有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100JJQ2 (EDINETへの外部リンク)
株式会社フジクラ 研究開発活動 (2020年3月期)
当社グループは、①エネルギー・情報通信、②電子電装・コネクタ、各分野の新商品並びに新技術の開発を積極的に行っております。当社グループの研究開発活動は、光応用技術R&Dセンター、電子応用技術R&Dセンター、自動車電装R&Dセンター、および材料応用技術・分析センター、新たな技術領域を創造する目的で設立した「アドバンスト・リサーチ・コア」が全社研究開発を、また各事業部門の開発部が部門別開発活動を進めています。
環境対応型製品開発の一環として、高温超電導線材、色素増感太陽電池とそれを用いたセンサシステムなどの商品化に向けた開発を進めています。高温超電導線材では、人工ピンの導入により世界トップの臨界電流特性を有する線材の開発を完了し、量産の目途が立ったことから、販売、提供を開始しました。幅広い温度域、磁場領域に適用できるレアアース系高温超電導線材は、分析用NMRや医療用MRIなどの強磁場コイル用途において、システムのコンパクト化、高解像度化などが期待されています。
色素増感太陽電池では、この太陽電池を電源としたこれまでのLoRaWAN※方式広域センサシステムに加え、独自のIoTクラウドを構築することで、センサシステムからクラウドアプリケーションまでのソリューションサービスを開始し、西日本電信電話株式会社と共同で熱中症対策システムを実施しました。
※LoRaWAN:LoRa Allianceが定めた無線ネットワーク規格の名称で、IoT向け無線規格として世界的に広く利用されています。
「5G」(第5世代移動通信システム)時代に向けて、次世代大容量高速無線通信に利用されるミリ波帯通信機器や受動デバイスの開発を進めています。移動体通信フロントホール・バックホールや、固定通信網ラストマイルなどの通信インフラ用途にミリ波モジュールを提供します。昨年、International Business Machine Corporation (以下「IBM」)より5G関連のミリ波RF-IC技術のライセンスを受けることで合意し、IBMのチップ及びパッケージ設計技術と当社のプロセス・アンテナ技術を組み合わせて、次世代28GHz帯RF-ICの開発に着手しました。この自社RF-IC製品を確立することにより、高性能な5G向けミリ波帯無線通信デバイスの開発を加速します。また、60GHz帯においては、高速無線通信を実現するミリ波無線通信モジュールを開発し、サンプル提供を開始しました。このモジュールは、世界トップクラスの2Gbps超の通信スピードと500m超の長距離伝送を同時に実現しています。
ICや受動部品などをポリイミド多層配線板に埋め込んだ薄型部品内蔵基板、「WABE Package®」(Wafer And Board level device Embedded Package)の開発、量産化を進めています。2個のICチップを厚さ方向に重ねて埋め込んだ2チップスタック型部品内蔵基板の量産出荷を開始し、世界初の技術である3個のICチップを厚さ方向に重ねて埋め込んだ超多層構造の3チップスタック型についても開発が完了しました。複数部品を内蔵した超高精細・超多層の高密度部品内蔵基板を提供し、製品の軽薄短小化に貢献していきます。
人々の健康とQOLを維持向上すべく、医用機器用極小CMOS撮像モジュールの開発を進めています。極小サイズで安価なCMOS撮像素子モジュールは、感染防止のための電子内視鏡のディスポ化を実現するとともに、極細・可撓性の特徴を活かして従来困難だった領域への可視アクセスが可能になります。本年度、大手医療機器メーカ向けに当社の光技術及び電子技術を活用した極細径撮像素子モジュールの納入を開始する予定です。また、米国ミネアポリスに医療ビジネスの開拓拠点を設けました。世界の医療機器開発の中心の一つである当地で、アンメットニーズに応える活動を展開していきます。
