の健康に貢献するための商品や技術の開発を進めています。
先端バイオ・ファイン技術を活かしたアミノ酸等の生産力、レギュレーション対応力、サービス提供力を強みに、世界中の医薬企業等への多様で特徴ある素材・原薬・技術の提供に取り組んでいます。また、アミノ酸の機能、有用性に関する知見、新規用途探索力をアミノ酸サプリメントの開発等に応用することで、生活者のQOL向上、快適な生活のサポートに貢献しています。
医薬用・食品用アミノ酸につきましては、アミノ酸市場の伸びに対応するために、生産性の向上とコスト競争力の強化を目的とした発酵・精製プロセス開発と導入を継続して進めています。また、動物細胞培養用の培地事業は味の素ジェネクシン社をプラットホームとし、国内外のバイオ医薬品メーカーとの開発を継続、拡大しています。
再生医療用培地では、iPS/ES細胞の汎用培地として「StemFit® Basic04」を、米国・欧州・中国・韓国他、海外向け製品として2019年5月より発売しました。また2019年11月には、間葉系幹細胞用培地「StemFit® For Mesenchymal Stem Cell」、分化誘導用サプリメント「StemFit® For Differentiation」の販売を開始しました。今後、再生医療に求められる、高性能かつ動物・ヒト由来原料不含の安全性の高い培地の製造・開発を推進していきます。
製薬メーカーからの原薬受託製造について、低分子医薬品原薬、高活性原薬(HAPI)、ペプチド/オリゴ核酸、タンパク医薬、抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)などの幅広い開発・供給体制の充実を図り、継続的な案件の受注に繋げています。
タンパク質発現技術(「CORYNEX」技術)においては、味の素バイオ・ファーマサービスUSと連携して、グローバル大手製薬企業とバイオ医薬品の開発・製造支援事業「CORYNEX®」を推進しています。オリゴ核酸の受託製造においては、㈱ジーンデザインと連携して固相合成を活用した少量多品種製造から「AJIPHASE®」の液相合成技術による大量製造までの開発体制を構築し、また営業面では味の素バイオ・ファーマサービスUSとの連携も深めながら、オリゴ核酸製造受託事業を推進しています。
スポーツ栄養科学研究に関して、機能性エビデンスに基づいた独自のアミノ酸組成の構築にアミノサイエンス技術を、おいしさ、飲みやすさの追求に食品技術をそれぞれ駆使して、スポーツサプリメント製品の創出に取り組んでいます。
2019年8月には、アミノ酸含有食品「アミノバイタル®プロ」、「アミノバイタル®」のアミノ酸組成、口溶け性、味を全面的にリニューアルして、全国発売しました(「アミノバイタル®」については、名称を「アミノバイタル®アクティブファイン」と改称)。今回のリニューアルは、1995年の「アミノバイタル®プロ」、1998年の「アミノバイタル®」の発売以来初となります。
今後も「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」オフィシャルパートナーとして引き続き、社外の研究機関等とのオープン&リンクイノベーションを積極的に推進しながら、アスリートやスポーツを愛する生活者に貢献できる製品開発を行っていきます。
アミノ酸スキンケアブランド「ジーノ®」の旗艦製品である美容クリーム「アミノシューティカルクリーム®」を2019年10月にリニューアルし、アミノ酸成分(ベタインやカルノシン)を新配合することによるエイジングケア機能の強化と、バックレスチューブ(酸素の逆流を防ぐ機構)採用による品質保持性能の強化や軽量化を実現しました。当社は、長年のアミノ酸研究の知見を活かし、アミノ酸スキンケア製品「ジーノ®」を1997年に発売して以降、生活者の肌の悩みに合わせて、エイジングケア機能を持つ化粧水、美容液など製品ラインアップを拡大してきました。今後も、当社独自の健康・美容価値を有する製品や情報の提供を通じて、顧客のQOL向上にむけて取り組んでいきます。
