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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R9AH (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 ヤマハ株式会社 研究開発活動 (2023年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

当社グループは、ヤマハが目指すものとして「世界中の人々のこころ豊かなくらし」を、企業理念として「感動 を・ともに・創る」を掲げています。これを支えるために、「製品」と「サービス」分野で新たな価値を創出するべく、コア技術の更なる高度化と拡張のための研究開発を進めております。取り組んでいる研究開発の領域は、アコースティック技術、デジタル技術を中心に、音そのものに留まらず、基礎から応用まで、音の活用を支える技術分野に大きく広がっています。
当連結会計年度は、「アコースティック技術とデジタル技術の融合でヤマハならではの新たな製品を生み出す」、「LTV戦略を加速、外部連携・UGC(User Generated Content)等を活用し音楽生活をより愉しむためのサービスを展開」、「先進的な技術と豊かな感性で新たな感動体験を創造」をテーマに研究開発を進めました。
「ヤマハならではの新たな製品を生み出す」では、「トランスアコースティックピアノ」と「サイレントピアノ」の新モデルを開発いたしました。
「音楽生活をより愉しむためのサービスを展開」では、BGM作成アプリ「AmBeat」を開発いたしました。
「新たな感動体験を創造」では、AI技術を用いた新合成エンジン「VOCALOID:AI」を搭載したVOCALOIDの新バージョン「VOCALOID6」を開発いたしました。
当社グループの研究開発体制は、楽器事業については当社楽器事業本部、及びYamaha Guitar Group,Inc.の開発部門、音響事業については当社音響事業本部、NEXO S.A.、Steinberg Media Technologies GmbHの開発部門、その他の事業については当社電子デバイス事業部、ゴルフHS事業推進部及びヤマハファインテック株式会社の開発部門、全社横断のR&Dについては当社研究開発統括部が担う形で構成しております。
当連結会計年度における主な成果をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は25,057百万円であります。

(1) 楽器事業
当セグメントでは、幅広い技術を融合し、個性際立つ商品を開発しております。
ピアノ関連では、アコースティックピアノならではの音やタッチ感はそのままに、デジタル技術との融合により音量調節や消音が可能な「トランスアコースティックピアノ」と「サイレントピアノ」の新モデルを開発いたしました。「トランスアコースティックピアノ」、「サイレントピアノ」は、アコースティックピアノでの演奏体験に加えて、大きな音が出せない環境でも快適に演奏を楽しんでいただけるピアノです。新たに開発した「トランスアコースティックピアノTA3」、「サイレントピアノSH3」は、新開発の「アーティキュレーション・センサーシステム」を搭載し、ピアノ本来のタッチ感を損なう事なく、演奏者が思い描く細やかなニュアンスの表現を正確に検出し、忠実に再現することができます。また、独自の音源技術により、タッチの細かな違いで音色の変化を弾き分けられ、より本格的な演奏表現が可能となりました。その他、BluetoothⓇ(AUDIO/MIDI)がすべての機種に搭載され、当社のアプリ「スマートピアニスト」とのスムーズな連携により、快適な演奏体験を提供します。
管弦打楽器関連では、フリューゲルホルンの新製品として、「YFH-8310Z」と「YFH-8315G」を開発しました。新しいフリューゲルホルンでは、新設計のバルブケーシングを採用して剛性を高め、奏者が吹き込む息を管体がしっかり支え、効率良く音に変換することで、粒立ちの良い音を実現しています。また、ピストンの仕組みが違うトランペットと、バルブケーシングで吹奏感や音色の方向性を揃えることで、トランペットとフリューゲルホルンの持ち替えもスムーズに行えます。チューニングで抜き差しするリードパイプを固定するためのスクリューは、「YFH-8310Z」は真鍮、「YFH-8315G」はフォスファーブロンズと異なる材料を使い、形状もサイズも異なっており、2つのモデルの個性を際立たせる要素の一つになっています。

