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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R207 (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 オムロン株式会社 事業等のリスク (2023年3月期)


従業員の状況メニュー研究開発活動

(1) グローバルな事業活動を支える統合リスクマネジメント
当社グループでは、統合リスクマネジメントというグループ共通のフレームワークでリスクマネジメントを行っています。経営・事業を取り巻く環境変化のスピードが上がり、不確実性が高くなる中で変化に迅速に対応するためには、リスクへの感度を上げ、リスクが顕在化する前に察知し、打ち手を講じていく必要があるためです。
現場だけでは対処できない環境変化から生じる問題を、現場と経営が力を合わせて解決する活きたリスクマネジメントを目指し、グローバルでPDCAサイクルを回しながら、当活動の質の向上を図っています。
「SF2030」を実現していくため、企業理念やルールを守りつつ、いかに効率的、効果的で迅速なリスク判断を現場ができる仕組みを構築するかという点も重要なテーマとして、取組みを進めています。

(2) 統合リスクマネジメントの仕組みと体制
統合リスクマネジメントの枠組みは、内部統制システムの下、グローバルリスクマネジメント・法務本部が主管するオムロングループルール(OGR)(注1)「オムロン統合リスクマネジメントルール」にまとめ、グループ経営における位置づけを明確にしています。また、リスクマネージャを本社機能部門、ビジネスカンパニー、海外の地域統括本社、国内外の各グループ会社で任命し(約160名)、経営と現場が一体となってグローバルの活動を推進しています。

主な活動は次の3点です。
・環境変化をタイムリーに把握して、関係者で共有し、適時に影響評価を行うこと
・定期的に、グローバルにリスクを分析して重要リスクを洗い出し、対策をとること
・リスクが顕在化し、危機が発生した場合は、即時に報告し危機対策を講じること

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主要なリスクマネージャを構成員とする企業倫理・リスクマネジメント委員会(原則年4回開催)においては、重要なリスクの発生状況、環境変化、リスク対策の状況について議論・共有するとともに、グループ全体のリスク評価を行っています。また、危機が発生した場合には、速やかに経営報告されリスクのランクに応じて危機対策本部を通じて対応を行っています。これらリスクマネジメントの活動状況については、適宜、執行会議や取締役会に報告するとともに、内部監査部門による内部監査を受けています。


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(注1)当社グループでは、公正かつ透明性の高い経営を実現する経営基盤として、グループ共通の「オムロングループルール(OGR)」を制定しています。OGRは、リスクマネジメントの他、会計・資金、人財、情報セキュリティ、品質保証等の主な機能に対し制定されています。環境変化等を適宜・適切にルールへ反映するため、毎年見直しを行っています。

(3) グループ重要リスクとその分析
当社グループでは、「SF2030」において、「新たな社会・経済システムへの移行」に伴い生じる社会的課題を解決するため、社会的課題に影響を与える因子を踏まえ、「事業のトランスフォーメーション」と「企業運営・組織能力のトランスフォーメーション」に取り組んでおり、これらを遂行する中で対処すべき重要な要素を、リスクと捉えています。
リスクのうち、当社グループを運営する上で、グループの存続を危うくするか、重大な社会的責任が生じうるリスクおよび重要なグループ目標の実現を阻害するリスクを「グループ重要リスク」に位置付け、そのうち最重要であるリスクをSランク、重要であるリスクをAランクと設定し、対策の実行状況やリスク状況の変化をモニタリングしています。「グループ重要リスク」に対して適切な対策が講じられない場合、重大な社会的責任が生じたり、事業戦略の失敗につながり、結果的に企業価値が喪失する可能性があります。


2022年度末に実施した当社グループのリスク分析に基づくグループ重要リスクのテーマ、リスクのランクおよび今後の動向に対する認識は下表の通りです。これらのリスクは、適切かつ十分な対策が取られなかった場合、長期ビジョン目標の実現、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があるため、投資家の皆様の判断にも重要な影響を及ぼす可能性がある事項と考えています。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない又は重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月23日)現在において当社グループが判断したものです。


