有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100LTK2 (EDINETへの外部リンク)
株式会社ワコールホールディングス 事業等のリスク (2021年3月期)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)新型コロナウイルス感染症の影響
世界的な流行となった「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下:感染症とします)」は、当社グループの売上や生産に大きな影響を及ぼしております。当連結会計年度においては、当社グループでは、顧客、取引先及び社員の安全第一を考え、また更なる感染拡大を防ぐために、「企業倫理・リスク管理委員会」の下部に「新型コロナウイルス感染症対策本部」(本部長は取締役常務執行役員)を設置し感染状況に応じた対策を行っております。主要事業会社である㈱ワコールは、政府、自治体の発信・要請内容に沿い従業員の勤務体制や店舗の営業体制を決定しております。具体的には内勤者は緊急事態宣言発出時においては宣言発出期間、地域にあわせた勤務体制(在宅勤務の推進、出張、会議等の制限など)とし、店頭販売員についてはお客さま並びに従業員の健康と安全確保の為の感染予防対策が講じる事ができている前提で、生活必需品を扱う企業として、お客さまの衛生的で快適な生活を守り、安心を提供し続けるために、地域のお客さま、お取引先からご要望のあった売場(店舗)について販売員を派遣しております。また、財務基盤を強固なものとするため、金融機関の借入枠を拡大し、備えを行っております。
今後事態が更に長期化した場合、当社グループの業績及び財政状態に更なる影響を与えるリスクがあります。これらのリスクに対しコロナ終息後の「新しい生活様式」における個人消費行動の変化を見通し、WEB販売などの顧客の待ち望むサービスの強化や新たな商品の開発に努めるとともに、引き続き経費の削減に努め、新規投資も慎重に見極めるなど、経営の健全性確保に取り組んでまいります。
(2)経営環境及び経営戦略に関わるリスク
①経済環境に関するリスク
当社グループが活動する主要な国内外市場における経済環境の動向が、当社グループの売上高や業績及び財政状態に重大な影響を与えると考えられます。例えば、国内市場においては感染症の拡大による緊急事態宣言の発出による店舗休業や営業時間の短縮などにより個人消費の落ち込みが見られ、当社グループの売上高や業績に重大な影響を与えております。
②国内事業に関わるリスク
当社グループの主要事業会社である㈱ワコールの売上高の約63%は、百貨店、量販店及びその他の一般小売店への売上によるものであります。しかしながら、近年小売市場の構造変化が進んでおり、小売市場全体における百貨店、量販店及びその他一般小売店の売上シェアは低下していくことと予測されます。当連結会計年度においては、㈱ワコールと取引がある百貨店9店舗、量販店32店舗、その他一般小売店61店舗の店舗閉鎖があり、売上高で7億円減少したと見込んでおります。2021年度には、百貨店1店舗、量販店8店舗の閉鎖が既に発表されております。当社グループはこのようなリスクに対して、業態を跨いだエリア販売体制への移行や直営店・WEB販売の強化を行い対応しております。また、店舗閉鎖や倒産に伴い売掛債権が回収できなくなるリスクに対応するため、常に与信管理を徹底するとともに、店舗における在庫金額を適正な状態にしております。
国内レディスインナーウェア市場について、引き続き縮減の傾向にあります。また、これまでとは異なる競合企業が存在感を高めており、当社グループは、国内インナーウェア市場において、下着の中高級品の卸売と直営販売を行う会社との競争だけではなく、Eコマースとのチャネル間競争や、ファストファッションとも競争しております(㈱ワコールの自社WEB販売は当連結会計年度前年比155%と好調に推移しました)。今後、新規参入者により更に競争が激しくなる可能性もあります。競争の激化は、価格の下落、広告宣伝費の増加、売上高及び市場シェアの減少等につながり、当社グループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を与えるリスクがあります。
これらのリスクに対応するため、グループ中期経営計画の一項目として㈱ワコールの再成長と収益力の向上を掲げ、主要な施策として「ワコール版オムニチャネル戦略」を推進しております(今後取得したデータを活用し、お客様一人ひとりとのつながりをさらに深めるため、より「顧客起点」を反映した戦略を推進するため2021年度より当該施策を「CX戦略」と呼称します)。これはワコールが長年培ってきた接客販売の強みを、デジタル技術によりさらに革新させ、店舗とウェブを連携しながらお客様とのつながりを深め、顧客の囲い込みを図るものです。オムニチャネル戦略の中核である次世代ツール「Wacoal 3D smart&try」は百貨店を中心に当連結会計年度は16店舗設置し、今後さらに拡大する予定です。
