有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R4FV (EDINETへの外部リンク)
株式会社横河ブリッジホールディングス 研究開発活動 (2023年3月期)
当社グループの研究開発は、橋梁事業に関連する鋼構造の基礎技術の取得および革新を中心とし、さらに、保有する要素技術をエンジニアリング関連事業や先端技術事業に応用し、商品開発や新技術開発を実施しています。また、グループ各社が保有する環境や情報処理等の分野における固有技術に関連して、事業化や商品化につながる研究開発を実施しています。
研究開発の体制は、当社の総合技術研究所が基盤技術の調査研究や事業化前の研究開発を行い、各事業会社が自社商品の改良開発や事業化検討を行うことを基本としています。さらに、当社グループとしての研究開発全体を統括し、方向性、予算、実施状況を管理する機関として、技術総括室を設置しています。なお、当社グループの研究開発スタッフは52名であり、全従業員の2.6%に相当します。また、当連結会計年度のセグメント別研究開発費は、橋梁事業410百万円、エンジニアリング関連事業134百万円、先端技術事業30百万円となり、総額は575百万円です。
当連結会計年度における主要な研究開発活動は次のとおりです。
(1)橋梁事業に関する研究開発
① 高速道路を中心に大規模更新・修繕事業が最盛期となっており、現場の安全性向上や工期短縮に有効な技術の需要が高まっています。これに応える新技術として、床版取替工法「STEEL-C.A.P.工法」(日本製鉄(株)との共同開発)や中小スパン橋梁の架替工法「NYラピッドブリッジ」(日鉄エンジニアリング(株)との共同開発)を開発しました。STEEL-C.A.P.工法は北九州市の緑川橋でパイロット工事を実施し、狭隘な施工条件での急速施工が実現可能であることを確認しました。NYラピッドブリッジは、中国池田インターチェンジ~宝塚インターチェンジ間橋梁更新工事の小浜ランプ橋での適用が決定し、現地施工を進めています。
② 鋼橋の建設現場の生産性向上、床版取替工事における交通規制時間短縮の要望に応える技術として、「プレキャスト合成床版」の開発を進めています。施工性に優れた合理的な継手構造を採用し、過年度に実施した性能試験や実物大施工試験に加えて、輪荷重走行試験や主桁を含んだ大型の載荷試験を実施し十分な性能を確認しています。今後は、採用が決定している新設橋梁の工事で施工性の向上効果の確認を行います。
③ 既設RC床版の大規模更新工事における施工の効率化と急速施工を目的としたプレキャスト壁高欄(商品名:ラピッドガードフェンス)の開発を継続して行っています。これまでに標準部と鉛直接合部についてはプレキャスト製品の基準試験に合格していますが、場所打ち仕様としていた端部構造についてもプレキャスト化のニーズが高まったため、プレキャスト化の構造改良を行い必要な性能試験が完了しました。
④ 場所打ちコンクリート床版の品質向上を目的として、バイブレータで締固めた位置の履歴を記録することが可能なコンクリート締固め管理システムを開発しました。締固め作業者および施工管理者がリアルタイムで締固め位置を確認できるため、コンクリート床版を確実に均等に締め固めることが可能となり、コンクリート床版の品質が向上します。本技術は、実橋のコンクリート床版工事にて採用されました。
⑤ ステンレス鋼材の橋梁への適用検討として、鋼橋の防食上の弱点である桁端部などに、防食性の高いステンレス鋼材を部分的に適用することを目的とした検討を実施しました。昨年度実施した性能試験に加えて、今年度は異種材料溶接部の疲労試験を行い、実橋への適用が可能であることを確認しました。
⑥ 吊橋や斜張橋などにおけるケーブル張力を簡易にモニタリングすることを目的として、高精度のワイヤレス加速度計を使用し、常時微動からケーブル張力を自動推定するシステムを開発しました。架設または供用時のケーブル張力を定期的に把握することができ、異常があった場合には管理者に通知が自動発信され迅速な対応ができるため、施工時や供用時の安全性が向上します。
(2)エンジニアリング関連事業に関する研究開発
① システム建築(商品名:yess建築)については、物流倉庫や工場等の生産施設の他、店舗・事務所など商業施設に向けた用途拡大と2階建て建物の販売拡大の強化を図っています。従来の2階建て建物は個別に設計するオーダーメイド型でしたが、事務所を有する工場、倉庫等に向けた、総2階建てと部分2階建てを標準化することで工期短縮を実現しました。また、北海道等の多雪地域の市街地近郊で要望の多い、屋根からの落雪が無く防水性の高い屋根工法をyess建築に導入し受注拡大を図っています。この他、外装部材の見映えや仕上りの改善および外装部材の防火性能評価の取得、2階建て向け構造部材の開発、yess建築に適した基礎工法「1本杭工法」の取り組みを進めています。商品開発の取り組みに加え、設計仕様や製作方法の標準化を推進し、工場および施工現場での生産性および施工性の向上と商品の品質改善に取り組んでいます。