アミノインデックス®リスクスクリーニング(AIRS®)は、血液中のアミノ酸濃度のバランスから、三大疾病(がん、脳卒中、心疾患)等のリスクを一度に評価する当社独自の技術です。2019年8月には大阪府四條畷市と住民健診解析に関する共同研究契約を締結し、住民の健康意識向上や生活習慣の見直しに貢献する取り組みを始めました。
9月には、多施設の前向き研究においてがん発見に関する検査性能を検証した論文(Science Report誌)が発表され、AIRS®におけるがんの評価に対するエビデンスレベルの向上、医師の納得度向上に繋がっています。10月には、太陽生命保険㈱等との三大疾病予防に関する業務提携に合意し、AIRS®のさらなる普及促進や、新サービスの開発につながる共同研究の検討も進めています。さらに、11月には国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の公募に採択された神奈川県立がんセンターと、肺がん治療の「患者層別化マーカー」探索に関する研究開発契約を締結し、より適切な治療法選択の具現化を介した、がん患者の身体的負担の軽減や医療費の削減への貢献を目指す研究も開始しています。今後は認知機能低下を予防するサービスの開発や既存サービスの充実を進め、AIRS®を予防ソリューションサービスに発展させていきます。
香粧品素材につきましては、アミノ酸由来の洗浄剤、湿潤剤、メークアップ素材を中心に、独自の研究開発を行っています。2019年度は、新たにグローバルなテクニカルサポート体制を導入し、処方開発や顧客提案等の効率化を実現しました。また、当社素材の新領域として、メークアップ用途への展開を本格化し、顧客提案用のデータや処方を拡充しました。さらに、当社グループのバイオ・ファイン技術を活用し、市場要請である低環境負荷に貢献するアミノ酸系の洗浄剤、メークアップ素材の新プロセスの開発を進めていきます。
ヘルスケアセグメントに係わる研究開発費は、3,631百万円です。
(5)その他
その他セグメントに係わる研究開発費は、263百万円です。
(6)全社
味の素グループの将来を担うと期待される領域での事業展開を見据え、関係する研究テーマを全社研究とし、資源を集中的に投資し、開発を進めています。
全社研究では、味の素㈱食品研究所、バイオ・ファイン研究所が中心となり、国内外の研究機関と連携して進めている先端研究・技術を活用し、グループ内の各研究所とともに様々な事業に向けた新技術・新素材の開発や、各事業分野に共通した基盤技術の強化に取り組んでいます。
食品・栄養領域では、食品中の栄養素をスコアで可視化する栄養プロファイリングシステム(The Ajinomoto Group Nutrient Profiling System:ANPS)の構築を進めています。栄養に関するグローバルトップ企業及びWHO(世界保健機関)等の独立機関の推奨値を参考に栄養素の選定やスケールを設定し、製品自体に加えて、製品を使用したメニューも対象とし、健康的な製品・メニュー開発のツールとして活用しています。また、「健康なこころとからだ」に貢献できる次世代の栄養研究領域として「栄養×感覚」に注目し、種々の外部研究機関との協業、国内外のシンポジウムを通じた情報発信やネットワーク構築を進めています。また、生体内におけるアミノ酸の栄養・代謝研究を基盤として、健康長寿社会の実現や、栄養不良の二重負荷(不足栄養と過剰栄養)の解決に向けた研究にも取り組んでいます。
さらに「おいしさ設計技術®」として、食品の味・香り・食感などの感じ方とその食品の好ましさとの関係性を定量的に評価・解析し最適化を図り、商品や技術・素材の開発に応用しています。さらに、「人は味や香りをどのような仕組みで感じ、『おいしい』と思うのか?」について、外部の先端研究機関との協業を進め、お客様に新たな価値をもたらす独自の素材や配合の探索にも取り組んでいます。