AI(ディープラーニング)を用いた革新的なものづくりに取り組んでいます。製品検査工程において、AIによる外観異常の検出や、AIによる複数物体からの検査対象物の抽出など、画像に関する独自のAI技術のものづくりへの適用を進めています。また画像以外にも、数値データをAIで分析することにより、異常などを予測する技術の開発も行っています。ものづくりに新しいAI技術を適用し、飛躍的に生産性を向上することを目指しています。
当社は、2020年2月に、世界的な情報サービス企業クラリベイト・アナリティクスより「グローバルイノベータ2020」に選出され、受賞しました。この賞は、保有する特許データを基に知的財産動向を分析し、世界の革新企業・機関トップ100を選出するものです。当社は日米欧中の特許ポートフォリオ強化により、その「グローバル性」を評価され初の受賞となりました。
セグメント別の研究開発活動及びその成果は次のとおりで、当連結会計年度の連結研究開発費は172億円であります。
①エネルギー・情報通信カンパニー
情報通信量の飛躍的な増大に伴う光通信ネットワーク整備に向けて、需要拡大が予想される細径ファイバ、ならびに光ファイバの低損失化の開発を進めています。
5G通信やクラウドサービスなどの高速大容量通信の拡大を背景に、既存設備を有効利用し、経済的に光ファイバケーブル網を構築する技術として、世界トップレベルの細径・高密度な光ファイバケーブル「Spider Web Ribbon®/Wrapping Tube Cable™」を開発し製品化しています。2019年度は、Spider Web Ribbon®/Wrapping Tube Cable™ 技術を用いた新たな製品として、空気圧送布設に適したAir Blown WTC(AB-WTCTM)を開発し、英国の最大手通信事業社British Telecommunications plcに本格採用されました。これらの技術をもとにしたICT事業への技術的進捗と普及への貢献が認められ、一般社団法人電気通信協会の「ICT事業奨励賞」を受賞しました。今後もSpider Web Ribbon®/Wrapping Tube Cable™の技術による差別化、高機能光ケーブルを開発し、日本のみならず世界各国の光通信ネットワークの構築に貢献していきます。
これらの光ケーブルの接続点に使用される防水型光コネクタ、現場付けコネクタ等の性能を向上するためにも高精度技術が一層重要になってきています。2019年度は、通信の品質向上が図れる低反射現場付けコネクタを開発しました。光コネクタを搭載した光ケーブル成端ユニット等の開発も進め、相反することもある接続のしやすさと高性能・高機能を独自の技術で解決し、製品の魅力を高めていきます。また、伝送装置周辺で使用される光コネクタの高性能化、および、高機能化にも注力しています。フロント、バックパネル光コネクタ、取り扱い性に優れた多心レンズ型光コネクタには、これまで磨いてきた高精度技術、レンズ技術を適用すべく開発を進めています。2019年度は、通信データの大容量化に対応した伝送装置やデータセンターへの適用が見込める超低損失多心光コネクタを開発しました。また、伝送装置のバックプレーンでの光コネクタの接続時に、作業効率化が図れるバックプレーンコネクタクリーナーを開発しました。
光通信機器等で使用されるPANDA※(偏波面保持機能)ファイバにおいては、次世代の小型光通信機器に使用され始めたシリコンフォトニック(SiPh)デバイスに適したTEC-PANDAファイバ(TEC:Thermally-diffused Expanded Core)を開発しました。このファイバは、スポットサイズの小さなシリコン光導波路との接続損失を低減でき、また融着時にコア径を拡大させるTEC技術により汎用光ファイバとの接続損失も低減します。
※PANDA:Polarization-maintaining AND Absorption-reducing