② シールドトンネル工事では施工延長の増大に伴い、施工の省力化、時間短縮が求められています。これらのニーズに応える商品として、ボルトレス継手を適用した六面鋼殻合成セグメントを商品化しました。セグメント組み立てと同時に継手嵌合が完了することで組み立て時間を大幅に短縮し、急速施工が可能になります。商品化にあたり、実物大の載荷試験を行い、継手の挙動や破壊状態を確認し、実工事への適用が可能であることを確認しました。
③ 近年、地下鉄の新線建設工事の増大が予想されています。その駅舎となる地下空間を支える鋼管柱についても、多量の需要が見込まれています。これらの需要に安定的かつ確実に応えられるよう、鋼管柱の支承板に鋼板を2枚以上重ね合わせた積層構造(鋼製積層型支承板)を適用した新型鋼管柱を東京地下鉄(株)と共同で開発・商品化しました。
④ 防食性能に優れ高強度が特徴の二相ステンレス鋼を適用した新商品の検査路「NSスマート検査路」は、河川の管理橋や工場内点検通路での採用の他、橋梁用の検査路についても引き合いを頂き、徐々に実績を積んでいるところです。
⑤ 新型の船舶上架施設の開発を継続しています。新構造のリフターテーブルを組み込んだ試作機を用いて性能試験を実施しています。今後も顧客の要望に応えられるより良い製品を目指し改善を継続してまいります。
(3)先端技術事業に関する研究開発
① 国の基準である道路橋示方書に対応した鋼橋設計システムにおいて、各種設計計算例や関連規定等への対応を進めております。また、システムの適用範囲の拡大やユーザから寄せられる要望へ応えるため、機能追加・改善を続けています。
② DX推進の取り組みに向けた要請が高まっています。当社グループでは、製作部門の生産性向上を目指し鋼橋設計システムから鋼橋製作情報システムへのデータ連携機能の開発に取り組んでいます。これは、国交省が推進し、建設業全体で取り組んでいる設計から維持管理までのデータ連携、活用に対応するものです。その他、3Dモデルデータなどを活用した施工計画業務の支援システム、VR(複合現実)、AR(拡張現実)や画像認識AI(人工知能)技術による検査システムなど、施工部門の生産性向上や品質確保を支援するシステムの検討および開発を進めています。
研究開発の体制は、当社の総合技術研究所が基盤技術の調査研究や事業化前の研究開発を行い、各事業会社が自社商品の改良開発や事業化検討を行うことを基本としています。さらに、当社グループとしての研究開発全体を統括し、方向性、予算、実施状況を管理する機関として、技術総括室を設置しています。なお、当社グループの研究開発スタッフは52名であり、全従業員の2.6%に相当します。また、当連結会計年度のセグメント別研究開発費は、橋梁事業410百万円、エンジニアリング関連事業134百万円、先端技術事業30百万円となり、総額は575百万円です。
当連結会計年度における主要な研究開発活動は次のとおりです。
(1)橋梁事業に関する研究開発
① 高速道路を中心に大規模更新・修繕事業が最盛期となっており、現場の安全性向上や工期短縮に有効な技術の需要が高まっています。これに応える新技術として、床版取替工法「STEEL-C.A.P.工法」(日本製鉄(株)との共同開発)や中小スパン橋梁の架替工法「NYラピッドブリッジ」(日鉄エンジニアリング(株)との共同開発)を開発しました。STEEL-C.A.P.工法は北九州市の緑川橋でパイロット工事を実施し、狭隘な施工条件での急速施工が実現可能であることを確認しました。NYラピッドブリッジは、中国池田インターチェンジ~宝塚インターチェンジ間橋梁更新工事の小浜ランプ橋での適用が決定し、現地施工を進めています。
② 鋼橋の建設現場の生産性向上、床版取替工事における交通規制時間短縮の要望に応える技術として、「プレキャスト合成床版」の開発を進めています。施工性に優れた合理的な継手構造を採用し、過年度に実施した性能試験や実物大施工試験に加えて、輪荷重走行試験や主桁を含んだ大型の載荷試験を実施し十分な性能を確認しています。今後は、採用が決定している新設橋梁の工事で施工性の向上効果の確認を行います。
③ 既設RC床版の大規模更新工事における施工の効率化と急速施工を目的としたプレキャスト壁高欄(商品名:ラピッドガードフェンス)の開発を継続して行っています。これまでに標準部と鉛直接合部についてはプレキャスト製品の基準試験に合格していますが、場所打ち仕様としていた端部構造についてもプレキャスト化のニーズが高まったため、プレキャスト化の構造改良を行い必要な性能試験が完了しました。