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① S 製品の安定供給
リスクシナリオ環境認識コンテナ不足・通関の遅延等によるサプライチェーンの混乱は収束に向かい、経済環境の
不透明性はあるものの、今後も社会・産業構造の変化による消費や投資の拡大が見込まれています。一方で、半導体等の部材不足は長期化し、物流コストの増加が懸念される状況は継続しています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。
・半導体製造装置・電気自動車(EV)・二次電池等成長業界への注力
・グローバルに需要が増加する血圧計等の販売強化
影響拡大する製品需要に的確に応えていくことは、新たな社会価値創出、事業機会となります。
一方、部材の調達量が必要量に届かない場合や、物流リードタイムが大幅に長くなった場合、製品供給が低下する可能性があります。その結果、売上減少や事業競争力の低下につながるリスクがあります。
対応体制グローバルのビジネスバリューチェーンの最適化を経営計画の重点取組みの一つとして、
グローバル購買・品質・物流本部と各ビジネスカンパニーが推進しています。
・関連OGR:購買ルール
取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。
・地産地消を基本スタンスとした生産の移管や分散
・重要製品における部材調達の現地化・複線化
[具体的なリスク対応例:部材逼迫への対応]
部材逼迫の状況が継続する中、調達性の高い部品への切り替えや部品点数の低減を目的とした製品設計の変更、外部EMSとの戦略パートナーシップ締結等の対応を行いました。

② S 地政学
リスクシナリオ環境認識米中関係やロシア・ウクライナ情勢などを巡る各国・地域の政策により、グローバルビジ
ネスの環境は複雑さを増しています。特に半導体等重要物資の安定供給や先端技術開発の促進、輸出や投資への規制等 経済安全保障政策は、多国間枠組みの形成・活用を含め急速に進展しています。今後、政治的対立や人権問題、紛争リスクの高まりにより各種措置は更に拡大する可能性もあり、これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。
・中国・アジア等の主要工場からグローバル市場への製品供給
・米国等におけるロボット等 先端技術に対する投資や事業拡大
・経済安全保障政策の対象製品に関わる顧客への販売、金融・交通等 社会インフラに関する事業の推進
影響グローバルでのサプライチェーン再編等の動向は、新たな社会価値創出、事業機会となり
ます。一方、市場変化への対応が十分でなかった場合、当社グループへの需要が減少し、また、新たな法規制への対応が適切に行われなかった場合には、輸出規制や制裁違反等が発生する可能性があります。その結果、売上減少・戦略の見直しや重大な行政罰、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。
対応体制事業対応方針については、取締役会や執行会議等の経営会議体にて議論し、決定していま
す。法規制対応については、各主管部門が統括し、例えば、輸出規制はグローバルリスクマネジメント・法務本部が輸出管理全社委員会のもと、グローバルに安全保障取引管理を行っています。
・関連OGR:統合リスクマネジメントルール・安全保障取引管理ルール
取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。
・地政学リスク影響を低減する中長期的な生産・研究開発等の体制検討と推進
・グローバルの政治・経済情勢や法規制動向のモニタリング、経済制裁等に対する影響分析と対応
[具体的なリスク対応例:ロシア・ウクライナ情勢]
社長を本部長とする全社対策本部を設置し、対応しています。2022年8月には、事業の持続可能性を慎重に精査した結果、ロシアにおける制御機器事業と電子部品事業の無期限停止を決定しました。ヘルスケア事業に関しては、血圧計やネブライザー等 医療機器に限定し、供給を継続しています。