また、㈱ワコール以外の国内グループ会社の収益力向上にも取り組み、事業の選択と集中、事業構造や人員体制の見直し、グループ内の連携の強化や他社とのアライアンス等、抜本的な改革により、収益性改善に取り組み3~5%の営業利益率確保を必達目標とするなど、グループ全体での収益力向上に取り組んでおります。
③海外事業に関わるリスク
当社グループは海外における事業も展開しており、欧米及びアジア等の海外市場での売上拡大を目指しております。海外事業に関連し次のようなリスクがあります。
グローバル取引が進む中で、国家間競争など地政学的な問題が発生し事業活動に影響を受ける可能性があります。例えば英国のEU離脱問題では英国に本社を置く子会社㈱ワコールヨーロッパは新たに付加された関税、通関手数料などにより費用が増加するなど影響を受けております。これらリスクに対応するため進出国の政治経済情勢、税制、法規制動向などの情報収集に努め、引き続き動向を注視していきます。
海外市場における消費者の趣味及び嗜好に対応できずに業績が悪化するリスクや異文化対応の遅れによって、経営及び人事管理を失敗し、当社グループの業績が悪化するリスクがあります。これらリスクに対応するため、米国、欧州、中国の主要3法人での事業の成長に向けた投資を継続しており、米国においてはミレニアル世代の獲得やEC市場での成長機会の創出と競争力の強化を目的に2020年3月期に「Intimates Online」社を買収しました。同社の取得価額は86,041千米国ドル(取得時レートで約9,348百万円)で、当該取得価額に加えて、業績の達成度合いに応じて条件付取得対価(アーンアウト対価)を現株式所有者に支払う条項を締結しました。2年後の2023年3月期には営業利益黒字化、3年後の2024年3月期には売上高100百万ドル、営業利益率12~15%の成長シナリオを期待しております。合わせて、欧州、中国においても販路の拡大や、EC事業の継続拡大を図っております。また新興国への事業拡大としてインド事業の拡大にむけ出店加速と積極的な広告宣伝投資を計画しております。
製品の調達・製造においては徐々にコストの低いアジアの国々での生産比率を増やしております。また近年は、社会・労働環境の変化に対応して、海外生産の中心を中国からASEANに移行しつつあります。反面、新規に立ち上げた生産拠点のいくつかでは、生産性や損益面での困難に直面しております。グループに与える影響は軽微であるものの、例えばミャンマーにおいては2021年2月にミャンマー国軍が武力で国家権力を掌握しその行動に対する抗議デモが発生、治安情勢が悪化しており、ミャンマーワコールは従業員の安全確保のため休業しております。そのような中、グループ中期経営計画において、競争力のある製品や材料の供給ができるグローバルな生産体制の構築を目指し、グループ横断での管理体制の確立に向けて取り組んでおります。
(3)経営管理に関わるリスク
①品質、品質表示に関するリスク
高品質な商品をグローバルに提供することができることが、当社グループの強みの一つです。不良品を販売することや商品が健康被害を及ぼすこと等により、商品回収等のコストが発生するとともに、ブランドが毀損し、高品質の商品を提供するというイメージが損なわれ、社会的信用を失い業績に影響を与えるリスクがあります。
2020年には子会社の㈱ピーチ・ジョンにおいて、ブラジャーの一部でワイヤーが飛び出す恐れがあることが判明したため、事故防止の観点から自主回収を行いました。また、品質表示等の誤表示に関する法令違反や機能性表示における行き過ぎた表現により社会的信用を失い、商品回収や表示変更作業のコストが発生するとともに、販売機会ロスとなり、業績及び財政状態に重大な影響を与えるリスクがあります。
これらリスクに対応するため、安全性ガイドラインの整備と製品開発時点の確認ルールの徹底、欠陥商品発生都度の徹底原因追求・再発防止策を策定し、各社が品質の維持向上に向けた取り組みを行うと同時に、当社グループの品質保証活動を推進するため「品質保証審議会」を設置し、その活動を通じグループ会社への水平展開を行い、全体での底上げを図っております。
②コンプライアンスに関するリスク
当社グループは国内外の法令や規制等の適用を受けており、これらの法令等に違反したり社会的要請に反する行為等があった場合は、処罰や社会的な信用の低下などにより、経済的・社会的な影響を受けるリスクがあります。当社グループでは「コンプライアンス委員会」の活動を通じて、従業員への啓発活動、内部通報制度、外部専門機関による法令ヘルスチェックなどの施策を拡充することにより、法令違反防止に努めており、また現中期経営計画においては、「ESG課題の取り組み」の中でも重要課題として位置付けております。