このような技術や仕組みを世界各地の味の素グループ企業において、現地のお客様の様々な嗜好に合い、おいしさと栄養改善に貢献する味の素グループにしか提供できない商品の開発に活用していきます。
ヘルスケア領域では、成長戦略の1つである先端バイオ医療周辺領域で「AJIPHASE」技術、「CORYNEX」技術に加え、新たに「TALAMAX」技術を開発しました。抗体等の複雑なタンパク質医薬品を微生物で製造でき、動物細胞等を用いた従来法に比して、技術優位性、コスト優位性を有す、競争力の高い独自技術であり、この成果が認められ第71回日本生物工学会大会「トピックス賞」を受賞しました。抗体薬物複合体(ADC)製造技術である「AJICAP」技術と合わせ、お客様の課題を解決することにより製薬カスタムサービス事業に貢献するとともに、バイオ医薬品の普及に貢献していきます。
低炭素社会及び持続可能な資源循環型社会を目指して、新たな技術開発や新事業の創出にも継続して取り組んでいます。オープン&リンクイノベーションの取り組みにて、東京工業大学細野教授らと新規触媒を用いたアンモニア合成の検討を進め、2017年4月につばめBHB㈱を設立し、世界で初めてとなるオンサイト型のアンモニア合成システムを2021年頃の実用化を目指しています。
また、基盤技術として、高感度アミノ酸・タンパク質分析などの先端分析技術を開発し、様々な事業領域における研究開発、新事業開発につなげています。2019年10月にはD-アミノ酸の新規分析法の開発の成果が認められ「日本アミノ酸学会2019年度 科学・技術賞」を受賞しました。この技術はグループ内での成分/不純物解析など製品の配合技術開発や品質管理・安全性検証で活用されるほか、グループ外の分析メーカーへライセンスアウトされ受託分析という形で活用されています。
オープン&リンクイノベーションの推進では、2018年6月に開設したクライアント・イノベーション・センターやオープンイノベーションプラットフォームであるeiiconを通じた機会創出、インキュベーションプログラムPhoenixiやアクセラレーションプログラムPlug and Playへの参加等、社内外の各種ツールを積極的に活用しビジネスパートナーとの交流や技術の融合によるイノベーションの創出など、当社グループの新たな価値・事業の共創に取り組んでいます。
全社に係わる研究開発費は、11,574百万円です。
食品領域においてはおいしさと栄養、そして生活者価値に基づく技術と商品開発を通じて、また、アミノサイエンス領域においては先端バイオ・ファイン技術を追求し新価値を創造することで、世界の食と人々の「こころとからだ」の健康課題を解決し、未来のより良い生活に貢献します。
当連結会計年度における味の素グループの研究開発費は27,596百万円です。
また、当社グループが保有している特許は国内外合わせて約3,900件です。
当連結会計年度の各事業区分における研究開発活動の概要とその成果は次のとおりです。
(1)日本食品セグメント
味の素㈱食品研究所が中心となり、味の素冷凍食品㈱、味の素AGF㈱、上海味の素食品研究開発センター社(中国)をはじめとする国内外のグループ会社の研究開発部門とも密接に連携し、味、香り・風味、食感など、「おいしさを構成するすべての要素」を俯瞰した技術開発、商品開発、及びそのアプリケーション開発を行っています。また、少子化・高齢化、世帯人数の減少、健康志向といった国内市場におけるニーズを掘り起こし、当社独自の素材と技術及び斬新な発想による価値提案型の製品開発に取り組んでいます。
2019年度の家庭用商品は、多様化するお客様のニーズと価値観に対応し、おいしさと栄養そして生活者価値に基づく技術・商品を通じて、人々の「健康なこころとからだ」に貢献すべく「スペシャリティ」を持った新製品を開発・発売しました。