将来の大容量伝送用光ファイバの有力候補であるマルチコアファイバは、光ファイバ1本に複数のコアを持つファイバで、実用化に向けた開発を進めています。2019年度は、現在の汎用光ファイバと同じ外径を有し、コアが4個のマルチコアファイバの低コスト化に注力しました。国立研究開発法人情報通信研究機構の委託を受け、日本電信電話株式会社、株式会社KDDI総合研究所、他のファイバメーカと共に「マルチコアファイバの実用化加速に向けた研究開発」を進めています。本開発の狙いは普及型MCFの早期実用化です。一方、汎用光ファイバとの接続技術も重要となっており、その入出力デバイス、接続技術などの周辺技術の確立により実用化を加速させます。今後、マルチコアファイバの実用化をめざすとともに、将来の多大なデータ通信需要に対応可能な光伝送基盤の実現に貢献していきます。
光ファイバケーブルの敷設施工の効率化のため、新型のコア調心融着接続機と多心融着接続機を開発し、上市しました。コア調心融着接続機では、施工時間の短縮と作業性の向上を実現する機能を追加しました。追加機能により、「接続された光ファイバの取り出し、補強用スリーブの位置決め、加熱器へセット」までの作業時間を従来機に比較して大幅に短縮しました。多心融着接続機では、光ファイバの位置決め部であるV溝ユニットを現地で接続心数に合わせて交換し、最適な専用機とすることができます。また、V溝に付着したゴミによる接続損失発生時にも、V溝交換により即座に対応できます。今後も引き続き融着接続技術を改善し、施工に貢献する製品を開発していきます。
金属のマーキング、溶接および切断で使用されるレーザ加工機の市場では、ビーム品質が良く、かつ小型で電力変換効率が高い光源を利用したファイバレーザへの乗り換えが加速しています。当社は、光通信用ファイバや部品で培ったコア技術をベースにファイバレーザの研究開発に注力してきました。2019年度は、高出力シングルモード・ファイバレーザで出力8kWを出力出来ることを確認し、製品化へ向け大きく前進しました。
また、こうしたフジクラのファイバレーザを支えている、半導体レーザの分野においても19年度は大きな進歩がありました。従来から高出力技術でトップを走ってきた当社は、昨年度、従来比3ポイント以上(64%→67%以上)の高効率化を達成しました。商用として世界トップレベルのこの半導体レーザを活用した高効率ファイバレーザの開発により、低消費電力社会に貢献していきます。
エネルギー問題がますます重要性を増す中で、省エネルギーの推進、環境負荷の低減、資源の有効活用につながるケーブル・機器の開発を積極的に進めています。航続距離延長や環境保護政策により、普及が進む電気自動車の充電インフラとして、急速充電器の設置数が増大しています。バッテリ容量の大容量化に伴う充電時間短縮のニーズに応えるため、従来の3~7倍の出力の充電器が実用化されており、液冷ケーブル用コネクタの規格化が検討されています。当社では、国内初となる400kWクラスの充電器に適用可能な高出力充電ケーブルおよびコネクタ接続端子の冷却技術を開発しています。大容量急速充電に対応する冷却効率に優れ、操作性・取扱い性に優れる充電ケーブルおよびコネクタの開発に注力しています。
また、電力インフラの老朽化、保全工事の担い手不足が課題となる中、リアルタイムデータに基づいたスマートメンテナンスに不可欠なセンシング技術による常時監視システムの開発を進めています。エネルギー問題がますます重要性を増す中で、省エネルギーの推進、環境負荷の低減、資源の有効活用につながるケーブル・機器の開発を積極的に進めています。
なお、当セグメントに係る研究開発費は112億円であります。
②電子電装・コネクタカンパニー
(エレクトロニクス事業部門)
民生及び産業用の電子機器に使われるFPC・メンブレン・コネクタ・電子ワイヤ・センサ・ハードディスク・サーマル製品の開発を行っています。スマートフォンに代表されるモバイル機器は、情報通信速度の高速化や高機能化が進み、周辺機器とのつながりやすさが強く要求されています。また、自動車の電動化、情報化、知能化が加速する中で、需要が増えている自動車用電子部品は、各種環境下での高い信頼性が要求されています。