また、当社グループの事業領域において注力すべき点として、サプライチェーンでの労務・人権問題が挙げられます。実際に人権NPOより、当社グループの発注先である海外縫製工場における労務・人権問題について指摘を受けたこともあり、これを契機に当該課題への取り組みを開始しました。2018年4月から「CSR調達委員会」を立ち上げ、自己評価と現地監査、仕入先一覧の開示等の積極的な活動を行っております。
③個人情報に関するリスク
当社グループは事業活動上顧客等の個人情報を有しております。当社グループの中期経営計画において、主要事業会社である㈱ワコールでは「CX戦略」を成長戦略の柱と位置付け、収集した個人情報を含めたデジタルデータを基盤としたビジネス戦略を進めております。また、海外子会社各社は、顧客の個人情報を直接取得するWEBサイトを通じた販売を強化し、成長の柱と位置づけております。2014年に、何者かにより自社WEBサイトが改ざんされ1ケ月の販売停止を余儀なくされました。個人情報の保護は当社グループの事業活動上ますます重要性が増しており、専門部門としてITガバナンス部を2020年4月より発足し、個人情報の管理の強化、法規制の変更への対応、社員への教育等を含め、個人情報を外部の脅威から守るセキュリティ対策に取り組んでおります。しかし、個人情報が外部流出、改ざん、重要データの消去またはシステムに障害が生じた場合は、当社グループの事業運営や戦略に影響を与え、結果、業績及び財政状態に重大な影響を与えるリスクがあります。
④知的財産権の侵害・被侵害のリスク
当社グループの保有する知的財産権、特に当社グループのブランド及び関連する商標は、当社グループ製品への需要の喚起及び維持、また当社グループの事業価値にとって重要であると認識しております。今後、当社グループは商標その他関連する紛争に直面する可能性があり、また類似商品や他者による商標及び知的財産権侵害により、当社グループの事業に重大な影響を及ぼすリスクがあります。また、当社グループが他者の知的財産権を侵害しているという主張が行われたことがあり、今後も行われるリスクがあります。これらの主張や関連する訴訟が、当社グループの事業及び業績に重大な影響を与えるリスクがあります。また、越境EC等の拡大によるボーダーレス化に伴い、各国のブランドマネジメントだけでなくグローバルなブランド政策によってコントロールしないと、ブランド棄損に繋がり市場競争力が低下するリスクがあります。これらリスクに対応するため、「知的財産委員会」を設置するとともに、従業員への啓発活動として毎年e-ラーニングの実施、担当者の調査能力向上、社外調査会社の活用や外部契約事務所等の専門家との協業を行っております。
(4)会計・税務に関するリスク
①保有有価証券の価格変動リスク
当社グループは国内公開会社の株式やその他の有価証券を保有しております。当社は米国会計基準を採用しているため、保有有価証券の価格が変動した場合、その変動損益を連結損益計算書で認識する必要があります。これら保有有価証券の大幅な価格変動は、該当する連結会計年度における当社グループの財政状態に重大な影響を与えるリスクがあります。
当連結会計年度においては、有価証券の大幅な価格上昇により「有価証券・投資評価損益(純額)」として、10,390百万円の利益を計上しました。
現グループ中期経営計画においては、2022年3月期までに保有する政策保有株式を、2019年3月期の時価ベースで200億円以上の縮減する方針を示しており、当連結会計年度においては22億円、累計で175億円(2019年3月期時価ベース162億円)を売却しております。また中長期的な観点から保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を検証し、定期的に取締役会に報告しております。取締役会においては、検証結果を基に当社グループの中長期的な企業価値向上に資するかどうかを見極め、保有の継続、処分の判断を行っております。
②固定資産減損損失のリスク