③ S IT・情報セキュリティ
リスクシナリオ環境認識社会経済活動の急速なデジタル化は、データに基づく経営判断やIoT機器を中心とした新た
な製品・サービスの開発等 企業運営に変革をもたらしています。グローバルにデータ流通の基盤が整備されていく一方で、サイバー攻撃のリスクはますます高まり、また、プライバシー保護や経済安全保障の観点から個人データや技術情報等 重要情報の取扱いや移転について各国で規制の強化も進んでいます。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。
・サプライチェーンも含むグローバルのシステムによる事業運営
・新たな経営システムの構築を目的とした「コーポレートITシステムプロジェクト」
・ヘルスケア事業における遠隔診療サービス等 「モノとサービス」を組み合わせたビジネスモデルの推進
影響医療におけるビッグデータ活用等の動向は、新たな社会価値創出、事業機会となります。
一方、サイバー攻撃等 情報セキュリティリスクへの対応が十分でなかった場合、当社グループの事業活動や製品・サービス提供の停止や情報の漏えい、また、グローバルの個人データ規制について、特に国外移転対応が適切に行われなかった場合には、法令違反が発生する可能性があります。その結果、売上減少や重大な行政罰、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。
対応体制基本方針や施策については、統括担当取締役の監督のもと、情報セキュリティ、製品セキュ
リティ、個人情報管理の領域ごとに、各本社機能本部長が執行責任者として統制・管理しています。各領域を横断する課題については、統括担当取締役を議長とする「サイバーセキュリティ統合会議」を随時開催し、解決しています。さらに昨今の環境認識の下、より経営レベルで推進の方向付けを行うために、新たに社長を議長とする「情報セキュリティ戦略会議」にて優先課題と戦略を議論し、決定する体制を整備しました。実行面においても、サイバーセキュリティ統括担当役員として、グローバルビジネスプロセス&IT革新本部長を議長とし、グローバル各局のIT責任者が参画する「情報セキュリティ推進会議」を通じて施策を推進・管理していきます。また、個人データについては、グローバルリスクマネジメント・法務本部長を責任者として、各国法令動向やオムロングループの状況を把握し、法規制対応の強化を図っています。
・関連OGR:IT統制ルール・情報セキュリティルール
取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。
・グローバル標準のフレームワークであるNIST-CSF(注1)に準拠した評価と対策の強化
・外部専門機関を通じた包括的な脅威情報の収集とグループ内への対策の展開
・インシデント対応オフィスによる事故発生時の迅速な報告と被害最小化に向けた対応
・情報リテラシー向上のための社員教育・サイバー攻撃訓練の実施
・Webサイトの脆弱性診断と改善の実行
・グローバルでの個人情報規制への対応体制構築
[具体的なリスク対応例:IT機器の常時監視と不審挙動検知体制の整備・運用]
当社の情報セキュリティ体制に対する外部評価を踏まえ、サイバー攻撃を検知する対策を重点的に強化しました。社内のIT機器の24時間365日監視をグローバルで行い、不正アクセス等の攻撃を検知した際には、速やかに対処しています。
(注1)NIST-CSF:米国国立技術標準研究所(NIST)が2014年に発行したサイバーセキュリティフレームワーク(CST)。汎用的かつ体系的なフレームワークで、米国だけでなく世界各国が準拠を進めている。


④ S 品質
リスクシナリオ環境認識品質は企業に対する社会的信頼の基盤です。新技術を活用した新規性の高い製品やサービス
においても、高い安全性や正確性の確保が求められ、AI利用や製品セキュリティに対する新たな法規制等も検討・制定が進んでいます。また、人の健康や環境負荷低減に対する社会的要請はますます高まり、有機フッ素化合物(PFAS)等をはじめとする化学物質の含有やリサイクル、表示等に関する規制が各国で厳格化しています。これらの外部環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。
・不具合発生時に火災や事故、設備の停止等につながる制御機器やエネルギーソリューション製品の展開
・様々な国の製品安全や化学物質、サイバーセキュリティ等の法規則が適用されるグローバル製品の展開
・製造現場のデータ活用サービスi-BELT等「モノとサービス」を組み合わせたビジネスモデルの推進
影響新たな技術や製品安全等の高い基準にグローバルで対応した品質の確保は、新たな社会価値
創出、事業機会につながります。一方、製品やサービスの設計・検査の不備や、品質不具合発生時等の顧客対応や報告が十分でなかった場合、グローバルの法規制・規格等への準拠が適切に行われなかった場合には、当社グループ製品の大規模リコール、製品の生産・流通の停止等が生じる可能性があります。その結果、損失の発生や売上減少、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。
対応体制社長を最高責任者とする品質保証体制を構築し、「品質第一」を基本とする「品質基本方針」
のもと、グローバル購買・品質・物流本部が推進しています。重大な品質問題が発生した場合は、取締役会の監督のもと、迅速かつ適切に対応を行っています。
・関連OGR:設計・生産ルール、品質保証ルール、製品品質リスク管理ルール
取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。
・ISO9001等(ISO13485:医療機器産業、IATF16949:自動車産業)品質マネジメントシステム(QMS)
の取得・ビジネスカンパニーQMS社内監査
・サービス事業に適合したQMS構築
・リスクが高い技術(リチウムイオン電池、パワーデバイス等)に関する品質技術確立
・製品セキュリティ体制強化(外部からの脆弱性情報収集と対応(PSIRT)・セキュリティ監視活動等)
・製品環境や安全関連の法規制・規格の動向の把握、影響評価を行う管理体制の強化
・品質相談窓口の設置・運用、現場品質点検・品質コンプライアンス研修の実施
[具体的なリスクへの対応例:品質問題発生時の対応]
重大な品質問題が発生した際に、経営トップ層に迅速かつ正確にリスクを報告する制度を整備し、運用しています。社会システム事業で生じた蓄電池ユニットの発火リスクに対しては、安心してご使用いただくために、当社の蓄電池ユニットの一部についてソフトウェア更新および無償交換を進めています。