電子楽器関連では、演奏性・可搬性に優れたライブパフォーマンス向けステージキーボードの新シリーズとして、「CK61」「CK88」を開発しました。ステージキーボードとしては、高品位なピアノサウンドが特徴のステージピアノ「CPシリーズ」や、オルガン音源・FM音源も搭載したステージキーボード「YCシリーズ」が、多くのアーティストのステージで認められてきました。新たに開発した「CK61」「CK88」は「CPシリーズ」と「YCシリーズ」のエッセンスを受け継いだ新シリーズで、ライブで活躍する300種類以上の多彩な音色を搭載し、直感的な操作で、素早くサウンドメイキングができるOne-to-Oneインターフェースも備えています。当社のステージキーボードとして初めてスピーカーを内蔵しているため、本体1台でマイクと接続して弾き語りをしたり、デバイスとBluetoothⓇ接続してオーディオを再生しながら演奏したりすることも可能です。軽量ボディで可搬性にも優れ、電池でも駆動することから、ステージからストリートまで多彩なシーンで演奏をお楽しみいただけます。また、新開発のAI合成エンジンがナチュラルで豊かな表現力のある歌声を実現する、バーチャルボーカル制作の総合ソリューションを提供するソフトウェア「VOCALOID6」を開発しました。イメージにあった歌声をいつでも簡単に作り出すことが可能な「VOCALOID」を用いて制作された楽曲は「ボカロ曲」と呼ばれ、新世代の音楽として全世界のリスナーから支持され、高い人気を誇っています。4年ぶりの新バージョンとなった本製品では、AI技術を用いた新合成エンジン「VOCALOID:AI」を搭載し、よりナチュラルで表現力豊かな歌声合成を実現しました。アクセントやビブラートといった歌唱表現を素早く調整できる編集ツールを採用したほか、豊かな表現を生み出す制作手法である「ダブリング」や「ハモリ」を瞬時に作る機能を追加しました。VOCALOID:AI対応のVOCALOID6専用ボイスバンクでは、クリエイター自身の歌唱データを基に歌い方や歌詞を再現できたり、一つのボイスバンクで日本語や英語を織り交ぜた歌詞を流暢な発音で歌わせたりできるようになりました。言葉の壁を越えた作曲活動やボーカルパートの新たな制作方法を提案することで、クリエイターの制作意欲を後押しします。
なお、カジュアル管楽器Venova「YVS-120/YVS-140」が「iFデザインアワード2022」を、更に「YVS-140」は「アジアデザイン賞2022」の大賞を受賞いたしました。さらに、歌声合成技術/ソフトウェア「VOCALOID」は、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2022年度グッドデザイン賞」において、長年にわたり生活者に支持され続ける優れたデザインに贈られる「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞しました。
楽器事業の研究開発費は10,382百万円であります。