事業環境の変化や将来の業績見通しが悪化した場合、固定資産の減損損失計上が必要となる場合があります。実際に当連結会計年度においては、当社グループで保有している不動産や業績の悪化した直営店舗で使用している有形固定資産の減損損失1,136百万円を計上しております。また、ワコールヨーロッパについては2012年の買収以降、付加価値の高い商品を開発するとともに、展開する国や流通チャネルの特性に応じたマーケティング活動を実行し、安定した成長を実現してきましたが、感染症の影響やEU離脱後の通関費用等を踏まえた今後の業績見通しを勘案して減損の有無を検討し、公正価値を再測定した結果、のれんの減損損失2,673百万円を計上しております。のれんの残存価格は、㈱ワコールヨーロッパで9,398百万円、米国Intimates Online社で11,771百万円となっております。のれんの評価は将来の経営計画を基にしているので、両社とも感染症による経済の悪化に加え、金利や税率が上昇した場合や事業伸長及びシナジーが投資時の期待を十分に上回らない場合には、公正価値の見積を見直す必要があり減損が発生する可能性があります。なお、少なくとも年に1回または減損の判定が必要となる兆候が発生した場合は減損テストを実施しております。
③退職給付債務等に関するリスク
退職給付費用及び債務は、年金資産の期待運用利回りや将来の退職給付債務算出に用いる年金数理上の仮定に基づいて算出しておりますが、有価証券の相場並びに金利環境の変化等により、実際の結果が仮定と異なる場合、又は仮定に変化があった場合には、退職給付費用及び債務が増加するリスクがあります。また、退職給付制度を改定した場合にも、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼすリスクがあります。当社グループは、国内社債の利回りに基づいて割引率を設定しております。割引率については、3.(6)「重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定」を参照ください。退職給付債務の大部分を占める主要事業会社の㈱ワコールでは「年金委員会」を設置し、四半期単位で運用資産の状況を確認し、必要な対策を講じております。
④税務に関するリスク
繰延税金資産については、現行の会計基準に従い、将来の課税所得を合理的に見積もった上で計上しておりますが、将来の課税所得見積額の変更や税制改正に伴う税率の変更等により、繰延税金資産が減少し、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。
一部の多国籍企業による国際的な租税回避行為が政治問題化したことから、税制度の改善を図るべく、G20からの委託を受けたOECDにより、2015年10月にBEPS(税源浸食と利益移転)に関する報告書が公表されました。この報告書を受けて各国において、国内税法や租税条約の改正、見直しが行われております。当社グループは、国際的な課税ルールの制定により重要な影響を受けることはないと考えておりますが、新たに定められた移転価格文書等を通し、各国の税務当局と見解の相違により、追加での税負担が生じるリスクがあります。これらのリスクに対して、税務に関する最新の情報を社内外から入手し、外部専門家の助言も受けながら対応していく体制を整えております。なお、当社は透明性の高い税務管理を行い、ステークホルダーからの信頼を得ることを目的に「税務行動指針」を策定し、2021年1月に開示を行いました。
(5)人材確保に関するリスク
当社グループにとって、人材確保は国内外を問わず重要な課題です。当社グループの“モノづくり”、店頭販売員、海外経営や最新デジタル分野の人材など、優秀な人材を確保・育成出来ないと、将来の成長や競合会社に対する優位性を作り出せず、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼすリスクがあります。これらのリスクに対応するため、ジョブ型採用その他新たな採用手段導入による人材確保と、集団型講義やオンラインなどによる専門知識研修やOJT・海外研修制度などの実地研修の充実を図り、人材の育成を行っております。
(6)災害等に関わるリスク
地震等の大規模な自然災害や疫病、紛争、テロ、暴動の発生等により、当社グループの営業拠点や生産拠点の使用が困難な状況になり、あるいは従業員の多くが被害を受けた場合や交通網の遮断・エネルギー供給の停止・通信の不通などにより、営業活動の混乱や生産や物流の遅延・停止等を受け、事業活動に重大な影響を与えるリスクがあります。また、当社グループ製品の販売が行われている地域において、地震等の大規模な自然災害や疫病、紛争、テロ、暴動の発生等が起こった場合、消費活動が停滞し、当社グループ製品の売上額が大幅に低下するリスクがあります。
特に「首都直下」「南海トラフ」等の大地震が発生した場合は、当社グループの主たる事業所や店舗が所在する大規模消費地で被害が発生することから、当社グループの事業継続に重大な影響を及ぼすと想定されます。そのため、「事故災害対策委員会」の下部としてBCPプロジェクトを発足し、全体のBCP及びBCM基本計画を作成するとともに、首都直下型地震等の特定災害に係るBCPを順次立案していきます。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)新型コロナウイルス感染症の影響