⑤ S 事業継続リスク(自然災害・感染症)
リスクシナリオ環境認識2020年より続いた新型コロナウイルス感染症の緊急事態が収束し、社会経済活動が正常化す
る一方で、新たな感染症の発生や洪水・豪雨、巨大地震等の自然災害により、社会が機能不全に陥る可能性がグローバルで継続しています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。
・グローバルの様々な国や地域に存在するサプライヤーや生産拠点
・緊急時においても継続が求められる社会インフラや人の健康管理に使用される製品・サービスの提供
・防災・減災需要に対するエネルギーソリューションビジネスの展開
影響企業に対する事業継続の要請や社会のレジリエンスを高める取組みは、新たな社会価値創出
、事業機会となります。一方、予期できない災害等が発生した場合、社会インフラ・経済活動の大規模停止、自社工場の生産停止、重要サプライヤーからの長期にわたる部品供給停止等により、事業活動の一部停止や縮小等が生じる可能性があります。その結果、売上減少やブランド価値の棄損につながるリスクがあります。
対応体制人身の安全、社会インフラの維持、復興への全面協力等を定めた基本方針のもと、各ビジネ
スカンパニーと本社機能部門が連携し、生産、購買調達、物流、ITを含めた事業継続計画を整備しています。
・関連OGR:統合リスクマネジメントルール・購買ルール
取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。
・有事を想定したシミュレーション・訓練
・社員の安否確認システムの運用、事業所での非常食や飲料水の備蓄
・サプライヤーの生産地情報の一元管理、代替え生産拠点の評価体制整備
・緊急時のエスカレーションルート・影響を把握する仕組みの整備
[具体的なリスク対応例:新型コロナウイルス感染症]
新型コロナウイルス感染症については、2020年2月に社長を対策本部長とする対策本部を設置し、社員の健康と安全の確保、該当拠点地域への感染拡大防止を最優先とし対応を行っていましたが、2023年3月の日本政府による方針決定を踏まえ、季節性インフルエンザ等と同等の対応に移行しています。