高品質・スマートな調理をお客様にご提供すべく、メニュー用調味料市場においては、当社独自技術を活用して、身近な食材1つで簡単に本格麺メニューが楽しめる「Cook Do®」、「Cook Do®」、「Cook Do®」を発売しました。また、コンビニエンスストアで購入できる豆腐やサラダチキン等、身近な食材と合わせるだけで、簡便に本格ディナーを作れる「今夜はてづくり気分®」、「今夜はてづくり気分®」を発売しました。スープ市場においては、野菜の甘みとしゃきしゃきの食感にこだわった、たっぷり野菜のスープごはんの素「スープごはん」、野菜のおいしさをとことん引き出した「クノール®カップスープベジレシピ®」、「クノール®カップスープベジレシピ®」、「クノール®スープDELI®」、贅沢に使用した素材をじっくり時間をかけてとろとろに煮込んだ、濃厚で軽い食事になるスープ「クノール®スープグランデ®」、「クノール®スープグランデ®」を発売しました。また、たっぷりのフリーズドライ具材とサッと溶ける風味豊かな“だし味噌”が入った即席味噌汁「具たっぷり味噌汁」シリーズにおいて、を発売しました。当社独自技術を活用して、簡単に本格的な味付けができる肉用調味料「お肉やわらかの素®」シリーズにおいて、、を発売しました。洋風だし市場においては、独自のおいしく減塩する技術を更に深化させ、「味の素KKコンソメ」のおいしさそのままに40%減塩を実現した「味の素KKコンソメ」を発売しました。また、電子レンジでやわらかジューシーなおかずが手軽にできる「スチーミー」を首都圏エリア及びEコマースチャネル限定で発売しました。健康志向向けの市場においては、筋肉や血液などを構成する「たんぱく質」のもととなるアミノ酸を効率的に補える独自成分「Amino L40」を配合したまったく新しいダイエットサポート食品「Amino Line」をEコマースチャネルにて発売しました。
業務用では、外食市場の多くを占める個人外食店での「コストを抑え、人手や手間をかけずに他店とは異なったメニューを提供したい」、「客数や注文が少なくても使い切れる適度な容量の商品が欲しい」等の要望、及び、業務用スーパー等の利用が増えにも対応するために、従来の業務用品種の半分のサイズである中容量製品(「ほんだし®」かつおだし500g他・「GABAN®スパイスソース」黒胡椒&ガーリック500ml他)を発売しました。
また、加工領域ではユーザーの使用特性(性状・濃度等)に合わせた製品を開発・発売しました。
ベーカリー製品では、コンビニエンスストア(CVS)向けに既存の焼きたてパンに加え、チルド調理パン向け製品やデザート向け製品の開発を行い、CVS内での新領域への提案を進めました。また、外食産業の省人・省力化ニーズに対応し、解凍及び最終発酵工程の省略を可能とする時短型商品の開発を進め、ファストフードチェーンに製品導入を果たすなど事業拡大に取り組みました。
超高齢化が進む今日の日本において、国、地方自治体は健康寿命延伸施策を積極的に進めています。当社においても、高齢者のフレイル(虚弱)、低栄養の予防改善に向け、当社のスペシャリティである「たんぱく質・アミノ酸栄養」の研究開発知見を活かした製品の開発を進めています。2019年度は、当社では、従来の医療機関、介護施設向けのみならず在宅で療養される高齢者・ご家族、また介護予備軍とされる方々をも対象とした味の素KK「栄養ケア食品」の新製品の開発を進め(発売は2020年以降)、併せて、これまでの研究成果に基づく機能性情報の発信や高齢者の健康栄養課題解決に向けた啓発活動も推進しました。
家庭用では、「やわらか若鶏から揚げ ボリュームパック」を、“香ばしい醤油風味で、食べごたえあるから揚げ”に製品改定を行いました。指定農場で大切に育てた安心の若鶏の一枚肉を大ぶりにカットし、さらに生姜醤油に漬け込むことでお肉をやわらかくし、揚げる前に丸大豆醤油に絡めて香ばしくする「二段仕込み製法」で仕上げました。「小麦・卵・乳」不使用でみんな一緒に同じものを“おいしく”“安心”して食べられる製品ラインナップを強化しました。