世界的な流行となった「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(以下:感染症とします)」は、当社グループの売上や生産に大きな影響を及ぼしております。当連結会計年度においては、当社グループでは、顧客、取引先及び社員の安全第一を考え、また更なる感染拡大を防ぐために、「企業倫理・リスク管理委員会」の下部に「新型コロナウイルス感染症対策本部」(本部長は取締役常務執行役員)を設置し感染状況に応じた対策を行っております。主要事業会社である㈱ワコールは、政府、自治体の発信・要請内容に沿い従業員の勤務体制や店舗の営業体制を決定しております。具体的には内勤者は緊急事態宣言発出時においては宣言発出期間、地域にあわせた勤務体制(在宅勤務の推進、出張、会議等の制限など)とし、店頭販売員についてはお客さま並びに従業員の健康と安全確保の為の感染予防対策が講じる事ができている前提で、生活必需品を扱う企業として、お客さまの衛生的で快適な生活を守り、安心を提供し続けるために、地域のお客さま、お取引先からご要望のあった売場(店舗)について販売員を派遣しております。また、財務基盤を強固なものとするため、金融機関の借入枠を拡大し、備えを行っております。
今後事態が更に長期化した場合、当社グループの業績及び財政状態に更なる影響を与えるリスクがあります。これらのリスクに対しコロナ終息後の「新しい生活様式」における個人消費行動の変化を見通し、WEB販売などの顧客の待ち望むサービスの強化や新たな商品の開発に努めるとともに、引き続き経費の削減に努め、新規投資も慎重に見極めるなど、経営の健全性確保に取り組んでまいります。
(2)経営環境及び経営戦略に関わるリスク
①経済環境に関するリスク
当社グループが活動する主要な国内外市場における経済環境の動向が、当社グループの売上高や業績及び財政状態に重大な影響を与えると考えられます。例えば、国内市場においては感染症の拡大による緊急事態宣言の発出による店舗休業や営業時間の短縮などにより個人消費の落ち込みが見られ、当社グループの売上高や業績に重大な影響を与えております。
②国内事業に関わるリスク
当社グループの主要事業会社である㈱ワコールの売上高の約63%は、百貨店、量販店及びその他の一般小売店への売上によるものであります。しかしながら、近年小売市場の構造変化が進んでおり、小売市場全体における百貨店、量販店及びその他一般小売店の売上シェアは低下していくことと予測されます。当連結会計年度においては、㈱ワコールと取引がある百貨店9店舗、量販店32店舗、その他一般小売店61店舗の店舗閉鎖があり、売上高で7億円減少したと見込んでおります。2021年度には、百貨店1店舗、量販店8店舗の閉鎖が既に発表されております。当社グループはこのようなリスクに対して、業態を跨いだエリア販売体制への移行や直営店・WEB販売の強化を行い対応しております。また、店舗閉鎖や倒産に伴い売掛債権が回収できなくなるリスクに対応するため、常に与信管理を徹底するとともに、店舗における在庫金額を適正な状態にしております。
国内レディスインナーウェア市場について、引き続き縮減の傾向にあります。また、これまでとは異なる競合企業が存在感を高めており、当社グループは、国内インナーウェア市場において、下着の中高級品の卸売と直営販売を行う会社との競争だけではなく、Eコマースとのチャネル間競争や、ファストファッションとも競争しております(㈱ワコールの自社WEB販売は当連結会計年度前年比155%と好調に推移しました)。今後、新規参入者により更に競争が激しくなる可能性もあります。競争の激化は、価格の下落、広告宣伝費の増加、売上高及び市場シェアの減少等につながり、当社グループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を与えるリスクがあります。
これらのリスクに対応するため、グループ中期経営計画の一項目として㈱ワコールの再成長と収益力の向上を掲げ、主要な施策として「ワコール版オムニチャネル戦略」を推進しております(今後取得したデータを活用し、お客様一人ひとりとのつながりをさらに深めるため、より「顧客起点」を反映した戦略を推進するため2021年度より当該施策を「CX戦略」と呼称します)。これはワコールが長年培ってきた接客販売の強みを、デジタル技術によりさらに革新させ、店舗とウェブを連携しながらお客様とのつながりを深め、顧客の囲い込みを図るものです。オムニチャネル戦略の中核である次世代ツール「Wacoal 3D smart&try」は百貨店を中心に当連結会計年度は16店舗設置し、今後さらに拡大する予定です。