⑥ S サステナビリティ課題(環境・人権)
リスクシナリオ環境認識持続可能な社会の実現に向け、環境や人権課題に対して、自社だけでなくバリューチェー
ン全体を通じて、企業が責任を果たすことが求められています。また、企業価値評価・投資活動に反映させるため、企業のサステナビリティ課題への取組みに対する開示要請は年々高まっており、内容の第三者保証を法規制化する動きも進んでいます。
環境については、温暖化に起因する洪水や干ばつ等の頻発化により生じる食料・水不足等は地球レベルでの社会課題となっています。グローバル各国でカーボンニュートラルに向けた政策が加速する中、企業に対する温室効果ガス排出量の削減やトレーサビリティの確保等の要請も拡大しています。
人権については、強制労働、児童労働、低賃金や未払い、長時間労働、安全や衛生が不十分な労働環境等の是正が社会課題となっています。デューディリジェンスによるサプライチェーンの可視化や人権侵害懸念国・地域からの輸入禁止等により、人権の尊重を法規制で担保する取組みが進んでいます。また、AIの活用等技術革新による新たな人権課題も生じています。
サステナビリティ課題への対応は企業にとってのビジネスライセンスとなってきており、これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。
・制御機器事業における生産性とエネルギー効率を高める生産現場オートメーションの実現
・社会システム事業におけるエネルギー制御技術の進化による再生可能エネルギーの普及
・電子部品事業におけるカーボンフットプリント削減に繋がる部品の開発・提供
・中国・アジアを含めグローバルの事業拠点とサプライチェーン
・AIを活用した製品・サービスの研究開発・提供
影響脱炭素や人権尊重に貢献する製品やサービスに対するニーズの高まりは、新たな社会価値
の創出と事業成長を実現する機会となります。一方、多くの企業が社会課題の解決に挑む中、戦略と実行の成否は事業競争力に直結します。また、販促活動においていわゆるグリーンウオッシングといわれる不適切な開示を行った場合、バリューチェーン上の人権課題に適切な対応を行わなかった場合やAIに対する法規制等に準拠せず製品やサービスを通じて差別などの人権問題を発生させた場合には、社会的信用が失われ、その結果、取引停止・製品の開発中止や戦略の見直し、ブランド価値の棄損につながる可能性があります。
対応体制環境・人権課題への対応については、取締役会決議により制定されたオムロン環境方針、
オムロン人権方針に基づいた活動を行っています。具体的な執行体制としては、社長CEOから権限委譲されたサステナビリティ推進担当役員の責任の下、サステナビリティ推進室が中心となって取組みを推進し、自社領域はグローバル人財総務本部長、サプライヤー領域はグローバル購買・品質・物流本部長、事業戦略領域は各ビジネスカンパニー長がそれぞれ責任を持って対応しています。
・関連OGR:環境経営ルール、HRMルール、購買ルール
取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。
[環境]
・Scope1・2、Scope3カテゴリー11ごとに目標を設定した温室効果ガスの削減の加速
・回収・リサイクルの拡大、循環型の原材料調達、再資源化率の最大化等による循環経済への移行
・TCFD提言に沿った情報を含むサステナビリティ課題にかかる情報開示
[人権]
・国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」に沿った人権デューディリジェンスの実施
・グローバルでの人権救済メカニズムの構築
・サプライヤーに対するサステナブル調達ガイドラインの提示・遵守状況確認
・RBA(注1)アセスメントツールを活用したリスク評価
・AIに関する情報収集および利用方針・QMSルールへの組み込み検討
[具体的なリスク対応例:人権救済窓口としての内部通報制度の拡充]
当期に人権救済メカニズム構築の一環として、グローバルの内部通報制度の対象者をサプライヤーに拡大しました。内部通報窓口には、職場でのハラスメント等人権に関する通報も寄せられていますが、社内規程に基づき適切に対応しています。
(注1)Responsible Business Allianceの略。電子業界を中心とするグローバルなCSRアライアンス。
※サステナビリティ課題への対応の詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)オムロンのサステナビリティの考え方及び取組み、(2)気候変動への対応」をご参照ください。


⑦ S グローバルコンプライアンス
リスクシナリオ環境認識気候変動や高齢化等の社会課題に対する取組みはグローバルで加速し、企業の果たす役割が
重要になる中、公正な取引に対する社会的要請もますます高まっています。国際機関や各国政府により反競争法的行為や贈賄防止等に対する法規制は厳格化するとともに、ITやAI等技術の進化やアライアンス等によるイノベーションの推進等に対応した規制の検討や運用も進んでいます。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。
・各国政府の許認可を含む製品・サービスのグローバル展開
・様々なビジネスパートナーとの共創による新たな製品やビジネスモデルの開発
影響企業のイノベーションに対する期待は、新たな社会価値創出、事業機会となります。一方、
公正な取引に関する法規制等に違反したものと当局が発見または判断した場合には、重大な行政罰、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。
対応体制企業倫理・コンプライアンスを含む内部統制としての対応方針は、取締役会で議論し決定し
ています。「オムロングループマネジメントポリシー」のもと企業倫理リスクマネジメント委員会を設置し、活動を展開しています。
・関連OGR:倫理行動ルール
取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。
・毎年10月のグローバル企業倫理月間等による定期的なコンプライアンス教育
・グローバル各社における反競争法的行為・贈収賄リスク対策を含むガバナンス自己評価
・グローバル内部通報制度の運用
[具体的なリスクへの対応例:グローバル企業倫理月間におけるコンプライアンス教育]
2022年度の企業倫理月間では、グローバル共通活動としてトップメッセージ配信やカルテル研修の他、長期ビジョンと地域のリスクをふまえて各地域統括本社がテーマを設定し、e-learningやリモートでの研修を開催しました。