FPCについては、電子機器の高密度化や高速伝送化に対応するため、高精細FPCをコア技術とした高密度実装のトータルソリューションの提供を目的として開発を進めています。高精細FPCの対応についてはセミアディティブ法の採用を進め、高速伝送化への対応については低誘電率・低誘電損失の材料を適用した製品開発を進めています。また、車載用途としては、軽量化や立体配線を実現する配線材料のニーズが高まっており、これを実現するための技術開発を進めています。加えて、高信頼性確保のため、自動化を推進し、製造での更なる工程能力向上、検査能力向上に取り組んでいます。また、FPCとアルミ材を直接接合する技術を開発し、FPCを利用した大電流アプリケーションへの適用を目指しています。
メンブレンについては、細線印刷技術や機能性ペーストの開発を進めることでパソコン、家電、車載用など従来の需要に加え、医療、ヘルスケアといった新しい市場を開拓してまいります。さらに、ストレッチャブルメンブレンでは、ウェアラブル製品への拡販や他用途への応用も進めてまいります。
コネクタについては、「小型・低背」「堅牢」「防水」「高速伝送」「作業性」をキーワードに、高機能化(高操作性、高強度、大電流、複合化など)した製品開発を推進しています。モバイル機器用途としては、Board to Boardコネクタの小型・堅牢化、バッテリ用コネクタ等の製品バラエティ拡充を進めています。産業機器用途では、屋内照明用低背型コネクタや、4K/8K放送用、5G基地局用等のコネクタの開発を進めています。また、自動車用途についても、自動車の情報化・知能化に対応すべく、高速通信用コネクタなどの開発に注力しています。
電子ワイヤについては、エレクトロニクス市場での更なる高速、高容量データ伝送の要求に答えるべく開発を進めています。モバイル機器やウェアラブル機器などの用途では、非常に限られたスペース内で、高速な信号を伝送する用途や、高屈曲耐久を有した接続のニーズがあり、これらに貢献する機器内配線用極細ケーブルアセンブリの開発を進めています。
センサについては、高精度な増幅・温度補償済み圧力センサの製品ラインナップに加え、絶対圧計測用圧力センサ、差圧計測用センサを開発しています。また、酸素センサについても、小型化製品を開発し提供しています。
サーマル製品については、スーパーコンピュータやハイエンドサーバーの高性能化に伴い、CPUの発熱密度の増加に対応した更なる冷却性能の効率化が求められており、これらのニーズに応えるべく、水冷式クーリングユニットの高性能化を進めています。また、スマートフォン等のモバイル機器向けに、薄型省スペースの熱対策部品のニーズに応えるべく、0.4mm以下の厚さの超薄型ベーパーチャンバー、超薄型ヒートパイプ製品のさらなる熱性能の向上、薄型化の開発を進めています。
なお、当セグメントに係る研究開発費は35億円であります。
(自動車事業部門)
CASEの自動車業界トレンドに対応するため、ワイヤハーネスを中心としたEDS(Electric Distribution System)の分野と、エレクトロニクス事業で培った薄型配線材の技術を応用した機能モジュールの分野で、新商品・新技術の開発を推進しています。
自動車電装R&Dセンターでは、大容量高速通信に対応するハーネスと、それを用いた車載ネットワークシステムとシミュレーション技術を開発し、ワイヤハーネスの進化を支えます。従来の12V系に加えて高電圧系も含めた電源システム全体を俯瞰し、ジョイントボックスその他の電源分配システムの電子化と高機能化をさらに進め、車両一台分の電気回路シミュレーションを活用して電源供給を最適化し、低燃費化、軽量化などのカーメーカーのニーズに応えます。ワイヤハーネスのみならず、CASEで広がりを期待される新しい領域の技術に向けた開発も推進しています。
機能モジュールの分野では、シートベルトリマインダに関する保安基準の改正により、後席シートにおけるセンサ適用の検討を進めており、後席における特有の検知・非検知スペックに対応できるセンサ構造の標準化を推進しています。