また、㈱ワコール以外の国内グループ会社の収益力向上にも取り組み、事業の選択と集中、事業構造や人員体制の見直し、グループ内の連携の強化や他社とのアライアンス等、抜本的な改革により、収益性改善に取り組み3~5%の営業利益率確保を必達目標とするなど、グループ全体での収益力向上に取り組んでおります。
③海外事業に関わるリスク
当社グループは海外における事業も展開しており、欧米及びアジア等の海外市場での売上拡大を目指しております。海外事業に関連し次のようなリスクがあります。
グローバル取引が進む中で、国家間競争など地政学的な問題が発生し事業活動に影響を受ける可能性があります。例えば英国のEU離脱問題では英国に本社を置く子会社㈱ワコールヨーロッパは新たに付加された関税、通関手数料などにより費用が増加するなど影響を受けております。これらリスクに対応するため進出国の政治経済情勢、税制、法規制動向などの情報収集に努め、引き続き動向を注視していきます。
海外市場における消費者の趣味及び嗜好に対応できずに業績が悪化するリスクや異文化対応の遅れによって、経営及び人事管理を失敗し、当社グループの業績が悪化するリスクがあります。これらリスクに対応するため、米国、欧州、中国の主要3法人での事業の成長に向けた投資を継続しており、米国においてはミレニアル世代の獲得やEC市場での成長機会の創出と競争力の強化を目的に2020年3月期に「Intimates Online」社を買収しました。同社の取得価額は86,041千米国ドル(取得時レートで約9,348百万円)で、当該取得価額に加えて、業績の達成度合いに応じて条件付取得対価(アーンアウト対価)を現株式所有者に支払う条項を締結しました。2年後の2023年3月期には営業利益黒字化、3年後の2024年3月期には売上高100百万ドル、営業利益率12~15%の成長シナリオを期待しております。合わせて、欧州、中国においても販路の拡大や、EC事業の継続拡大を図っております。また新興国への事業拡大としてインド事業の拡大にむけ出店加速と積極的な広告宣伝投資を計画しております。
製品の調達・製造においては徐々にコストの低いアジアの国々での生産比率を増やしております。また近年は、社会・労働環境の変化に対応して、海外生産の中心を中国からASEANに移行しつつあります。反面、新規に立ち上げた生産拠点のいくつかでは、生産性や損益面での困難に直面しております。グループに与える影響は軽微であるものの、例えばミャンマーにおいては2021年2月にミャンマー国軍が武力で国家権力を掌握しその行動に対する抗議デモが発生、治安情勢が悪化しており、ミャンマーワコールは従業員の安全確保のため休業しております。そのような中、グループ中期経営計画において、競争力のある製品や材料の供給ができるグローバルな生産体制の構築を目指し、グループ横断での管理体制の確立に向けて取り組んでおります。
(3)経営管理に関わるリスク
①品質、品質表示に関するリスク
高品質な商品をグローバルに提供することができることが、当社グループの強みの一つです。不良品を販売することや商品が健康被害を及ぼすこと等により、商品回収等のコストが発生するとともに、ブランドが毀損し、高品質の商品を提供するというイメージが損なわれ、社会的信用を失い業績に影響を与えるリスクがあります。
2020年には子会社の㈱ピーチ・ジョンにおいて、ブラジャーの一部でワイヤーが飛び出す恐れがあることが判明したため、事故防止の観点から自主回収を行いました。また、品質表示等の誤表示に関する法令違反や機能性表示における行き過ぎた表現により社会的信用を失い、商品回収や表示変更作業のコストが発生するとともに、販売機会ロスとなり、業績及び財政状態に重大な影響を与えるリスクがあります。
これらリスクに対応するため、安全性ガイドラインの整備と製品開発時点の確認ルールの徹底、欠陥商品発生都度の徹底原因追求・再発防止策を策定し、各社が品質の維持向上に向けた取り組みを行うと同時に、当社グループの品質保証活動を推進するため「品質保証審議会」を設置し、その活動を通じグループ会社への水平展開を行い、全体での底上げを図っております。
②コンプライアンスに関するリスク
当社グループは国内外の法令や規制等の適用を受けており、これらの法令等に違反したり社会的要請に反する行為等があった場合は、処罰や社会的な信用の低下などにより、経済的・社会的な影響を受けるリスクがあります。当社グループでは「コンプライアンス委員会」の活動を通じて、従業員への啓発活動、内部通報制度、外部専門機関による法令ヘルスチェックなどの施策を拡充することにより、法令違反防止に努めており、また現中期経営計画においては、「ESG課題の取り組み」の中でも重要課題として位置付けております。