④ 場所打ちコンクリート床版の品質向上を目的として、バイブレータで締固めた位置の履歴を記録することが可能なコンクリート締固め管理システムを開発しました。締固め作業者および施工管理者がリアルタイムで締固め位置を確認できるため、コンクリート床版を確実に均等に締め固めることが可能となり、コンクリート床版の品質が向上します。本技術は、実橋のコンクリート床版工事にて採用されました。
⑤ ステンレス鋼材の橋梁への適用検討として、鋼橋の防食上の弱点である桁端部などに、防食性の高いステンレス鋼材を部分的に適用することを目的とした検討を実施しました。昨年度実施した性能試験に加えて、今年度は異種材料溶接部の疲労試験を行い、実橋への適用が可能であることを確認しました。
⑥ 吊橋や斜張橋などにおけるケーブル張力を簡易にモニタリングすることを目的として、高精度のワイヤレス加速度計を使用し、常時微動からケーブル張力を自動推定するシステムを開発しました。架設または供用時のケーブル張力を定期的に把握することができ、異常があった場合には管理者に通知が自動発信され迅速な対応ができるため、施工時や供用時の安全性が向上します。
(2)エンジニアリング関連事業に関する研究開発
① システム建築(商品名:yess建築)については、物流倉庫や工場等の生産施設の他、店舗・事務所など商業施設に向けた用途拡大と2階建て建物の販売拡大の強化を図っています。従来の2階建て建物は個別に設計するオーダーメイド型でしたが、事務所を有する工場、倉庫等に向けた、総2階建てと部分2階建てを標準化することで工期短縮を実現しました。また、北海道等の多雪地域の市街地近郊で要望の多い、屋根からの落雪が無く防水性の高い屋根工法をyess建築に導入し受注拡大を図っています。この他、外装部材の見映えや仕上りの改善および外装部材の防火性能評価の取得、2階建て向け構造部材の開発、yess建築に適した基礎工法「1本杭工法」の取り組みを進めています。商品開発の取り組みに加え、設計仕様や製作方法の標準化を推進し、工場および施工現場での生産性および施工性の向上と商品の品質改善に取り組んでいます。
② シールドトンネル工事では施工延長の増大に伴い、施工の省力化、時間短縮が求められています。これらのニーズに応える商品として、ボルトレス継手を適用した六面鋼殻合成セグメントを商品化しました。セグメント組み立てと同時に継手嵌合が完了することで組み立て時間を大幅に短縮し、急速施工が可能になります。商品化にあたり、実物大の載荷試験を行い、継手の挙動や破壊状態を確認し、実工事への適用が可能であることを確認しました。
③ 近年、地下鉄の新線建設工事の増大が予想されています。その駅舎となる地下空間を支える鋼管柱についても、多量の需要が見込まれています。これらの需要に安定的かつ確実に応えられるよう、鋼管柱の支承板に鋼板を2枚以上重ね合わせた積層構造(鋼製積層型支承板)を適用した新型鋼管柱を東京地下鉄(株)と共同で開発・商品化しました。
④ 防食性能に優れ高強度が特徴の二相ステンレス鋼を適用した新商品の検査路「NSスマート検査路」は、河川の管理橋や工場内点検通路での採用の他、橋梁用の検査路についても引き合いを頂き、徐々に実績を積んでいるところです。
⑤ 新型の船舶上架施設の開発を継続しています。新構造のリフターテーブルを組み込んだ試作機を用いて性能試験を実施しています。今後も顧客の要望に応えられるより良い製品を目指し改善を継続してまいります。
(3)先端技術事業に関する研究開発
① 国の基準である道路橋示方書に対応した鋼橋設計システムにおいて、各種設計計算例や関連規定等への対応を進めております。また、システムの適用範囲の拡大やユーザから寄せられる要望へ応えるため、機能追加・改善を続けています。
② DX推進の取り組みに向けた要請が高まっています。当社グループでは、製作部門の生産性向上を目指し鋼橋設計システムから鋼橋製作情報システムへのデータ連携機能の開発に取り組んでいます。これは、国交省が推進し、建設業全体で取り組んでいる設計から維持管理までのデータ連携、活用に対応するものです。その他、3Dモデルデータなどを活用した施工計画業務の支援システム、VR(複合現実)、AR(拡張現実)や画像認識AI(人工知能)技術による検査システムなど、施工部門の生産性向上や品質確保を支援するシステムの検討および開発を進めています。
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