業務用では、提供者のオペレーション課題を解決しながら、生活者それぞれのニーズに合った製品を開発しました。手間のかかるベジタリアンメニューをおいしく、大量に調理できる「ベジタリアン向け」、、、の4品種を新しく発売しました。
スティック市場の牽引役である「ブレンディ®」スティックは、“クリーミー&スイートな味わい”を維持しつつ、味の素グループの素材活用により更にコーヒー感・濃度感を増強する品質改良を行い、お客様の嗜好性評価を高める改訂を実施しました。また、当社紅茶オレ比糖質50%オフの「ブレンディ®」スティックを発売するなど健康意識の高まりに呼応した製品開発も進めました。そして、茶筅無しで豊かに泡立ち、上質な抹茶ならではの旨みを手軽に味わえる「ブレンディ®」2種を市場導入するなど新たな市場開拓を図っています。
「ちょっと贅沢な珈琲店®」では、前年度九州エリア限定で発売したの好評を受け、を追加するとともに、東北エリア限定商品として“豊かなコク”と“まろやかな口当たり”を特徴とするを発売し、エリア嗜好への対応によるファンの獲得に結び付く開発を行っています。
日本食品セグメントに係わる研究開発費は、3,572百万円です。
(2)海外食品セグメント
味の素㈱食品研究所を中心とし、国内外のグループ会社の研究開発部門と密接に連携を図ったグローバルな製品開発体制のもと、マーケティング力、ブランド力を強みに、各国生活者の嗜好とニーズに適応した調味料、加工食品、冷凍食品の開発に継続して取り組んでいます。
主力となるアセアン地域では、都市化やライフスタイルの変化が進む中、簡便で加工度の高い製品や健康価値を有す製品への需要も増加しています。
その中で、うま味調味料「AJI-NO-MOTO®」とともに主力である風味調味料製品では先進的技術を駆使した継続的な品質向上を行いました。新興国の発展に伴い需要が拡大するメニュー用調味料製品では新製品を発売しました。また、加工食品では、当社グループならではのおいしさと健康価値をコンセプトに持つプレミアムな製品の発売を通じて、拡大する個食・即食・健康ニーズへの対応を強化しています。((例)即席麺 「Yum Yum®」(タイ)、子ども向けたんぱく質高含有粉末飲料「Prottie」(タイ、フィリピン)など)
今後も当社グループの独自素材の活用や独自技術に裏打ちされたおいしさの追求とともに健康価値領域での製品開発を継続強化していきます。
北米や欧州では日本食人気の高まりや日式レストランの増加によりアジアン冷凍食品市場が引き続き成長しています。北米市場では販売好調な拉麵、炒麺に続き「うどん」を発売し、麺類の製品ラインナップが拡がりました。欧州市場では、外食から家庭用に販売を拡大し、電子レンジ調理の「焼き調理済ギョーザ」をタイで開発するなど、拠点間を跨るグローバル開発が進められています。
今後も日本で培われた生産技術で作り立ての食感・香り溢れる美味しさを提供していくと共に、健康機能を付与した製品を市場投入する等、製品の付加価値を常に向上させながら、更なる事業拡大に貢献していきます。
世界複数拠点でうま味調味料「味の素®」や核酸系調味料を生産し、グローバルネットワークを活かして100か国以上でBtoB及びBtoCビジネスを展開しています。
2019年は環境負荷を低減する取組みやプロセス改良による生産性の向上を進め、事業を通じた社会価値と経済価値の共創に貢献しました。
アスパルテーム市場は、世界の多くの国で砂糖の過剰摂取による健康課題が深刻化する中、引き続き伸張しています。当社はサステナブルな製品供給を更に強化すべく、コスト競争力の強化及び環境負荷低減を目的とするアスパルテーム改良プロセスの開発を継続して進めています。また日本国内のコンシューマー市場に向けては、砂糖代替に加えて整腸効果が期待できる機能性表示食品の新製品「パルスイート®おなかすこやかオリゴ®」を開発し発売しました。
海外食品セグメントに係わる研究開発費は、3,858百万円です。
(3)ライフサポートセグメント