また、当社グループの事業領域において注力すべき点として、サプライチェーンでの労務・人権問題が挙げられます。実際に人権NPOより、当社グループの発注先である海外縫製工場における労務・人権問題について指摘を受けたこともあり、これを契機に当該課題への取り組みを開始しました。2018年4月から「CSR調達委員会」を立ち上げ、自己評価と現地監査、仕入先一覧の開示等の積極的な活動を行っております。
③個人情報に関するリスク
当社グループは事業活動上顧客等の個人情報を有しております。当社グループの中期経営計画において、主要事業会社である㈱ワコールでは「CX戦略」を成長戦略の柱と位置付け、収集した個人情報を含めたデジタルデータを基盤としたビジネス戦略を進めております。また、海外子会社各社は、顧客の個人情報を直接取得するWEBサイトを通じた販売を強化し、成長の柱と位置づけております。2014年に、何者かにより自社WEBサイトが改ざんされ1ケ月の販売停止を余儀なくされました。個人情報の保護は当社グループの事業活動上ますます重要性が増しており、専門部門としてITガバナンス部を2020年4月より発足し、個人情報の管理の強化、法規制の変更への対応、社員への教育等を含め、個人情報を外部の脅威から守るセキュリティ対策に取り組んでおります。しかし、個人情報が外部流出、改ざん、重要データの消去またはシステムに障害が生じた場合は、当社グループの事業運営や戦略に影響を与え、結果、業績及び財政状態に重大な影響を与えるリスクがあります。
④知的財産権の侵害・被侵害のリスク
当社グループの保有する知的財産権、特に当社グループのブランド及び関連する商標は、当社グループ製品への需要の喚起及び維持、また当社グループの事業価値にとって重要であると認識しております。今後、当社グループは商標その他関連する紛争に直面する可能性があり、また類似商品や他者による商標及び知的財産権侵害により、当社グループの事業に重大な影響を及ぼすリスクがあります。また、当社グループが他者の知的財産権を侵害しているという主張が行われたことがあり、今後も行われるリスクがあります。これらの主張や関連する訴訟が、当社グループの事業及び業績に重大な影響を与えるリスクがあります。また、越境EC等の拡大によるボーダーレス化に伴い、各国のブランドマネジメントだけでなくグローバルなブランド政策によってコントロールしないと、ブランド棄損に繋がり市場競争力が低下するリスクがあります。これらリスクに対応するため、「知的財産委員会」を設置するとともに、従業員への啓発活動として毎年e-ラーニングの実施、担当者の調査能力向上、社外調査会社の活用や外部契約事務所等の専門家との協業を行っております。
(4)会計・税務に関するリスク
①保有有価証券の価格変動リスク
当社グループは国内公開会社の株式やその他の有価証券を保有しております。当社は米国会計基準を採用しているため、保有有価証券の価格が変動した場合、その変動損益を連結損益計算書で認識する必要があります。これら保有有価証券の大幅な価格変動は、該当する連結会計年度における当社グループの財政状態に重大な影響を与えるリスクがあります。
当連結会計年度においては、有価証券の大幅な価格上昇により「有価証券・投資評価損益(純額)」として、10,390百万円の利益を計上しました。
現グループ中期経営計画においては、2022年3月期までに保有する政策保有株式を、2019年3月期の時価ベースで200億円以上の縮減する方針を示しており、当連結会計年度においては22億円、累計で175億円(2019年3月期時価ベース162億円)を売却しております。また中長期的な観点から保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を検証し、定期的に取締役会に報告しております。取締役会においては、検証結果を基に当社グループの中長期的な企業価値向上に資するかどうかを見極め、保有の継続、処分の判断を行っております。
②固定資産減損損失のリスク
事業環境の変化や将来の業績見通しが悪化した場合、固定資産の減損損失計上が必要となる場合があります。実際に当連結会計年度においては、当社グループで保有している不動産や業績の悪化した直営店舗で使用している有形固定資産の減損損失1,136百万円を計上しております。また、ワコールヨーロッパについては2012年の買収以降、付加価値の高い商品を開発するとともに、展開する国や流通チャネルの特性に応じたマーケティング活動を実行し、安定した成長を実現してきましたが、感染症の影響やEU離脱後の通関費用等を踏まえた今後の業績見通しを勘案して減損の有無を検討し、公正価値を再測定した結果、のれんの減損損失2,673百万円を計上しております。のれんの残存価格は、㈱ワコールヨーロッパで9,398百万円、米国Intimates Online社で11,771百万円となっております。のれんの評価は将来の経営計画を基にしているので、両社とも感染症による経済の悪化に加え、金利や税率が上昇した場合や事業伸長及びシナジーが投資時の期待を十分に上回らない場合には、公正価値の見積を見直す必要があり減損が発生する可能性があります。なお、少なくとも年に1回または減損の判定が必要となる兆候が発生した場合は減損テストを実施しております。