(2) 音響機器事業
当セグメントでは、社会の変化にも対応しながら、多様なニーズに応える商品を開発しております。
ホームシアター・オーディオ関連では、「5000シリーズ」の名を冠する、独自の「オルソダイナミックドライバー」を搭載したフラッグシップヘッドホン「YH-5000SE」を開発しました。アーティストが音楽に込めた想いの全てを表現し人の感情を動かす音 = TRUE SOUNDを実現するために、音の正確性を追求した「オルソダイナミックドライバー」、繊細かつ、しなやかな広帯域表現を叶える大容量ハウジング、音楽の躍動感をありのままに再現する超軽量薄型ダイヤフラム、音の密度感と開放感の両立を可能にした日本製圧延平畳織ステンレスフィルターなど、当社が考える最高の技術、最適なマテリアルを集結しました。音・音楽の多様な製品を手掛けるオーディオブランドであるヤマハのフラッグシップヘッドホンとして、ハイグレードなリスニングを追求されるお客様に、心深く残る特別な音楽体験を提供します。
業務用音響機器関連では、96kHzの高分解能を実現し、最大256chの入出力に拡張可能な音響空間を創造するシグナルプロセッサー「DME7」を開発しました。「DME7」は、劇場やコンサート会場などの音質が重要視されサウンドシステム設計者が音響をデザインするシーンにおいて、高度な音の演出表現を実現し上質な音響体験を提供するシグナルプロセッサーのフラッグシップモデルです。豊富なDSPコンポーネントを標準搭載し、それらを組み合わせて自在に配置することで、用途に合わせて柔軟にシステムを構築できるフリーコンフィグレーション方式を採用しています。サンプリング周波数は96kHzの高分解能を実現し、標準で64chのDante入出力、拡張キット「DSEK-DME-DX64」を適用することで、最大256chの入出力に対応します。さらに、新たなシステムのデザイン機能を追加した、設置環境や運用方法にあわせたコントロールパネルの作成や、機器のリモートコントロール、モニタリングが可能なアプリケーションソフトウェア「ProVisionaireシリーズ」によるシステム全体の制御にも対応しています。また、ポータブルPAシステムの新モデルとして、バッテリー駆動に対応し、5chミキサーと多彩なエフェクトを搭載したワンボックス型のオールインワンPAシステム「STAGEPAS 200」を開発しました。「STAGEPAS 200」は、30センチ・ワンボックス型のコンパクトな筐体に高い音質・クラス最大級の音圧を実現したスピーカーとアンプ、本格的なミキシング機能を持つミキサーに加え、シンプルな操作性を備えた、小規模なライブや各種イベントでの音楽やスピーチの拡声に最適なポータブルPAシステムです。シリーズで初めてバッテリー駆動による最大10時間の連続稼働に対応し、電源のない場所でも使用できます。
音楽制作機器・ソフトウェア関連では、直感的な操作と独自の音声処理で没入感の高いゲーム・ボイスチャット体験を提供する、ゲームストリーミングミキサー「ZG01」を開発しました。「ZG01」は、PCやゲーム機、スマートフォンマイク・ヘッドセットを接続し、独立した各ツマミによる直感的な操作によって、各入力音源の音量を瞬時に調節しながらボイスチャットやゲーム配信が行える、ゲーム配信・ボイスチャット用の小型ミキサーです。ゲームのサラウンドサウンドをヘッドホンで体験できる「ZG SURROUND」や、プレイ場面やプレイスタイルに最適な音質へ補正する「FOCUS MODE/EQ」、快適なボイスチャット体験を提供する「3D CHAT SPACE」などの独自の音声処理を搭載。さらにプレイヤー本人が体験するこれらの音響効果は配信視聴者にもそのまま届け、没入感を共有することもできます。また、動画や写真をアップロードするだけで、イメージに合うオリジナルBGMを自動生成するBGM生成アプリ「AmBeat」を開発しました。「AmBeat」は、動画や写真のデータをアプリ上にアップロードするだけで、そのビジュアルコンテンツのイメージやシチュエーションにマッチした音楽を自動で作成するアプリです。イメージと音楽の結び付けには、ヒトの感覚や感性を言語化して科学的に分析する独自の「感性研究」の成果を応用しています。さらに、自動作成されたBGMを、アプリの画面での簡単な操作で自由にアレンジすることも可能です。できあがったBGM付きの動画や写真は、音楽付きの思い出として保存したり、SNSなどで投稿したりして活用いただけます。
ネットワーク機器関連では、業務用のVPNルーター「RTXシリーズ」で好評な機能を継承・強化し、新たに10ギガビットにも対応した10ギガアクセスVPNルーター「RTX1300」を開発しました。近年、テレワークやWeb会議が普及してきていることに加え、ウェビナーやオンライン研修などデータ量の大きいコンテンツを利用するユーザーが増えたことで、社内のネットワークに流れるトラフィックが急増しています。それに伴い、Wi-Fi 6対応の無線LANアクセスポイントや10ギガビット/マルチギガビット対応のスイッチが配備され、LANの高速化が進んでいますが、WAN側の高速化は未対応の拠点が多いという課題があります。その解決のために、中規模ネットワークにおけるWANの高速化を実現するルーターへの需要が高まっています。「RTX1300」は、「RTXシリーズ」の好評な機能を継承・強化しつつ、急増するトラフィックに耐えうるハードウェア性能を持ったVPNルーターです。10ギガビットに対応したコンボポート(LANポートとSFP+スロット)を2ポート搭載しており、現在普及しつつある10ギガビット光回線を使った高速インターネット接続が可能です。また、10ギガビット/マルチギガビット対応のスイッチやWi-Fi 6に対応した無線LANアクセスポイントと組み合わせることで、LAN/WAN両方の高速化を実現します。
なお、ヘッドホン「YH-L700A」が、国際的なデザイン賞「iFデザインアワード2022」と「アジアデザイン賞2022」の「Gold Award(金賞)」を受賞しました。また、ライブストリーミングUSBマイクロフォン「AG01」、業務用インターホンシステム「スマホでインターホンpowered by SoundUD」、当社がUSEN-NEX GROUPの株式会社USENと共同で取り組む業務用アナウンスシステム「音と文字で伝わる「SoundUDの多言語アナウンスシステム」」の3件が、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2022年度グッドデザイン賞」を受賞しました。中でも「SoundUD多言語アナウンスシステム」は、特に高い評価を得たデザインに与えられる「グッドデザイン・ベスト100」に選出されました。また、「スマホでインターホン powered by SoundUD」および「SoundUDトリガーパネル」が、一般財団法人 国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)が主催する「IAUD国際デザイン賞2022」において、インタラクションデザイン部門の金賞を受賞しました。また、リモート応援システム「Remote Cheerer powered by SoundUD」が、革新的な優れたサービスを表彰する「第4回 日本サービス大賞」(主催:公益財団法人日本生産性本部 サービス産業生産性協議会)において「優秀賞」を受賞しました。
音響機器事業の研究開発費は10,283百万円であります。