⑧ A 人財・労務
リスクシナリオ環境認識キャリアに関する価値観が多様化し、これまで以上にグローバルで人財の流動化が進んでい
ます。また、IT人財をはじめ先端技術を保有する技術系人財など、希少なスキルや経験を持つ人財の獲得競争も激化しています。このような環境では、人財から選ばれる人的資本経営の実行がより重要となっています。加えて、近年は社会から人的資本の情報開示が求められるようになっています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの事業環境に対して大きな影響があります。
・AI、ロボティクス等の先端技術分野における研究開発
影響スペシャリティを備えた多様な人財が集い、一人ひとりが主体性を持って能力を発揮し続け
ける人財づくり・環境づくりは企業価値向上の原動力となります。一方、人財戦略の効果が十分でない場合は、新たな人財の採用だけでなく、従業員の流出につながるリスクがあります。加えて、人的資本の情報開示が不適切な場合、行政からの指導、投資家からの信頼低下により、ブランド価値の毀損にもつながる可能性があります。
対応体制重要な人財戦略については、取締役会・執行会議にて議論し、決定しています。2023年度よ
り設置されたCHRO(最高人事責任者)の下、グローバル人財総務本部が中心となり施策を実行しています。
・関連OGR:HRMルール
取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。
・成長意欲のある人財への投資
・役割責任・スペシャリティを定めるジョブ型人事制度の導入
・社会課題解決の成果を分かち合う取組み・制度(中期連動株式報酬制度等)
・企業理念を全社員に浸透させ、共感と共鳴の拡大を促す取組み「TOGA」の実行
※人財・労務リスクへの対応の詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本に関する取組み」をご参照ください。

⑨ A 会計・税務
リスクシナリオ環境認識適正な財務報告と税務コンプライアンスは企業活動の基本です。企業のグローバル化や取引
のボーダーレス化が加速し、新たなビジネスモデルやサービスが生まれる中で、会計基準は高度化し税制も複雑化しています。また、各国間の協調・連携が進み企業に対する税の透明性に対する要請も高まっています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。
・グローバルでの顧客との取引・グループ間取引
・「モノ」に加え「モノ」と「サービス」の組み合わせによる多様なサービス展開
影響グローバルの会計基準への準拠と税務手続きに対する信頼の確保は、新たな社会価値創出、
事業機会につながります。一方、新サービスや事業等を行うに際して、会計処理が適切に行われなかった場合、また、各国の租税法や移転価格税制、関税法、および当局の執行動向に適切な対応が行えなかった場合、決算修正、多額の追徴や和解金の支払い、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。
対応体制財務報告に係る内部統制の基本的枠組み、取締役会で承認した「税務方針」(注1)のもと、
グローバル理財本部を中心に、会計・税務の適正性を担保するための体制・ルールを整備し運用しています。
・関連OGR:会計・資金ルール、不正統制ルール、J-SOX推進ルール
取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。
・外部専門家等を活用した会計基準の定期的な情報収集と影響等の調査・対応
・OECDの各種報告書や新しい国際課税ルールの整備状況などを踏まえた国際税務に係る方針の見直し
・現地法人と連携した各国・地域における税制や当局の執行状況の変化への対応
・関税コンプライアンス体制およびモニタリングの強化
(注1)「税務方針」については下記をご参照ください。
https://sustainability.omron.com/jp/governance/tax/
⑩ A M&A・投資
リスクシナリオ環境認識社会課題を解決する手段として、テクノロジーの進化が求められる中、スタートアップ企
業を始めとする技術力のある企業とのアライアンス、M&A、出資を通じたイノベーションの加速が期待されています。一方で、投資先の業績・評価の変動に加え、経済安全保障政策による投資規制やIT等新たな分野における独占禁止法の運用強化等の動きもあります。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。
・ポートフォリオマネジメントのもとアライアンスや事業売却も含むM&A・投資の推進
・新規事業の創出等のための、オムロンが捉える社会的課題に共感・共鳴しあえるパートナーとの共創
影響戦略的なM&A・投資を通じた新たな経営資源の獲得は、社会価値創出、事業機会となります。
一方、計画やデューディリジェンスが不十分であったり、PMI(Post Merger Integration)が適切に行われなかった場合には、想定したシナジー効果や提携が計画通り進まない可能性があります。その結果、多額の減損損失の計上や計画の大幅な見直しにつながるリスクがあります。
対応体制M&A・投資の方針と実行は、経営ルールに定める責任権限に基づき取締役会等の経営会議体
にて議論、決定し、案件ごとに、ビジネスカンパニーと本社部門および外部専門家から構成されるプロジェクトチームにより推進しています。
・関連OGR:経営ルール
取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。
・事業戦略に基づいたM&A・投資候補の探索、評価
・対象企業の財務内容や契約内容の確認等の詳細な事前審査・デューディリジェンス
・取締役会における、買収や出資後の経済効果の具体的目標進捗のレビュー(少なくとも年に1回)
[具体的なリスクへの対応例:投資先の評価]
出資先である株式会社JMDCやAliveCor,Inc.について、投資先の業績や取り巻く環境の評価及びディスカウント・キャッシュ・フロー法による評価額と帳簿価額との比較など、定性的要素および定量的要素を総合的に勘案し、評価損失の要否を判断しています。