③退職給付債務等に関するリスク
退職給付費用及び債務は、年金資産の期待運用利回りや将来の退職給付債務算出に用いる年金数理上の仮定に基づいて算出しておりますが、有価証券の相場並びに金利環境の変化等により、実際の結果が仮定と異なる場合、又は仮定に変化があった場合には、退職給付費用及び債務が増加するリスクがあります。また、退職給付制度を改定した場合にも、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼすリスクがあります。当社グループは、国内社債の利回りに基づいて割引率を設定しております。割引率については、3.(6)「重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定」を参照ください。退職給付債務の大部分を占める主要事業会社の㈱ワコールでは「年金委員会」を設置し、四半期単位で運用資産の状況を確認し、必要な対策を講じております。
④税務に関するリスク
繰延税金資産については、現行の会計基準に従い、将来の課税所得を合理的に見積もった上で計上しておりますが、将来の課税所得見積額の変更や税制改正に伴う税率の変更等により、繰延税金資産が減少し、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。
一部の多国籍企業による国際的な租税回避行為が政治問題化したことから、税制度の改善を図るべく、G20からの委託を受けたOECDにより、2015年10月にBEPS(税源浸食と利益移転)に関する報告書が公表されました。この報告書を受けて各国において、国内税法や租税条約の改正、見直しが行われております。当社グループは、国際的な課税ルールの制定により重要な影響を受けることはないと考えておりますが、新たに定められた移転価格文書等を通し、各国の税務当局と見解の相違により、追加での税負担が生じるリスクがあります。これらのリスクに対して、税務に関する最新の情報を社内外から入手し、外部専門家の助言も受けながら対応していく体制を整えております。なお、当社は透明性の高い税務管理を行い、ステークホルダーからの信頼を得ることを目的に「税務行動指針」を策定し、2021年1月に開示を行いました。
(5)人材確保に関するリスク
当社グループにとって、人材確保は国内外を問わず重要な課題です。当社グループの“モノづくり”、店頭販売員、海外経営や最新デジタル分野の人材など、優秀な人材を確保・育成出来ないと、将来の成長や競合会社に対する優位性を作り出せず、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼすリスクがあります。これらのリスクに対応するため、ジョブ型採用その他新たな採用手段導入による人材確保と、集団型講義やオンラインなどによる専門知識研修やOJT・海外研修制度などの実地研修の充実を図り、人材の育成を行っております。
(6)災害等に関わるリスク
地震等の大規模な自然災害や疫病、紛争、テロ、暴動の発生等により、当社グループの営業拠点や生産拠点の使用が困難な状況になり、あるいは従業員の多くが被害を受けた場合や交通網の遮断・エネルギー供給の停止・通信の不通などにより、営業活動の混乱や生産や物流の遅延・停止等を受け、事業活動に重大な影響を与えるリスクがあります。また、当社グループ製品の販売が行われている地域において、地震等の大規模な自然災害や疫病、紛争、テロ、暴動の発生等が起こった場合、消費活動が停滞し、当社グループ製品の売上額が大幅に低下するリスクがあります。
特に「首都直下」「南海トラフ」等の大地震が発生した場合は、当社グループの主たる事業所や店舗が所在する大規模消費地で被害が発生することから、当社グループの事業継続に重大な影響を及ぼすと想定されます。そのため、「事故災害対策委員会」の下部としてBCPプロジェクトを発足し、全体のBCP及びBCM基本計画を作成するとともに、首都直下型地震等の特定災害に係るBCPを順次立案していきます。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00590] S100LTK2)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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