味の素㈱バイオ・ファイン研究所が中心となり、味の素-ジェネチカ・リサーチ・インスティチュート社、味の素ファインテクノ㈱等の国内外の各グループ会社及びその技術開発部門とも密接に連携し、世界中の市場に向けたソリューションを提供しています。
世界トップレベルのアミノ酸に関する知見、安全性の高い素材開発力や配合評価技術、グローバルネットワークを強みとし、動物栄養、電子材料などの幅広い事業領域における研究開発に取り組んでいます。当社ならではのスペシャリティによる顧客価値を創出し、事業拡大を図っています。
動物栄養事業の構造改革の一環として、スペシャリティ事業拡大のため、乳牛用アミノ酸製剤「AjiPro®-L」のグローバル展開を目的とした研究開発を推進しています。
電子材料につきましては、味の素ファインテクノ㈱と共同で、次世代PC、データセンター向けサーバー、5G通信ネットワーク用途向けに「味の素ビルドアップフィルム®(ABF)」の開発を継続しています。また、次世代機能性材料としてCPUの低消費電力化を実現する磁性材料の開発を進めています。
ライフサポートセグメントに係わる研究開発費は、4,696百万円です。
(4)ヘルスケアセグメント
味の素㈱バイオ・ファイン研究所、食品研究所、味の素バイオ・ファーマサービス、味の素-ジェネチカ・リサーチ・インスティチュート社等の国内外の各グループ会社及びその技術開発部門とも連携し、世界の健康に貢献するための商品や技術の開発を進めています。
先端バイオ・ファイン技術を活かしたアミノ酸等の生産力、レギュレーション対応力、サービス提供力を強みに、世界中の医薬企業等への多様で特徴ある素材・原薬・技術の提供に取り組んでいます。また、アミノ酸の機能、有用性に関する知見、新規用途探索力をアミノ酸サプリメントの開発等に応用することで、生活者のQOL向上、快適な生活のサポートに貢献しています。
医薬用・食品用アミノ酸につきましては、アミノ酸市場の伸びに対応するために、生産性の向上とコスト競争力の強化を目的とした発酵・精製プロセス開発と導入を継続して進めています。また、動物細胞培養用の培地事業は味の素ジェネクシン社をプラットホームとし、国内外のバイオ医薬品メーカーとの開発を継続、拡大しています。
再生医療用培地では、iPS/ES細胞の汎用培地として「StemFit® Basic04」を、米国・欧州・中国・韓国他、海外向け製品として2019年5月より発売しました。また2019年11月には、間葉系幹細胞用培地「StemFit® For Mesenchymal Stem Cell」、分化誘導用サプリメント「StemFit® For Differentiation」の販売を開始しました。今後、再生医療に求められる、高性能かつ動物・ヒト由来原料不含の安全性の高い培地の製造・開発を推進していきます。
製薬メーカーからの原薬受託製造について、低分子医薬品原薬、高活性原薬(HAPI)、ペプチド/オリゴ核酸、タンパク医薬、抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)などの幅広い開発・供給体制の充実を図り、継続的な案件の受注に繋げています。
タンパク質発現技術(「CORYNEX」技術)においては、味の素バイオ・ファーマサービスUSと連携して、グローバル大手製薬企業とバイオ医薬品の開発・製造支援事業「CORYNEX®」を推進しています。オリゴ核酸の受託製造においては、㈱ジーンデザインと連携して固相合成を活用した少量多品種製造から「AJIPHASE®」の液相合成技術による大量製造までの開発体制を構築し、また営業面では味の素バイオ・ファーマサービスUSとの連携も深めながら、オリゴ核酸製造受託事業を推進しています。
スポーツ栄養科学研究に関して、機能性エビデンスに基づいた独自のアミノ酸組成の構築にアミノサイエンス技術を、おいしさ、飲みやすさの追求に食品技術をそれぞれ駆使して、スポーツサプリメント製品の創出に取り組んでいます。