⑪ A 知的財産
リスクシナリオ環境認識社会課題を解決しながら持続的に企業価値を向上するためには、強みのある知的財産・無形
資産を形成した上で価値創造ストーリーと連結することが必要不可欠となり、また、技術開発やビジネスモデルの構築においてオープンイノベーションやアライアンスが加速しています。一方で、知的財産を巡る企業や国家間の競争や対立も激化するとともに、スタートアップ企業との事業連携における公正取引上の課題も指摘されています。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。
・ロボティクス、センシング、パワーエレクトロニクス、AI・データ解析等の注力する技術領域
・データヘルスケア、食生産のオートメーション、製造現場のDX支援等の新規事業創造
影響知的財産・無形資産への投資を促進し競争力の源泉とする動向は、新たな社会価値創出、事
業機会となります。一方、その取得や保護が十分でなかった場合、技術・ノウハウの流出やブランドの模倣等が発生し、事業競争力を喪失する可能性があります。また、特許等の侵害や不正使用に関する紛争が発生した場合には、当社グループの製品・サービスの提供停止や巨額の損害賠償請求・ロイヤリティの支払い等が生じる可能性があります。その結果、損失の発生や売上減少、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。
対応体制知的財産戦略については定期的に取締役会にて報告・議論されています。基本方針に基づく
知的財産活動は、技術・知財本部を主管として実行しています。
・関連OGR:知財管理ルール
取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。
・IPランドスケープを活用して研究テーマの方向性決定や協業先選定の確度を高める取組み
・事業や研究開発と連動させた知的財産戦略を策定・実行し、強みのある知的財産権を蓄積
・研究開発および設計にあたっての第三者の知的財産権調査
・第三者の当社グループへの知的財産権の侵害に対する分析・評価と、権利行使の強化
・オンライン取引も含む模倣品摘発活動、悪意を持った当社ブランド名と類似した商標権取得の阻止

⑫ A 新興国における事業展開
リスクシナリオ環境認識インド等の新興国市場においては、人口増加によって消費拡大が見込まれ、各種産業が成長
している中、様々な社会課題も顕在化しています。一方で、一部の新興国、地域においては法による統治機能が脆弱であったり、政情が不安定であることから、汚職や腐敗等が社会問題化する場合があります。これらの環境変化は、以下を含む当社グループの長期ビジョン・事業環境に対して大きな影響があります。
・ヘルスケア事業において成長ポテンシャルの高いインドへの進出等
影響新興国における需要拡大を的確に捉えることは、新たな社会価値創出、事業機会となりま
す。一方、これらの国、地域における事業運営において、ガバナンス不全や社内管理の不備により、不正会計などの法規制・コンプライアンス違反が発生する可能性があり、その結果、重大な行政罰、ブランド価値の棄損につながるリスクがあります。
対応体制グループの内部統制システムのもと、OGR等に基づくグループ会社におけるガバナンス体制の
構築と運用を行っております。
・関連OGR:法人運営ルール、会計・資金ルール、IT統制ルール、内部監査ルール等
取組具体的には、以下を含む対策を推進しています。
・各機能主管部門におけるグローバルでの牽制とモニタリング
・地域統括本社毎のリスクマネジメントにより、エリア特性に応じた重要リスクへの対応
・リスクアプローチに基づく内部監査と改善指導

従業員の状況研究開発活動


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