欧州顧客に対しては、ドイツのFujikura Technology Europe GmbH(FTE社)を活用し、最新トレンドを把握しつつ、現地顧客との共同プロジェクトを通して、次世代車向けの研究開発活動に注力しています。
なお、当セグメントに係る研究開発費は17億円であります。
環境対応型製品開発の一環として、高温超電導線材、色素増感太陽電池とそれを用いたセンサシステムなどの商品化に向けた開発を進めています。高温超電導線材では、人工ピンの導入により世界トップの臨界電流特性を有する線材の開発を完了し、量産の目途が立ったことから、販売、提供を開始しました。幅広い温度域、磁場領域に適用できるレアアース系高温超電導線材は、分析用NMRや医療用MRIなどの強磁場コイル用途において、システムのコンパクト化、高解像度化などが期待されています。
色素増感太陽電池では、この太陽電池を電源としたこれまでのLoRaWAN※方式広域センサシステムに加え、独自のIoTクラウドを構築することで、センサシステムからクラウドアプリケーションまでのソリューションサービスを開始し、西日本電信電話株式会社と共同で熱中症対策システムを実施しました。
※LoRaWAN:LoRa Allianceが定めた無線ネットワーク規格の名称で、IoT向け無線規格として世界的に広く利用されています。
「5G」(第5世代移動通信システム)時代に向けて、次世代大容量高速無線通信に利用されるミリ波帯通信機器や受動デバイスの開発を進めています。移動体通信フロントホール・バックホールや、固定通信網ラストマイルなどの通信インフラ用途にミリ波モジュールを提供します。昨年、International Business Machine Corporation (以下「IBM」)より5G関連のミリ波RF-IC技術のライセンスを受けることで合意し、IBMのチップ及びパッケージ設計技術と当社のプロセス・アンテナ技術を組み合わせて、次世代28GHz帯RF-ICの開発に着手しました。この自社RF-IC製品を確立することにより、高性能な5G向けミリ波帯無線通信デバイスの開発を加速します。また、60GHz帯においては、高速無線通信を実現するミリ波無線通信モジュールを開発し、サンプル提供を開始しました。このモジュールは、世界トップクラスの2Gbps超の通信スピードと500m超の長距離伝送を同時に実現しています。
ICや受動部品などをポリイミド多層配線板に埋め込んだ薄型部品内蔵基板、「WABE Package®」(Wafer And Board level device Embedded Package)の開発、量産化を進めています。2個のICチップを厚さ方向に重ねて埋め込んだ2チップスタック型部品内蔵基板の量産出荷を開始し、世界初の技術である3個のICチップを厚さ方向に重ねて埋め込んだ超多層構造の3チップスタック型についても開発が完了しました。複数部品を内蔵した超高精細・超多層の高密度部品内蔵基板を提供し、製品の軽薄短小化に貢献していきます。
人々の健康とQOLを維持向上すべく、医用機器用極小CMOS撮像モジュールの開発を進めています。極小サイズで安価なCMOS撮像素子モジュールは、感染防止のための電子内視鏡のディスポ化を実現するとともに、極細・可撓性の特徴を活かして従来困難だった領域への可視アクセスが可能になります。本年度、大手医療機器メーカ向けに当社の光技術及び電子技術を活用した極細径撮像素子モジュールの納入を開始する予定です。また、米国ミネアポリスに医療ビジネスの開拓拠点を設けました。世界の医療機器開発の中心の一つである当地で、アンメットニーズに応える活動を展開していきます。
AI(ディープラーニング)を用いた革新的なものづくりに取り組んでいます。製品検査工程において、AIによる外観異常の検出や、AIによる複数物体からの検査対象物の抽出など、画像に関する独自のAI技術のものづくりへの適用を進めています。また画像以外にも、数値データをAIで分析することにより、異常などを予測する技術の開発も行っています。ものづくりに新しいAI技術を適用し、飛躍的に生産性を向上することを目指しています。