2019年8月には、アミノ酸含有食品「アミノバイタル®プロ」、「アミノバイタル®」のアミノ酸組成、口溶け性、味を全面的にリニューアルして、全国発売しました(「アミノバイタル®」については、名称を「アミノバイタル®アクティブファイン」と改称)。今回のリニューアルは、1995年の「アミノバイタル®プロ」、1998年の「アミノバイタル®」の発売以来初となります。
今後も「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」オフィシャルパートナーとして引き続き、社外の研究機関等とのオープン&リンクイノベーションを積極的に推進しながら、アスリートやスポーツを愛する生活者に貢献できる製品開発を行っていきます。
アミノ酸スキンケアブランド「ジーノ®」の旗艦製品である美容クリーム「アミノシューティカルクリーム®」を2019年10月にリニューアルし、アミノ酸成分(ベタインやカルノシン)を新配合することによるエイジングケア機能の強化と、バックレスチューブ(酸素の逆流を防ぐ機構)採用による品質保持性能の強化や軽量化を実現しました。当社は、長年のアミノ酸研究の知見を活かし、アミノ酸スキンケア製品「ジーノ®」を1997年に発売して以降、生活者の肌の悩みに合わせて、エイジングケア機能を持つ化粧水、美容液など製品ラインアップを拡大してきました。今後も、当社独自の健康・美容価値を有する製品や情報の提供を通じて、顧客のQOL向上にむけて取り組んでいきます。
アミノインデックス®リスクスクリーニング(AIRS®)は、血液中のアミノ酸濃度のバランスから、三大疾病(がん、脳卒中、心疾患)等のリスクを一度に評価する当社独自の技術です。2019年8月には大阪府四條畷市と住民健診解析に関する共同研究契約を締結し、住民の健康意識向上や生活習慣の見直しに貢献する取り組みを始めました。
9月には、多施設の前向き研究においてがん発見に関する検査性能を検証した論文(Science Report誌)が発表され、AIRS®におけるがんの評価に対するエビデンスレベルの向上、医師の納得度向上に繋がっています。10月には、太陽生命保険㈱等との三大疾病予防に関する業務提携に合意し、AIRS®のさらなる普及促進や、新サービスの開発につながる共同研究の検討も進めています。さらに、11月には国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の公募に採択された神奈川県立がんセンターと、肺がん治療の「患者層別化マーカー」探索に関する研究開発契約を締結し、より適切な治療法選択の具現化を介した、がん患者の身体的負担の軽減や医療費の削減への貢献を目指す研究も開始しています。今後は認知機能低下を予防するサービスの開発や既存サービスの充実を進め、AIRS®を予防ソリューションサービスに発展させていきます。
香粧品素材につきましては、アミノ酸由来の洗浄剤、湿潤剤、メークアップ素材を中心に、独自の研究開発を行っています。2019年度は、新たにグローバルなテクニカルサポート体制を導入し、処方開発や顧客提案等の効率化を実現しました。また、当社素材の新領域として、メークアップ用途への展開を本格化し、顧客提案用のデータや処方を拡充しました。さらに、当社グループのバイオ・ファイン技術を活用し、市場要請である低環境負荷に貢献するアミノ酸系の洗浄剤、メークアップ素材の新プロセスの開発を進めていきます。
ヘルスケアセグメントに係わる研究開発費は、3,631百万円です。
(5)その他
その他セグメントに係わる研究開発費は、263百万円です。
(6)全社
味の素グループの将来を担うと期待される領域での事業展開を見据え、関係する研究テーマを全社研究とし、資源を集中的に投資し、開発を進めています。
全社研究では、味の素㈱食品研究所、バイオ・ファイン研究所が中心となり、国内外の研究機関と連携して進めている先端研究・技術を活用し、グループ内の各研究所とともに様々な事業に向けた新技術・新素材の開発や、各事業分野に共通した基盤技術の強化に取り組んでいます。