(3) その他の事業
電子デバイス事業関連では、立体音響の圧倒的な没入感を車の全シートで楽しめる技術を開発し、量産に先駆けて自動車メーカーに向けたデモを開始しました。自動運転やインターネット常時接続などの変革により、自動車は今まで以上に快適なプライベート空間に変化していくはずです。また、リモートコミュニケーションの進化は、「メタバース」のキーワードと共に、デジタル空間の体験の機会が今後さらに広がることを示唆しています。移動手段からセカンドリビングへと車が進化する中で、エンターテインメントで新しいサウンド体験を実現する提案の一つが、マルチチャンネルを生かしたオーディオ体験です。近年、Dolby Atmos等に対応した、立体音響を体験できる映像・楽曲コンテンツの配信サービスが普及してきました。従来のステレオ2チャンネルのコンテンツと異なり、これらのコンテンツには空間を積極的に活用した立体表現が盛り込まれており、様々な方向から音が聴こえてきます。このコンテンツはオーディオコンポーネントやヘッドホンで楽しむことができますが、音の反射や共鳴が顕著で複雑な形状をした車室内では、製作者の狙いを精度高く再現することが困難なうえ、リスニングポイントが限定される問題がありました。今回開発した技術を使うことで、全てのシートで立体音響の圧倒的な没入感を体感することができます。
ゴルフ事業関連では、「inpres」の新シリーズとして、「inpres DRIVESTAR」を開発しました。「inpres DRIVESTAR」は、独自技術による圧倒的な飛びと直進性を実現しながら、シャープで構えやすい正統派のヘッド形状を両立した「inpres」の新シリーズです。アベレージゴルファーから上級者まで幅広い層をターゲットとする一方で、プロゴルファーもその性能と感性を認めています。ドライバーは、独自の「BOOSTBOX」によるボール初速アップと、ウェイトを最適に配置する「COUNTERWEIGHT SYSTEM」によるルール限界クラスの横慣性モーメントが、圧倒的な飛びと直進性を生み出します。アイアンは、飛びの最大効率化を実現する「3POINT RESONANCE TECHNOLOGY」の搭載と、高い強度を持つステンレス系新素材「X37」を採用した精密鋳造による1.1mmの極薄ソールとの相乗効果で打点の反発性能をアップさせました。また、キャビティ部に46gものタングステンを搭載した低重心設計による高弾道も実現しています。これらの性能を搭載しながら、アイアンらしい形状も両立させた、飛距離性能も形状も妥協しない革新的アイアンです。
その他の事業の研究開発費は4,392百万円であります。

当社グループの当連結会計年度末における日本での特許及び実用新案の合計所有件数は2,184件であります。

事業等のリスク株式の総数等


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