当社は、2020年2月に、世界的な情報サービス企業クラリベイト・アナリティクスより「グローバルイノベータ2020」に選出され、受賞しました。この賞は、保有する特許データを基に知的財産動向を分析し、世界の革新企業・機関トップ100を選出するものです。当社は日米欧中の特許ポートフォリオ強化により、その「グローバル性」を評価され初の受賞となりました。
セグメント別の研究開発活動及びその成果は次のとおりで、当連結会計年度の連結研究開発費は172億円であります。
①エネルギー・情報通信カンパニー
情報通信量の飛躍的な増大に伴う光通信ネットワーク整備に向けて、需要拡大が予想される細径ファイバ、ならびに光ファイバの低損失化の開発を進めています。
5G通信やクラウドサービスなどの高速大容量通信の拡大を背景に、既存設備を有効利用し、経済的に光ファイバケーブル網を構築する技術として、世界トップレベルの細径・高密度な光ファイバケーブル「Spider Web Ribbon®/Wrapping Tube Cable™」を開発し製品化しています。2019年度は、Spider Web Ribbon®/Wrapping Tube Cable™ 技術を用いた新たな製品として、空気圧送布設に適したAir Blown WTC(AB-WTCTM)を開発し、英国の最大手通信事業社British Telecommunications plcに本格採用されました。これらの技術をもとにしたICT事業への技術的進捗と普及への貢献が認められ、一般社団法人電気通信協会の「ICT事業奨励賞」を受賞しました。今後もSpider Web Ribbon®/Wrapping Tube Cable™の技術による差別化、高機能光ケーブルを開発し、日本のみならず世界各国の光通信ネットワークの構築に貢献していきます。
これらの光ケーブルの接続点に使用される防水型光コネクタ、現場付けコネクタ等の性能を向上するためにも高精度技術が一層重要になってきています。2019年度は、通信の品質向上が図れる低反射現場付けコネクタを開発しました。光コネクタを搭載した光ケーブル成端ユニット等の開発も進め、相反することもある接続のしやすさと高性能・高機能を独自の技術で解決し、製品の魅力を高めていきます。また、伝送装置周辺で使用される光コネクタの高性能化、および、高機能化にも注力しています。フロント、バックパネル光コネクタ、取り扱い性に優れた多心レンズ型光コネクタには、これまで磨いてきた高精度技術、レンズ技術を適用すべく開発を進めています。2019年度は、通信データの大容量化に対応した伝送装置やデータセンターへの適用が見込める超低損失多心光コネクタを開発しました。また、伝送装置のバックプレーンでの光コネクタの接続時に、作業効率化が図れるバックプレーンコネクタクリーナーを開発しました。
光通信機器等で使用されるPANDA※(偏波面保持機能)ファイバにおいては、次世代の小型光通信機器に使用され始めたシリコンフォトニック(SiPh)デバイスに適したTEC-PANDAファイバ(TEC:Thermally-diffused Expanded Core)を開発しました。このファイバは、スポットサイズの小さなシリコン光導波路との接続損失を低減でき、また融着時にコア径を拡大させるTEC技術により汎用光ファイバとの接続損失も低減します。
※PANDA:Polarization-maintaining AND Absorption-reducing
将来の大容量伝送用光ファイバの有力候補であるマルチコアファイバは、光ファイバ1本に複数のコアを持つファイバで、実用化に向けた開発を進めています。2019年度は、現在の汎用光ファイバと同じ外径を有し、コアが4個のマルチコアファイバの低コスト化に注力しました。国立研究開発法人情報通信研究機構の委託を受け、日本電信電話株式会社、株式会社KDDI総合研究所、他のファイバメーカと共に「マルチコアファイバの実用化加速に向けた研究開発」を進めています。本開発の狙いは普及型MCFの早期実用化です。一方、汎用光ファイバとの接続技術も重要となっており、その入出力デバイス、接続技術などの周辺技術の確立により実用化を加速させます。今後、マルチコアファイバの実用化をめざすとともに、将来の多大なデータ通信需要に対応可能な光伝送基盤の実現に貢献していきます。