食品・栄養領域では、食品中の栄養素をスコアで可視化する栄養プロファイリングシステム(The Ajinomoto Group Nutrient Profiling System:ANPS)の構築を進めています。栄養に関するグローバルトップ企業及びWHO(世界保健機関)等の独立機関の推奨値を参考に栄養素の選定やスケールを設定し、製品自体に加えて、製品を使用したメニューも対象とし、健康的な製品・メニュー開発のツールとして活用しています。また、「健康なこころとからだ」に貢献できる次世代の栄養研究領域として「栄養×感覚」に注目し、種々の外部研究機関との協業、国内外のシンポジウムを通じた情報発信やネットワーク構築を進めています。また、生体内におけるアミノ酸の栄養・代謝研究を基盤として、健康長寿社会の実現や、栄養不良の二重負荷(不足栄養と過剰栄養)の解決に向けた研究にも取り組んでいます。
さらに「おいしさ設計技術®」として、食品の味・香り・食感などの感じ方とその食品の好ましさとの関係性を定量的に評価・解析し最適化を図り、商品や技術・素材の開発に応用しています。さらに、「人は味や香りをどのような仕組みで感じ、『おいしい』と思うのか?」について、外部の先端研究機関との協業を進め、お客様に新たな価値をもたらす独自の素材や配合の探索にも取り組んでいます。
このような技術や仕組みを世界各地の味の素グループ企業において、現地のお客様の様々な嗜好に合い、おいしさと栄養改善に貢献する味の素グループにしか提供できない商品の開発に活用していきます。
ヘルスケア領域では、成長戦略の1つである先端バイオ医療周辺領域で「AJIPHASE」技術、「CORYNEX」技術に加え、新たに「TALAMAX」技術を開発しました。抗体等の複雑なタンパク質医薬品を微生物で製造でき、動物細胞等を用いた従来法に比して、技術優位性、コスト優位性を有す、競争力の高い独自技術であり、この成果が認められ第71回日本生物工学会大会「トピックス賞」を受賞しました。抗体薬物複合体(ADC)製造技術である「AJICAP」技術と合わせ、お客様の課題を解決することにより製薬カスタムサービス事業に貢献するとともに、バイオ医薬品の普及に貢献していきます。
低炭素社会及び持続可能な資源循環型社会を目指して、新たな技術開発や新事業の創出にも継続して取り組んでいます。オープン&リンクイノベーションの取り組みにて、東京工業大学細野教授らと新規触媒を用いたアンモニア合成の検討を進め、2017年4月につばめBHB㈱を設立し、世界で初めてとなるオンサイト型のアンモニア合成システムを2021年頃の実用化を目指しています。
また、基盤技術として、高感度アミノ酸・タンパク質分析などの先端分析技術を開発し、様々な事業領域における研究開発、新事業開発につなげています。2019年10月にはD-アミノ酸の新規分析法の開発の成果が認められ「日本アミノ酸学会2019年度 科学・技術賞」を受賞しました。この技術はグループ内での成分/不純物解析など製品の配合技術開発や品質管理・安全性検証で活用されるほか、グループ外の分析メーカーへライセンスアウトされ受託分析という形で活用されています。
オープン&リンクイノベーションの推進では、2018年6月に開設したクライアント・イノベーション・センターやオープンイノベーションプラットフォームであるeiiconを通じた機会創出、インキュベーションプログラムPhoenixiやアクセラレーションプログラムPlug and Playへの参加等、社内外の各種ツールを積極的に活用しビジネスパートナーとの交流や技術の融合によるイノベーションの創出など、当社グループの新たな価値・事業の共創に取り組んでいます。
全社に係わる研究開発費は、11,574百万円です。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00436] S100IY1B)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。