光ファイバケーブルの敷設施工の効率化のため、新型のコア調心融着接続機と多心融着接続機を開発し、上市しました。コア調心融着接続機では、施工時間の短縮と作業性の向上を実現する機能を追加しました。追加機能により、「接続された光ファイバの取り出し、補強用スリーブの位置決め、加熱器へセット」までの作業時間を従来機に比較して大幅に短縮しました。多心融着接続機では、光ファイバの位置決め部であるV溝ユニットを現地で接続心数に合わせて交換し、最適な専用機とすることができます。また、V溝に付着したゴミによる接続損失発生時にも、V溝交換により即座に対応できます。今後も引き続き融着接続技術を改善し、施工に貢献する製品を開発していきます。
金属のマーキング、溶接および切断で使用されるレーザ加工機の市場では、ビーム品質が良く、かつ小型で電力変換効率が高い光源を利用したファイバレーザへの乗り換えが加速しています。当社は、光通信用ファイバや部品で培ったコア技術をベースにファイバレーザの研究開発に注力してきました。2019年度は、高出力シングルモード・ファイバレーザで出力8kWを出力出来ることを確認し、製品化へ向け大きく前進しました。
また、こうしたフジクラのファイバレーザを支えている、半導体レーザの分野においても19年度は大きな進歩がありました。従来から高出力技術でトップを走ってきた当社は、昨年度、従来比3ポイント以上(64%→67%以上)の高効率化を達成しました。商用として世界トップレベルのこの半導体レーザを活用した高効率ファイバレーザの開発により、低消費電力社会に貢献していきます。
エネルギー問題がますます重要性を増す中で、省エネルギーの推進、環境負荷の低減、資源の有効活用につながるケーブル・機器の開発を積極的に進めています。航続距離延長や環境保護政策により、普及が進む電気自動車の充電インフラとして、急速充電器の設置数が増大しています。バッテリ容量の大容量化に伴う充電時間短縮のニーズに応えるため、従来の3~7倍の出力の充電器が実用化されており、液冷ケーブル用コネクタの規格化が検討されています。当社では、国内初となる400kWクラスの充電器に適用可能な高出力充電ケーブルおよびコネクタ接続端子の冷却技術を開発しています。大容量急速充電に対応する冷却効率に優れ、操作性・取扱い性に優れる充電ケーブルおよびコネクタの開発に注力しています。
また、電力インフラの老朽化、保全工事の担い手不足が課題となる中、リアルタイムデータに基づいたスマートメンテナンスに不可欠なセンシング技術による常時監視システムの開発を進めています。エネルギー問題がますます重要性を増す中で、省エネルギーの推進、環境負荷の低減、資源の有効活用につながるケーブル・機器の開発を積極的に進めています。
なお、当セグメントに係る研究開発費は112億円であります。
②電子電装・コネクタカンパニー
(エレクトロニクス事業部門)
民生及び産業用の電子機器に使われるFPC・メンブレン・コネクタ・電子ワイヤ・センサ・ハードディスク・サーマル製品の開発を行っています。スマートフォンに代表されるモバイル機器は、情報通信速度の高速化や高機能化が進み、周辺機器とのつながりやすさが強く要求されています。また、自動車の電動化、情報化、知能化が加速する中で、需要が増えている自動車用電子部品は、各種環境下での高い信頼性が要求されています。
FPCについては、電子機器の高密度化や高速伝送化に対応するため、高精細FPCをコア技術とした高密度実装のトータルソリューションの提供を目的として開発を進めています。高精細FPCの対応についてはセミアディティブ法の採用を進め、高速伝送化への対応については低誘電率・低誘電損失の材料を適用した製品開発を進めています。また、車載用途としては、軽量化や立体配線を実現する配線材料のニーズが高まっており、これを実現するための技術開発を進めています。加えて、高信頼性確保のため、自動化を推進し、製造での更なる工程能力向上、検査能力向上に取り組んでいます。また、FPCとアルミ材を直接接合する技術を開発し、FPCを利用した大電流アプリケーションへの適用を目指しています。
メンブレンについては、細線印刷技術や機能性ペーストの開発を進めることでパソコン、家電、車載用など従来の需要に加え、医療、ヘルスケアといった新しい市場を開拓してまいります。さらに、ストレッチャブルメンブレンでは、ウェアラブル製品への拡販や他用途への応用も進めてまいります。
コネクタについては、「小型・低背」「堅牢」「防水」「高速伝送」「作業性」をキーワードに、高機能化(高操作性、高強度、大電流、複合化など)した製品開発を推進しています。モバイル機器用途としては、Board to Boardコネクタの小型・堅牢化、バッテリ用コネクタ等の製品バラエティ拡充を進めています。産業機器用途では、屋内照明用低背型コネクタや、4K/8K放送用、5G基地局用等のコネクタの開発を進めています。また、自動車用途についても、自動車の情報化・知能化に対応すべく、高速通信用コネクタなどの開発に注力しています。
電子ワイヤについては、エレクトロニクス市場での更なる高速、高容量データ伝送の要求に答えるべく開発を進めています。モバイル機器やウェアラブル機器などの用途では、非常に限られたスペース内で、高速な信号を伝送する用途や、高屈曲耐久を有した接続のニーズがあり、これらに貢献する機器内配線用極細ケーブルアセンブリの開発を進めています。
センサについては、高精度な増幅・温度補償済み圧力センサの製品ラインナップに加え、絶対圧計測用圧力センサ、差圧計測用センサを開発しています。また、酸素センサについても、小型化製品を開発し提供しています。
サーマル製品については、スーパーコンピュータやハイエンドサーバーの高性能化に伴い、CPUの発熱密度の増加に対応した更なる冷却性能の効率化が求められており、これらのニーズに応えるべく、水冷式クーリングユニットの高性能化を進めています。また、スマートフォン等のモバイル機器向けに、薄型省スペースの熱対策部品のニーズに応えるべく、0.4mm以下の厚さの超薄型ベーパーチャンバー、超薄型ヒートパイプ製品のさらなる熱性能の向上、薄型化の開発を進めています。
なお、当セグメントに係る研究開発費は35億円であります。
(自動車事業部門)
CASEの自動車業界トレンドに対応するため、ワイヤハーネスを中心としたEDS(Electric Distribution System)の分野と、エレクトロニクス事業で培った薄型配線材の技術を応用した機能モジュールの分野で、新商品・新技術の開発を推進しています。
自動車電装R&Dセンターでは、大容量高速通信に対応するハーネスと、それを用いた車載ネットワークシステムとシミュレーション技術を開発し、ワイヤハーネスの進化を支えます。従来の12V系に加えて高電圧系も含めた電源システム全体を俯瞰し、ジョイントボックスその他の電源分配システムの電子化と高機能化をさらに進め、車両一台分の電気回路シミュレーションを活用して電源供給を最適化し、低燃費化、軽量化などのカーメーカーのニーズに応えます。ワイヤハーネスのみならず、CASEで広がりを期待される新しい領域の技術に向けた開発も推進しています。
機能モジュールの分野では、シートベルトリマインダに関する保安基準の改正により、後席シートにおけるセンサ適用の検討を進めており、後席における特有の検知・非検知スペックに対応できるセンサ構造の標準化を推進しています。
欧州顧客に対しては、ドイツのFujikura Technology Europe GmbH(FTE社)を活用し、最新トレンドを把握しつつ、現地顧客との共同プロジェクトを通して、次世代車向けの研究開発活動に注力しています。
なお、当セグメントに係る研究開発費は17億円であります。
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